アットウィキロゴ

120-2

ザジが再びぱちんと指を鳴らした瞬間、また周囲の光景がガラリと変わった。

そこは、見慣れた麻帆良女子寮の一室だ。


「・・・ここは・・・・」


「ネギ先生や先ほどのシモンさんだけではなく、他の方々達にも体験してもらっています。因みにこの夢は・・・」


ネギが室内の気配を探ろうとする。

すると、部屋のベッドの上に・・・・


「えっ? あれ?」


その瞬間、ネギの目の前が真っ暗になった。


「スミマセン・・・この夢はダメでした・・・」


ザジがいきなりネギを目隠ししたのだ。それどころか耳まで塞がせた。


「えっ? あの? ザジさん?」


そしてそのまま、ザジはその夢を遮断した。

ネギも解放されて、一体何事かと問い詰めようとしたのだが、ザジがあさっての方向に顔を背けていた。


「あの・・・ザジさん・・・い、今・・・何か・・・」


「ごめんなさい、ネギ先生・・・18歳未満禁止の世界でしたので、強制アウトしました・・・」


「い、一体中で何が・・・刹那さんに木乃香さん・・・それにもう一人・・・シモンさんらしき人が居たような・・・・」


「知らぬが仏、言わぬが花です」


ザジはコホンと軽く咳払いをして先ほどのことをうやむやにしたまま、再び語り始めた。


「とまあ、これは・・・外に居る彼女が作り出した幻影の世界ですが・・・お察しの通り、フェイトたちの言う完全なる世界とほぼ同じものと考えてもらってもいいでしょう」


再び真剣な顔つきになり、ネギも先ほどのことは忘れて再び耳を傾けた。


「『完全なる世界』は各人の願望や後悔から計算した、もっとも幸せな世界を提供します。人生のどの時期であるかも自由・・・死もなく幸福に満たされた暖かな世界。見方によってはこれを永遠の楽園の実現と捉えることもできますね」


世界の背景が再び変わった。

そこには自分の仲間たちの夢が全て映し出されていた。

ウエディングドレスに身を包む木乃香と刹那。

パンツに埋もれ幸福に浸るカモ。

生前の学生時代を過ごしている、さよ。

ネギとのデートに顔を赤らめている亜子。

決闘する古菲とネギ。

アキラはネギと一緒にたくさんの猫に囲まれている。

祖父との幼少の日々を過ごす夕映。

夕映とネギと一緒に読書する、のどか。

飽きることなく激闘を繰り広げる小太郎とネギ。

小太郎とデートをする夏美。

ルーナはネギとフェイトの二人に囲まれ、幸せそうな背中を見せている。

シモンと銀河を背景に戦う茶々丸。

幼い頃に仮契約相手と過ごしていた頃の龍宮。

刹那は規制に引っ掛かるため表示できず・・・

美空、ココネ、シモン、ブターと一緒に旅をするシャークティ。

ヨーコとデートする豪徳寺。

サラの母親とハルカと一緒に探検する瀬田。

そして先ほどの、カミナやニアたちと共に過ごしているシモン。

他の者たちもそれぞれ自分の願望を具現化した夢の中で過ごしていた。

誰もがその夢の中で幸せそうに過ごしている。誰もが笑顔でそこに居る。

しかし・・・


「でも・・・本物ではありません」


そう、これは夢だ。

どれほど精巧に作られ、五感で感じていたとしても、これは自分の今居る現実ではないのである。


「これは・・・・僕たちが掴んでいる世界ではありません」


もうネギの瞳は既に決意していた。


「そうですね・・・・・ネギ先生。彼女たちはまだ若い。その多くは・・・ほんのわずかな勇気で掴めるかもしれない世界です」


甘美な夢から覚めることを。


「もし、たら、れば、があれば手に入れられたかもしれない世界。しかしそれが無かったからこそ手に入れられたものもある・・・そう思うこともまた勇気です。人はそうやって現実と理想に折り合いをつけて大人になります。大人になったとしても・・・皆があなたのように思うことさえ出来れば・・・・完全なる世界など必要ないのです」


その決意にザジは再び微笑んだ。


「ネギ先生。ここを抜け出るキーワード・・・即ち前へと進む言葉は・・・・『わずかな勇気(アウダー・キア・バウラ)』です」


もう二度と手に入らぬかも知れぬ楽園に背を向け、前へと進む決意をしたネギに、ザジは道を示した。


「先生・・・行ってください。前へと進む決意をしたのなら」


「はい」


答えに至るまでの時間は、随分と早かった。

そのことに安心したのか、ザジの姿がネギの元から離れた。


「外に居るのは私の姉です。手強いです、気をつけてください」


「姉!? それでは・・・あなたがホンモノのザジさん・・・」


「麻帆良でお待ちしております。ネギ先生・・・此方も色々と大変そうですが、先生たちが戻るまで頑張ってみます」


去り行くザジに力強く頷き、そしてネギは前へと進む呪文を唱える。



「わずかな勇気(アウダー・キア・バウラ)」



幸福な夢との決別をし、尚も前へ進むネギ。

そこに迷いは無かった。









「何故だ・・・・・・・・・・・」


決して逃れることの出来ない攻撃・・・・のはずだったのだが・・・


「何で!? 何で私には全然何にも無いの!? 何で!?」


美空は頭を抱えてこの現状に混乱していた。


「ネギ君もシスターシャークティも瀬田さんも木乃香たちも・・・そんで兄貴までいきなり気を失って、どういうこと!?」


「ココネも・・・大丈夫ダッタ」


それはザジが仮契約のカードを取り出した瞬間だった。

急に光が場を包み込んだかと思った瞬間、ネギやシモンを始め、自分のクラスメートや仲間たちも皆倒れていた。

効果が無かったのは美空やココネ、千雨やまき絵など一部の者たちだけだった。


「でも、何で私たちだけ何も無いの?」


「何か・・・発動の条件でもあるんじゃねえのか?」


まき絵も千雨も、何故か自分たちだけなんともないこの状況に動揺していた。

敵の攻撃ならば、一番大丈夫そうなネギやシモンに瀬田、龍宮や刹那などの超一流の使い手は倒れているのに、自分たちは倒れていないのはどういうわけだと、仲間たちを起こそうと揺らしながら、この事態に混乱していた。


「無駄ポヨ。満たされぬ想いが強ければ強いほど、心の穴が大きければ大きいほど。その甘美な夢・・・『完全なる世界』からは逃れられぬポヨ」


「そっとしておきなさい。夢は夢。しかし幸せだと感じているのなら、そっとしておくのがいいでしょう」


そんな彼女たちの前に、ザジとクロニアが現われた。


「くっ・・・これが完全なる世界とかいうやつだとでも言うのかよ」


倒れた仲間たちの体を抱き起こしながら、千雨が二人を睨む。


「一応本物の術式ではないポヨ。本物は異界に肉体も取り込まれて永遠を与える。まあ、性質上あなたたちのように現実に満足している・・・リア充には効きにくいポヨが・・・・」


「「「・・・・・はっ?」」」


俗語に一瞬呆けたが、ちょっと待てよと千雨が身を乗り出した。


「は、・・・おいおいおい! 彼氏も一切居ない、365日ネットの住人のこの私のどこがリア充だ!?」


「まあ・・・私も彼氏は居ないけど、兄貴が来てから毎日楽しいし・・・そんな不幸な過去があるわけでもないから、現実に不満は無いけど・・・」


「・・・そもそもリア充って何?」


「ココネ・・・・充実してル」


ザジの言葉に少々大仰な術の名前にしてはいい加減な側面もあるものだと千雨たちは感じた。

しかし、その言葉が本当だとすると、効き目がある者には本当に効き目がありそうだと、美空は倒れている者たちを見渡した。


「つうか・・・兄貴もシスターシャークティも瀬田さんもハルカさんも、いい大人がアッサリかかりすぎじゃね~? とか思ってたけど、あんたたちの話を聞いてると、むしろ大人の方が危ないのかもね・・・」


子供のネギたちならまだ分かるかもしれない。

しかし、パーティーの中でも大人のシモンたちまでもが、こうもアッサリと敵の術に囚われるとは思わなかった。

だが、ザジの今の説明を聞く限り、むしろシモンたちのほうが危ないのかもしれない。

美空の考えに、クロニアが頷いた。


「その通りです。その方々たちがこれまでどういう人生を歩んできたかは知りませんが、年を重ねれば重ねるほど、心の底で描いていた理想と現実のギャップが激しくなります。だからこそ、その理想の世界に足を踏み入れてしまえば、無垢なる楽園から逃れる術はありません」


むしろ大人になればなるほど満たされぬ想いや、理想と現実との差が激しくなる。

大人なのにではない。むしろ大人だからこそ効果があるのだ。


「・・・要するに大人の妄想力はハンパじゃないって事?」


「違いますけど、まあそういうことにしておきましょう」


何とも迷惑な能力だと美空は苦笑した。

力も経験も関係ない。この能力の前にはそれすらも要因の一つとなってしまう。

未だ起きぬ仲間や家族を抱き起こしながら、美空たちは歩み寄るザジとクロニアに対して何も出来ないで居た。


「こりゃ~、参ったね~、戦えるのは・・・・私ぐらい? 千雨ちゃんにまき絵はちょっとだし・・・・・・」


だが、前へ進むにはここを通らなければならない。


「ち~~・・・・ダメだね~、・・・やっぱ・・・この状況を打破するには・・・」


あの男しかいない。

そう確信した美空は倒れているシモンの元へ行く。ココネも美空の後を追う。


「何やってるポヨか?」


「起こすんだよ! こんな時はやっぱ兄貴しか居ないっしょ! 家族パワーで起こしてやるんだよ!! 兄貴ーーッ! さっさと起きろーーーッ!」


「兄貴、もう朝、起キル」


ザジ姉とクロニアに背を向け、美空とココネは何とシモンの顔を何度も往復ビンタした。痛みで起こそうという、酷く乱暴な発想だった。

だが、シモンは起きない。痛みに反応したのか、僅かに体を捩らせたのだが、目を開けない。


「そんな単純な方法は無意味ポヨ。夢の中を現実だと認識している今のその人では、こちら側からどれだけ騒いでも聞こえないポヨ」


「うぅ・・・ぬう・・・・」


アッサリとダメ出しを受けた美空。

だが、ここで引き下がるわけには行かない。

するとその時、思わぬ発想が美空の頭の中に浮かび上がった。

それは・・・


「なら私も寝るッ! ココネ、お休みの時間だ!」


「ン!」


「・・・・ポヨ?」


美空とココネも寝ることだった。


「私も夢の中行って、兄貴をぶん殴ってでも連れ出してきてやる!」


「兄貴に会いに行ク!」


「って、春日!?」


「千雨ちゃん、まき絵! ちょっと待ってて! 兄貴を起こしてくる!」


「えええーーーッ!? ちょちょちょちょーーッ!?」


美空はシモンの隣に寝転がり、シモンの右腕にしがみ付きながら、胸元のコアドリルを握り締めながら目を瞑る。

その際に、シモンの左側にはココネが寝て、ココネもシモンの胸元のコアドリルを握り締め、二人で手を重ねる。


「ごわ~~・・・・・か~~~~く~~ZZZ」


「すー・・・すー・・・すー・・・」


「いや・・・夢の中へ行くも何も・・・・という前に寝てしまったポヨ・・・・」


眠りに付いた美空とココネを呆れ顔で見下ろすザジ姉。


「おいおい・・・ほんとに寝ちまったよこのバカ・・・これで起こしてこなかったら・・・マジで切れるからな・・・」


それは呆れるを通り越すようなバカみたいな発想だった。

だが、そのバカみたいな考えこそが彼女たちらしい。

そのバカみたいな発想こそが、何かを変える鍵になるのだ。

そんな想いを表してるかのように、コアドリルは、美空とココネの手の中で微かに点滅していた。


「ふう・・・・・・」


「やれやれポヨヨ」


そんなコアドリルの僅かな変化を気づかないクロニアとザジ姉は軽くため息をついた。

だが、千雨も呆れてはいるようでその目は絶望していなかった。


「へっ・・・呆れてるみてえだな。でもな、私もそうだったが、こいつら甘く見てると痛い目見るぞ?」


その目にはネギを、そしてシモンを見つめていた。


「呆れるを通り越して、いつも人を驚かせるのがこいつらなんだよ。呆れる行動の後には、いつもぶっとんだ結果が返って来るんだよ」


きっとこいつらなら大丈夫だと、目で訴えかけているように見えた。

そしてその想いは正しかった。



「「ッ!?」」




「なっ・・・」




「ネ・・・ネギ君!?」




その場に閃光が走った。

千雨に気をとられていたために反応が遅れ、気づいたときには、その光は既にザジ姉とクロニアの真横に下りていた。



「はじめまして、ザジさんのお姉さん。そして・・・テンジョウさんでしたか?」



ザジ姉が手の指を鋭い刃と変えてネギに振り下ろす。

クロニアはトライデント・スパイラルでネギを突く。

だが、雷化したネギのほうが早い。

ネギは断罪の剣を両手に出し、ザジ姉とクロニアの首筋に当てた。


「バカな・・・ポヨ・・・」


「まさか・・・・レプリカとはいえ脱出するとは・・・・・・」


表情は変えぬものの、二人は多少なりとも驚いているようだ。

一度堕ちれば二度と戻って来れぬと思っていた夢の世界から、ネギは見事脱出してきたのだ。



「侮らないでください。僕はまだ、成すべきことを何も成してはいないのですから」



確かに性質上、満たされなかった想いが強い大人の方が、この術には効果がある。

しかしネギのこれまでの人生は、人には真似できない大きな闇があった。

その闇が深ければ深いほど、見せられた幸福な夢からは離れられないとザジ姉もクロニアも予想していたのだが、今のネギを見る限りそれがまったくの勘違いだと気づいた。


「・・・普通に感心しました・・・どうやら確かに侮っていたようですね」


「やれやれポヨヨ」


予定が狂った。

だが、予期せぬ事態とまでは行かない。

クロニアもザジ姉も冷静なまま、改めて武器を構える。


「しかし、ネギ・スプリングフィールド。夢から目覚めて、こうして我々に武器を構えるということは、これがあなたの答えと受け取っても構わないのですか?」


断罪の剣を首筋に当てられたままでありながら、クロニアは涼しい顔でネギを見下ろした。


「はい。それが僕自身の選んだ道です」


「・・・・・・愚かな・・・・・・」


あくまで揺らがぬネギを前にして、クロニアは三叉の矛を前へ突き出した。

だが、その直前にネギは体全体から放電を放ち、その攻撃がクロニアの表情を歪ませた。


「ッ!?」


「通してください。僕は、どうしてもフェイトに会いに行かなくてはならないんです」


放電を受けたクロニアの腕が痺れた。

クロニアは痙攣を起こした右腕をじっと見つめながら上下に軽く振って、もう一度ネギを見る。

徐々に痙攣が治まったのを確認しながら、クロニアは口を開く。


「それは・・・囚われているあなたの生徒を救うためですか? 教師として生徒と共に麻帆良学園に帰るためですか? それとも・・・余計なことをするためですか?」


クロニアの問いかけに、ザジ姉も隣で鋭い刃のような爪を光らせてネギの返答を待つ。


「余計なこと・・・ですか?」


「はい、正直あなた方の行動は余計なことです」


「・・・救おうと・・・足掻こうとするのが、余計なことでしょうか?」


「ええ、余計なことです。あなたは何のために今戦うのですか? ・・・気づいていない・・・とは思えません。本当はあなたも分かっているのではありませんか? 世界の辿る道筋を」


「そうポヨね・・・・・・」


ネギの背後にザジ姉が立った。

前方にクロニア。背後にはザジ姉。

二人はネギを挟みながら、ネギのやろうとしていることに対しての警告を告げる。


「ネギ先生。超鈴音と戦い・・・この世界の全てを知った君は、今後の未来を既に予想できるはずポヨ。そこには悲惨な未来しか無いということを」


「超さん・・・ですか・・・」


「ネギ先生。そんな無謀な選択肢をしてまで、君は何を得たいポヨか?」


超鈴音が過去に戻ってまで改変しようとした未来。

それを回避するためにザジ姉はこうして立ちはだかる。

予想できる悲劇と争いを回避するためにクロニアもネギの前に立つ。

だが、ネギは・・・いや・・・ネギたちは・・・


「ザジさんのお姉さん・・・ならば忘れていませんか? 僕たちは学園祭で既に選んでいることを」


「なに?」


「その未来が何であれ、僕たちが超さんに抗ったことを」


既にもう抗っていたのだ。

自分たちが子供であろうと、分からない無知な存在であろうと、その時必死に悩み、傷つき、しかしそれでも自分たちは超の示す明日を受け入れなかった。

だからこそ今のネギの心は・・・



「だから・・・答えは既に出ています」



「・・・・どういうことですか?」



クロニアとザジ姉が眉を僅かに動かす。



「僕の望みは・・・全ての元凶となる問題を食い止め、全部を救うことです」



「・・・な、・・・何を・・・・」



「理論は完璧です。根拠もあります。後は・・・・実行するだけです」



「・・・少年・・・君は・・・・・・・何を言っているポヨか?」



二人が少し唖然とした表情となった。

いや、二人だけではない。この場に居た美空たちですら、ネギが今何を言っているのか分からないでいた。


「戯言を・・・ネギ・スプリングフィールド・・・自分が何を言っているのか分かっているのですか?」


すると、ネギの口が再び動く前に、クロニアは矛を突いた。

だが、体が雷化されているネギに物理攻撃は届かない。

しかしそれでもクロニアは乱暴に届かぬ矛を振り回し、ネギに向かって少々強い口調で言う。

だが、ネギも口にした言葉を曲げなかった。


「はい・・・勿論です」


雷の速度でクロニアの攻撃を交わすネギ。

そしてネギは体だけでなく、その想いすら決して抑えられなかった。

何故なら・・・


「聞いてください、テンジョウさん。ザジさんのお姉さん。・・・・そして、フェイト! 君も聞いているんだろ!」


「やめなさい・・・・・・それ以上は・・・・本当に看過できません」


「聞いてください」


「やめるのです!」


クロニアが珍しく声を荒げた。

少し驚いたのか、ザジの姉も肩を僅かに震わせた。


「・・・ネギ・スプリングフィールド・・・あなたは・・・まさか・・・」


クロニアが僅かに唇を噛む。矛を持つ手にも力が入っている。

そして震えていた。クロニアは明らかに動揺していた。

それはネギが今から言おうとしていることに対しての恐れ。


「何故未来を一つしかないと決める必要がある! 少周りを見渡せば、道は四方に広がっています!」


「そんな道などありません!」


「ならば創るまでです!」


それは・・・


「全ての問題の元凶・・・・・・・・・それは魔法世界の崩壊という未来! 僕には・・・・・・・」


「無駄な希望を持たせるのはやめなさい。それは無理なのです! ネギ・スプリングフィールド! それは希望ではありません! その希望こそが・・・本当の・・・・」


ネギの言葉を遮ろうとするクロニア。

しかしネギはハッキリとした口調で叫んだ。



「僕にはそれを止める手立てがあります!」



その響き渡った言葉には・・・・



「・・・・・・・えっ!?」



「ッ!?」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・マジで・・・・・・・・」



口を開けて誰もが呆然とせずに入られなかったのだった。
















「実践出来るか出来ないかを別にして・・・・・・あるのか無いのかと問われれば・・・・・・・・・・確かにある!」




「・・・・はっ? ・・・・・・マジで?」




「・・・・・・・・・・・・・かもしれん・・・」




「かもだすか!? いや、でもあるんだ!?」



薄暗い地下道。

足音を響かせて歩く人影。


「いや・・・ボス・・・でも、まったく無いからこうして滅んだ後のことを考えて動いてきたんじゃないだすか? つうか何で今更・・・」


「それはアーウェルンクスが間もなくあの世界を滅ぼすからだ。言ったはずだ。滅んでくれたほうがワシらにとっては都合が良いからだ・・・ゼンゴよ・・・・」


ただ歩いているだけ。それだけで場の空気が痛くなるほどの威圧感。

その主の名は、ジェノム・テンジョウ。クロニアの父にして、テンジョウ家の頭首。その後ろに付き従うのは真っ黒い忍装束を纏った忍者、名はゼンゴ。

そしてその二人の後ろには、十人近い武装した特殊部隊らしき兵士たちが足並みをそろえて二人の後に続いていた。


「しっかし・・・・無い無いと思って動いていただけにショックだす。まあ、黙っていた理由は分かっただすが、それは使える方法だすか?」


「いや、実戦はしていない。ワシは魔法使いでない以上、机上の空論の域は出ない。相談できる魔法使いもおらんかったからな・・・・しかし・・・少し発想を変えればいくつか思い当たる方法があったのも事実だ」


「おっ・・・おお・・・流石・・・・・・・・・・・・因みにもう教えてくれるんだすよね。ボスはどんな方法が思いついただすか?」


ジェノムの顔色を伺うように覗き込むゼンゴ。興味津々の様子だ。

ジェノムはその問いかけに、軽くため息をつき、その重い口を開いていく。


「まあ・・・崩壊を回避するというより、延命させると言ったほうが良いか・・・・例えば、魔力の枯渇を地球の天然資源の枯渇と考えればよい」


「資源? それって、石油とか天然ガスとかだすよね?」


「そうだ。文明が急速に発達するにつれて我々の生活には欠かせなくなったエネルギー資源。もはや現在ではその残りの量・・・つまり後何年で底を尽くのかも公表されている。それに対して世界はどう対処している?」


問われたゼンゴは腕組して考え、思いついた答えは・・・・


「・・・う~ん・・・使用の削減・・・代替エネルギーの開発・・・」


「そうだ代替エネルギーだ・・・ならば魔法世界も同じだ。現存するエネルギー・・・即ち魔力が底を尽きるのなら、補うものを使えばいい」


強く断言するジェノム。しかしゼンゴは納得がいっていないのか、首を軽く捻る。


「いや~ボス。・・・そう簡単に言いますけどね~、それでエネルギー問題は配慮されても改善されていないのが現状でしょう。使用量だって減るどころか増える一方・・・だったら魔力だって同じことだしょ~」


「だから実践できるかどうかは別だと言ったではないか。だが魔法世界に例えば・・・・・・神木・蟠桃のように強力な魔力を内に秘めているものを植え、それを中心に世界に魔法陣を描けば魔力溜まりが形成され、世界に魔力が満ちるはず。特にあれは22年に一度の周期で自発的に魔力を高め、その量は最大に達するからな」


「神木・・・・・ああ、あの麻帆良学園に生えてる世界樹だすか・・・確かに今年の学園祭であれが満ちているときは、魔法が使えないはずのエヴァンジェリンも魔力を使えていたという報告も・・・・あっ、な~るほど~」


ジェノムの説明を受け、ゼンゴも頭の中に出てきた単語を並べていくうちに、先ほどまで首を捻っていたのが一転し、なるほどと手のひらを叩いた。


「じゃあ、魔力が満ちている学園祭時期においてのアルビレオ・イマの目撃情報は、ガセじゃなかったということだすね~。まっ、今年の武道大会でそれはハッキリとしただすが・・・どうやって姿形を形成しているのかが疑問だっただすからね~」


「だろうな。まあ、他にも魔力を結晶化させた魔水晶だかなんだかを地球から魔法世界に定期的に補充するなどという手もある。そもそも魔力は大気の自然エネルギーから生み出されるもの。火星の・・・造りものの魔法世界の自然と違い、大気の循環が見事になされ、自然エネルギーが満ちている地球から定期的に補充すれば済む話だ」


「あっ・・・・確かに・・・そっか・・・大気が見事に循環し、造りものではない自然のエネルギーが満ちているから、地球に魔力の枯渇なんて問題が起きないだすか。・・・さながら石油取引ならぬ魔力取引。と、言ってもまあ、実験もなしにそんなご都合主義に行くとは思わないだすが・・・・」


話を聞けば聞くほどゼンゴもリラックスして口調が軽くなっていく。

絶対不可能と言われる世界崩壊の回避の手段は、ちょっと頭を捻れば色々と手はあったのである。

だが、確かにそれらは実験も何も無いアイディアの域を脱していないのも事実。その事を軽口で指摘したゼンゴだが・・・


「正にその通りというものよ!!」


「う、・・・・・うお・・・・は、はあ・・・」


その言葉にジェノムは強く頷いたのだった。

強い口調にゼンゴを含め、付き従っている武装兵たちも若干肩を震わせた。


「その通りだ。ご都合主義というものよ。だからこそ、これらは決して完璧な対策案とは言えぬ。なぜなら、これらの対策は全て地球側の協力が不可欠。即ち、今後何十年も魔法世界側との交流が前提条件だ」


マスクの下からゼンゴは冷や汗を流して苦笑していた。

妙なツッコミを入れてしまったようだと、その事に少し後悔しながら言葉を慎重に選んでいく。


「は、はは・・・なるほど・・・・要するにボスは交流が盛んになるのが嫌なわけで・・・・それは争いの元になるから。まあ、資源欲しさに戦争起こすのは地球の歴史上に何度も繰り返されてきたことだすからね~」


「そうだ。だからワシにも完璧な対策案は無い。だからこそ妙な希望を生み出さぬために伏せてきた・・・・・・まあ、そもそも実践できるかどうかも分からぬ空論だがな」


「ふ~ん・・・つまり・・・・」


「そうだ。救う方法があるかどうかが問題ではない。その方法が魔法世界自身の手でなく、地球側の協力が必要である場合は、全てがワシらにとっては都合が悪いということだ・・・・・・っと・・・・無駄話をしているうちに着いたようだな」


薄暗い道がようやく出口に差し掛かり、外の光がジェノムたちに降り注いだ。

思わずゼンゴたちも天を仰ぎながら背伸びをした。


「ん~、ようやく着いただすね~、潜入ってのもやっぱツライ」


「あの扉だな?」


ジェノムが指差した先には巨大な扉があった。


「まあ、そのようで・・・・・・・・・・・・・ん!?」


マスクで顔を覆っているものの、その下に唯一見えるゼンゴの目つきが変わった。

自然と周りに居る兵士たちも咄嗟に動き出し、ジェノムの周りを囲んだ。


「何か・・・・来るだす」
最終更新:2011年05月13日 21:28
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。