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122-2

鋭い剣閃がネギの首を切り裂こうとした。

誰よりもいち早くに察知した刹那がその剣を受け止め、間一髪のところでネギは助かった。


「刹那さん! くっ、・・・こんなところにも敵が!」


「不覚、気づかなかったでござる」


「おうおうおうおう、敵のお出ましかい!」


気の休む間もなく出現した敵。やる気を出して身構えるネギたち。

だが、何か違和感を感じた。

それを特に感じたのは刹那だった。


「ん・・・・・貴様・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・」


相手の剣を受け止めながら、刹那は何かを感じた。

目の前の敵がこれまで戦ってきた召喚魔と何かが違うと感じた。

だが、その間にも・・・


「お、・・・おうおうおうおう・・・・」


「ちょっ、床から次々と化物が召喚されてるんですけどーッ!」


「あの、デュナ何とかの仕業アルか!?」


次々と召還されていく化物。十、百、まだまだ増えていく。

だが、敵の数が問題なのではない。召喚された敵が問題だった。



「ふっ・・・・ふふふふふ・・・・神鳴流か」



それは刹那と剣を交わしている化物の口から漏れた。



「なっ!?」



「喋ったァ!?」



そう、何と化物が人の言葉を使ったのである。

だが、それはありえなかった。

デュナミスが召還する化物は皆巨大で強力だが、知性は無かった。ゆえに力押しだけで押し切ることが出来たのである。

しかし、今目の前に居る化物は違う。

これまで戦ってきた召喚魔たちとはまったく異質の存在だった。



「やはり・・・・・・貴様は・・・烏族!!」



刹那はハッとなり叫んだ。

そして・・・



「ガハハハハハ、久々呼び出されたと思ったら、中々強そうな連中じゃねえか」



「楽しめそうではないか」



「久しぶりに大暴れできるということか」



召喚された化物たちが次々と人の言語で話している。

もはやネギも美空たちもわけが分からなかった。


「ど、どういうことアルか? 何でこいつら喋っているアルか?」


何故? その理由が理解できたのは刹那だけだった。



「デュナミスの仕業ではない。烏族や・・・・鬼族・・・・これだけの妖怪たちを召喚出来るのは、陰陽術士だけ!」



それはこの場において、まったく予想もしていなかった存在。



「なっ!?」



「陰陽術士!?」



「それって、京都に居たアレみたいなの!?」



流石のネギたちもこの事態にはうろたえ、直ぐに動くことが出来なかった。

敵のレベルの所為ではない。予想もしていなかった事態だからだ。



「鬼族・・・・まさか・・・・」



ネギの頭に思い浮かんだのは、ケタケタと身も毛もよだつ笑いを浮かべるユウサの存在。

だが、この状況を作り出したのは、ネギたちにとってはまったくの予想外の人物。



「「「「「「「「「「かかれええええ!!」」」」」」」」」」



剣を、金棒を、棍棒を、槍を、数多の武器を用いて襲い掛かる鬼たち。



「くっ、とにかく敵であるなら蹴散らします! いきますよ皆さん!」



「「「「「おうッ!!」」」」」



迎え撃つのは、ネギ、刹那、楓、古、美空、ココネ、シャークティー、豪徳寺、達也、慶一、ポチ、そして偽アスナの戦えるメンバーだけ。

他のメンバーたちは楓のアーティファクトにより安全場所に隠れ、今鬼たちとぶつかり合う。


「はあああああ!」


「ふむ、若いがやるではないか神鳴流剣士よ! しかし某もただの烏族とは一味違うぞ!」


「ぐわはははは、こちらも行くぞ!!」


「くっ、・・・・できる!」


烏族の剣士たちが群がり、刃を交える刹那。その力を簡単にねじ伏せることができない。

一対一ではないとはいえ、その斬り合いは一見互角に見える。


「はあッ! 神珍鉄自在棍!」


「グレンライトハリケーンキーーック!」


「がはははははははははは! めんこい娘っ子たちだと思ったが中々やるなァ!!」


恐らく単純な一対一ならば刹那たちの方が上なのだろう。しかし・・・


「しははははは!!」


「我らの集団戦法を崩せるかな?」


「連携攻撃とは!? 気をつけるでござる! デュナミスの召喚魔と違い、パワーは無いが知性がある分手強い!!」


ねじ伏せるどころか、停滞してしまった。

そう、デュナミスの召喚魔たちは造物主の掟の力も備わり、その力は確かに脅威であった。

だが、どれもが知性も連携も無いバラバラの動きであったため、ネギたちは力ずくで押し通すことが出来た。

しかし目の前の鬼たちは違う。

一人一人がそれなりの達人でありながら、集団戦法を狂い無く実践してくる。

これは千や二千の群がる化物たちを蹴散らすよりよっぽど骨が折れた。


「そんな・・・・これほどの戦力がまだフェイトたちに残っていたなんて・・・・」


刹那たちが弱いのではない。目の前の敵がこれまでの相手よりも遥かに手強いのである。


「ネギ先生! 陰陽術士が召喚する化物のレベルや格は術者の能力に比例します! 恐らくこの近辺に術者が潜んでいます!」


「坊主! 何とか俺たちは堪えるから、さっさとそいつをぶっ飛ばしてくれ!!」


戦えなくも無いが、消耗が激しすぎる。

未だに手当たり次第に召喚され続ける化け者たちを消すには術者を倒すしかない。


「ぐっ・・・・は、・・・・はい! 皆さんも気をつけて! 無理をしないでください!」


渾身の魔力を込めて、ネギは雷天の力を纏って、取り囲む鬼たちの壁をぶち破った。

恐らくはこの奥に居るであろう術者を倒すため、ネギは一直線にぶち抜いた。

だが・・・




「蹴散らせ・・・前鬼・・・後鬼・・・・」




ボソッと誰かが呟き、同時に2体の鬼がネギの前に立ちふさがった。



「なっ、・・・・・・これは・・・・スクナ!?」



京都で戦ったあの伝説の鬼、リョウメンスクナノカミと酷似した巨大な鬼がネギを叩き落そうとする。


「ネギ先生!?」


「あれは京都の!?」


「いや、違う! しかしアレは・・・大鬼! 馬鹿な! 一体誰があんなものを召喚出来るというのだ!?」


思わず叩き落とされたネギに、突如出現した2体の大鬼。

やはりこれはあの男の仕業なのかと、ネギも刹那たちも歯軋りする。

だがその時だった!





「お札さんお札さん・・・・・」





いつか・・・



「・・・・・えっ?」



どこかで・・・



「こ・・・この声は・・・」



聞いた事のある声が聞こえた。




「奴らを・・・殺しておくれやす!!!!」





「あ、・・・・あなたは!?」




気づいたときには鬼に叩き落されたネギに向かって札が投げつけられ、その札から地獄の業火が燃え上がった。



「喰らいなはれ! 符術・京都超大文字焼き!!!!」



京都の大文字焼きのように、床に「大」の形を作りながら燃え上がり、ネギを一瞬で飲み込んだ。



「ネ、ネギ坊主!?」



「ネギ先生ッ!?」



まさかの事態に少女たちの悲鳴が上がる。巨大な炎に一瞬で飲み込まれたネギがどうなったのかと、目の前の敵を忘れて叫んだ。

だが・・・


「だ、・・・・・大丈夫です! 軽い火傷です!」


大文字焼きの中から突如竜巻が巻き起こり、炎が四散した。

その竜巻の中から、多少衣服を焦げさせたが、無事なネギの姿を見て少女たちは安堵した。



「それにしても・・・・あなたが・・・あなただったんですね?」



ネギはチラリと前方を見る。たった今自分を攻撃し、これほどの化物を召喚した陰陽術士。



「貴様・・・何故ここにいる!?」



刹那も思わず叫んだ。

当初はユウサの仕業ではないかと思っていたのだが、その予想は大きく外れた。

この場において、ネギたちの前に立ちはだかったのは・・・・



「しぶとい・・・・ああ・・・・忌々しい西洋魔術師・・・あのドリル男はおらんが・・・・殺したい奴は仰山そろっとるようやな・・・・」



以前と雰囲気がかなり違う。

姿かたちは以前と変わりないのだが、その静かな殺意と憎しみに満ちた瞳から出る悪意の塊は、自分たちの知っている彼女とは大きくかけ離れていた。




「天ヶ崎千草!!!!」




西洋魔術師に恨みを抱き、かつて修学旅行で木乃香を浚い、封印されていたリョウメンスクナノカミを解き放ち、関西呪術協会を乗っ取ろうとした敵。


ネギに、シモンに、彼らの気合に破れ、敗北を認めた彼女は素直に投降し、今は関西呪術協会に捕らえられているはずである。


しかしその彼女がここに居た。


さらに、三流の腰抜け小悪党というかつての面影は無く、まるで月詠や、更にはユウサのように狂気に満ちた魔を醸し出していた。













「外の連中が頑張ってくれとるお陰で警備が薄い。今ならネギの幼馴染を助けるのも難しくないな」


ザジ姉とクロニア。その脅威から逃れていくつかのグループに分かれたネギたち。

巨大な宮殿の螺旋階段には上下の道があった。

三つに分かれたグループ。今この場には小太郎、夏美、朝倉、さよ、夕映、ベアトリクス、瀬田、ハルカ、サラ、ブータ、カモ、この面子でネギたちとは別働隊として人質の救出に向かっていた。

当然敵の本拠地内を移動するのだ。外に何万も敵が居るのだから、宮殿内部にもそれなりの敵が存在する。

しかし、デュナミスや月詠が外で足止めを受けていることもあり、宮殿内部の召喚魔の数もそれほど多くなく、何より敵が何体居ようと関係ないとばかりに、小太郎たちは堂々と闊歩していた。


「しかし楽チンだね~、夏美ちゃんだっけ? すごい能力だよ。敵も見えているのに気づいていない。いや~、遺跡の侵入や密入国にはピッタリだし僕も欲しいね~」


「えっ、そんなに凄いですか?」


瀬田すら脱帽の夏美のアーティファクト。

その名も「孤独な黒子(アディウトル・ソリタリウス)」という名のマスク。

このマスクをかけている間、使用者の存在感は極限まで薄くなる認識阻害魔法の強化版。手をつなげば何人でも有効という、正にこのような時のためのアーティファクトといえる。

つまり今の彼らは、敵が何体居ようとも、相手に気づかれること無く宮殿内を自由に探索できるのである。

これだけの大人数で手を繋いで歩くというのは、少し間抜けに見えるが・・・


「なはは! 瀬田さんの言うとおりやな! こら~、俺らの役目も案外楽勝やな。ちょっと拍子抜けやけど」


「ちぇ~、やっぱ私も美空たちと一緒に大暴れしとけば良かったな~、ブータもそうだろ? それともシモンが心配か?」


「ぶぶ!」


「ふっ、心配要らないだとよ。どこまでも信頼されていることだな」


もしものためを考えてこちらのグループの戦力もある程度整えたのだが、予想を上回る夏美の能力に小太郎もサラもハルカも余裕を見せていた。


「でもまっ、瀬田さんたちも居てくれるし、確かに問題なさそうだね~」


「ホンとです。しかし良いのですか? 美空さんたちと一緒じゃなくて」


「まあ、あっちにはシャークティーさんも居るし、こちらにも大人の同伴者は居たほうが良いだろうしね。でも、夏美ちゃんが居るから要らない心配だったかもね~」


朝倉も夕映もすっかり気を抜いていた。

最初は夏美の能力が本物かどうかの確証も無かったために、敵の前を通るのにものすごい緊張があったが、今では皆ピクニックのようにつながれた腕をぶんぶん回しながら、目的地へと向かっていた。


そうこの時は何も問題ないと思っていた。


自分たちは難なく目的を達せ出来ると思っていた。



「・・・むっ・・・」



「どうしたですか、ベアトリクス?」



「皆さん・・・誰か・・・奥から来ます」



楽な当たりのルートだと思っていた。拍子抜けだと思っていた。


実はこの道は地獄へと繋がる道であったことに、皆は気づいていなかったのである。



「ん?」



小太郎が通路の奥を睨む。確かにベアトリクスの言うとおり足音が聞こえる。

しかし薄暗い宮殿通路であるために、その足音の主が確認できない。


「大丈夫だよ、落ち着いて。皆手を離したり、騒いだりしちゃダメだよ?」


少し緊張しだした少女たちを落ち着けるように瀬田が優しく注意する。

そして少女たちを庇うように少し前へ出て、足音の人物を確かめる。

するとその通路の向こうからやってきた者の正体は、自分たちの予想だにしていなかった人物であった。



「・・・へっ・・・」



「なっ!?」



「ひっ!?」



「な、なんやと!?」



「パ、・・・パパ・・・・ハルカ・・・」



「あ、・・・・ああ・・・なんでこいつが・・・・」



「どうやら・・・・この道はハズレだったのかもしれないね」



誰一人残らず汗が噴出し、肩を震わせた。

瀬田とハルカですら表情が引きつっていた。



(こ、こんの・・・・・・こんのクソ鬼・・・何でここに居るんや!?)



現われたのはユウサ。

ポケットに両手を入れながら、ニタニタと笑いながらこちらに近づいてきていたのだった。

何故フェイトたちの本拠地にこの鬼が居るかは知らないが、完全に予想外で最悪の展開だ。


「・・・・・・こ、怖い・・・・コココ、小太郎君!」


「大丈夫や! 夏美姉ちゃんの能力なら絶対気づかれへん! このままやり過ごすんや!」


「小太郎君の言うとおりだ。正直相手が悪い。このまま通り過ぎるのを待つんだ」


少女たちが恐怖のあまり震えている。

常人なら立つことすら困難に感じるほどの圧倒的悪意は、無垢な少女たちには毒以外の何物でもない。

だが、タイミングが良かった。

夏美の能力を発動中であるため、いかにユウサといえども自分たちには絶対に気づかないはずである。

ゆえに、小太郎も瀬田もただ黙ってユウサが通り過ぎるまで、その場でじっと堪えることにした。


(大丈夫や・・・俺らの存在は絶対に気づかれてへん。このままやり過ごす。夏美姉ちゃんや朝倉の姉ちゃんたちが居る以上、こいつと戦うわけにはいかん)


必死にしがみついてくる夏美たちを抱き寄せ、小太郎たちは息を殺してユウサが通り過ぎるのを待つ。


(僕にサラにハルカ・・・あの空中喧嘩祭りでもこの男は僕たち三人を相手に本気を出さずにあしらった)


瀬田も、そしてハルカやサラももうこの男と戦うことは絶対に避けるべきだと心の中で決めていた。

そして歩み寄るユウサは顔色も変えず、特におかしな動作も無く、普通に歩き、そして普通に自分たちの横を通り過ぎる。

大丈夫。絶対に気づかれていない。


(もう・・・・大丈夫かな?)


ゆっくりと真横を通るユウサを、小太郎の影に隠れながら、恐る恐る夏美が覗き見る。

早く行け、早く遠くに行ってくれと、心の中で何度も叫んでいた。

だが・・・・・



「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」



何とユウサは自分たちの真横でいきなり止まり、首だけをこちらにグルリと向けた。

もはや驚きのあまり心臓が破裂しそうになった。

声を出さなかったことは、称賛に値する。

だが、何故こうなったかは分からない。

ユウサはただ何も見えないはずのこちらを見て、ただ無表情でジーッとこちらを見ていた。

夏美たちは最早動揺と緊張と恐怖のあまり泣きそうになっている。


(な、なんや? まさか気づかれたんか!? いや、んなわけない! 夏美姉ちゃんの能力は強力やった。その証拠にさっきまで何百もいる化け物どもの前を堂々と通り過ぎても何とも無かった。せやけど、何でこいつはこっちを見てんねん!?)


声を出したり、騒いだり、手を離したりしなければ気づかれるはずはない。

だが、ユウサの行為に小太郎も答えが出せない。


(気づかれたか? いや、何か違和感を感じているだけかもしれない。しかしどうする・・・やり過ごすか・・・・それとも僕と小太郎君、サラ、ハルカ、・・・この4人で先制攻撃を仕掛けるか・・・いや・・・しかし・・・)


瀬田も額の汗が止まらない。どうすべきかの決断が出来ない。


(ダメだ・・・悔しいが僕たちが束になっても敵わない。確実に殺される)


ユウサはユウサで一向に視線をそらすことも、その場を後にすることも無い。

一体どうしたのか。そしてどうするのか。

そして悩み悩んだその末・・・・




「ひはは」




ユウサが声を出して笑った。




「「「「「「「「「ッ!!??」」」」」」」」




――――気づいている!!!!




「いやあああああああああああああああああああああああああ!!!!」




突如ニタリと厭らしく笑みを浮かべたユウサに、恐怖のあまり絶叫する夏美たちを後ろにやり、小太郎たちは即座にユウサに攻撃を仕掛ける。



「狼牙双掌打!」



「メカタマインパクト!」



「浦島流・龍牙!」



「剃刀!」



真距離からの集中攻撃だ。

容赦も遠慮もこの男には必要はなかった。



「羅生門」



だが、彼らの動揺と焦りの入り混じった攻撃をあざ笑うかのように巨大な門を出現させて防いだ。



「ひははははは、や~っぱりね~」



「くっ、・・・・防がれたか」



「ちっくしょ~~ハカセにパワーアップしてもらったメカタマなのに~」



やがて門が消え、門の向こうで恐怖と敵意を含んだ瞳で睨んでくる人間たちに、ユウサの笑みは余計に吊りあがった。


「バカな、何故気づいた・・・・」


瀬田が尋ねる。

その問いかけにユウサは少し誇らしげに種明かしをする。


「ひははは、鬼の中の鬼のこの俺に、かくれんぼで勝てるとでも?」


「んなアホな! 存在感を極限まで下げられるアーティファクトに何で気づいたんや! 気配も完全に無かったはずや!」


「ふふん、俺はよ~、昔っから人の感情や視線に対して敏感なんだよ。これだけデッカイ恐怖の感情と怯えた視線に何も感じないはずねえだろ?」


気配や存在感ではない。


「バカな・・・・視線と感情を感じ取ったというのか?」


やはり異質。瀬田ですら思わずゾクリと背筋を震わせた。

朝倉や夕映、夏美もベアトリクスも手の震えが止まらない。この何とも言えない不気味さから一秒でも早く逃げ出したかった。


「ひははは、クロニアちゃんから逃げようと思ってウロチョロしていたら出会ったのがゴミ家族に犬っころか。まあ、当たりで良かった・・・・な!」


そしてユウサは消えた。

消える間際のその笑みだけが心に残った。

攻撃を仕掛けてくるかと思ったユウサは、小太郎にも瀬田にも向かってこなかった。


「・・・・えっ?」


「ッ!?」


身構えていたのに自分たちに攻撃を仕掛けず高速で通り過ぎたユウサ。


「危なーーーーいッ!!」


どういうつもりなのか分からなかった小太郎だが、瀬田だけがユウサの行動の意味を理解した。


「・・・・一人目・・・・」


「へっ?」


反応できない。

出来るはずもない。

何故ならユウサが向かった相手は素人の朝倉だったからだ。

そしてこの鬼は躊躇わない。

幾多の者たちをズタズタに引き裂いてきた血の匂いが充満するその爪を、朝倉の腹部めがけて突き上げたのだ。

だが・・・・・・



「・・・・・・・・・・・・・・えっ」



朝倉に痛みは無い。ただ呆然としていた。



「なあッ!?」



小太郎は言葉がこれ以上出なかった。



「き・・・い、・・・・いや・・・・・・・・」



「あ、・・・う・・・ああ・・・・・」



夏美もさよも、夕映たちは思わずペタンとその場に腰を抜かしてしまった。



「パ・・・・パ・・・パパ・・・・」



「・・・・・・・く・・・・・・」



震える声でようやく絞り出せた言葉はたったそれだけ。サラもハルカも、一歩も動けないでいた。

そして・・・



「ほ~~~、ひははははは、この場で一番頼りになる男が先に消えちまったな!!」
最終更新:2011年05月13日 21:35
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