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122-3

汚らしい声で笑うユウサの爪は、朝倉を庇うように割って入った瀬田の腹部を貫いていた。

真っ白な白衣が血に染まり、瀬田の意識は既になく、ただグッタリとしていた。



「いやああああああああああああああああああああ!!」



「せ、瀬田さあああああああああああん!?」



「パパアアアアアアアアア!!」



少女たちの悲鳴が響き渡る。その悲鳴を悦に感じながらユウサは笑う。



「ひはははははは!! いいね~、いいね~、最高だ! 無力なガキを穴空きにするよりも、この声を聞く方が快感だ!」



ハルカの怒号がユウサに向けられる。


「この・・・・・外道がアアアア!!」


この場で最も冷静でなければいけないはずの彼女が、形振り構わずユウサに立ち向かう。

ただその瞳には涙と憎しみだけを浮かべていた。

だが・・・


「いいね~、憎しみと憤怒・・・・そして・・・・!」


「ッ!?」


「それすらも上回る恐怖を与えるのは、もっと快感だ!」


ユウサの容赦ない拳がハルカの顔面を捕え、ハルカはそのたった一撃で意識を失ってしまった。


「ハ、ハルカァ!?」


「ひ、酷い・・・・・・」


「て、てめえ・・・女やぞ・・・・顔を容赦なく・・・」


女の顔面をも問答無用で笑いながら殴り飛ばすユウサの奇行に小太郎は怒鳴りつけるが、そんな倫理観は無意味。



「ひははは、お前らは肉を食うのに雄と雌で差別するのかい?」



ただ狂ったような笑いだけがその場に響き渡った。



「ふは・・・ひは・・・後は・・・可愛い可愛い学生さんたち・・・ひははははは、まだ何にも染まっていなその純粋な心と体に、トラウマを刻みこんであげる♪」



鳥肌が立つ。

背筋が凍る。

吐き気に見舞われる。

サラも、朝倉も、夏美も、夕映も、ベアトリクスも、さよも皆同じだった。


「な、なんなんだよこいつ・・・・」


「ぶ・・・ぶぶ・・」


人でないカモもブータも、目の前の存在が異常であることが理解できた。


(ああ・・・・ダメ・・・・・私たち・・・・・ここで・・・こ、殺され・・・る)


ただ「死」という恐怖に打ち震える少女たちに言葉もなく、逃げることもできずにただ苦悶の表情を浮かべていた。



だが・・・




「・・・・・・・ええ加減にせえよ・・・・・・・下衆野郎」




ただ一人違った。



「・・・何の用かな、犬上小太郎君?」



「初めてや。心の底から倒さなアカンと思った奴は初めてや」



「・・・・・ん? ・・・・・・?」



ユウサは小太郎の様子にどこか違和感を感じた。


「こ、・・・・小太郎君・・・?」


夏美も同じことを感じた。

いつも感情任せに飛びかかり、戦いを楽しんでいたバトル少年が、今この瞬間湧き上がる想いを内だけに秘めながら、非常に落ち着いていたのである。


「おい、チビ助、それに騎士団の姉ちゃん、治癒魔法少しなら使えるやろ? 瀬田のおっさんたちを頼む・・・二人なら大丈夫なはずや」


「えっ・・・は、・・・はいです・・・」


「わ・・・わかりました」


腰を抜かしていた夕映とベアトリクスも少し呆けてしまっていた。

あまりにも冷静で静かな小太郎に、少し呆然としていた。


「くはははは、倒す・・・か・・・君ごときにかい? ネギ君、ラカン、シモン君、彼らの領域から果てしなく遠いレベルに居る君がかい? ひははははは」


からかいを込めて挑発するユウサだが、小太郎は乗らない。

拳をぐっと握りながら、その場に留まっていた。

そして小太郎は答える。


「確かにな。俺はネギにも随分と置いてかれた・・・・この世界に来てから特にな」


小太郎はネギをたった一人のライバルとして常に張り合って来た。

自分もネギの才能に負けぬよう、日々研鑽を積み重ねてきた。

だが、ネギのこの世界に来てからの成長速度は異常だった。

皆は口に出さないが、恐らく同じように思っているはずだ。小太郎のレベルはネギよりも明らかに劣っているのだと。


「・・・でもな・・・・」


だが・・・・


「ネギの父ちゃんや・・・・シモンの兄ちゃんたちの生き様見て・・・ネギにあれだけ差ァつけられて・・・俺も何も考えてなかったわけやない。俺も皆みたいに少し殻を破りたかったとこや・・・・」


静かなる闘志が徐々に徐々に湧き上がるのを感じる。


「ほ~~、言うね~~、駄犬の分際で! だが、お前さんごときが俺に生意気言うのは、自惚れもいいとこだぞ?」


その闘志は、やがて大きな波となって全てを飲み込む。


「なら見せたるで。心を持った獣の牙を。テメエは俺がこの場で引き裂いたる!!」


狗が鬼に牙を向ける。

その牙はただの牙ではない。

一度食い込めば、相手を引き千切るほどの鋭い牙。



「獣化!」



人間と狗族のハーフである小太郎の妖怪としての血を目覚めさせた獣化。

だが、それだけではその牙も爪も鬼には届かない。

しかし小太郎もそんなことは分かっている。


「ひはは、獣化ね~、妖怪のハーフは相変わらず芸がない。でもほら、どうせならシモン君との戦いで見せてたアレはやらないのかい? 狗音影装だっけ? あれの方が強いんじゃない?」


狗音影装とは、小太郎の獣化の奥義である。全身を巨大な獣のようにパワーアップさせる力だ。確かに目の前の獣化よりは強力なはずである。

しかし、小太郎には考えがあった。


「へっ、狗音影装は確かに強力やが、獣としての割合が強すぎて細かくて緻密な技が使えへんのや。今からやる技は最低限の人型を保ってへんとできんのや」


「何?」


そして小太郎は両腕を輝かせる。

心静かに、水面のように。


「自分を無に・・・・左手に世界・・・右手に自分・・・こんな感じやったかな・・・」


らしくない。

獣化して凶暴性を増しているはずが、相変わらずの落ち着きだった。

だが、この時ユウサはハッとなり気づいた。小太郎の両手にそれぞれ違う力が宿っていることを。



「魔力と気!? それはまさか・・・」



小太郎の左手には魔力、右手には気。



「元々、気を使って戦う俺が魔力を使うんは難しいと思っとったが、魔力が満ちとるこの世界なら意外と簡単やった!」



その二つを合成させる。

気と魔力、相反する二つの力の融合。

それはすなわち・・・



「ひははは、驚いた! 感卦法か!」



気と魔力という反発する性質を持つ両者を、融合させる技。

肉体強化・加速・物理防御・魔法防御・鼓舞・耐熱・耐寒・耐毒などを強化する戦闘の究極技法。



「しかもただの感卦法じゃねえ。獣化状態であらゆる性能が強化されている状態での感卦法だ。それはつまり全ての性能が掛け算式で通常の感卦法より何倍もの効力を得られる・・・まさに・・・」



獣化というパワーアップ×感卦法のパワーアップ。

魔族や妖怪は元々の身体的な能力も高く、内在する魔力なり気で己を強化すればそれだけで人間が使う感卦法クラスに匹敵する。

しかもその状態で己のあらゆる性能を何倍にもする感卦法を使う。



「いくで・・・・これが・・・俺の!」



その力の果ては、もはや変化などという生易しいものではない。




「我流犬上流・超獣進化!!」




言うなれば進化だ。



「こ・・・小太郎君!?」



獣を型どった光の衣に身を包む小太郎の姿。


「コタ君・・・」


「き、きれー・・・・」


「や、やるじゃねえかコタロ!」


その力は恐怖に飲まれかけていた少女たちに差し込んだ光だった。



(ひはははは、人間以外の種族は感卦法を使わねえ・・・いや、そもそもあまり出来ねえ。ただでえ習得困難な究極技法であるうえに、獣化などの変化は魔の力の高ぶりや心の興奮で感卦法のような緻密なバランス配合や落ち着いた精神状態で無ければ使用できない技は使えない。しかしまあ、どうりで俺が挑発しても落ち着いているかと思えば、これをやるためだったか・・・・ひははは、やるじゃねえの・・・変化プラス感卦法のコンボはゲジョウ以来に見たな・・・)



ユウサですら思わず感心してしまった小太郎の隠し持った牙。



「意外だったな! ひははははは、こんな牙を隠していたか! おもしれえ! お前さんも踏み込んでいるようだな・・・最強クラスとやらに」



そう、世界の希望はネギだけじゃない。

シモンだけじゃない。

俺も居る。

犬上小太郎がここに居る。

まるでそう小太郎が叫んでいるように見えた。



「なめんなやクソ鬼! 俺を誰だと思っとんねん!!」



獣の獰猛さと能力に人の知恵と技と心を秘めた新たなる力。

その力を、そして犬上小太郎という男の存在が、今世界に刻まれる。











「何故・・・あなたのどこにこれほどの力が・・・」


理解できない。

クロニアは当惑していた。

天元突破と化して大グレン団の仲間たちの力を振るうシモンの底の見えない力に、思わず言葉が口から漏れてしまった。


「人間ってものはもっともっと大きなものだ。人や世界の限界を決め付け、押さえつけて王様気分になっているうちは、一生分からないさ」


シモンは言う。

そしてそれはシモンの言葉であり、大グレン団の言葉でもある。

たった一人の言葉ではない。

その一言一言にいくつもの魂と想いが宿っているために、その言葉は重く、クロニアの心に圧し掛かる。


「ネギ・スプリングフィールドといい・・・・あなたといい・・・あなたたちに・・・何が分かるというのです」


クロニアがまた姿を消した。


「またワープか!」


ランダムシュレーディンガーワープだ。この能力を使われたらシモンの索敵能力でも捕まえられない。

しかし・・・


「ならば、これだ!」


クロニアを捕らえられなかったのは、少し前のシモンの話である。

今のシモンに、不可能などありはしない。


「超銀河メガボルテックスキャノン・・・・超銀河メールシュトローム砲・・・」


シモンの螺旋力から作り出された砲台。

それは、可能時空軸一斉掃射を目的とする。

その能力は、砲撃のタイムレンジを広げることにより時間軸を揺れながら移動するクロニアをトレースする。

並立する時空連続体への攻撃だ。

まあ、シモンにそんな細かい理論が分かるはずは無いが、要するに気合一つだ。



「いくぜ、過去も未来も一気にぶち抜けえッ!!」



「――――ッ!?」



シモンの言葉と同時に螺旋の炎に包まれた砲門が火を噴き、何も無い空間へと放たれた。

無人の空間へと飛び出した超螺旋法。

それは一瞬の間を置いて大爆発を起こし、爆炎の中からクロニアが出現した。



「そんな・・・・・・・・このようなことが何故・・・・」



もう何もかもわけが分からない。

一体この男は何者なのか。

自分は何と戦っているのか。

自分は何故勝てないのか。



「分からない・・・・あなたは一体・・・・」



「何故」と「何」という言葉だけが頭の中に埋め尽くされ、ついには揺れ動くことの無かったクロニアの表情には苦悶の色だけが浮かんでいた。

だが・・・



「くっ、だが・・・引くわけにはいかないのです。私の背中には・・・人類の・・・何十億もの人類の未来を背負っているのです」



意地だけが今のクロニアを支えていた。



「背負っているのは俺も同じだ」



「ッ・・・・」



「過去も未来も・・・そして今でも、俺はこいつらと共に前へと進む!」



だが、今のシモンは意地だけではない。

魂も、想いも、全部をひっくるめた力がシモンに宿っている。



「螺旋連銃(ラセンレンガン)!!」



「空かねえよ」



「ッ!?」



クロニアの螺旋光線を掌で弾いた。



「そんなドリルじゃあ、俺たちに風穴なんて空けられねえさ!」



勝てる気がしない。

クロニアの心が自然と思ってしまった。

何が違うのか分からない。同じ種族で同じ能力を使う。

しかし、違うのだ。

目の前に居る男と自分は明らかに違う。

それが何により生み出された力なのかは、クロニアも分からないわけではなかった。



「これが合体・・・・ですか・・・・・・」



合体。たったそれだけの事がこれほどの事が可能になるものなのか。

合体というものを目の前で初めて見たクロニアには分からない。

だが・・・



「いいでしょう。確かに私は人の生み出す想いというものの強さを見くびっていたようですね」



もはや素直に認めるしかない。

シモンの道をではない。シモンがただの口だけではないということをだ。


「扱う能力が同じだけで・・・私はあなたを分かった気になっていました。この事態はその油断が招いた結果です」


不意にクロニアの肩から力が抜けたような気がした。


「降参か?」


もう、これで戦意を喪失したのかとシモンは思った。

しかし、クロニアの目はまだ何かが残っていた。


「降参? 何を言うのです。私はあなたの力と想いを認めただけであって、道を譲ったわけではありません」


クロニアの強い目。それは覚悟の目だ。


「まだ・・・・これからです」


何かがある。

何かがまだある。

シモンはクロニアのその瞳から確信した。

クロニアはゆっくりと胸元に手をしのばせ、何かを取り出した。

そして取り出したものをシモンに見せるように前へ出した。

次の瞬間、シモンはクロニアが取り出したものに目を奪われた。



「それは・・・・・・・コアドリル!?」



そう、シモンと同じ螺旋族の象徴とも言うべきコアドリルだ。



「私が螺旋の力を覚醒させた時、お父様に譲り受けたものです。もう自分には必要ないからと・・・・」



「クロニア・・・何をする気だ?」



「私も覚悟を決め、あなたの・・・いいえ、あなた方の想いと力に敬意を評し、全力で戦うことを決めました」



何かがあるのではなかった。


何かが起こるのだ。


これからが恐らくは本当の戦いになるのだと、シモンは感じ取った。


そしてクロニアは告げる。



「お見せしましょう。地球の守護神の力を」



「何!?」



「物質の空間転移。魔法側の言葉で言うなら召喚や口寄せというのでしょうか・・・・」



クロニアの螺旋力の輝きと共に空間が歪んだ。いや、空間に亀裂が走り切り裂かれた。



「今こそ呼び出しましょう。我らテンジョウ家の力を・・・」



切り裂かれた虚空の穴は、時空間の歪み。


その向こうから何かが来る。


その時シモンは咄嗟に少し前を思い出した。


この感覚は以前も味わったことがある。


そうだ、あれは学園祭のときだ。


暴走したグレンラガンモドキにやられそうになったとき、今のクロニアと同じようにコアドリルが輝き、そして突如空間が切り裂かれ、その割れた隙間からグレンラガンが出現したのだ。


理論も理屈も無視して、銀河の壁すら越えてグレンラガンが自分の螺旋力に呼応して出現したのだ。


まさか・・・


そのまさかだった。


空間の亀裂から、巨大な足が、胴体が、やがては巨大な人型の何かが出現した。


いや、何かなどと言って誤魔化せない。


出現したコレは、間違いなく自分の知っているものだった。



「バカな!? これは・・・これは・・・」



ガンメンだ・・・



「これは・・・・ガンメン!?」



しかもただのガンメンではない。

真っ黒いボディに、巨大な一本角と尻尾があり、その存在はかつて見た、あのガンメンと非常に酷似していたのである。



「ラゼンガンかッ!?」



そう、ラゼンガン。

かつて螺旋王ロージェノムが使用した漆黒のガンメン。

クロニアが出現させた黒いガンメンを目にした瞬間、シモンはそう思った。それほど良く似ていた。

しかし叫んだシモンに、クロニアは少し首をかしげながら否定する。



「ラゼンガン? いいえ、違います。この守護神は父より・・・いえ、始祖より伝わる宝具。螺旋の力に目覚めたものにしか扱うことの出来ぬ禁断の究極兵器・・・・その名も・・・」



かつてアンチスパイラルと戦った銀河螺旋戦士の力・・・



「マジンガン!!」



螺旋の力に満たされた男に、螺旋族の切り札が牙を向く。



「マジンガン・・・・だが・・・こいつは紛れも無くグレンラガンタイプのガンメンじゃないか!」


そう、このガンメンでテンジョウ家の先祖は1000年前にアンチスパイラルと戦い、敗れ、この宇宙に逃れてきたのだ。

目の前の機体はただのガンメンではない。グレンラガンタイプのガンメンだ。

それだけで目の前のガンメンの性能が自分には手に取るように分かる。



「誇るのです、シモン。これを起動させたのは始祖の代から数えるほど・・・私も戦闘で使うのは初めてです」



目の前のガンメンが、どれだけの脅威なのかということも手に取るように分かる。



「マジンガンはあくまで象徴であって戦いのための武器として扱うことは極力禁じられていました。少なくとも我ら一族はこれまでどのような大戦や戦争や脅威にさらされてもこれを扱い、戦うことは避けてきました。螺旋の力の暴走は、世界の破滅を導くと教えられていましたから」



クロニアから語られるテンジョウ家の歴史。それはテンジョウ家がいかに厳格であり、掟を重んじていたのかを伺うことが出来た。

もし1000年前の螺旋族がこのガンメンをこの宇宙の地球に持ってきたとしたなら、悪用すれば何でも出来たはずだ。

螺旋力とグレンラガンタイプのガンメンを使えば、例え相手が魔法使いや魔族であろうと、何にも負けぬ力となったであろう。

しかしクロニア曰く、これは悪用されること無く封じられ、ただ螺旋の力を暴走させず、絶やすこともせずに今日までたどり着いたのである。

螺旋の力の暴走。それは紛れも無くスパイラルネメシスだろう。恐らく1000年前のテンジョウ家の始祖もアンチスパイラルとの戦いで、自分たちの宇宙の真実を知ったのだろう。

だからこそ力の暴走を防ぐためにガンメンを封じ、螺旋族も反映させないよう一族にだけしかその螺旋の力も与えなかったのだろう。

クロニアがどれだけその事を分かっているかは知らないが、シモンには少なくともそう感じた。



「じゃあ・・・それなら何故今使う。何故そんなものを今になって使う」



シモンがこれまでのクロニアからは腑に落ちず、思わず尋ねた。



「それは分かりません」



「・・・・・・・・・・何?」



「それは私にも分からないのです」



表情は無表情だが、少しクロニアに変化が見られた。

自分で自分の事が分からない。

それは機械のようなクロニアが見せた人間らしさに見えた。



「本当に分かりません。自分でも何故こうしてしまったのか・・・ムキになったわけではありません。このままでは勝てないと思ったからではありません。ただ・・・・・・・」



「ただ?」



「これが・・・こうすることが正しいのではないのか・・・あなたとはこの力で戦わなければならない・・・あなたを見ていると何故かそう思ってしまったのです」



その言葉を聞いた瞬間、シモンは笑ってしまった。



「はは・・・ははは、なるほど。良く分かるぜ、その気持ち!」



人から見れば、いい加減だと非難されるかもしれないクロニアの言葉を、とてもうれしそうに笑った。



「いいじゃないか、クロニア。・・・・いいと思うぜ、それで」



「シモン?」



「掟だとか理屈をゴチャゴチャ言われるより、考えるより気持ちが先に動いた。そっちの方が俺にはむしろ納得できるよ」



「・・・・・・シモン・・・・」



その言葉は、多くの物が圧し掛かっていたクロニアの肩の荷を、一瞬で軽くするような言葉だった。

掟やルールに厳しく、世界や人間社会を上から見下ろしていた人生を歩んできた彼女にとっては初めての感覚だった。

それが何故かうれしいと思ってしまい、顔に出るのを誤魔化しながら、クロニアは告げる。



「そうですか・・・・そう言われると私も助かります」



「・・・ああ、上等だ・・・」



天元突破のシモンはドリルを構える。


マジンガンに乗り込んだクロニアは足元のシモンに向かって構える。


二つの螺旋の力がぶつかり合うのである。


シモンは、まさかこんなことになるとは思っていなかった。


ただでさえ、自分の知らない螺旋族と戦う嵌めになったかと思えば、グレンラガンタイプのガンメンとまで戦わないといけないのである。


しかも今の自分にグレンラガンは無い。生身だ。


だが、生身だがそれがどうした。


受けてたってやる。


天を突き破るまで終わらぬ自分の戦いは、例え何が立ちはだかろうとも掘りぬけるだけだ。




「いきます!」




「来やがれッ!」




マジンガンに乗り込んだクロニア。マジンガンの目が紅く輝き、俊敏な動きでシモンに向かって来る。

姿かたちだけでなく、動きもまるでラゼンガンに酷似している。

ならば相当骨が折れるかもしれないが、天元突破となった今の自分には頼もしい仲間たちがいくらでも居る。

だからシモンはドリルを構える。

絶対に負けるわけにはいかないからだ。

何故ならこれは唯の螺旋族の闘争ではない。

1000年の時を超えて、銀河の絶望に敗れたかつての戦士の力と、銀河の絶望に風穴を空けた二つの力がぶつかり合うのである。

ならば負けるわけにはいかない。

かつての螺旋族たちに、まだ見ぬ明日とやらを見せるためには、ここで負けるわけにはいかないと、シモンは叫んだ。
最終更新:2011年05月13日 21:35
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