第百二十四話 今こそ決着をつけてやる!! 投稿者:兄貴 投稿日:10/11/06-00:41 No.4415
少年少女たちは、今正に死地に居た。
「「「「新生大グレン団・デラーーーックス!!」」」」
「がはははははは! この兄ちゃんたちもやるでないかい!」
「だが、某らの陣形は崩せまい」
鍛え上げた連携攻撃を繰り広げる豪徳寺たちだが、鬼たちの想像以上の素早い動きと集団戦法に戸惑っていた。
「ダメだ、こいつら多すぎるぞ!?」
「おまけに一人一々も結構強えぞ!?」
「デカイ鬼たちは体も硬い! 一撃で仕留めるどころか、受ければこちらが一撃でやられる!」
「ぬうううううう!!」
豪徳寺たちはシャークティの治療を行っている木乃香やアキラ達を守るように小さな円を作って、狭い陣形で戦っている。
体を寄せ合えば敵も一度に襲って来れる人数は3~4匹程度なのだが、四方八方から来る敵に、いつ破られてもおかしくは無かった。
「ひはははは、ほれほれ、さっさと鬼共倒さんと、どんどん来ますえ?」
挑発するように笑う千草だが、威勢のいいグレン団たちにも強がりを言っていられる余裕は無かった。
「うりゃあああああああ、グレンライトハリケーンキーーック!!」
「クリスクロス(聖なる十字架)!!」
敵は目算で軽く百を超える。
それどころか千草の術で無尽蔵にまだまだ召喚されていく。
美空たちは自由に駆け抜け、手当たり次第に敵を撃破していくが、終わりが見えぬ戦いに少しずつ焦りが見え始めていた。
「くっ・・・薫さんたちでも厳しいか・・・・しかしシャークティ先生とネギ先生が居ない今・・・」
「うむ、対抗できるのが拙者、刹那、古、美空殿とココネ殿では心許ない・・・せめて真名が居れば・・・」
刹那も楓もペース配分を考えずに大技を連発して何十体も鬼たちを打ち倒していくが、状況は悪い。
何故なら・・・
「どこを見ている!」
「くっ、貴様ら・・・」
「あなたたちは私たちが相手になります!」
「手強い・・・ッ!? フェイトの従者でござるか」
刹那や楓のように主力級の戦士には敵の主力級が相手になる。
焔や暦たちが前線へ出れば、いかに楓たちとて簡単に撃破できる相手ではない。
「どくアル!!」
「どかんです」
竜化した環とやり合う古。彼女までもが捕まってしまった。
白き翼の中でも大戦力とも言うべき彼女たちが足止めを受ければ、100を超える鬼たちも、天ヶ崎千草も、美空たちと木乃香たちだけで戦わなければならない。
(まずい・・鬼どもたちだけならまだしも、フェイトの従者に未だ底を見せぬ天ヶ崎千草・・・先ほどは皆も心を皆持ち直したが、このままではズルズルと行く・・・・お嬢様・・・・・・・シモンさん・・・・・)
これほどの状況で、ネギは戦えず、シモンも居ない。
そう、今正に彼女たちは死地に居るのだった。
「うわ・・・・・まずいじゃん・・・・・ピンチだよ・・・・」
「く~~、撃っても撃っても限ないよ!?」
邪魔にならぬよう裕奈もまき絵もアーティファクトを手に援護するが、焼け石に水程度の効果しかない。
「うう・・・せめて私が本物だったら、鬼全員一撃で戻せるのに・・・」
美空に鼓舞され勇ましく鬼たちを迎え撃ったものの、やはりノープランで乗り切れるほど戦場は甘くはない。
頼みのネギに関しても、千草が作り出した超鬼の予想を上回る強さに手を拱いていた。
二面四手のその鬼は、雷化したネギですら受け流せぬ有効な技を放ってくる。
「ウガウ・・・・雷・・・吹き飛べ・・・・」
「風属性!?」
「竜巻大地獄!!」
四本ある手の内の一本から、巨大な風が吹き荒れた。
風の刃が雷化したネギの肌を切り裂いていく。
「かっ・・・風の刃・・・・しかも・・・近づけない」
吹き荒れる暴風が、ネギを傷つけるだけでなく、ネギを超鬼へ近寄らせない。
船の中でユウサと対峙したとき、似たような技を受けたが、ネギは暴走状態だったとはいえパワーが桁違いだったために気合で吹き飛ばすことが出来た。
しかし今の状態で、しかもユウサの何十倍もの巨体を誇る超鬼の技の出力も自分が一度受けた技とは格段に違う。
巨大な風に煽られて雷が消失していく。
(雷では不利だ・・・・こうなったら・・・・)
暴風に深く飲み込まれたネギの存在は、超鬼でも確認できなくなった。
しかし良く目を凝らしてみると、暴風の中で黒き炎が燃え盛っているように見えた。
「ウガウ?」
「来れ深淵の闇!! 燃え盛る大剣・闇と影と憎悪と破壊・復讐の大焔・我を焼け・彼を焼け・其はただ焼き尽くす者(アギテー・テネプエラ・アピュシイ エンシス・インケンデンス エト・インケンディウム・カリギニス・ウンプラエ イニミー・キティアエ・デーストルクティオーニス・ウルティオーニス インケンダント・エト・メー・エト・エウムシント・ソールム・インケンデンテース ) 」
それは雷天ではない。
奈落の業火(インケンディウムゲイナエ)を固定して掌握する術式兵装。
「獄炎煉我(シム・ファブリカートゥス・アブ・インケンド)!!」
先ほどまでを雷の精霊と呼ぶのなら、今そこに居るのは火の精霊。
「ウガウ・・・・火?」
威力も性能も雷天大壮より遥かに劣るだろう。
しかしこの状況ならば話は違う。
風がより一層に炎を燃え上がらせ、その威力を何倍にも高めた。
燃え上がる炎を全てその身に纏い、炎に包まれたネギは回転しながら暴風の壁をぶち破り、超鬼へと突進する。
「炎熱突破!!!!」
しかし・・・・
「洪水大地獄!!」
「なっ、今度は水!?」
燃え盛る炎も、水の前には無力。
四手の内の空いている手から、今度はまったく違う属性の術を瞬時に放出する。
結界内を埋め尽くすような大洪水にネギは流され、攻撃を無力化されてしまった。
「そんな!?」
「ウガウガウガウ! 俺強い!」
その巨体ゆえ鈍重だと思えば、とんでもない。
こちらの放つ技に対してキッチリと有効な手で返してくる。
さらに巨体のパワーをそのまま活かしているのだ。
これほどの化物とこんな序盤でやり合うなど、ネギも想定外のことだった。
(この鬼・・・・術のバリエーションが豊富だ・・・まずい・・・早くしないと皆が・・・)
焦れば焦るほど雑になり、全てが相手の思う壺である。
しかし、いくら仲間を信じるとはいえ、今のネギに焦るなというほうが無理である。
「ひはははははは! 鬼共! ガキ共を潰せ、殺せ、なぎ払え! 屍の山に小便ぶちまけ、滅び行く世界と共に消し去ってまい!! ひはははは、死ねー! 死ねーッ! 今すぐ死なんかいーーッ!!」」
この状況を千草はただ機嫌よく笑った。
「くっそー、あのおばさん言いたい放題言いやがって! あんたの両親が死んだこととネギ君たちは関係ないじゃん! それに京都の件だって完全な逆恨みじゃんかよ!」
「ひははははは、関係ないやと? んなわけあるかい! そのクソガキの父親が中心となった大戦でウチは家族を失ったんや! 親の因果は子の報いや! 京都であんたらが余計な邪魔せえへんかったら、ウチはあの方に見放されなかったんや! そや・・・全部・・・全部・・・ひははははは、アンタらの所為やァァァァ!!」
「だ~、くそっ、大人がネチネチと!」
「黙らんかい! はよう、そのガキも仕留めんかい!」
千草は非難する美空の言葉を全て跳ね除け、鬼たちに命令して美空とココネを襲わせる。
主の命令に逆らわぬ鬼たちは、集団で美空とココネに襲い掛かる。
しかし・・・
「うりゃあああ、どけええええ! 魔法の射手(サギタ・マギカ) 火の三矢(セリエス・イグニス)!! 集束(コンウェルゲンティア)!!」
美空は初級呪文を唱え、火の魔法を両足に収束し、その燃える足で鬼たちを蹴り飛ばす。
「燃える女の火の車キィィィィィック!!!」
炎と一体となって蹴りだした美空の攻撃の前に鬼たちも溜まらず蹴り飛ばされ、美空はそのままどんどん蹴り続ける。
「オーッ、やったろうじゃないっすかァ! その顔面にもう一度蹴り入れてやるからね!」
折れぬ美空の心を前に、豪徳寺や刹那たちもまた感化される。
そうだ、やったろうじゃねえかと、暴れ続ける。
そんな様子を結界内の鬼も、感心したように頷いていた。
「ウガウ・・・・お前ら強い・・・でも俺もっと強いど」
「ッ!?」
「スゴイのやる。ちょっと驚け」
水を浴びて術式兵装が解けて生身の肉体がむき出しになったネギに対し、超鬼は四手の一つ一つに違う属性の力を集めていき、その四手を胸の前で一つに合成させた。
その名も・・・
「四連大地獄!!!!」
「合成呪文!?」
異なる力の集合体は、相手の存在そのものを消滅させるかのごとく魔に溢れていた。
「直撃はまずい!? でも・・・・」
だが、どうやって避ける?
結界内に封じ込められている以上、逃げ場はない。
全てがループして元の場所に戻る。
しかしこの時、ネギは閃いた。
「無限ループ? ・・・・・・そうだ!」
先ほど、自分が結界を破壊しようとして前方に向かって放った雷がループして後方から飛んできて、自分に直撃したことを思い出した。
「こうすれば・・・・・きっと!!」
ネギは超鬼の攻撃の直線状に立ち、ギリギリのところで技を回避する。
ネギならばそれぐらいは容易い。
そして自分に当たらず通り過ぎていく超鬼の技はやがて・・・
「ウガウ? ウガウガウガウガァァァァァ!!??」
ループして超鬼に戻っていく。
「んな、アホかい!? 結界の性質ぐらい見極めんかいボケナス!!」
超鬼の技が強ければ強いほど自分に帰ってきたのだ。
超鬼は溜まらずに奇声を上げ、その様子に千草も呆れて怒る。
だがその時ネギは、既に次の動作に入っていた。
「うおおおおおおおおおおおお!!」
「ウ、・・・ガウ?」
「超鬼! ガキが来る! ちゃんと見んかい!」
既に遅い。
即座に千の雷を纏い、ネギはこの勝機を決して逃さない。
「解放! 雷神槍! 巨神ころし(ティタノクトノン)!!」
先ほどまで無音だった雷鳴がここに来て鳴り響き、鬼のボスをここに来て圧倒し始めた。
「なっ・・・粘らんかい、超鬼!?」
「ウガウウウウウウ!? イデエエエエエエエエエエ!?」
「超鬼!? くっ、なんちゅーガキや!」
ネギの決着はまだつかないものの、その勇姿はちゃんと仲間たちの目に焼きついている。
よしっ、いけるぞ、と誰もが心の中で思った。
だが・・・
「ちい、けったいな力やな・・・・しかし魔法でも術でも、ドーピング系にはリスクが常に付きまとう。本来人間が肉体を痛めぬようセーブして体を動かしているのを無理やり動かしているんやからな。あんま長続きはせえへんやろ」
千草は一人この状況を眺めながら、思った以上に取り乱してはいなかった。
「大したガキやと言いたいところ何やけど・・・・・・・・すまんな~」
そして動じないどころかまるであざ笑うかのように、造物主の掟を取り出し、術を唱える。
「千鬼夜行!!!!」
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
微かに見えた希望を完全に消し去るかの如く、これまで相手にしていた数百の鬼の、更に十倍以上の兵力が、この空間内に埋め尽くされた。
「・・・・・・・・・・・・・がっ・・・・う、うそだろ・・・」
「そ、・・・・そんな・・・・・」
何体の敵がいるかなど、もはや数える気も起きない。
結界外に居る生徒たちの前に、これまでの何十倍もの敵が出現したのだ。
「我ながら呆れますなあ・・・・生まれ変わってもこないなガキ共にいつまでも時間を食ってるんやからな・・・・・だが・・・これで終幕や」
この世には、神も仏もないのかと思わせるほどの無情な光景。
それはネギの活躍を見て、希望を見出した瞬間に訪れた絶望ゆえにショックは大きい。
「そんな・・・・・そんな・・・・・」
「アカン・・・・・・」
のどかや木乃香たちは、思わずペタンと床に腰を着いてしまった。
四方八方埋め尽くされる鬼、鬼、鬼、鬼、鬼、鬼、鬼の大群れ。
豪徳寺たちにももはやいつものような威勢も無く、何故か悔しそうに床を思いっきり叩いた。
「・・・驚いたにゃ・・・」
「これほどの召喚術を使えるとは・・・・だが、これで終わりのようだな」
千草の術を前にして、共同戦線を張っていた焔たちも唖然としながら、ホッと一息ついた。
もう誰の目にも明らかだったからだ。
この状況が覆ることなど、どんな奇跡があろうともありえないからだ。
「皆さん! 今・・・・今すぐ僕が!」
この絶対的絶望の状況を見て、ネギが慌てて結界を破壊して外に飛び出そうとする。
しかし・・・
「大妖力波!!」
「えっ・・・・・・・・!?」
背後から極太のレーザー砲のような攻撃がネギに襲いかかり、ネギの肩口を貫通し、ネギは大量の血を流した。
「そ、・・・・そんな・・・・・」
完全に気を取られていたネギは、雷化で回避することも出来ずに直撃し、胸に大きな穴を開けて倒れた。
「ネ、・・・・・・・ネギ君・・・・・ッ!?」
それはこの場に集った抗うものたちの心に、止めの一撃となった。
「い、・・・・・・いや・・・・・」
「ネギくーーーーーーーーーーん!?」
涙とともに溢れ出す少女たちの悲鳴。
その悲鳴が響き渡る中、結界内の爆煙が晴れ、その中から激しく肉体を傷つけられた超鬼が姿を再び現したのだった。
「ウガウガウガウガウガ!!!! イデーよ! イデーよ!」
ネギの怒涛の攻撃を喰らい続けたにもかかわらず、超鬼は生きていた。
その身は既にボロボロだが、まだ消滅していなかったのだ。
正にギリギリといったところだろう。
だが、そのギリギリの差が決定的な絶望を作り出し、誰もが声を失ってしまったのだった。
「あの出血・・・・まずい・・・・しかもあの超鬼・・・この兵力差・・・・・・・・・」
ここまでなのか?
楓も・・・
「くそ・・・・・・・・・・なんということだ・・・・・」
刹那も・・・
「はあ・・・はあ・・・・ネギ坊主・・・・・」
くーふぇも、その瞳に焦燥が漂っていた。
「み、ミソラ・・・・・」
震える手で美空の裾を引っ張るココネ。
「ダメだよ・・・・ダメだよ・・・諦めちゃ・・・・諦めちゃダメだよ・・・まだ・・・まだ大丈夫だよ!」
言っている美空の言葉にも、力強さが無かった。
それは気合でも何でもなく、強がりにも聞こえなかった。
だが、諦めたくないというのは本心だ。
しかし・・・
「残念やったな~、嬢ちゃんたち。坊やは死ぬ。そしてあのドリル男も今おらん。もう、完全に終わりやな」
言われなくても分かることを、ダメ押しとばかりに千草は容赦ない言葉を投げかける。
そしてそんな言葉にも誰も反論できない。
真の恐怖や絶望の前に人は悲鳴を上げない。むしろ言葉を失うのだ。
誰も言葉を発することは出来ないのだ。
誰もが無言で諦めかけていた。
「・・・・・・一つだけ・・・」
だがその時・・・
「一つだけ・・・・・・・一つだけこの状況を打破できる方法があります」
「「「「「ッ!?」」」」」
それはほんの僅かな光明。
発したのは偽アスナ。いや、口調を考えれば栞だろう。
彼女は木乃香たちにしか聞こえない程度にボソッと呟いた。
だが、栞は確かにハッキリと言った。
「ちょっ、アスナ・・・それってどういう・・・」
「それに何かアスナっぽくないよ?」
「裕奈さん、まき絵さん、その話はまた後で・・・とにかく今はこの状況をどうにかすることが先です」
栞のことを知らぬ裕奈たちは、突然アスナが変になったのではないかと驚いたが、栞の表情は真剣だ。
「何コソコソやってるんや、観念せえ!!」
「その首とったどーーッ!!」
だが敵とていつまでも待っているわけではない。
「し、しまっ・・・・お、お嬢様アアアアアア!!」
僅か数人の学生相手に一気に飛び掛ってくる。
「ッ!?」
「あ、危ない!?」
栞の作戦を聞く前に襲われ、もはやこれまでなのかと皆が目を背けようとした。
「そうは・・・」
「させないアル!!」
「うりゃああああ!」
「ダメ!」
だが、仲間の窮地に割って入った楓、古、美空、ココネ、そして刹那がそれを阻む。
さらに・・・
「風花・風障壁(フランス・パリエース・アエリアーレス)!!」
寸前のところで自分たちの前に出現した竜巻の障壁が鬼たちを蹴散らし、守ってくれた。
「はあ・・・・はあ・・・・危ないところでした」
この呪文を放ったのはシャークティ。
「シャークティ先生! 気づいたん!?」
「ええ、痛みはまだありますが、傷は収まりました。木乃香さんのお陰で」
「うおお、シャークティの姐さん!! 無事で良かったぜ」
木乃香の膝枕からシャークティが目覚め、一同はホッと僅かに安堵する。
「ふう、しかし・・・お陰で助かったと言いたいが、寝ておいたほうが良かったかもしれぬでござるな」
楓は半分の安堵、そして半分が引きつった笑みで、シャークティに告げる。
その言葉を聞いたシャークティは竜巻の外の光景を眺めながら、ため息をつく。
(こちらのメンバーは刹那さん、楓さん、くーふぇさん、美空、ココネ、薫さん、達也さん、慶一さん、ポチさん、裕奈さん、まき絵さん、大河内さん、千雨さん、のどかさん、木乃香さん、そして私・・・・多少無茶できるメンバーとは言えますが・・・せめてネギ先生かシモンさんが居れば・・・)
比べるまでもない圧倒的な兵力差を前に、シャークティも何も考えが浮かばない。
だからこそ、先ほど策があるとほのめかした栞にすがるしかなかった。
「ルーナさんでしたね・・・・先ほど耳元で聞こえました。・・・この状況・・・・・あなたはどうやって打破するおつもりですか?」
皆が栞に視線を移す。
「そ、そうだよ。アスナ・・・・どうやって・・・・」
「私らに出来ることなのかよ?」
千雨たちも疑り深い目で栞を睨む。
事情を知っているものからすれば、栞は元々敵。
本物のアスナを攫った行為に加担した女である。
そんな彼女が自分たちのために、どのような手段を考えたのか。
「それは・・・・・皆さん・・・耳を貸してください」
「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」
竜巻の中で密集し、栞の作戦に耳を傾ける一同。
そして・・・
「「「「「「・・・・・・・えっ? ・・・・・ええええええええええええええッ!!??」」」」」」
その驚きの声は竜巻の外にまで響いたのだった。
栞の策を聞いた者たちは皆顔を引きつらせていた。
「バ、馬鹿じゃねえか! そんなこと、この面子で出来るはずねえだろッ!! 間違いなく死ぬぞ!?」
栞を非難する千雨の声が響いた。
「そ、そうですよ・・・ネギ先生やシモンさんも居ないのにそんな作戦・・・・」
のどかも怯えながら呟く。
「その作戦・・・確かに成功すれば形成は逆転します。しかし・・・敵の力を考えると、成功率は限りなく低いですよ?」
シャークティもまた、冷静にその案を分析し、暗い顔をする。
「しかし皆さん・・・このままこの障壁が崩れれば、皆死んでしまいます。ネギさんもです。ならば、賭けに出てもいいのではないですか?」
「バカ言ってんじゃねえよ。テメエは元々敵だろうが、何偉そうにそんなこと言ってんだよ!」
千雨が栞の胸倉を掴みながら食って掛かる。そんなことは無理だと、乱暴に栞に叫ぶ。
アスナらしくない言動、千雨の叫び、そして絶体絶命であることに変わらぬこの状況。
少女たちは一体どうすればいいのか分からなかった。
だが・・・
「でも・・・・やるしかねえんだよな」
「確かに」
「だな」
「ウム」
豪徳寺たちが顔を引きつらせながらも笑った。
「お、おい・・・アンタら・・・この女の作戦に乗るっていうのかよッ!? 出来るわけねえだろ!」
豪徳寺たちの言葉に千雨は何を馬鹿なことをと非難する。
無理に決まっていると決め付ける。
しかし・・・
「それでもやるしかねえんだろ、ちうちゃん」
「なっ!?」
「安心しろ。俺たちは大丈夫。そして君たちも大丈夫だ。なんてったってあの学園祭で火星軍団と戦った俺たちが手を組むんだぞ?」
「バッ、あんな脱げビームのヌルイロボットとの戦いと一緒にするんじゃねえ! 今度のリタイアは・・・・死ぬんだぞ?」
死・・・その言葉を聞いた瞬間、裕奈たちも震え上がった。
そうだ、今度は学園祭のときのようなゲームオーバーとはレベルが違う。
やり直しの聞かない「死」なのであ
ネギが居る。シモンが居る。そのことで心のどこかが安心し、自分たちは大丈夫だと思っていたが、これは戦争なのだ。
そして今から行う作戦は、失敗すれば死に繋がるのである。
こんなこと、つい最近までただの中学生だった彼女たちに今すぐ覚悟しろとなど言えるはずが無い。
「・・・誰だと思ってやがる・・・」
しかし・・・
「あん?」
「あなたたちは先ほどそう言いました。ではあなたたちは一体誰なんですか?」
「・・・それは・・・」
「シャークティさんも先ほど言っていました。あなたたちは・・・世界を賭けた戦争をしているのですよ?」
栞の言葉に千雨は言葉を返せない。
「仲間の血が流れる覚悟・・・自身が傷つく覚悟・・・勝ちを得るための覚悟・・・全ての覚悟を決めて少なくともフェイト様は・・・焔たちはあなた方と戦っています。道があるとフェイト様に・・・彼女たちに・・・そして私に示すためにあなたたちは戦っているのではないのですか?」
それは栞の願いでもあった。
「やるからには命懸けで証明してください。フェイト様に、焔たちに・・・私たちに・・・」
仲間から離れ、ネギの言葉を信じると決めた彼女が、自分の選択が正しかったのか、それとも間違っていたのかをこの場で証明して欲しいという願いも込められていた。
そして千雨たちも言い返せない。
例えノリでも、巻き込まれた形だろうと、結果的には今自分たちは自分たちの意思でここに居るのだ。
「あ~~っ、くそ~~」
「千雨ちゃん・・・・」
「ちっくしょ~、ほんと~にどいつもこいつもバカばっかだよ」
涙ぐんで不貞腐れながら、千雨はソッポ向いた。
普通の中学生なら当たり前の葛藤に不安や弱音。しかしそうも言っていられない。
「分かりました。しかしその作戦を実行するのならお嬢様たちのグループには私か楓のどちらかを入れたほうが・・・」
「いえ・・・こちらの主力でもあるあなたたちは真っ先に警戒されます。それでは意味がありません。やはりここは最初に決めたとおり・・・」
「し、しかし・・・」
「大丈夫や、せっちゃん」
「お嬢様・・・ですが・・・これは・・・」
「大丈夫やて。ウチだって・・・いつまでも守られてばっかは嫌やからな」
そう、彼女たちはもう普通ではないのだから。
「決まり・・・・・・・でござるな」
楓が確認するように全員を見渡すと、様々な不安や思いがありながらも、最終的には全員頷いた。
この状況をひっくり返す命懸けの作戦を決行するのだった。
「そろそろあの竜巻が消える頃やろ。連中の顔が出たら鬼共、一気に奴らを引き裂くんや」
竜巻の中の状況が分からない千草は、ニタニタしながら終わりのときを待つ。
恐らくあの竜巻の中で少女たちが恐怖に怯えているのだろう、涙を流しながら助けを請うだろうと、妄想を膨らませている。
「ふん、ネギ・スプリングフィールドと穴掘りシモンが居なければこんなものか」
「うん、これでようやくフェイト様にいい報告ができるね」
自分たちの勝ちだと、焔たちも疑っていなかった。
「そろそろか・・・」
「ふふん・・・待たせよってからに」
異形の鬼たちも自分たちを近づけさせない強力な竜巻が鳴り止むのを今か今かと心待ちにしている。
そしてその風がついに鳴り止むと思った、その時だった。
「消し飛びなさい」
竜巻の向こうで、シャークティがロザリオを構え、魔力を開放していた。
すると何十もの光の束がシャークティのロザリオに集中し、大きな光を出す。
そしてロザリオに溜められた魔力が限界地点までいき、シャークティは全てを解放する。
「グランドクルス!!」
魔力が強大な十字架の形に開放され、直線状に立つもの全てをなぎ払い、何千と居る鬼たちの大軍を真っ二つに引き裂いた。
「なっ、西洋魔術師かい!?」
「まだあんなのがおったんかい!?」
シャークティの極大呪文に尻込みした鬼たち。
いかに自分たちが大軍とはいえ、いきなりこれほどの破壊力の呪文を見せられたら当然の反応。
シャークティ自身も今の呪文でほとんど力を使いきり、方膝をつくが、ここからが作戦のスタート。
「さあ、今です! 道が開けました! この道を行きなさい!」
「「「「「「「「「「オオオオオオオオオオオオーーーーーーッ!!!!」」」」」」」」」」
喉がつぶれるまでとにかく叫んだ。
やけくそとばかりに皆が叫んだ。
絶望の中で足掻いて足掻いて見出した道。
「アデアット!!」
道を決して消さぬよう、皆が拳に力を入れていく。
「グレン団の皆さん! アスナも裕奈もまき絵も! 今すぐお尻を突き出してください!!」
「「「「「「お・・・・・・・おう!!!!」」」」」」
「ここがウチの能力の使いどころや! 濃縮還元ドーピング魔力スープ! お尻にブスッと刺して注入します!!」
アーティファクトの巨大注射針を出す亜子。
巨大な注射で誰もが待てと言いたいところだが、今の彼らは違う。
「「「「「「バッ・・・・・・・・バッチ来いやああああああああああ!!!!」」」」」」
皆の尻に巨大注射針を刺していく亜子。
これが亜子の手にしたアーティファクトの能力。味方の能力を何倍にもアップするサポート能力である。
手順として、巨大な注射を尻に刺すという恐ろしいものがある。
「なんやあの、おっそろしいのは?」
「ケツに注射やなんて、マニアックな・・・・・」
鬼たちもこの光景に同情の眼差しで豪徳寺たちに手を合わせた。
だが、一見ふざけているようで・・・・
「「「「「「ウルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」」」」」」
「「「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!??」」」」
結果的には予想以上の効果が起こったのだった。
「な、なんにゃ!? 鬼たちが吹き飛ばされたにゃ!?」
「これは・・・雑魚たちの雰囲気が変わったぞ!」
強烈な掛け声と共に、鬼たちの群れが一気に吹き飛ばされた。
「ちい、今度は何やガキ共!?」
その状況に、暦たちも驚きながら視線を移す。
するとそこには、体内から力を溢れさせて興奮状態の豪徳寺たちが暦たちを睨んできた。
「「「「フゥ~フゥ~・・・・・クワッ!!」」」」
「にゃ!?」
シャークティが巨大呪文で作り出した道。その道の奥には千草たちが待ち構えている。
その道が直ぐに閉じる前に、彼らは走り出した。
「よっしゃーッ! こっから先はノンストップで突っ走るぞ! 全員突撃だァァーーーーッ!!」
「「「「「「オオオオオオオオオオッ!!」」」」」」
「シャークティ先生。私の背中に」
「申し訳ありません、大河内さん。生徒におぶってもらうなど」
「大丈夫です。私は力持ちだし、先生と契約していない以上一番役立たずですから」
「突き進めええッ!!」
真っ二つに分かれた道のど真ん中を、美空や豪徳寺たちが先頭になり、猛ダッシュで駆け抜ける。
ドーピングとは一種の興奮剤としての役割もある。
常に落ち着かない興奮状態のグレン団、豪徳寺、山下、中村、ポチの四人には相当な効き目が見られる。
通常の彼らからは考えられぬ破壊力と馬力で、真横から道を閉ざすためにすり潰そうとしてくる鬼たちを力ずくで蹴散らし始めた。
「うおおお、なんかこいつら強くなったで!」
「薬に頼るとは人の風上に置けない奴らめ!」
「この無法者共がァ!!」
薬を打って変わってしまった四人の力に、鬼たちもケタケタと笑いながら正面から来る。
だが、ここに居るのは四人だけではない。
「神鳴流・雷光剣!!」
「神珍鉄自在混!!」
その勢いは中々止められるものではなかった。
「にゃにゃ、これは!?」
「馬鹿が! やけになったか!?」
それはもはや特攻ととってもおかしくない行為に見えた。
だが・・・
「ふふ・・・そうか・・・・直線状に一気に駆け抜けて、術者であるウチに狙いを定めたか・・・確かにウチを倒せば鬼どもは消えるが・・・・甘すぎるで!」
「いや、しかし全員の意思を一つにして錐状に直線突破されては・・・」
「ふん、くだらん」
即座に美空たちの考えを読み取った千草は、鬼たちに命令する。
「ほな、すり潰せやァ!!」
千草の指示に従い、鬼たちが真っ二つに裂けた道を閉ざしていく。そしてそれは一気に美空たちを飲み込む形になる。
当然だ、元々兵力に差がありすぎている。
だが、道が閉ざされたと思ったら、美空たちは笑った。
「さて、こっからだね。そんじゃ・・・まあ、刹那さんに楓ちゃんに古~」
「うむ」
「美空さんたちも、御武運を」
まるでこうなることが分かっていたかのように。
そして・・・・
「よっしゃァ! 散会ッ!!」
「なっ、・・・・なにィ!?」
最終更新:2011年05月13日 21:43