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126-きっと、すごい事が起きたんだと思うよ

第百二十六話 きっと、すごい事が起きたんだと思うよ 投稿者:兄貴 投稿日:10/11/12-20:31 No.4417
鬼神兵というものがこの世界に存在する。

身の丈は人とは比べ物にならないほど大きく、全長は数十メートルに及ぶ。

ユウサの手によって作り出された鬼神は、魔法世界人たちが良く知る鬼神兵と姿かたちは酷似していた。

唯一違うとすれば、そのサイズ。


「な、・・・・なんて大きさだ・・・」


クルトの呆れと恐れが入り混じった呟きは、この場に集った全ての者たちの思いを代弁していた。


「い、いくらなんでも・・・」


「あんなの・・・見たことねえ・・・・」


そう、でか過ぎるのだ。


「な、・・・・なんということじゃ・・・」


「クソッたれが・・・・人を・・・馬鹿にしやがって」


かなり距離が離れているというのに、下から上まで首を思いっきり見上げなければ全長が把握できない。

自分たちも地上から相当な高度に居るというのに、T・鬼神(テラ・キシン)のはっきりとした大きさが分からなかった。

本当にこんなものが動くのか?

ただの見せ掛けではないのか?

そんな僅かな期待を打ち砕くかのように、T・鬼神の頭頂部に乗るユウサは、世界に向けて叫ぶ。



「さあ、デビュー戦だ。始まりも終わりも全て派手に振舞うがいい」



天まで届く頭頂部に乗り、ユウサがT・鬼神に指示を出す。

命令を受けたT・鬼神はただ言われるがままに、瞳を光らせ、その巨大な口を開けた。


「・・・・・何を・・・・ッ!?」


ただ口を開けただけ。それだけでクルト達は理解した。


「全艦緊急離脱! 急いでこの空域から退避してください!」


全艦隊に向かってクルトが指示を出すが、T・鬼神に圧倒されている戦士たちは直ぐに反応できないでいる。



「吹き飛べ」



ユウサがポツリと呟いたと同時に、T・鬼神の口から巨大な破壊光線が一直線に放たれる。



「早く!!」



クルトの指示があと数秒遅れていたら、どうなっていたか分からない。

陣形もクソもなく、四方に全艦隊がバラけて飛び、光線を回避した。

だが・・・



「「「「「「「「「「なァッ!?」」」」」」」」」」



今の一瞬で消えてしまえば気持ちは楽になったかもしれない。

直線に突き進む破壊光線は、浮遊する巨大な岩島の数々を消滅させ、大地を引き裂き、地平線の彼方に巨大な爆発雲を巻き上げた。


「た・・・・・大陸が・・・・割れた・・・」


タカミチは咥えていた煙草を思わず口から零してしまった。

まるで教科書に載っている原子力爆弾が爆発した写真と同じような巨大なキノコ雲。


「・・・・・お・・・・終わった・・・・・・」


その言葉を誰が口にしたのかなど、誰も聞こうともしないし、怒ることもしない。

大丈夫だ。

例えどれほど絶望的な光景を見せられても、前を走る希望たちの背中を見ていると、力が湧き、大丈夫だと思えた。

自分たちは大丈夫だ。

この世界は絶対に守ってみせると思い続けることが彼らの心の支えだった。

しかし、もう誰もが同じことを思っていた。



「もう・・・・・・どうにもならん・・・・」



もうどうにもならないのだと、足掻く気力も消え失せたのだった。

火力も魔力も砲弾も体力もまだ底を尽きていないというのに、彼らの心は完全に折られた。

この状況下で抗おうとする者もなく、魔法世界連合軍はただ肩を落として消滅の時を待っていたのだった。






どうにもならないと感じたのは宮殿外だけではない。


「ネ・・・ネギ先生・・・・・」


宮殿内部のネギたちも同じだった。


勝利を掴んだと思った瞬間、現われたデュナミス。


彼はわけの分からぬ言葉を繰り返しながら狂い、そして宮殿内部の至る所、そしてネギたちを取り囲むように竜種や悪魔などの巨大召喚魔を見渡す限りに召喚した。


「シャ、シャークティの姐さん・・・このデカブツどもの数はどれくらいだよ・・・」


「数も何も・・・・・・見渡す限りに埋め尽くされているため、計測不能です」


「う、ウソでしょ・・・」


ネギたちも、新生大グレン団も、そして事態の飲み込めぬ焔たちも、ただただ愕然とするしかなかった。


「ほ、焔・・・デュナミス様・・・・どうしたの?」


「わ、分からん・・・分からんが・・・デュナミス様の力が増幅されている。どういうわけか知らないが。そしてデュナミス様は一度に何千もの召喚魔を召喚できる・・・・」


本来、暦たちにとっては味方であるはずのデュナミスの突然の凶行。そしてこの新手の大軍。

焔は今一度、白き翼と新生大グレン団のメンバーを見る。

激しい連戦を繰り返して疲弊しきった今の彼らにこの大軍は、完全に心をへし折るものとなった。


「どういうわけかは分からんが・・・・フェイト様とこいつらが話をすることはもうない・・・・この戦いは終わった」


何とも後味の悪い結末だと、焔も少し不満そうに呟いたのだった。


「くっ・・・・・来るでござる!」


「どうするアル!? みんな相当へばっているアルよ!」


「ウ、ウチ一人じゃ回復魔法が追いつかん!」


どうするというのだ?

豪徳寺や美空たちも先ほどまでの戦いで相当体力を消耗し、怪我もしている。

木乃香一人の回復魔法ではとうてい全員を診ている時間など無い。


「か、楓! お前のアーティファクトに皆を隠すことは出来ないか!?」


「拙者らがここから脱出できねば意味が無いでござる!」


「やばいよ、来るよ!!」


獲物に狙いを定めて飛び掛ってくる傀儡悪魔たち。

今から始まるのはもはや戦いではない。

一方的な虐殺である。

もはや気合だと叫ぶことが出来ぬほど全員の心は押し潰されていた。

それは誰もが同じ想いだった。


「ネ・・・ネギせんせ~」


「ネギくん・・・」


涙を浮かべる、のどかやまき絵。

素人の彼女たちですら、もうどうしようもないのだと思っているのだ。頭のいいネギならば尚更なはずである。

しかし・・・



「随分と容赦ない絶望じゃないですか。でも、それでこそ無理を通す価値があるというものです!」



ネギは笑った。


「ネ、・・・・ネギ君・・・」


「先生・・・」


それは強がりかもしれない。

いや、実際強がりだ。



「どうしました、皆さん? 無理を通して道理を蹴っ飛ばす。そんな人たちの背中を追って僕たちもここに来たんですよ? それに約束したじゃないですか」



無理から笑っているのかもしれない。

しかし・・・



「仲間は絶対に一人も死なせません!」



諦めて、楽をする気は無いようである。

ネギとて内心では死と失うことへの恐怖が心を襲おうとしていた。

しかし踏みとどまる。

きっと、周りが絶望しているこういう状況だからこそ、自分が率先して抗う背中を見せなければならない。皆が後から続くように、駆け抜けなければならない。


(そう、・・・あの人ならきっと・・・・)


シモンならきっとそうする。

ネギのそんな気持ちを、彼女たちも瞬時に察した。


「くっ・・・・刹那!」


「ああ、先生は諦めてはいない! そして私たちもだ!」


「美空!」


「うん、・・・やってやろうじゃんかァ!! 諦めたらそこで試合終了だって、どっかの偉い人が言ってたもんね!」


「・・・うん・・・うん! 私もやるよ! 一緒にネギ君たちと戦うよ!」


少しでも大声で叫ばねば、直ぐに押し潰されてしまう。それほどまでにネギたちは追い詰められているのだが、潰されることに抗うと決めた。


「ははん・・・せやけどどうするっちゅうねん。・・・そんな言葉で乗り越えられるほど甘くないから、現実から夢に皆逃げたくなるんや」


暴走したデュナミスの召喚した傀儡悪魔たちは、敵味方など何も無い。その巨体で強力な爪やブレスを中心に、一斉にネギたちに群がってきた。



「いいですか、ここからが僕たちの真骨頂です! 策がなくても気合はあるはずです! ならばこの絶望に気合で道を作ってみせましょう!!」



「「「「「「「「「「オオオオオオオオオーーーーーーッ!!!!」」」」」」」」」」



ネギたちは中央に陣取り、その全てを迎え撃つ。



「術式装填・魔杖雷鉾槍化!!」



その手に掲げるのは、かつての歴史を作った偉大なる父の杖。その杖に、ありったけの自身の魔力を装填し、一気に振り払う。


「オオオーーッ!! 一気に何百もデカブツが消えたぞ!」


「だが、敵が多すぎる! 木乃香ちゃん、急いで俺たちの治療も頼む!!」


「は、はいな! もうちょいや。まずはシャークティ先生からや」


「戦えぬものや怪我人は今すぐ拙者のアーティファクトの中に。治療が済み次第急いで援護に来て欲しい!」


「それまでは我々が、敵の数を減らして活路を作ります!!」


士気が上がる。


「無駄だ・・・今更士気でどうにかなるなど・・・」


「焔!? 何かデュナミス様の傀儡悪魔たち、私たちごと襲ってきそうだよ!?」


「なっ、なに!? デュナミス様! これは一体どういうことですかッ!?」


デュナミスに叫ぶがデュナミスは相変わらず狂ったように笑い続けるだけ。どうやら完全に敵味方を見失っているようだ。


「一時休戦だ。あなたたちも手を貸して下さい。このままではフェイトに会うことなく死ぬぞ?」


「ぬっ・・・ぐぐぐ・・・」


重傷者や戦えぬものを差し引いて、今この場に残っているのはネギ、刹那、楓、古、美空、ココネ、栞、焔、環、暦、そして・・・


「はん・・・まあ、もうちょい長生きしたくなったからな」


「千草さん!?」


「来るで、・・・坊や!」


千草を含めて、この状況を打ち破るべく足掻きだしたのだった。

だが、そんな彼らの心を、そして世界を見下しながら、この全てを作り出した鬼は、高らかに笑っていた。






「ひはははは・・・ひはははは・・・・ひははははははははははははははははははははは!!」




大陸に発生した巨大なキノコ雲。

これまで築き上げてきた全てのものを一瞬で無にする冷酷なる破壊。


「ひはははは、いいぞ! 大地を砕き、世界に爆音と悲鳴を響かせろ!」


それはただの殺戮と破壊だ。


「偽りの海を血で染めて、偽りの空を絶望の闇に閉ざしてやれ!!」


T・鬼神が腕を振り上げ、手を前に突き出す。そしてその規格外の大きさの10本の指から、レーザー砲を世界に向けて放つ。

大地が砕かれ星が傷つく。

愛すべき世界。大戦からようやく掴み取った平和な時代。その全てをただ一人の狂った鬼に蹂躙されていく。


「や・・・やめろ・・・・やめてくれ・・・・」


クルトは岩島に両膝を着き、その瞳から思わず涙をこぼしながら懇願した。


「もうやめてくれ、ユウサ・メイゴク!! これ以上この世界を弄ぶな! この世界は・・・この世界はこの世界にとっての紛れもない現実なんだ!!」


言ってどうにかなる相手ではないことなど誰にでも分かっている。だが、クルトはそう叫ぶしか他に何も出来なかった。


「ひははははは、どうせ元々滅ぶ世界だろうが!!」


山よりも、空よりも巨大な絶望に、もはや涙を流すしかなかった。

巨大な魔力溜りが魔法世界に発生し、天空を流れる魔力の川は、世界各地で観測されていた。その異様な光景に誰もが空を眺め、不安に心が押し潰されそうになった。

そしてその数時間後、世界を何周もする巨大な熱風とキノコ雲が出現したのだ。

もう、それだけで世界中全ての人々は察した。

オスティア、アリアドネー、ヘラス、そしてメガロメセンブリアに至るまで・・・


「せ、先生・・・・」


「こ、これは・・・オスティア方面ね・・・一体・・・コレットたちはどうなっているの?」


人々は・・・


「に、逃げろ・・・・」


世界各地で・・・


「お、お終いだ・・・・」


もうどうにもならず、世界は今日滅ぶのだと思うしかなかった。

逃げろ。世界は終わる。消滅する。

だが、一体どこに逃げるというのだ。どこにも逃げ場など無い。何故なら世界そのものが消滅するからだ。

しかしそれでも叫ばずには居られない。



「「「「「「「「「「逃げろオオオオオオオオオオオオ!!!!」」」」」」」」」」



呆然とする戦場と違い、世界各地の反応は激しい。

特に決戦の地と極めて近くに存在するオスティアは、この光景に市民はパニックに陥っていた。


「速く逃げろ! 荷物なんてどうでもいいから速く!」


「とにかく遠くへ逃げろ! この世界は終わりだ!!」


「ち、近くの巨大浮遊石まで砕かれた! あの爆発がここまで届くのは時間の問題だ!?」


「グズグズするな、逃げろオオオオ!!」


かつて大戦後にオスティアが崩壊したとき以来だろう。これほど国民が恐怖に怯え、ただただ逃げ惑うのは。

しかも今は当時心の支えとなったサウザンドマスターもアリカ姫も居ない。自分たちを救ってくれる勇者もお姫様も居ない。

希望は何も無い。

あるのは、絶望だけだった。


「何故だ・・・完全なる世界も・・・・狂い笑いも・・・こうも容易く・・・・世界を奪う権利がある」


破壊の限りを尽くすT・鬼神を眺めながら、メガロメセンブリアのドウカツは呟いた。


「隊長、我々も急いで艦に乗り込んでこの空域から脱出しましょう」


「総督やテオドラ殿下たちも既に回収済みです。さあ、我々も早く」


もはや逃げ惑うものたちは、錯乱していた。

避難場所も安全区域など無いというのに、この空域から少しでも逃げようとしていた。


「ひははははははは、逃げろ逃げろ! そういう奴ほど俺は簡単に殺さないからよ!」


逃げ惑う戦士たちを愉快そうに笑いながら、ユウサはオスティアを見据えて何かを思いついたかのように笑った。


「よし、面白いものを見せてやる。この世界にな」


ユウサがぱちんと指を鳴らす。

すると、T・鬼神の巨大な表皮のほんの僅かな部分が千切れ、その僅かな肉片が数百体の鬼神兵となった。

鬼神兵といえば全長は数十メートルに及ぶ。それが非常に小さく見えるのだから、いかに大きさの感覚が狂っているのかが分かる。

そしてユウサは札を使い、生み出した数百体の鬼神兵に何かを命じて転移させた。


「な、何を企んでいるのだ?」


「クルト・・・・・上を見ろ」


「・・・・・なっ、これはッ!? 映像!?」


魔力の川しか流れていなかった空に突然、逃げ惑う自分たちの姿が映し出された。


「世界の崩壊と滅亡に現われた怪物。そして無様に逃げ惑い死んでいく戦士たちのみっともない姿を、世界に晒しやがれ!!」


クルトは急いで左右を見渡した。

あちらこちらにカメラを回している鬼神兵の姿があった。

その瞬間、クルトは全てを理解した。

オスティアや大国へラスやメガロメセンブリアでもこの映像が流されているのだろう。

恐らくたった今消えた数百体の鬼神兵がユウサの転移術によって世界各地に散らばり、モニターか何かでこの映像を世界中に流して人々を更なる恐怖に陥れようというのだろう。

その効果は絶大だ。

教科書や映画の中だけでしか知らないメガロメセンブリアやヘラス帝国の伝説級の主力艦隊たちが、比較することの出来ぬ巨大な鬼神兵からみっともなく逃げているのだ。


「さあ、次は・・・・そろそろ狙いを定め、全ての始まりでもあるオスティアから消し去ってやろうか」


オスティアだけではない。この映像を見た瞬間、世界中が更なる恐怖の海に叩き落されてしまった。


「まずい・・・しかし・・・・どうすれば」


クルトには何も思いつかない。

自分の身すらいつ死ぬかも分からぬこの状況で、冷静に案を練ることなど出来はしない。

だが、その答えは予想外の場所からもたらされた。



「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」



真っ向から飛び出したのはチコ☆タンだった。


「チ・・・・チコ☆タン・・・」


「何ぐだってやがる! 術者をブチ殺せばこれも消えるんだろうがッ! あのクソ鬼野郎をミンチにしてやらァ!」


「・・・・・・・・・・・あ・・・・」


それは単純な答え。

だが、あまりにも気が動転しすぎてその答えに誰も直ぐに辿りつかなかった。


「・・・クルト・・・・彼の言う通りかもしれない・・・どの道このままでは・・・・」


「分かっているさ、タカミチ。我々が今すべきことは、逃げることではない」


震えが止まらない。

これが武者震いだと言えればカッコいいのだろうが、そう言える余裕はない。

だが、クルトは先陣切って飛びだしたチコ☆タンの背中を見て決意した。


『ぜ、・・・全艦隊、オスティア総督のクルトです。今から私の言うことを聞いてください』


恐れを悟られてはいけない。将の動揺は直ぐに全軍に波及してしまう。

クルトは精いっぱい恐れを悟られぬように冷静にマイクを通して全軍に告げる。



『今一度立ち向かうのです、逃げ道は後ろにはありません、世界の生きる道は前です!』



「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」



『我々が逃げた時・・・・オスティアを始めとする世界を守る者は誰も居なくなります。あなた方の家族を・・・友人を・・・まだ何も知らぬ赤子に至るまで虐殺されます。あの鬼は、それを笑いながら平気で実行する者です』



全員が俯き、そして震えながらその声を聞いていた。

それは怒りと悲しみと悔しさ。

家族や守りたい者を思い出し、皆が涙を流して震えている。



『いいですか、倒すのです。一秒でも長く世界の人々を守るのです。それこそが我らの使命。我らの命は・・・ここで使うのです。例え仲間の屍を築こうとも、その命尽きるまで戦い、あの鬼の首を両断するのです!! それまでに死ぬことは許しません!!』



直ぐに応えることなどできない。

何故ならクルトは屍を築いてでも戦えというのだ。

自分たちにだって帰りを待つ者たちが居る。死にたくはない。

だが・・・



「ち・・・・ちくしょう・・・・・ちくしょおおおおおおおおおおおおお!」



「うわあああああああああああああああ!!」



「全軍突撃だァァァァァ!!」



帰りを待つ者たちを守るのは自分たちしか居ない。

命失うことを覚悟し、逃げまどっていた全艦隊は方向転換し、T・鬼神に戦いを挑んだ。


「ふん、チコちゃんか」


「ウルアアアアアアアアアアアアアア!!」


この場でこの鬼を葬れば、全てが終わると確信していた。チコ☆タンは連戦の疲れやダメージも無視してグングンと高度を増して特攻する。

しかし、その特攻は突如下から現れた巨大な壁に阻まれてしまった。


「ア゛ン?」


阻んだのはT・鬼神の掌。チコ☆タンがどれだけ魔力や火力を込めても、ビクともしない。


「小せえ、効かねえ、無意味だ」


「ッ!?」


「落ちぶれた魔人め・・・・過去の遺物と一緒に歴史の彼方まで吹き飛びやがれ」


その時、T・鬼神ははたき落とすかのようにその手でチコ☆タンを叩き飛ばす。

ただ、叩くだけ。

しかしたったそれだけでもこの質量差が繰り出した一撃は、チコ☆タンに尋常でないダメージを刻み、後方から駆けつける魔道大グレンの甲板にめり込ませた。


「隊長!?」


吹き飛ばされたチコ☆タンにパイオツウが叫ぶ。


「うるせええええ、無事だァァァ!!」


無事などではない。立ちあがったチコ☆タンの肉体の潰れかかった手足が物語っていた。

だが、それでもチコ☆タンは潰れかかった手足に鞭を打ち、その身に魔力を集わせる。


「あのクソムカつく鬼の顔面に一発ブチ込むまでは死ねるかよォ!! ウオオオオオオオオオオオオオ、超魔爆炎覇ァァァァァァァァァァッ!!!!」


弾き返されても何度でも立ち向かう。

かつては世界で暴れまわった問題児にここまでやられて、魔法世界人たちも黙っては居られない。



「魔人に後れをとらんぞ! 我らとて黙ってやられはせん! 大戦期のころより世界最強と呼ばれたこのスヴァンスフィードの力、メガロメセンブリアの力を奴らに思い知らせてやるのだ!」



「「「「「「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」」」」」」」」」」



生き残るためではない、生き残すために戦うのだ。



「全クルーに告ぐ、何度でも言う。これは世界の命運を賭けた戦いじゃ。妾らが世界最強の空軍部隊であると世界に証明するのじゃ! 神が定め、悪が笑おうとも、妾らは最後の最後までこの運命に逆らう意思を見せるのじゃ!!」



「「「「「「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」」」」」」」」」」



「やってやりましょう、殿下!」



「あのふざけた鬼野郎をぶっとばしてやりましょうや!!」



失いたくないものを守るため、今彼らは世界の先陣を切って、その使命を世界に示す。

自分たちの戦いが、勇気が、少しでも世界の人々の恐怖を払しょくできるようにと願いながら。



「今日は世界の滅亡ではありません。今日という日は、我ら世界の戦士たちが確固たる意志を持って抗った日として歴史に刻まれます! 世界に我らの意思を刻みなさい!」



「わかったかい、ハナタレ共! このままビビって逃げだすために日々勉強してきたわけじゃねえだろ!!」



「「「「「「「「「「はい、セラス総長! ディーネ先輩!」」」」」」」」」」



そして・・・



「アムグ艦長・・・・」



「行くしか無いじゃろ、ワシらもな。魔道大グレン、超速前進じゃ!!」



「リーダーでも多分そう言うな・・・・」



「いいじゃねえか、あのクソ鬼に蹴りの一発はかましてやらねえと気が済まねえ!」



「これで奴を倒せば俺らが英雄だ!」



「ぎははははははは、ブチ殺してやらァァァァ!!」



誰かのため、そして自分のためにも彼らは戦うのだ。



「ひはははははははは、そう来るか。なら、少しずつプチッと消してやるかァ!!」



T・鬼神は起動し、抗う全ての者たちを、虫を払うかのように叩き潰していった。

そう、ハッキリ言ってこの状況を打破できる策などない。クルトもネギも同じだ。

だが、それでも諦めないというのであれば力技しかない。

敗北は決して許されないのだ。

戦う者たちはこの瞬間だけは獣と化し、ひたすら暴れることだけに専念した。

もはや死人と化した暴走は、いつの時代でも脅威である。


「おい、マンドラよ! あれは神速部隊ではないか!?」


「なっ、・・・・あれは・・・ゲッコ・・・どういうことだゲッコ!?」


数ある戦艦の中から、一機の魔道戦闘機が突出し、真っすぐT・鬼神に向けて飛んでいた。


「くけえええええ! 鬼がァァ! 魔法世界(ムンドゥス・マギクス)をなめんじゃねえ!! 俺は自由に空を飛ぶんだァァァ!!」


飛んでいるのは、かつてマンドラの部下でありながら戦時中に逃亡し、罪を犯して大監獄に幽閉されていた鳥人ゲッコだ。


「やめろ! 一機で何ができる!?」


マンドラは叫ぶが、ゲッコは聞かない。

むしろ速度をさらに増し、ぐんぐんと勢いを付けてT・鬼神を目指す。


「ゲッコ、聞いているのか、ゲッコ!」


「ゲッコよ、一人で抜けてはならん! これは命令じゃ!」
最終更新:2011年05月13日 21:47
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