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126-2

テオドラも一緒になり無線を使ってゲッコに叫ぶ。すると途切れ途切れだが、微かにゲッコの声が聞こえた。


「・・・隊長・・・殿下・・・・俺・・・また空を飛べた」


「「ッ!?」」


その言葉を最後にゲッコは戦闘機ごとT・鬼神に突っ込んだ。

T・鬼神に触れた瞬間、ゲッコの戦闘機は巨大なT・鬼神の体のほんの一部に爆発を起こして散った。

全てがあっという間の出来事だ。


「ゲ・・・・ゲッコ・・・・キサマ・・・・」


全てが終わり、マンドラが口を開き、ワナワナと震えた。


「あの・・・・バカ者が・・・」


テオドラは悔しそうに拳を握って顔を落とした。

そう、誰の目にも今のゲッコの行為が理解できた。

それは特攻だ。

敵は造物主の掟を持っている魔物ごと合体したのだ。ならばこちらの魔法や砲弾は効かないかもしれない。

ならば、特攻した方が威力が望める。

しかし、それでどうにかなる相手ではない。明らかにT・鬼神は無傷だ。道を開くどころか無駄死にだ。

誰だってこんな命令は出しては居ない。

ゲッコが独断でやったことだ。自分の意思で世界を守るために正真正銘命を賭けたのだ。



「「「「「「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオ! ゲッコ先輩ィィィィ!!」」」」」」」」」」



その散り様に触発された神速部隊は、マンドラやテオドラの命令を無視して戦闘機で飛びだし、T・鬼神に向かって突進を始めた。


「バ、バカな・・・テオドラ殿下! 早く止めてください!」


「止まらぬのじゃ! 妾の命令を誰一人聞かん!」


クルトの叫びにテオドラは悔しそうに叫び返した。


「守りたいんだ・・・・みんな・・・命を張ってでも・・・この世界を」


タカミチは冷静な口調でつぶやくが、煙草を持つ手が震えていた。

ゲッコに続き、次々と体当たりして消えていく戦士たちに悔しさが込み上げていた。


「うおおおおお、俺たちも続けえ!!」


「あのデカブツにひと泡吹かせてやろうじゃねえかァ!」


抗いながらも消えていく命。

彼らにも帰りを待つ者や愛すべきものたちが居る。

彼らはそのために命を賭けたのだ。


「無駄に・・・・させるものか・・・!」


クルトは顔を上げる。


「遠距離からの精霊砲は効果が薄い! 我々も接近します! そして勝ちます! 生きて帰って愛すべきものたちをその手で抱きしめるまでは、我々は死すら乗り越えてみせます!!」


無駄死にはさせない。



「同胞の死を悲しむな! 誇りで弔ってやれ! 憎き敵の首を必ず取ると天に誓って! 奴らの無念は勝利で晴らせ!!」



「「「「「「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」」」」」」」」



ドウカツも仲間たちを鼓舞し、今世界連合軍の士気は最高潮まで高まっていた。



「ひははははは、いいね~、がんばれがんばれ♪」



彼らの心のうねりを、ユウサは見下ろしながら、まるでオーケストラの指揮者のように手を動かし、この戦場に響く音を心地よく感じていた。

そんな姿をモニター越しで映され、誰も黙ってなどいられない。

士気と同時に怒りを剥きだして一矢でも報いるために戦う。


「アムグ艦長・・・・確率変動弾がもう無いヨ。それでも行くカ?」


「ウム・・・それしか活路は無さそうじゃ。もはやこの世界のどこに逃げても安息は無い」


世界を守るんだ。世界を守るんだ。その意思と共に彼らは涙を流しながらT・鬼神に挑んでいく。

だが、鬼は容赦しない。


「さ~て、ここらで一つ絶望でも与えてやるかな」


T・鬼神がユウサの笑みと同時に掌を前へと出し、その手に莫大な魔力を溜めていく。


「なんという魔力・・・計測器が振り切れた!?」


「な、あの男・・・・まさか!?」


「あれをぶつけようというのか!?」


T・鬼神が手を突き出した先に何があるのか・・・・それはオスティアだ。



「ひはははははははははははは!! さあ、消えろ! フィクションの世界なんかに興味はねえ! 魔力の欠片も残さぬほど、完全消滅しちまいなァァ!!」



T・鬼神が生み出した超魔力が嵐を起こして大気そのものを揺るがした。



「ふざけるな、狂い笑い! 貴様が消してよい命などこの世界には無い!!」



「ひはははは、タカミチ坊や。カスがわめいてやがる!」



「貴様がどれほど奪おうと、傷つけようとも、ナギたちが・・・先人たちが創った道を、そして意思を! 閉ざしはしない! 世界は・・・・人は貴様などに敗れはしない!」



「ひはははは、世界も人も偽りの造りものだがな!!」



オスティアの直線状には誰も居ない。


このまま放たれればオスティアは消滅するかもしれない。


命がけで守ろうとするものを先に消す。


どこまでも非道な手口に悔しがることしかできない。



「さあ、放て! T・鬼神! これが極楽と地獄の狭間・・・・完全消滅砲・天堂地獄!!!!」



T・鬼神の手から放たれた魔力砲は、レーザー砲のごとくに突き進む。


誰も何も出来ない。


このままではオスティアが消滅する。


しかし、戦士たちの心が再び折れそうになった、その時だった。



「ウガアアアアアアアアアアアアアア、太陽面爆発ダアアアアアアアアァ!!!!」



魔人が咆哮し、地獄の盾となった。



「「「「「「「「「「チ・・・・・チコ☆タン!?」」」」」」」」」」



「「「隊長ッ!?」」」



かつて世界を恐怖させた魔人の名を、世界中の者が叫んだ。



「ぐっ・・・ゾガアアアアアアアアアアアア!!!!」



しかし一人でどうにかなる威力ではない。

自身の最強技で迎え撃つものの、チコ☆タンの技が徐々に押され始めている。

だが、チコ☆タンはひるまない。



「あのクソオスティアは~・・・・あのクソ女とクソ野郎の居た証しだァ!! それを無くして、俺たちの伝説を誰が語り継ぐって言うんだァァ!!」



ナギとアリカの残したオスティア。

チコ☆タンはそれを守るために命を賭け、そして笑った。



「ひははははは、死にぞこないだが、その心意気には驚かされた。では、誇り高き魔人殿に敬意を表して・・・・・消えて無くなりやがれええええ!!」 



チコ☆タンの技が完全に押し切られた。


スローモーションのようにハッキリと、チコ☆タンの腕が飲まれ、脚が光に飲まれて分解されていく。


ああ、魔人が消える。


誰もがそう呟こうとした。


しかし・・・



「大量殺人回転木馬ァァ!!」



竜巻の壁がチコ☆タンを寸前のところで救った。



「ひははははは、ジジイか?」



竜巻に救われたチコ☆タンは、既に気を失い、四肢失った状態で竜巻の中を落下していく。

そして、落下したチコ☆タンは地上まで落ちず、丁度真下に居た魔道大グレンの甲板に落ちた。



「ぬううううう、ぐおおおおおお!! 重力・1000倍じゃあッ!!!!」



竜巻を発生させ、チコ☆タンを救い、魔力砲を妨げるのはアムグ。

そしてアムグはそのまま全魔力を使いきるほどの大呪文を使った。

けた外れの重力魔法で狙ったのは、T・鬼神の伸ばした腕。

アムグの重力魔法に耐えきれず、T・鬼神の腕が下にさがり、攻撃の狙いが逸れて、オスティアを外した。


「た・・・・助かった・・・・」


「チコ☆タン・・・アムグ・・・・よく・・・やってくれました」


オスティアは大丈夫だ。

間一髪のところだったが、チコ☆タンとアムグに救われた。

だが、ホッとしたのも束の間だった。


「ぐっ・・・・がはっ・・・このワシがやり過ぎたわい・・・・・・ッ!?」


「アムグ!?」


「や、やべえ・・・ザイツェフ・・・いや、チコ☆タンもアムグも・・・」


四肢をもがれてピクリともしないチコ☆タン。

大技を立て続けに使ったアムグは血管から血が噴き出し、そのまま甲板に倒れこんだ。

大勢の仲間たちが二人を起こそうとするが、もう二人は虫の息だった。



「ひはははははははははははは、立ちはだかるか新生大グレン団よ! だが、その旗を掲げちゃいるが、リーダーの居ねえお前らにはそれが限界だ!」



しくじったが、ユウサの優位は変わらない。

そしてユウサはあろうことか、T・鬼神を前進させて、その手を魔道大グレンに伸ばそうとする。



「な、やばいヨ!?」



「き、来たああああ!?」



「潰されるゥーーッ!?」



「撃て撃て撃て撃てェ!!」



リーダーも大戦力も参謀も失った魔道大グレンではもはやこれが限界だ。

砲弾や魔法を伸ばされた巨大な腕目掛けて放つが、速度はまったく落ちることは無い。



「ひはははは、まあ、グレン団を後世に伝えるのは地球での話。この世界ではもうこれまでさ。シモン君も居ないし、その旗ごと握りつぶしてやらァァァ!!」



超弩級艦の魔道大グレンもT・鬼神の手で簡単につかめるほど大きさが違う。まるで子供の玩具だ。

そして一度つかまれたら最後。跡形もなく引き千切られるか、それとも消し飛ばされるか、どちらにせよ生殺与奪はユウサにある。

パイオツゥたちはもはや目をつむって諦める。自分たちはここで終わりなのだと、誰もがそう思った。

そしてこの光景は、世界全土に中継されている。


「ママ・・・僕たち死んじゃうの? 大グレン団やられちゃうよ?」


この映像を眺めながら、子供が不安そうに母親の服の裾を引っ張り、訪ねてくる。その無垢な質問に大人たちは何も言葉を返せない。

ただ涙を流しながら子供を抱きしめた。

空に映る映像を見上げるのは、正に魔法世界全土だ。


「ナギは? ナギは助けに来ないの?」


ナギはもう死んだ。もう現れてはくれない。


「じゃあ、シモンは? グレンラガンは?」


シモンは出てこない。グレンラガンも無い。

つい先日は世界を興奮と熱気に包みこんだ大グレン団のマークを掲げた戦艦が巨大な鬼神に潰されようとしている。

それは彼らにとっては正に絶対的絶望となるのだった。





しかし・・・





その時だった!





魔道大グレンを掴もうとしたT・鬼神の腕が、突如襲いかかったレーザー砲に弾き飛ばされた。




「ン!?」




「「「「「「「「「「ッ!!??」」」」」」」」」」




ユウサも目を丸くした。



「な・・・・・なんだとッ!?」



世界中が目を丸くした。



「「「「「「「「「「アッ!!!!」」」」」」」」」」



世界が絶望に包まれたその時、救世主が現れたのだった。













宮殿外での攻防を知らず。いや、彼らもそれどころでは無かった。


死線に居るのは中も外も同じ。


彼らは今正に死地に居るのだった。



「ハハハハハハハハ、死ヌ、死ヌ、死ヌ・・・・全滅ダ」



狂ったデュナミスが次々と召喚していく傀儡悪魔たちに、ネギたちは最後の足掻きを見せていた。



「はあああああああああ、千躰雷囮結界・千磐破雷!!」



雷で大量の分身体を作り出しての特攻技。吹き飛ばされる傀儡たちの数は100や200で収まらない。


「ス、凄い・・・・・」


「感心するな、暦! それよりデュナミス様が何故私たちごと殺そうとしているのだ!?」


「焔、後ろ!?」


「ッ!?」


仲間であるデュナミスの凶行の意味が分からない。

わけが分からず混乱している焔の背後を敵が襲ってくる。だが、寸前のところで刹那が敵を両断した。


「油断するな」


「ぐっ・・・貴様・・・」


「しかしあなたの言うとおりだ・・・何故デュナミスは・・・」


焔を助けた後、直ぐに背を向けて刹那は剣を振るう。すると焔と刹那の疑問に答えたのは、千草だった。


「妖刀ひなの力や・・・・あの方に・・・ユウサ様にそれで斬られたものは皆、魔に飲み込まれる。かつて、神鳴流を壊滅寸前まで追い詰めたときのように」


焔たちは悔しそうに唇を噛みしめる。やはりあの男は危険だった。

自分たちの大切な同胞にこのような目にあわせるユウサに怒りが収まらない。

だが、どうしようもない。


「おい、でけえ敵がどんどん来るぞ!」


「手に負えねえ!」


木乃香の治療を受けた豪徳寺たちも参戦するが、質量も物量も桁違いだ。

ましてや怪我を治しても精神的に疲弊しきっているこの状況では、いつまでも気合では誤魔化せられない。


「美空殿! 危ない!」


「へっ? ・・・って、楓! あんたも後ろ!」


そして恐れていたことがついに起こった。

召喚魔の爪が美空の両足を傷つけ、気を取られた楓の腹部に深々と別の召喚魔が爪を突き立てた。


「なっ・・・・!」


「み、美空ちゃん・・・・」


「み、美空さん!? 楓!?」


「うわああああああ!」


「テメーーーーッ!?」


仲間が目の前で重傷を負ってしまった。


「美空さん・・・・・楓さん・・・・・・・・ぐっ・・・・うわあああああああああああああ!!」


唇を血が出るほど噛みしめ、ネギは怒りを剥き出しに、二人を傷つけた召喚魔を消滅させた。


「み、美空ちゃん! い、今すぐ木乃香ちゃんに!」


「楓、アーティファクトの中に隠れるんだ! 早く!」


血を激しく流し、もう戦えぬ、もう走れぬ状態になった美空と楓。

楓は何とかアーティファクトのカードを出そうとするが、体がうまく動かない。


「ふ、・・・・不覚・・・拙者としたことが・・・」


「へ・・・・へへ・・・もう・・・走れないや」


美空も自嘲したかのように笑った。


「ぐう・・・ダメだ・・・諦めるな!」


刹那が叫ぶが、楓と美空の表情は、既に達観したかのように笑っていた。


「今すぐネギ先生と共に活路を開く! 誰一人死んではダメだと、先生が言ったではないか!」


刹那は倒れる二人の胸ぐらを掴んで必死に鼓舞しようとする。

だが、鼓舞しようとする刹那の目にも、既に涙が浮かび上がっていた。


「ちい、なんや・・・これまでかい・・・」


次々と仲間たちが殴打されていく。豪徳寺たちも再び殴られ、床に倒れる。


「ダメだ・・・ダメだ・・・・諦めてはいけません!!」


ネギは必死に抗う。

一人で何百何千と召喚魔たちを蹴散らしていくが、それでも追い付かない。


「くそっ、くそっ、僕が・・・・僕がみんなを守るんだ!! だから諦めない!! 絶対に皆と帰ってみせる!!」


力が欲しい。


誰一人死なせぬ最強の力が欲しい。


無理を通せる力が欲しい。


例えそれが、魔に落ちようとも・・・・



「ウグ・・・・ウガウウ・・・・ウガアアアアア」



「ネギさん!?」



「先生!?」



ネギの様子が変わった。


その身を深く黒い闇の魔力が飲み込もうとしている。


まるでユウサと戦った時のように。



「せ、先生・・・だが・・・それはダメだ」



今度こそ完全に飲みこまれてしまうかもしれない。


身も心も完全なる化け物に。



「守ル・・・命ニ変エテモ」



まだ意識は保っているが、いつまで続くか分からない。


仲間も傷つき、ネギも魔に飲まれようとしている。



「ど・・・どうすれば・・・・」



刹那ももうどうすればいいか分からなかった。



「せっちゃん!」



「ネギ先生!」



この状況にもはや居てもたっても居られずに、楓のアーティファクトから木乃香やのどかたち全員が飛びだした。



「お、お嬢様! 何故!?」



「もう・・・どこに居ても変わらん・・・なら、最後までウチらも戦う!」



木乃香たちももう分かっているのかもしれない。


だが、それでも諦めを口にしない。



(ぐっ・・・・・・・・・シモンさん・・・・・・・)



刹那は心の中でシモンにすがる。



(お願いです。何か言ってください・・・・大丈夫だと・・・言葉をください・・・このままでは・・・このままでは!)



たった一言で良い。


シモンが何か一言言ってさえくれれば、自分たちは今からだろうと何万の敵とも戦える。


だがシモンは居ない。




「ウガアアアアアアアアアアアアアア!!!!」




猛るネギ。


ダメだ、皆涙が止まらない。


命尽きるまで抗おうとするが、ただ涙が止まらない。



「嫌や・・・嫌や! このまま死ぬわけにはいかん! まだシモンさんに・・・何にもしてへんのやから!」



「畜生・・・何で私の能力は戦闘向きじゃねえんだよ! このままじゃ・・・みんながやられちまう」



「ネギ先生の心が・・・・ダメ! 先生、戻ってきて! 魔に飲み込まれないでください!」



「負けるもんか! お父さんを・・・一人にするわけにはいかないんだから!」
最終更新:2011年05月13日 21:48
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