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129-自分で決めて成すべきことをする

第百二十九話 自分で決めて成すべきことをする 投稿者:兄貴 投稿日:11/08/07-00:36 No.4451
「消えちまった・・・結局やつは何だったんだよ?」



素直に喜べない。


せっかくの勝利を水に刺され、どうもスッキリしない感じだった。


全てが終わったかに思えた戦いだが、突如現れた黒ずくめの人物が生首のユウサを抱えてそのまま立ち去った。


現れた黒ずくめのことを少しだけ知っていそうなチコ☆タンたちでもうまく言葉が出せない。


ユウサはもう戦えない。連中も逃げたと思えば確かにギミーたち魔道大グレンラガンの勝利だろう。


しかしどうしても拭えぬ胸騒ぎが、ギミーたちの心を揺さぶった。



「まだ、終わっていないのかな?」



少し不安そうに尋ねるダリー。


だがギミーにも答えられない。


っというよりも、最初からノリで戦っていた二人は、そもそもこの状況をよく分かっていない。



「わかんねー。でもさ・・・どうすればいいのかだけは分かるぞ?」



「本当?」



分からない物は分からない。ならば次にすべきことをするだけだと、ギミーはコクピットの中でポジティブな意見を出す。



「決まってる。とりあえずさ、シモンさんに会いに行けばいいんじゃないか?」



「あっ、それ賛成!」



ダリーもすぐにうれしそうな顔をして、異議なしを告げる。


消えたユウサに謎の黒ずくめの人物は居なくなった以上、気にしても仕方ない。


ならば今は先に気になる方。



「ようやく会えるんだね」



「ああ、楽しみだぜ。今の俺たちを・・・シモンさん・・・なんて言ってくれるのかな」



幼少のころからずっとシモンと友に居たギミーとダリー。


カミナとヨーコとロシウを除けば、ある意味一番長く共に世界を旅したのがギミーとダリーだ。


螺旋王との戦いの後、新政府の所属となり昔のようには一緒に居られなくなった。


そして、一年前の戦いを最後にシモンは自分たちの前から姿を消した。


その時にシモンから受け継がれたコアドリル。そして、グレンラガン。


自分たちはこの一年で、少しは受け継がれた者としてふさわしくなったのか?


いや、そんなことよりもとにかくシモンに会いたい。


ギミーとダリーはそれを考えるだけで胸が高鳴ったのだった。










そしてそのシモンもまた、新たな好敵手を前に誇らしく戦い続けていた。


フェイトも同じだった。


しかし、一瞬の隙を突かれて深手を負ったフェイトは明らかに動きが鈍くなった。


痛々しく刻まれたグレンブーメランの斬撃が、それを物語っている。



(核が傷ついたか・・・でも・・・でも・・・どうしてだろうね・・・)



だが、フェイトも心まで刻まれたわけではない。



(機能的にはセーフモードに入って休ませなければならないのに・・・どうして僕はまだ動けてしまうんだろうね・・・)



深手を負ってもなお放たれるフェイトの威圧は、シモンに余裕など決して与えなかった。



「何十年と・・・今日この日を迎えるために僕は生きてきた・・・こんな所で負けられない」



今にも倒れそうなフェイト。やはりダメージを相当受けているし、シモンとて手ごたえは感じている。


だが、それでもフェイトは身体が動く限り戦い続ける。



「フェイトォ・・・」



シモンも若干疲れが見え始めた。


今日一日でユウサ、大監獄での攻防、オスティア空中戦、クロニア、マジンガン、そしてフェイト。


休みなく一日中闘い続け、さらには常人なら耐え切れぬエネルギーを制御し続ける天元突破モードがシモンの肉体を蝕み始めている。


決着が近いことは、互いに感じ取っていた。



「我が主が創世したこの世界・・・いや・・・やめよう、こんな話は君には野暮だ。ただ言えることは・・・」



己の大義を語ろうとしたが、皮肉めいた笑みを浮かべてフェイトは止める。


何故ならこの戦い自体は世界がどうとか、どちらが正しいとか、そういうものを懸けて戦っているわけではない。


ただの喧嘩。それは両者承知のこと。



「僕は主の意思を受け継ぎし人形。ただ、大義を成すためだけに生まれてきた。それを無くしてしまえば、僕の存在が全て無意味になる」



フェイトを支えるものは、大義や意地というよりも、執念のようなものを感じた。



「君との戦い・・・一見無意味だがそれなりに楽しめた・・・だが、だからこそ無意味な戦いで全てを台無しにするわけにはいかない」



これほどの心をさらけ出す者が、役目を果たすだけの人形などと言うのは嘘にしか思えない。



「・・・だから・・・」



刻まれた胸の核を抑えながら、フェイトは言う。



「この喧嘩で僕は君を超え、成すべきことを成しに行く! 世界を救う! 大義と使命こそが僕の全てだ!!」



既に半死半生でこの気迫。


空間が息苦しく感じるほど溢れ出るフェイトの気迫は、シモンがこれまで戦ってきた歴戦の猛者たちとなんら遜色なかった。


そして、フェイトが再び動き出す。


その手に込めた魔力の塊をシモンにぶつけようとする。



だが・・・



「ふざけんじゃねえ!!」 




「ッ!?」




張りつめた空気を、シモンは叫んで吹き飛ばす。



「与えられたとか・・・生まれてきた理由とか・・・それが全てとか、なにを浮ついたこと言ってやがる!」



襲い掛かるフェイトの魔力を込めた拳に、自分の拳を合わせて殴り返す。



「それだけじゃないだろうが! 俺たちはみんな誰かに与えられたからやるんじゃなくて、自分で考えて・・・自分で決めて成すべきことをするんだろうが!」



威力も破壊力も天元突破の大技に比べれば格段に落ちるが、シモンのその拳をフェイトは受け止めきれない。



「つッ・・・まだ・・・こんな力が・・・」



弾き飛ばされたフェイトの身体が壁まで弾き飛ばされて埋めり込む。



「お前だって、ただ主から与えられた役目だからじゃなくて、それを譲れないと思える何かがあったからお前自身で決めた事なんだろうが!! だからそんなに歯を食いしばってんだろ!!」



重い。

ただ一言、それだけがフェイトがシモンの拳から感じたものだった。



「確かに・・・受け継いだ意思や役目は重要さ・・・俺も・・・そして俺たち大グレン団もそうだったからな」



だが、それでもフェイトはまだ動く。



「くっ・・・何を今さらゴチャゴチャと!」



フェイトは埋め込まれた体を力づくに這い出して、動く限りは抗い続ける。


もう、大魔法を打つ力は残っていないが、それでも死んだわけではない。


だが、それでもその拳はもう・・・



「つうッ!?」



フェイトの拳は届かない。


片手で軽々とフェイトの拳を止めたシモン。その背後に、フェイトは幻影を見る。



(・・・カミ・・・ナ・・・?)



カミナ。フェイトの錯覚なのか、シモンの背後にカミナの姿がおぼろげに重なった。



「俺たちに道を示したその人は居なくなっちまった・・・でも、俺たちがその道を進んだのは・・・ただその人の意思を受け継いだからというだけじゃない。俺たちがそうしたいと自分たちで決めた事だからだ!」



いや、カミナだけではない。



「穴掘りシモンという名も・・・大グレン団も・・・グレンラガンのパイロットの役目も・・・運命なのかと言えばそうだったのかもしれないが、使命だとか生まれてきた理由だとか、それが全てだなんて考えた事はねえ!」



ニア、キタン、大勢のシモンと共に生き続ける者たちの幻影が見えた。



「全てはテメエの決めた道を、テメエのやり方で貫き通しただけだ!」



どんな天元突破モードの大技を見るよりも、フェイトは揺らいだ。シモンの背後に見える大グレン団たちの姿に。



「だ、黙れ・・・君の武勇伝など、もう聞きたくはない!! 君の世界と僕たちの世界は違う!!」




「・・・かけがえのない戦友や最愛の人との出会いや別れ、得たものだけじゃなく失ったものもある。でも、皆は自分で決めた道を進んで笑いながら逝った。だから生き残った俺は、その全てを抱えて自分で決めた道をこれからも進む! 例えそれが、この世界であったとしてもだ!」




「黙れと言っているだろう!!」




「フェイト。だからこそ、俺はお前と戦う。この世界を滅ぼすのなら、それだって黙ってなんていてやらない! それが自分で決めた俺の意思だ!」




フェイトの頬に痛みが走った。固く、重く、熱い拳にフェイトは打ち抜かれる



「だからテメエも大義だなんだって誤魔化すんじゃねえ! 言ったはずだ! テメエの本音を言いやがれ! お前の執念は、ただの主への忠誠心とかそんなもんじゃ納得できねえ!!」



時間にすればコンマ数秒。フェイトはこの間に自身の過去を振り返る。



「僕の本音・・・か・・・」



そこには受け継がれた戦争の記録から、自身が目覚めてから見た世界の記憶、そして・・・



(ああ・・・そう言えば・・・あのコーヒーはおいしかったな・・・)



特に大義や使命とは関係のない思い出までもがフェイトの頭の中に流れた。



(何で今さら僕は・・・あんなことを・・・)



しかしそれも深く考えることをやめる。フェイトは一瞬流れた昔の思い出を頭振って外に出し、皮肉めいた笑みを浮かべる。



「ふっ、僕の本音なんてどうでもいいじゃないか、シモン。結局僕たちは戦うしかない。まあ、僕に勝てたら教えてあげるよ」



「だったら勝ってやるさ!!」



これがシモンとフェイト、最後の攻防だった。



(そうだね・・・シモン・・・始まりがなんであれ・・・結局その道を進むのかどうかを決めるのは自分自身だ・・・)



シモンの攻撃を防ぎきることはできない。


ならば、もう避けることも防ぐこともしない。フェイトはただ、攻撃されても打ち返すことだけに専念した。



(そう・・・僕もまた・・・主の命に従うだけじゃない・・・自分の意思で決めたのかもしれない・・・そして、命令でなく自分の意思で決めたということは・・・それは既に人形ではないのかもしれない・・・)



しかし、やがて打ち返すことすらできず、一方的に強烈な拳を連打されるフェイトは・・・



(マスター・・・どうせなら僕をもっと忠実な人形に作ってくださればよかった・・・そうすれば・・・こんなに苦しむことも無かった・・・)



いつしか殴られるうちに自然と笑みが浮かんできた・・・



(でも・・・だからこそ・・・これほど楽しいと思うことができたのかもね・・・)



もう、これで終わらせる。



(自分で決める・・・皮肉にも・・・唯一自分で決めたシモンと戦うということは・・・結局・・・)



ただ僅かに残った意地だけでフェイトは最後の一撃を放つ。


もう立つ力すらも失うほどの全てを込めて、前のめりに自分の身体を投げ出した。


全てを投げ出して打ったフェイトの最後の一撃は、見事にシモンの頬に命中した。


しかし・・・



「ふっ・・・ふふ・・・どうだい・・・シモン・・・僕はどうだった?」



シモンはフェイトの拳を頬に感じながら、笑みを浮かべる。



「ああ・・・お前は最高だった・・・」



――――ッ!!!!



その瞬間、フェイトの胴体をドリルが貫き風穴があく。


シモンインパクト。


シモンがいつだって自分の道を切り開いてきたドリルが、今日またも新たな道を開いた。




「大グレン団総出で戦わなくちゃいけないぐらい、最高にヤバい奴だったぜ」




静かなる決着。


ドリルの波動も爆発音も上がらない。


しかし、それでもフェイトは倒れた。


シモンに寄りかかるように、安らかな笑みを浮かべながら。


この瞬間、シモンは完全にフェイトの上を行った。



「卑怯者め・・・僕は一人だというのに・・・君は何人がかりなんだい? 大グレン団総出だなんて卑怯すぎる・・・」



そして・・・



「痛いな・・・でも、それだけじゃない」



ようやく初めての出会いから続いた二人の因縁・・・



「体に穴が空いたせいか・・・僕自身ポッカリと胸に穴が空いたようだよ」



シモンとフェイト・・・



「僕の負けだよ・・・・・君に・・・いや、君たちにね」



二人の戦いが終わったのだった。













「終わった・・・アーウェルンクスとシモン・・・二人の戦いが・・・」



一部始終を全て見届けたクロニア。


一つの戦いに心を揺るがし、胸が高鳴った。それは誰にも言えない感情だった。


それを悟られぬようあくまで無表情を保ち続け、倒れたフェイト、そしてフェイトを見下ろすシモンへと近づいていく。



「もう・・・何をする力も湧き上がらない・・・自業自得というやつか・・・・・」



敗れたとはいえどこかスッキリとした表情のフェイト。


グチグチと言いながらも、先ほどまでの張りつめた空気が完全に和らいでいるように見えた。



「フェイト・・・アニキやニアたちの力を使わないと俺も危なかったよ・・・」



「ふっ・・・やはり卑怯だよ・・・でも、仕方ないのかもね・・・・だって・・・その全てが込みで君の力であり、君という存在なのだから・・・」



これまで皮肉めいた笑みしか浮かべてこなかったフェイト。


しかし、シモンは初めてフェイトの穏やかな笑みを見た。


それはまるで人間の少年と変わらぬ、温かな笑みだった。



「シモン・・・そんな君に対して・・・僕はどうなんだろうね?」



「なに?」



「ずっと僕は心のない大義のためだけの人形・・・道具だと思っていた。でも、僕はただの人形ではないのかもしれない」



自分はいったい誰なのか? 自分は一体何のために生まれてきたのか?


答えは主の生み出した人形であり、その望みを叶えるために生まれてきた。その答えにフェイトは何の疑念も無かった。


シモンと戦うまでは・・・



「疑念も無かったはずだった・・・でも、思い出さないようにしていただけだった・・・葛藤もしなかった・・・そう思い込んでいた・・・でも・・・疑念はあった・・・葛藤もあった・・・そもそも僕はマスターに対する忠誠心なんて無かった・・・」



「フェイト?」



「ただ・・・役目を果たすしかなかった・・・」



天井を見上げながら拳を握りしめるフェイト。目を瞑り自分自身を振り返った。



「テンジョウ家の娘に言った言葉は、僕自身に言えることだった・・・。自分が誰かも分からぬうちに、シモンの・・・前に立ちはだかるのは・・・最初・・・から無理なんだ・・・と」



その瞬間、フェイトは目を腕で覆った。何故かは分からない。


だが、何故か目頭が熱く、そこからあふれ出そうになる何かを見られたくなく、自然と瞳を隠した。


だが、次の瞬間・・・



「最初からお前にも心があったってことじゃないか」



腕で瞳を覆った隙間からフェイトが見えたのは、倒れる自分に向かって手を差し出すシモンだった。



「大体、俺は最初からお前を人間だと思っていたのに、今さら人形だとか、そっちの方が納得できないよ」



「シモ・・・ン」



フェイトはポカンとした表情で固まった。


しかし、フェイトに手を差し出しながらシモンは続ける。


そしてフェイトは、差し出された手にどう対応していいのか分からず戸惑っていた。



「なん・・・の・・・つもりだ?」



そんな戸惑うフェイトに、シモンは言う。



「木乃香なら多分お前の怪我も治せる。一緒に行こう」



「なっ・・・なに!?」



シモンはそう言って、フェイトの手を掴んで起き上がらせようとする。


この光景には、クロニアも目を丸くした。



「やめろ!? ・・・シモン・・・僕にはもうネギ君と戦う気力もない・・・何より、生き恥を晒すぐらいなら消滅を選ぶさ・・・」



フェイトは拒否してその手を振り解こうとする。


しかし、シモンが掴んだ手は決して離せなかった。



「それでも生きているんだから、俺たちは生きていかなきゃいけないんだ」



「なッ!?」



そしてシモンの手は大きく、力強く感じた。



「・・・数か月前・・・お前と同じように、俺が何者かを知りながらも挑んで来た女がいた。その女と俺が戦っている時に、ネギは俺たちに泣きながら言った」



思い出すのは学園祭。あの日の出来事。



――超さん・・・たしかに僕達は完全じゃありません。超さんの計画通りになれば、多くの人が救われるかもしれません・・・。ですが・・・犠牲もあります・・・この学園に住む関係者もそうです。・・・でも・・・でも・・・今のままの世界でも・・・



あれもまた自分の全てを曝け出した喧嘩だった。



――シモンさんと、超さんの二人が力を合わせれば、何だって出来るのにッ!! 最強の二人が力を合わせれば、それこそ今よりもっと大勢の世界中の人を救えるのにッ!! どんな困難だって乗り越えられるのに!! 



超鈴音。例えこの世界にもこの時代にも居なくても、彼女との戦いはシモンの中でも忘れられぬ戦いとなっていた。


あの時、いつまでも意地を張って戦う自分と超にネギが言った言葉、それを今この場でフェイトに送る。



「フェイト・・・正直ネギがどんな救済案を思いついたかは分からない。それが正しいのかも分からない。でも・・・お前とネギの二人が力を合わせれば・・・何だって出来るはずだ。お前たちは何にだってなれるはずだ」



フェイトはカッと目を見開いて声を荒げる。



「バカを言うな! シモン、僕にネギ君と手を組めとでも言うのかい!? いくら僕に勝ったからといって、そんな勝手なことを受け入れられるはずがないだろ! それに君との戦いは、そういうものは一切関係なく戦うという条件だったじゃないか! ふざけるな!」



勝った者の言うことを聞く。そんな風に自分たちは戦ったわけではない。


前提を覆されたのかと思ったフェイトはシモンを睨みつけるが、シモンはフェイトを宥めるように制しながら返す。



「命令じゃない。提案だ」



「なに?」



「もちろん、それをどうするかを決めるのはお前自身だよ。だから強制はしない。ただ・・・これだけは言いたい・・・」



呆けるフェイトは改めて、握りしめられるシモンの手を感じた。



(この手は・・・)



ただ大きくて力強いだけではない。


ドリルを握り、ラガンを操り、グレンラガンを動かし、人類の運命を掘り進んできた男の手だ。




「フェイト、まだ生きろ。俺とお前の戦いは終わっても、お前の人生は何も終わっちゃいないはずだ」




敵わない。


フェイトに笑みがこぼれた。



「ふっ、僕とネギ君二人でどうにか・・・」



シモンのこの手を大勢の者が信じてきた。



「アスナたちだって、木乃香たちだって居る。お前の周りに居る女の子たちもな。そして何より・・・俺だって居るさ」



ならば・・・



「なるほど・・・それは最強だね・・・」



フェイトは握られた手を、力強く握り返したのだった。



(マスター・・・ナギ・・・ラカン・・・僕はこの男に・・・完全に負けたみたいだよ・・・・)



その手を握り返したのは、人に言われたからではない。フェイトが自分でそうしたいと、自分で決めた事だった。





だが、次の瞬間・・・





「寒気がしますえ・・・」




「「ッ!?」」





「和解、友情、理解・・・そんなもんホンマに吐き気がするほど寒いですえ!」





シモンとフェイト。そしてクロニアの三人しかいないはずの空間が、一瞬でどす黒い空気で満たされた。



「悍ましいですなァ!! ひははははははははははは!!!!」



そして・・・




「「「ヴィシュタル・リシュタル・ヴァンゲイト」」」




それはフェイトと同じ呪文詠唱。


しかし、唱えているのはフェイトではない。


フェイトとは違う何者かが、しかも複数、同じように呪文を詠唱して・・・



「紅蓮蜂(アペス・イグニフェラエ)」



「こおれ」



「轟き渡る雷」



どす黒い空気を一変させる、炎と氷と雷という三種の巨大な魔力の脅威がシモンたちに襲い掛かった。



「天元突破螺旋フィールド!!!!」



瞬時に天元突破のバリヤーを張るシモン。


天元突破モードで造りだす壁は、生半可な攻撃では貫けるわけがない。


ただ、攻撃を防ぎ、巻き上がる爆煙が薄れていくと、そこで目にしたものにシモンたちは驚愕する。



「な!?」



「君たちは!?」



「これは・・・ッ!?」



目に映った光景は、幻ではない。



「お、お前らは一体!?」



ようやく終えたはずの戦いに、新たなる脅威が介入した。




「4(クゥァルトゥム)火のアーウェルンクスを拝命」




「5(クゥィントゥム)風のアーウェルンクスを拝命」




「6(セクストゥム)水のアーウェルンクスを拝命」




三人の、フェイトと同じ顔をした者たち。



「フェイト!? いや、少し違う・・・しかも女の子もいる・・・どうなってるんだ!?」



「アーウェルンクス・シリーズ・・・バカなデュナミスの仕業か? しかし、何故残る三体全てがここに!?」



「この魔力は・・・」



ようやく終えたはずの戦いで、疲労した彼らの前に現れた新たなる敵。


何が何だかわからぬ状況を、元凶であるこの女が全てを語った。




「ひはははははは、フェイト・・・そんな名前を名乗っ取るから忘れてまうんですな~、フェイトはん」




「ッ・・・君は!?」




「所詮あんたはアーウェルンクスシリーズゆう人形の一つ。鍵の力使うて残る三体を起動させてもらっただけですわ~」



この状況を作り出したのは、一人の少女。


痛々しく切断された腕を口にくわえながら、血だらけの衣装と割れたメガネ、しかしその狂った瞳だけは何のブレも無かった。



「月詠!?」



「ひはははははははは、随分と出来損ないな存在だったんですな~、あんたは」



月詠が残る一本の腕で造物主の鍵を携え、三体のアーウェルンクスシリーズを引き連れて現れたのだった。



「お前は・・・その怪我は・・・」



シモンは思わず口元を抑えた。切断された自分の腕を口で咥えている月詠の狂気ぶりに。



「あの方にやられましたわ~。ダラダラとしとるウチはあのお方にも見放されましてな~」



そして腕が無い事すらまったく意に介さず、それどころかニタニタと笑っている。



「・・・おかしい・・・そう思うとりますやろ?」



シモンたちの心を見透かしたかのように月詠は言う。



「そや・・・今のウチは怒りで頭がおかしなっとります・・・全ては・・・シモン! あんたから始まったんやァ!!」



ビリビリと空気が痛い。憤怒、殺意、憎悪。全ての狂気が月詠から溢れる。



「あんたが居なければ・・・刹那先輩も・・・ユウサ様も・・・そしてウチはユウサ様に見捨てられることも・・・」



「な、何を・・・」



「ふっ、そしてユウサ様も多分生きとらんやろ。なんやふざけなはって・・・大グレン団? グレンラガン? 腸が沸騰しそうや!!」



強烈な殺意が吹き荒れる。


その殺意に当てられて、冷たい汗がシモンたちに流れた。



(まずい・・・アーウェルンクスシリーズは一体一体が僕と同等・・・僕はもう戦えない・・・そしてシモンの体力ももう・・・)



月詠は、シモンどころかこの場に居る全ての者を殺傷しようとしている。


自分たちの今の状況を鑑みて、このままではまずいとフェイトが思った。


だが・・・



「クロニア・・・頼みがある」



「えっ? ・・・私に・・・手を貸せとでも言いたいのですか?」



「そんなんじゃない。簡単な事だ」



シモンが背中を見せるようにフェイトの前に立ち、クロニアに言う。



「フェイトを・・・ネギの所まで連れて行ってやってくれ」



「ッ・・・あなたは・・・どうする気なのですか?」



「ここで奴らを食い止める」



何の迷いもなく言うシモン。


だが、今のシモンにそれほどの力が残っていないことは、フェイトもクロニアも分かっていた。



「シモン・・・君は何を!?」



「あなたは・・・ここで死ぬ気ですか?」



その時、フェイトは見た。


クロニアも見た。


何も語らずともその背中が雄弁に語っていた。



――この道は誰にも通さない



シモンの想いが伝わってきた。



「クロニア・・・お前だって、ネギの話を聞きたいはずだ。その結果、お前がどういう道を進むのかはお前次第だ」



「シモン・・あなたは・・・」



「フェイト・・・喧嘩したっていい・・・でも、もしネギたちと同じ道を歩みたいと思ったら、仲良くやれよ」



「シモン!? 君は何を言っている!?」



天元突破の光が弱まっている。やはり相当力を使ったのだろう。


この状態で、フェイトクラスの敵を後三体も倒すなど、無謀としか言いようがない。



「死ぬ気なんかないさ。待っている家族も・・・仲間も・・・こんな俺を好きだと言ってくれた娘たちもいるからな・・・」



だが、それでもシモンは行けと言う。


クロニアはしばらく目を瞑り、やがて起き上がれぬフェイトを抱えだす。



「テンジョウ家!? 君は!?」



「私とてアーウェルンクスシリーズを三体も相手に出来ません。ましてや、一時の感情でシモンに加勢をして全てを無駄にするわけにはいきません」



クロニアはシモンの加勢をしない。



「シモン・・・私はあなたに手を貸しません。その代り、あなたの最後の頼みだけは聞き入れましょう」



その言葉を聞いて、シモンは小さく笑った。


その横顔を見て、一瞬切なそうな表情を浮かべるクロニアだが、すぐに背を向けて小さくつぶやいた。



「私も・・・もっと早く・・・あなたに会えていれば・・・何かが違ったのかもしれませんね・・・」



クロニアはフェイトを抱えてその場から離脱する。



「ま、まて・・・シ・・・シモン!?」



身動き取れないフェイトの声が聞こえてきた。



「うん・・・あんたはホンマにアホなんですな~」



追撃する気は無かったのか、フェイトとクロニアに対して攻撃するそぶりも追手を差し向ける様子も月詠にはない。



「大人しく逃げ惑えば少しは生き延びれましたのにな~」



あくまでも狙いはシモンなのだと改めてシモンは実感した。


だが、それがどうした。



「逃げねえ、退かねえ、悔やまねえ、前しか向かねえ、振り向かねえ! ・・・自分で決めた事さ」



この期に及んで、シモンはそれでもいつものように笑った。


それが月詠には心底気に入らなかった。



「ふん・・・戯言や・・・フェイトはん一人に手こずっていたあんたに、これを打破する力は残ってないですえ?」



言われなくても分かっている。もう、シモンの身体は限界だ。



「もう、そろそろ僕たちもやっていいかい? この男は面倒な相手なんだろう? 一瞬で炭屑にしてやろう」



「一瞬で終わらせる」



「永遠の園へと案内しましょう」



そう、限界のはずだった・・・


アーウェルンクスたちも、そう思っている。



「うふふふふ、ほな! いてまえ! 四肢を切り刻みなはれ! トドメはウチが直々にさしたりますえ!!」



月詠の合図とともに飛び出す三体のアーウェルンクス。



「あんたの役目はもう終わりや!! この場でその歴史に終止符を打ってさしあげますえ!!」



それぞれ三種の魔法を宿して、同時にシモンに向かって襲い掛かった。



「さあ、燃やし尽くしてやろう。だが、少しぐらい粘ってもらわないとウォーミングアップにもならな―――」



だが・・・




「天元突破ギガドリル・マキシマム!!!!」




三体のアーウェルンクスシリーズから放たれた呪文など一瞬でかき消して、その余波だけでシモンは三体を四散させた。



「なっ!?」



そう、月詠はまだ分かっていない。



「まだこんな力を!?」



だから当然このアーウェルンクスたちも分かっていない。



「こ、この男!?」



「ッ!?」



「何という桁外れなエネルギーなのでしょう!?」



例え潜在能力はフェイトと同様であろうと、シモンがどれほどの状態であろうとも、彼らはまだシモンのことを分かっていない。


そして、知らないのだ。



「俺に終始を打つ?」



ここに居るのは誰が何と言おうとも、シモン。



「この俺を、ねじ曲がったお前の狂気なんかで・・・フェイトに顔が似ているだけの奴らを三人引きつれたぐらいで・・・打ち砕けるとでも思ってやがったのかよ!」



まるで命そのものを燃やしているかのように、輝く螺旋の光を纏ったシモン。



「あの時・・・俺たちは・・・、地下から地上へ、地上から世界へ、世界から宇宙へ、宇宙から銀河の果てへ、やがては全銀河を巻き込んで、それこそ全身全霊の命を懸けて戦い抜いた!」



その圧倒的な存在感が、空間を満たしていたはずの月詠の狂気をかき消した。



「例えあの戦いが終わり、俺の手元にグレンラガンが無くても、あの時代のあの銀河を戦い抜いた俺たちの命を! お前ごときに終止符を打てるとでも思ってやがったのか!!」



月詠も、そして目覚めて今日初めて目にしたシモンという男を、彼らは改めて知る。




「あまり俺たちをなめるなよ! 俺たちを誰だと思っている!!!!」




そう、これがシモン。



「くっ、やってくれる! だが、既にフラフラの状態でそれほどの力を出せばどうなるか、後悔させてやろう!」



炎を纏ったアーウェルンクスが瓦礫をかき分けてシモンに言う。


彼らもまた、たった一度圧倒されたぐらいで引くことは無い。


何よりも、彼らにはそういう選択肢はできないようになっているからだ。


だからこそ、言われたとおりにシモンに向かっていく。



「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」



一方でシモンは口の中に苦い味が広がった。


それはシモンの血だ。


いい加減、シモンの肉体が天元突破という途方もない力に耐えきれなくなったのだ。


身体も徐々に思うとおりに動かなくなりそうだ。


だが、それでも戦うのがシモンであり、大グレン団だ。



「たとえ体が動かなくても・・・気合で戦う。たとえ気合が無くても・・・魂を振り絞る! 魂が欠けたら命を懸ける! お前らなんかに、そう簡単にはやられねえ!!」



迫りくる敵。


シモンは全身のダメージを吹き飛ばすかのごとく叫んで、正面から敵を迎え撃つ。




「無理を通して道理を蹴っ飛ばし・・・この命を燃やし尽くしてでも、俺は最後まで足掻く!!!!」




新たなる脅威を前にしても、決して揺らぐことなく抗うシモン。



だが、この数分後・・・



異常なまでの心の強さを持つシモンをも揺るがすほど・・・



絶対にありえないはずの出来事にシモンは遭遇するのだった。






後書き


ゴメン! フェイトを倒しちゃった!! ぶっちゃけこいつはネギとはもう戦いません!

ネギについては、色々考えています。主人公のおいしいところ取りだけはしたくないので、フェイトと戦えない分、それを補うイベントをネギ君には与えます。

握力勝負とか今さらやってもしょうがねーし、コーヒーのお姉さんのエピソードも割愛し、何よりもセク子ちゃんたちも普通に出してしまいました。
まあ、違うとすれば三体まとめてシモンが戦い、出したのは月詠という感じですが。


さて・・・今回の話の展開・・・ダイの大冒険のヒムとヒュンケルの最後の戦いの後に出てきた、キーーーングマキシマムではないか!? じゃあ、ラーハルト的な人も登場すんの?・・・そう思った方は、残念ですがあまり期待はしないでおいてください。

しかし、どうも某理想郷のフェイトのイメージが強すぎて、自分でもこっちの小説のフェイトの性格が混乱してイマイチ分からない状態です。
とにかく綾波さんだけは出さないようにしなくては・・・
最終更新:2011年08月13日 23:22
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