第百三十話 今やらねえで、いつやるってんだよ! 投稿者:兄貴 投稿日:11/08/10-23:31 No.4452
「な、なんや・・・こんなん・・・あきまへん・・・」
月詠のどす黒い狂気がブレ出した。目の前の男の足掻きに動揺を隠し切れない。
「何を手こずってますのん! 相手はもう死にかけですえ!?」
だが、月詠の指示などなくとも、アーウェルンクスたちは全力でやっている。
「まだまだだ! ヒビだらけのドリルでも、回転すれば前へ進むことを教えてやる!」
それでも仕留められないのは、シモンという男が最後の最後まで足掻くと決めた時の底力なのだ。
「炎帝召喚!!!!」
「狂雷裂波!!!!」
「水龍砲!!!!」
造物主の使徒たるアーウェルンクスたちの絶大なる魔力。
本来並の生命体なら消滅して当然の威力なのだが、不運な事に彼らの目の前に居る男は並ではない。
目覚めたばかりの彼らの最初の相手が、この男であったことは不運としか言いようが無かった。
「天元突破ギガドリルバァーストォォ!!!!」
天元突破ギガドリルのバズーカー砲。かつてヨーコが使った必殺技。
あのヨーコの力に天元突破のエネルギーまで加われば、その威力は超絶。
アーウェルンクスが絶大ならば、シモンは仲間の超絶な力で迎え撃つ。
「「「ッ!?」」」
フェイトと少し違って、この三人は非常に表情豊かだ。
シモンの力に驚愕しているのがすぐに分かる。
「バカな!? この男、本当に人間か!? どこにこれほどの力が! おのれ・・・おのれェ!!」
仰々しい炎帝も、暴れ狂う雷も、水龍の咆哮すらシモンはまとめて打ち砕く。
「取り乱すな、クゥァルトゥム(4)よ。あれほどの力・・・長続きはしない・・・こうなったら僕が雷の速度で陽動する。その隙にセクストゥム(6)よ、彼を凍らせろ」
「承知しました」
四方に散ってシモンを囲むアーウェルンクス。先に出てきたのは、ネギのように雷の速度でシモンの周りを駆けるクゥィントゥム(5)。
「パワーは認めよう。しかし、雷の速度で駆け抜ける僕のスピードには手も足も出まい」
周りを鬱陶しく飛び回るクゥィントゥムの言葉に、シモンは笑う。
「僕は風のアーウェルンクス! 所詮は人の力で捉えることなど―――」
手も足も出せない?
嘗めるんじゃねえよと、唇をペロッと舐める。
「天元突破ソルバーニア!!」
「なにッ!?」
進化したシモンのドリル。シモンの膨大な螺旋力の力を凝縮した螺旋槍。拳闘大会で覚醒したこの力は、ネギの速度にも対応できる超速戦闘を可能とする。
「バ、バカな!? クゥィントゥムの速度とやり合っている!? たかが人間の分際でなぜこれほどの!?」
「速すぎます! これでは動きを捉えて凍らせることは不可能!?」
そうだ、これがシモンだ。
「僕の動きに・・・君は一体・・・」
「何度でも教えてやるさ。俺はシモンだ!! うおおおおおおおお!!」
「ぐっ・・・っ!?」
手も足も出ない速度だろうと、気合で追いかけ追い越す男。
「ちい・・・甘いぞ、人間! 隙だらけだ! 受けよ! 鉄を蒸散させる我が一撃!!」
「その手は食わねえ!!」
「なっ!? 受け止めた!? 我が灼熱の拳を!?」
その肉体、どのような灼熱の炎であろうと飲み込むマグマのごとし。
「くっ・・・氷結地獄(コキュートス)!!」
「出来るものかァ!!」
「氷が蒸発!?」
その熱は、冷たく暗い銀河螺旋海溝をも熱風で埋め尽くす。
「全員・・・・」
「「「ッ!?」」」
「歯ァ喰いしばれええええええええ!!!!」
そしてその拳はどんな壁をも打ち砕いてきた。
「あ・・・あ・・・なんということですかえ・・・・・・」
三人まとめて拳を打ち込んでぶっとばす。
例えボロボロになろうとも、むしろ今のシモンほど手ごわいものは無い。
そんなこと、己の快楽のために戦う月詠にも、目覚めたばかりのアーウェルンクスたちにも分かるはずは無かったのだった。
「バ・・・バカな・・・なぜだ!? なぜ造物主の使徒たる我らが三人がかりで、人間一人に手も足も出ない!?」
「この力・・・一体・・・」
「・・・・・・あなたは一体・・・・」
これが気合だ。
自分の意思を持たぬ人形たちに理解できるはずがない。
命令通りにしか動かない人形も傷つきながら動揺している。
「この男、化け物や。強すぎますえ。これほど追い詰められたというのに、これだけの力をまだ出せるとは」
もっともシモンは一人ではない。幾多の頼もしき仲間たちの力を抱えているのだ。
「くっ・・・注意すべきはスプリングイールドの血族ではなかったのか? 奴は何者だというのだ! 僕らには記録されていないぞ!」
どれほど神の力を叫ぼうと、大グレン団たちはたとえ相手が神でも蹴っ飛ばす。
「俺を一生覚えておけ。大グレン団・・・いや、新生大グレン団のリーダー、穴掘りシモンだ」
天元突破の光が最大限に達する。
「大・・・グレン団?」
「穴掘り・・・」
「・・・シモン・・・」
正直、シモンは今すぐ倒れたいほど疲労困憊だ。
少しでもゆるめれば、体が引き裂かれてしまうほど、天元突破の力が身を切り刻む。
だが、こういう時は疲れない。
こういう時は痛くない。
全ての感覚を凌駕して、シモンは最後の一撃を放とうとする。
「そしてェ・・・これがァ!!!!」
右腕を天に掲げると、螺旋エネルギーがシモンの右腕に渦巻いて凝縮し、巨大なドリルを創り上げる。
――まずい!?
シモンの記憶映像を見た月詠だけでなく、シモンを今日初めて見た三体のアーウェルンクスたちも表情を強張らせる。
――これをくらったらダメだ。絶対にダメだ。
彼らの本能がそう告げていた。
だが、このままではどうしようもない。
(あきまへん・・・これは計算外ですえ! まさかこの男にこれほどの底力がまだ残っていたやなんて、信じられまへんですえ!!)
イカレていたはずの月詠がいつの間にか元に戻っていた。
(なんちゅう・・・体力にケガ・・・おまけにグレンラガンゆうのもなく・・・どうしてこないな・・・)
負ける?
これほど憎く、憎悪にかられ、殺意を抱いた相手に一矢も報いることができないのか?
動揺する月詠の頭の中はパニック寸前で色々なことが頭を駆け巡った。
だが、しかしその時に月詠の身体に電流が走った。
「ん?」
それは、皮肉にもシモンを見ていて思いついたこと。
そしてそれは悪魔の閃きでもあった。
(ん? グレンラガン・・・・・・・そや!)
その瞬間、月詠の瞳が再び魔に魅せられた瞳へと変貌した。
「ひはははははははははははは! 確かにこのままでは敵いまへんけど、これならどうですかえ?」
月詠は、狂乱しながら造物主の掟を動揺する三体のアーウェルンクスに向ける。
アーウェルンクスたちは何をする気かと月詠に振り返ると、月詠は三日月のように吊り上った笑みを浮かべながら叫ぶ。
「グレンラガンからヒントを得ましたえ! これが究極の神へと通ずる力! アーウェルンクス・強制合体!!!!」
「「「「ッ!?」」」」」
「ひはははははは、鬼芽羅の術!!」
それは、世界最悪の鬼の術。
その瞬間、三体のアーウェルンクスが吸い込まれるように引っ張られる。
「なっ、貴様!?」
「僕たちに何を!?」
「ぐっ・・・がっ・・・あああああああああああああああ!!!!」
強制的に肉体を変化させ、意思など関係なく三体のアーウェルンクスは一つとなり、形を変えていく。
「バっ・・・テメエ! 何をやってやがる!」
「あんたが大好きな合体ですえ? ひはははは、ええヒントもらいました」
意思など関係ない。
アーウェルンクスの起動の鍵となる造物主の掟を所持する月詠だからこそ可能。
やがて姿かたちを変貌させて一つとなったアーウェルンクスは、光に包まれて閃光が弾ける。
「こ、これは・・・」
シモンも背に冷たい汗が流れた。
神々しく輝く光。
その光の中から生まれるのは文字通りの神なのか、それとも悪魔なのか。
徐々に収まる光と共に、ようやく中から一人の人型の者が出現した。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
現れた者は無言のまま己の手足をジッと見つめる。
ただ、その何でもない仕草だけでも決して目が離せぬほどの存在感を醸し出す。
「がっ・・・合体しやがった・・・」
その者は顔つきこそフェイトの面影が残っていた。しかし、明らかに何かが違う。
白髪だった髪の色が輝く銀髪のロングヘアーと化し、男とも女とも取れるような中性的な印象を感じる。
だが、そんな見てくれなどは正直どうでも良かった。
ただ、シモンはその存在を未だに測れないでいた。
強いのか、怖いのか、底がどれほどなのか。
月詠だけは笑っていた。
「ひはははははははは、最高ですなァ!!」
もう先ほどの動揺などは欠片もない。ただただ、ニタリと彼女は笑った。
「4+5+6=15!! 一体一体がフェイトはんと同等なら、三体合体すればフェイトはんの3倍の力!! さあ、目覚めなはれ!! 世界の究極守護者!! クィーンデキム(15)!!!!」
アーウェルンクスの合体。
ただでさえフェイトにソックリな存在が現れただけで面倒だったのに、この展開はシモンも予測不可能であった。
そして、月詠に名を与えられた新たなるアーウェルンクスのクィーンデキムは静かに動き出す。
「クィーンデキム・・・それが我の名か・・・・・・・」
空気が重い。
だが、だからこそシモンは今動く。
「知ったこっちゃねえ!! フェイトの3倍だと? 合体ってのは、そんな単純なもんじゃねえ!!」
今ここで終わらせなければ、大変なことになる。シモンの本能が戦いを急がせ、ギガドリルの回転速度が増す。
「合体ってのはなァ、心と心のぶつかり合いなんだよ! 誰かに無理やりやらされたもんなんか、合体だなんて認めねえ!!」
今こそ放つ。今打たないとマズイ。
この後ぶっ倒れても構わない。元々温存できる力などもはや残されていない。
この一撃だけで全てを終わらせるべく、限界突破したシモンの螺旋エネルギーを凝縮したギガドリルが完成する。
「天元突破ギガドリルブレイクゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」
正にそれは壁などまったく気にせず突き進む、天も次元も貫くドリルであった。
だが・・・
「ふむ・・・」
シモンのギガドリルを前にして顔色一つ変えずにクィーンデキムは右手を前に突き出す。
するとその手にいつの間にか『造物主の掟』が所持されていた。
「リライト」
シモンもその動きは察知した。だが、気にしなかった。
「それは俺には効かねえ!!」
シモンにとってリライトという存在は、魔法を無効化できるぐらいのイメージしかなかった。
そして、魔法使いでもなんでもない自分には、そんな能力は全く通用しないことも分かっていた。
だからこそ気にせず突き進み、その結果―――
「んなッ!? クィーンデキム!?」
月詠は一瞬で顔面蒼白となった。
何故なら、一体だけで世界最強クラスのスペックを誇るアーウェルンクスシリーズが三体も合体して生み出されたのがクィーンデキムなのだ。
まさかその登場した瞬間、シモンの一撃で呆気なく存在そのものを消滅させられるなど思ってもいなかったからだ。
「勝った!」
シモンは勝利を確信した。
「んな・・・なんちゅう・・・ウチは・・・こないなバケモンを相手にしとったんですかえ?」
「何でもいいさ。俺たちが何者かを少しでも分かってもらえたらな」
間違いなく天元突破ギガドリルブレイクは直撃し、クィーンデキムは反撃も防御もすることなく消滅した。
残る力の全てを出し尽くしたシモンは気が抜けたのか、その瞬間に天元突破モードをようやく解いた。
「ふう・・・でも・・・・さすがに今回ばかりは・・・俺も疲れ・・・」
天まで達するかのごとき螺旋の炎は消え、生身となったシモン。
もう力も残っていないが、月詠は既に戦意喪失であろうと見定めたシモンはようやく肩の力が抜け、終わったと思った。
だが・・・
「正に人の進化の極みだな・・・」
「!?」
その言葉は、何事も無かったかのように突然聞こえた。
「しかと受け止めた。感服した」
ありえない!
確かに存在そのものを消滅させたはずである。
だが、驚いて振り向いたシモンの瞳には、傷一つついていないクィーンデキムがそこに居た。
「バ・・・バカな!?」
「クィーンデキム!? 生きとったんですかえ!?」
月詠も驚いている。
「そ、そんなはずはない!? た、確かに俺はお前を・・・!?」
だが、当然だ。シモンとて自分の手に奴を貫いた確かな感触がまだ残っている。
だが、貫かれたどころかクィーンデキムは傷も、服の汚れすら皆無で、誕生した瞬間とまるで同じ姿をしていた。
「リライトだ」
何がどうなっているか分からぬシモンと月詠に、クィーンデキムが答えた。
「な、何言ってんだ!? それは魔法や魔法世界の人たちを消す力だったはずだ! 魔法世界の人間じゃない俺には通じないはずだ!」
そう、通じないはずであった。
だが、それはシモンが相手の力を勝手に決めつけていただけのこと。
造物主の掟には、シモンの知らない更なる先があったのだ。
「リライトは消す力だけではない。再生させる力も持つ。我は確かにそなたの一撃で一度は消滅した。だが、時間差で発動させたリライトで我を再び復活させただけだ」
「なっ!? さ、再生だと!? しかも一度消滅してから!?」
「始まりと終わり・・・そして新たなる始まり・・・ゆえに、我は不滅」
シモンは難しい言葉はよく分からない。
「この異界は地球と繋がった・・・我の主が眠るあの学園とな・・・だからこそ可能な力であったわけだがな」
これまでも相手の反則級の能力に対しても、よく分からないが無我夢中で飛び込んで、そして勝ってきた。
だが、今回のリライトという力は理解せざるを得なかった。
なぜなら・・・
「・・・何で・・・そんな・・・」
「何がだ? 人間よ」
「どうして・・・簡単に・・・消したり・・・・生き返らせたり・・・そんなもんじゃねえだろ・・・命ってのは!!」
なぜなら、魂を別の世界へ運ぶ「完全なる世界」と違い、今目の前で使われた魔法は一度消滅した存在を書き直して元に戻すこと。
今日消されて「完全なる世界」という幻想空間に封じ込められた魔法世界の人たち。連れ去られた魂を再びこの世界に呼び戻すということであるならば、シモンもそれは納得することができた。
だが、一度死んだ存在をもう一度生き返らせるという行為は、シモンの中では絶対に踏み出してはいけない領域だった。
あれは、アンチスパイラルとの戦いが終え、ニアという最愛の女がこの世から消えた時のことだった。
――どうして螺旋の力を使わないんですか。あの力があれば、ニアさんだって蘇る。それだけじゃない。死んだ人たちだって
ギミーが言った言葉。それを制したのはヨーコだった。
――シモンは神様じゃないわ
だからこそ、シモンは使わなかった。
使えるか使えないかの問題ではない。自らの意思で使わなかったのだ。
――死んだ者は死んだものだ。無理に蘇らせたって、後に続く連中の邪魔になるだけだ
あれが全ての、地下の世界からカミナと共に始まったシモンたち大グレン団の旅の答えだった。
「ふざけるんじゃねえ!!」
だからこそ、そんな力は認めない。
認めたら、自分たちは一体何だったのだと思ってしまう。
人は人。自分は自分。そんな理屈もこれだけは絶対に受け入れることは出来なかった。
だが・・・
「ふむ、人の生死を自由に扱うことは、確かに人間の領域を超える所業だ。しかし、それはそなたら人間の価値観だ」
クィーンデキムはシモンの心からの怒りに、ケロッと返した。
「そなたらと我では命に対する価値観が違う。我は生命を創り、世界を管理する神の使徒だ。神とヒトの価値観が同じであるはずがないであろう」
守護者だとか管理者だとか、そう自身を呼んでいる者たちはいたが、流石に自身を神と名乗るほど思い上がった者は初めてだった。
「な・・・んだと? ふざけるな・・・何が神だ!」
もう、天元突破の炎は燃え上がらない。だが、シモンの心はかつてないほど燃え上がる。
こいつを認めるわけにはいかない。
絶対に負けるわけにはいかないと、シモンは奮起する。
だが・・・
「ふむ・・・納得いかぬのであれば、神の御業を括目するがよい」
クィーンデキムに、三体分のアーウェルンクスの魔力が漲っていく。
「ヴィシュタル・リシュタル・ヴァンゲイト・・・」
フェイトの三倍。単純計算では確かにそうだが、果たしてその力は・・・
「カラミタス(大災害)」
「ッ!?」
雷鳴、突風、炎上、灼熱、大洪水。
三体の時は、各々の属性の魔法をバラバラに放っていた力が、今では惑星の自然災害が天罰を与えるかのように同時に巻き起こった。
「ヒトは歴史を重ねて大きく進化し、星に生ける大自然を破壊するまでに至った。だが、一度自然が猛威を振るい天変地異が巻き起こったならば、脆弱なるヒトという種に抗う術はない」
シモンは壁に激突してすぐに立ち上がれなかった。
「そなたが抗えぬのは必然。だが、恥じることではない。そなたと我では生命としての立ち位置が違うのだから」
耳障りな言葉が聞こえる。しかし、今のシモンはすぐに反発できなかった。
別に相手の魔法がどうとか、力がどうとかではなく、そもそもの肉体の痛みと疲労が完全にピークに達していたのだった。
もはや、「生きている」というだけで何もできない状態なのかもしれない。火傷やら凍傷やら痺れだとか、もはや痛みの種類も判別できなくなっていた。
「ひははははは、さすがですなァ!! やはりウチの機転は正しかったようですなァ!! 穴掘りシモン! これまでですえ! あんたの時代も役目も、これでお終いですなァ!!」
もう、月詠の声も遠くに聞こえてきた。
(俺の・・・役目・・・くそ・・・何を今さら・・・)
自分の意思とは関係なく、力が入らぬ体を引きずりながら、不意にシモンは月詠に言われた言葉を繰り返した。
自分の役目は終わり? 薄れゆく意識が、徐々にシモンの心を傾けていく。
(いや・・・ひょっとしたら、俺の役目は・・・ギミーにコアドリルを渡した時点で本当は終わっていたのかもしれないな)
それは、不意に見せた心の弱さ。
(でも、何かくすぶってるものがあった・・・そんな時にネギたちと出会った・・・)
俯きながら、もう十分なのではないか? と誰かに語りかけられているようにも感じた。
(でも・・・もう充分なのかもな・・・俺たちの意思を受け継ぐギミーとダリー・・・ネギたちもまた自分の道を見つけ、その道に向かって努力を続け・・・そして俺は今・・・新たな友の命を守ることも出来た・・・)
自分の役目など関係ない。最後の最後に、フェイトという新たな友の命を守り、希望を未来に託した。
自分は十分戦った・・・
例え自分が消えても・・・
きっと後から続く者たちが・・・
「・・・だなんて・・・死んでも言うわけがねえだろうが!!!!」
こんな所で終われない。
もしこんな所で、自分で自分を良くやったなどと言って諦めてしまえば、一体自分は何人の仲間に「歯ァ喰いしばれ」と怒鳴られてぶん殴られるか想像もできない。
何よりも・・・
――ならばこの宇宙・・・必ず守れよ・・・
奴が許してくれるわけがない!
そして散って行った仲間や宿敵だけではない。
――失った仲間や、女、そして貴様らの先祖たちに、掴んだ明日とまだ見ぬ世界を見せてやれ! それが貴様の役目だ!
ヴィラルが託してくれた。
――お前は世界のうねりの真ん中に居続けろ。そして駆け抜ける新たな時代の先頭に立ち、その背中を後から続く者たちに見せ続けろ!
ラカンが教えてくれた。
「俺はまだ・・・生きている!!」
生きている限り自分が背負った役目。倒れていった者たちと後から続く者たちの想いを抱え込んで生きていくこと。
託され、諭され、そして最後は自分で決めた道だ。
シモンの役目はまだ終わっていない。
「負けねえ。こいつだけには絶対に負けるわけにはいかない!」
だからこそ負けられないと、シモンは奮い立つ。
例えその手に、もはやドリルを生み出す力もなくとも、足掻いて足掻いてジタバタしてやるとシモンの瞳が訴えていた。
「ふむ・・・虚勢とは思えぬ気迫。天晴だ。称賛に値する」
そんなシモンに対して新たなるアーウェルンクスが発した言葉は嘲笑でも皮肉でもなく、称賛であった。
「我からすればそなたは脆弱なるヒトに過ぎぬ。しかし、凡庸でないことは認めよう。先に放たれた一撃を持ってしても、そなたから感じた力は通常ではありえぬ時間と道を経てたどり着いた境地と見た」
クィーンデキムは明らかな上から目線でシモンに感嘆した。
「その気迫・・・そして我を一度でもその力を持って消滅させたこと・・・人の進化の果てが生み出す力は比類なき物であった。だが、そこまでの境地に達した力は、返ってこの世に利を生み出さぬ」
もっとも、褒められたところでシモンは微塵もうれしくなかった。
「人の進化の極みが神の領域にまで達すると知った以上、そなたを脅威とみなし、またそこまで道を極めた者としての敬意を表して我が引導を渡してやろう」
だが、勝手に語りだし、勝手にシモンを称賛し出したクィーンデキムは、そのまま勝手な事を言い続け、勝手に終わらせようとする。
「しかし、シモンとやら。例えその存在が消滅しても、そなたはこの幻想のみの魔法世界において我が見た唯一の本物として、その存在を永劫に我の中に刻もう」
そして勝手に締めくくりの言葉を述べて、次の瞬間にはシモンを消滅させるための魔力を掌に凝縮させて放とうとしていた。
シモンからすれば、ふざけんなの一言である。
「人間を・・・なめんじゃねえ」
命は惜しい。
だが、今はそれすらも懸けてしまわねばならぬと感じているシモンは、ただただ自分の本能、精神、そして細胞に至る全てに向かって叫ぶ。
(頼む・・・俺の中に存在する螺旋の力・・・俺は・・・この場で燃え尽きてもいい。今、戦える力があればいい! たった一つの命で生き抜くこと・・・それを・・・その強さを・・・重みを・・・こいつに分からせてやるまでは!!)
命を捨てるわけでも投げ出すわけでもない。ただ、燃え上がらせるのだ。
「たとえこいつが神だろうと・・・食い尽くせねえ・・・ありったけの魂でなァァァァァァ!!」
その瞬間、クィーンデキムの滅びの魔法が放たれる。
「滅びよ」
避けなくては死。
しかし、シモンはただ叫び続ける。
「今やらねえで、いつやるってんだよ!!!!」
今こそ命を燃やし尽くしてでもと・・・
だが・・・・・・・・
「それでも死んだら終わりネ」
シモンの目の前に、誰かが現れた。
「え・・・?」
シモンは目を疑った。
「そんなことは絶対に許さないヨ。例えこの世の道理を捻じ曲げようとも」
突如現れたのは、黒髪の謎の女。
後姿だけだが、自分と同じぐらいの年齢に見える。
ただ、気になるのはそんなことではない。
現れた女は、放たれたクィーンデキムの極大呪文に対してシモンを庇うように正面に立ち、小さなドリルのアクセサリーと懐中時計を取り出して、呪文に向かって構える。
「見るがいい、シモンさん。私が未来で見つけたコアドリルとカシオペアの科学と魔力を融合させれば・・・・・・」
コアドリル? カシオペア?
次の瞬間、女の前にはブラックホールのような黒い渦が巻き起こり、クィーンデキムの魔法を吸い込んでかき消した。
「・・・ッ・・・そなた・・・何者・・・いや、何をした。我の魔法が消えた?」
クィーンデキムもこの瞬間、少し眉が動いた。現れた謎の女に、消された力。
その原理を理解できないでいた。
すると、女は答える。
「ただの時空間の狭間ネ。あなたの魔法はチョビッと面倒だたので、何もない時空間に吸い込んで爆発させただけネ」
その答え、別にシモンは理解する気はないし、聞いてもいない。
ただ、目の前の女に目を奪われていた。
「お、・・・お前は・・・・ま・・・まさか・・・まさか・・・」
その女はどこかで聞いた口調と、どこかで見たことのあるようなお団子を作った髪型。
「おやおや、どうしたシモンさん? あまりにもスーパー激烈美人に成長した私に見惚れたカ?」
そして何よりも、かなりボロボロで男物なのか少しサイズが合っていないように思えるが、紛れもなく大グレン団のマークが刻まれたコートを纏っていた。
「はっはっはっは、昔はあなたに良く驚かせてもらたからネ。逆にこっちが驚かせると、勝った気分になるヨ」
そしてそのコートは見覚えがある。
それは、シモンがかつて銀河の果てで激戦を繰り広げてきた時に纏っていたコート。
だが、それはあの女に渡した。
ネギの生徒のクラスメートで、木乃香たちと同じ年。
シモンを大グレン団のシモンと知りながら、真っ向から勝負を挑み、そして己の成すべきことを成すために学園祭の時に別れたあの女。
「私がどこの世界のどの時代の誰の傍に居ようとも・・・私の生き方も道も私が決める。だから私は自分の意思で、自分で決めてここに来た。ちょっと骨休みも兼ねた小旅行気分でネ♪」
餞別に渡したコートは、当然中学生の彼女には大きくてブカブカだった。
しかし今の彼女は、サイズこそピッタリではない物の、それでもちゃんと着こなし、それどころかむしろサマになっていた。
「な・・・なんや・・・なんやあんたは!!」
月詠が叫ぶ。
すると女は、ニヤリと笑みを浮かべて告げる。
ゴゴゴゴと背後に効果音を響かせながら・・・
「かつてはナゾの中国人発明家! 便利屋、恐怖のマッドサイエンティスト! また、スーパー天才美女にして人気屋台超包子の元オーナーの火星出身の火星人!!」
ツッコみたい衝動に駆られるシモン。だが、今はまだツッコまない。
「しかし今では!!」
間違いない。シモンの知っている彼女よりも成長して大人になって見違えたが、この女は間違いない。
「今では、大グレン団の伝説受け継いだ、時空突破の超鈴音!!!! 只今婚活中ネ!!!!」
超だ。
「私を誰だと思っているネ!!!!」
遥かなる時を超え、シモンの宿敵である超鈴音が逞しく成長した姿で、シモンの窮地に緊急参戦した。
今ここに、麻帆良学園祭以来の宿命・・・
最強タッグが復活した!
後書き
アーウェルンクスの合体した人は、ハンターハンターのアリキングの口調を意識しました。
さて、この小説は色々な女性にシモンフラグが立っていますが、正直それはオマケです。
必ずしも主人公に恋愛感情を抱いている女キャラがヒロインではないのです。
ですので、私としては木乃香とかエヴァとかをヒロインとは思っていません。
真のヒロインとは男を成長させる女か、男が全てをむき出しにして向かい合える女というのが私の考えです。
だからこそ、シモンが大グレン団の誇りを懸けて戦った第一部の実質的ヒロインである超鈴音。
このまま第二部では出番なしなんて神が許しても私が許さん。
というわけで、広い心でご都合主義をお許しください!!
ついに出しちまった! だが、もう知らん! とにかくシモン好意度ランキングダントツ一位のアダルトバージョンの超鈴音の登場です。
何故大人バージョン? シモンと同じ世代で同じ目線で並ばせたかったのと、正直これからの原作の流れ次第では15歳の超鈴音が再登場する可能性もあります。
その際に混乱しないように、こっちでは成人バージョンを出しました。
ドラゴンボールのトランクスが赤ん坊の時の自分を抱っこできるように、同じ時限に二人居てもいいだろうという結論に至りました。
というわけで15歳の超鈴音が来た未来から、更に数年後の未来から来た超鈴音の登場です。
どうやって来た? チートな能力と科学力で・・・まあ、世界樹も光ってるし・・・
最終更新:2011年08月13日 23:22