アットウィキロゴ

131-久々にアレをやるぞ!

第百三十一話 久々にアレをやるぞ! 投稿者:兄貴 投稿日:11/08/19-13:56 No.4453
人を驚かした回数は数知れず。


自分たちの行いに良いも悪いも別にしてとにかく大口開けて驚いてもらうと、何だか気分も良かった。


シモンはこれまでどれほど強い奴らでも、どれほど頭のいい奴だろうとも、すべからく自分の振る舞いや行動に皆が驚いてくれた。


だが、今日この瞬間だけは逆だった。


正に過去最高レベルの雷に打たれたかのごとき衝撃だった。



「なに・・・やってんだよ・・・なんでお前が・・・っこ・・・ここに・・・」



口がうまく回らない。それだけシモンも動揺していた。


ただの懐かしい再会とは違う。シモンにとっても、そして彼女にとってもお互いが決して浅い間柄ではないのだから。



「はっはっはっは。うむうむ。シモンさんのポカン顔を見れただけで来た甲斐あったネ♪ さらに、毎日最高最新の技術を駆使したエステを行ってよかたネ!」



シモンの驚き顔に大満足の成長した超鈴音。


彼女はシモンの知る彼女よりも遥かに成長した容姿でありながら、その表情はイタズラが大成功した悪ガキのような笑みを浮かべて、中学生時代の超鈴音の面影が確かにそこにあった。



「ふっふっふ、肌のハリは中学時代にも引けを取らず、身長、バスト、ウエスト、ヒップ、四大要素に死角なしネ!」



超はモデルのようにポーズをとりながらシモンに自分のボディを見せびらかす。



「どうネ? どうネ♪ 私も少しは綺麗になたカ? 惚れるカ? ズキューンカ?」



「い、・・・いや・・・そんなことより、お前は何やって・・・」



「はっはっは、どうした? 細かいこと気にしないのが私の知るあなただたが?」



「細かいとかってレベルじゃないじゃないか!?」



シモンはポカンとしているが別に見惚れているわけではない。ただ、目の前の光景が嘘か現実かの区別がまだついていないのか、彼女に見入ってしまっているのは事実であった。



「妙な力を使うな・・・人間よ。我が解析できないとは・・・」



呆然とするシモンに大満足の超をよそに、クィーンデキムがゆっくりと二人に語りかけてきた。



「おお、まだ居たのカ? ビックリドッキリラブリーな再会場面に盛り上がりのないツッコみは空気読めなさすぎネ」



「時空間を扱う力・・そのようなものが・・・時空間魔法などこの世のどの魔道にも不可能な術。その力・・・本物であるか?」



「そして無視カ? 広い世界も宇宙も知らない生まれたてのお子様が、よくそれで神などと名乗れるネ」



すると、再会に水を差された超鈴音は少しだけムッとしながら、しかし表情は笑顔で答えた。



「それにしても、アーウェルンクス合体とはネ。まったく、シモンさんがこの世界に来なければこんなメチャクチャな合体も誕生しなかったのではないカ?」



「なっ・・・えっ・・・あっ・・・・」



超は途端にシモンに話をふる。そもそも月詠がグレンラガンの物語さえ見なければ、こんな合体戦士も生み出されなかった。


そういうシモンが原因で予測不能な事態が巻き起こり、大変な目にあったことはシモン自身も心当たりがいくつもあった。


しかし、それでも・・・と超は苦笑する。



「しかしそれでもシモンさんが居たからこそ、伝説が生まれた。その伝説に私は夢を見た時もあれば失望して荒んだ時期もあった・・・だが、今ではこれで良かったと思っているネ」



「超・・・」



「遠い過去をまだ見ぬ明日につなげる・・・私の存在が、あなたがその役目を全うする証拠でもあるネ」



軽くウインクで笑う超。そこには昔の面影があった。


こうやって、軽口で冗談めいた口調でありながら、所々に本心を混ぜ入れる。


こういう彼女らしいところが、シモンにとってうれしく感じるものであった。



「ふむ・・・検証してみるか」



だが、そんな感情はクィーンデキムには関係ない。彼はまるで試すかのように魔力を掌に集い、詠唱なしで放ってきた。



「ちゃ、超!? 危な――」



「あ~、はいはい。シモンさんは慌てなくていいネ」



すると超は大して慌てるそぶりもなく、彼女自身が未来から持ってきたコアドリルをカシオペアに突き刺し、それをクィーンデキムの魔法に向かって突き出した。



「時空間結界」



「ッ!?」



超は一歩も動いていない。それどころか、軽く手を突き出しただけでクィーンデキムの魔法を彼女が展開した別空間へと通ずる穴の中に吸い込んでしまった。



「なっ・・・そなた・・・何をした・・・」



クィーンデキムは動揺しているわけではないが、少し眉が動いたのが分かった。

すると超はそのわずかな変化に満足したのか、余裕たっぷりの笑みを浮かべてネタばらしをする。



「無駄ネ。あなたの魔法は全て私の展開する空間結界に吸い込まれ、どことも知れぬ異空間で永遠に漂流している。私の前にあなたの魔法は届かないヨ」



「な・・・に?」



「これが私のコアドリルに込められた螺旋力と魔力と科学力の合体で生み出した、私の力」



目を見開くクィーンデキムは超の力に驚愕しているのか、恐れているのは分からない。


ただ、シモンは何だかよく分からずツッコむが・・・



「超・・どういう・・・大体、コアドリルをどうしてお前が!?」



「大丈夫ネ。シモンさんはどーせ理解できないから。要するに気合ネ」



「いや、多分違うんじゃないか!?」



「こ~まかいこと気にしないネ♪」



超は余裕を見せて大笑いする。


だが、隙だらけだ。これほどのレベルの戦いにおいて、それは命取りとなる。



「自惚れるな。人間よ」



「・・・オロ?」



「いかに空間を自在に操ろうと、ゼロ距離では自分自身を巻き込むゆえに空間魔法は使えまい。ゆえに接近戦ならば貴様は―――!?」



瞬動術のように瞬間的に超の背後に回り込んだクィーンデキムは、そのまま超の胴体を手刀で貫通させようとする。


だが・・・



「き、消えた!?」



クィーンデキムの目の前で、超は何の前触れもなく消えた・・・



「爆裂螺旋寸勁!!」



そして急に消えたかと思えば、超はいつのまにか右腕にドリルを装着し、クィーンデキムを真上から叩きつけていた。



「な、なに!? 超がドリル!?」



「な、何が起こったんや!?」



超がやられたのかと思えば、気づけば超の右腕のドリルでクィーンデキムが床に叩きつけられていた。



「ぐっ・・・に、人間!?」



「ほう、胴体にドリル突き刺したぐらいではお眠にならないカ? といっても、あなたたちに死ぬとか生きるとかの話が通じるとは思えないガ」



その一部始終が一流剣士の月詠にも、今では最強クラスに足を踏み入れたシモンにも確認できないほどの動きだった。



「ぬゥ・・・いつまで我を足蹴にしている!」



「おっと・・・急に乱暴な口調になったネ」



正直なところ、クィーンデキム自身にそれほど痛みを感じているようには見えなかった。


彼に痛覚があるかも分からない。


だが、自分を消滅させるほどの力を放ったシモンには眉一つ動かさなかったクィーンデキムが初めて見せた荒い動作。


自分を踏みつけている超に対して見せたその態度が、この場での超の優位を物語っていた。



「ふふん・・・まっ、それがあなたの器ネ」



「ぬ?」



薙ぎ払うかのように超をどかそうとしたクィーンデキムから、アッサリと離れて距離を取る超は、両肩を竦めてクィーンデキムに言う。



「ちょっと相手が未知の技を使ったぐらいで動揺する。神ならこの世の全てを知っているはずなのにとでも勘違いしているカ? この世の全てを理解できるほど、銀河はそれほど狭くないネ」



「き・・・さま・・・我を愚弄するカ?」



「そして・・・」



「ッ!?」



いつの間にか姿を消し、そしていつの間にか現れた超の右拳が、真横からクィーンデキムの頬にクリーンヒットする。



「そして・・・銀河はそれほど狭くないうえに・・・底も浅くないネ!」



その拳には電流が流れていた。



「な・・・み、見えな・・・我が・・・」



そう、超のマントに気を取られていたが、超がマントの下に着ている服は、学園祭の時にも見た強化スーツであった。



「しかもこの拳!? 電流を帯びておるのか!?」



「おっと・・・ただの電流だけじゃないネ。この拳にはコアドリルを伝わって螺旋力も流れているネ!!」



「ッ!?」



効かないはずがない。


超の右拳でクィーンデキムはぶっとばされ、壁に強く激突した。



「バ・・・バカな・・・我がたかだか人間の動きに――」



・・・とクィーンデキムが負け惜しみを言おうとした瞬間、彼の下あごは、いつの間にか目の前に現れた超鈴音のアッパーで跳ね上がった。



「自惚れてはダメネ。世界を創って魔法世界人を創ったぐらいで神様気取りカ?」



それだけではとどまらず、左右の連打の猛ラッシュが超から放たれてクィーンデキムを滅多打ちにする。



「人間は何もない地上に世界を造り上げるネ。人と人とが寄り添い合い、愛によって新たな生命を造るネ。あなたのできることは、あなたが見下す人間にも意外と出来てしまうことネ!!」



クィーンデキムは防御しようとするが、次から次へと消えては死角に出現し、現れたと思ったら再び姿を消失する超の動きに手も足も出なかった。



「な、なんだ!? そなた、何者だ!? なぜ我が動きを感知できぬ!?」



この超の動きも、この場に居た誰もが目を逸らさずにいたのに確認できなかった。



「なんでだ!? 超は一体、どんな動きをしているんだ!?」



「わけ分からん!? 消えたり現れたり・・・しかも消えた瞬間、この世から存在そのものを消したかのように、気配が感じられまへんですえ!?」



そんなこと、本来ならありえない。いくら何でもこのメンツの誰もが超の動きを視認できないなどありえない。


ならばどういうことか?


つまり、普通ではありえない何かを超が行っているということだ。



「超・・・まさか・・・お前・・・クロニアと同じ・・・」



シモンの目に留まったのは、何故か超が所持している未来から持ってきたコアドリルとカシオペア。


それが何か関連しているのではないかとシモンは推測した。



「ご名答。時空間を利用した瞬間移動。螺旋力と時空間魔法を操れる私には造作もないネ」



そしてそれは正解であった。



「学園祭の時のような反則技だけでなく・・・お前・・・・」



「おっ、私をチート呼ばわりするカ? だが、シモンさんだけには言われたくないネ。大体こんなものは、使い古されたテンプレ能力ヨ」



何て奴だ。シモンは呆気に取られた。


だが、超の成長はこんなものではなかった。



「くっ・・・人間め・・・だがどれほど我を傷つけようとも・・・この程度の損害などリライトで書き直すことが・・・・・・ん?」



超にボコられたクィーンデキムだが、リライトさえ使えば何度でも元に戻る。・・・そう、彼は言おうとしたのだが、急に表情が強張った。



「あ~、無理無理ネ。あなたを殴ったときに確率変動を行い、あなたが造物主の力を運用できる確率を無効化したネ♪」



確率変動。



「なっ!?」



「な、なんやて!?」



「超・・・お前、確率変動まで!?」



シモンとて今夜にようやく目覚めたばかりの力を、目の前の超はアッサリとこなしていたのだった。



「どうネ、神様。雷とか炎とか水とか自然とか、空間とか時間とか確率とか、ましてや何かを造ることが神である存在証明とは言い難いネ。それぐらいのことは、人間にだって出来るのだから」



ゴクリと唾をのむ音が聞こえた。



「人間もやれば出来ることしか出来ないあなたたちが神を名乗るなど、人類が崇め続ける本物の神に対して失礼ネ」



唾を飲んだのはクィーンデキムだ。特に喜怒哀楽の表情を見せるわけではないが、その表情は無表情でありながら、何かに恐れて後ずさりしているように見える。



(バカな・・・我が何故下がる必要がある! 我は神の使徒ぞ!)



超が指を鳴らす。


すると、クィーンデキムの頭上に空間の歪みが生じ、その歪みから魔力の塊がクィーンデキムに降り注ぎ、直撃する。



「ぬう!?」



「それは、時空間に私がこれまで吸い込んでいた魔法の一つ。勿体ないので時空間を浮遊していた魔法をそのままあなたの頭上に繋げたネ」



「く、空間を繋げる!?」



「そう、時空間に過去も未来も関係ない。だからこそ造作もないネ。空間を繋げたり・・・歪曲させたりネ!」



「・・・・?」



超は何もない空間に向かって正拳突きを放つ。


すると、空間の歪みに超の右腕の肘から先が吸い込まれ・・・


「ぶごっ!?」


クィーンデキムの真後ろの空間に出現した歪みから超の右肘より先が出現し、そのままクィーンデキムの後頭部に超の正拳が直撃した。



「はっはっはっ、秘技・空間超えパンチネ!!」



更に超は、地面を思いっきり踏みつける。


すると踏みつけようとした足の膝から先が空間に吸い込まれ、クィーンデキムの真上に現れた空間の歪みから超の足が出現して、そのまま脳天を踏みつけられた。



「空間超えスタンプネ」



ニヤリと笑みを浮かべて歯をキラリと光らせる超。もはや誰もがツッコみを入れることすら出来ぬ次元の領域だった。



「ちょ・・・超・・・お前・・・」



「は、反則や・・・」



こんなもんどうしろと言うのだ? そうツッコみたげなシモンと月詠がクィーンデキムに対して憐れんだ眼差しを送っていた。



「どうネ? 意外と今シモンさんと戦えば、結構いい勝負ではないカ?」



かつての反則技にさらに磨きをかけ、しかもシモンと同じ螺旋の力まで使いこなしている。


そしてそれは、ただの反則と言うには憚られるものでもあった。


超は純粋な魔法使いではない。ましてや螺旋族でもない。


その彼女が、科学も螺旋も魔法も扱うとことに長けられるようになったのは、あの学園祭でシモンと彼女が別れてから、彼女自身の途方もない道のりがあったからだとシモンには理解できた。



「超・・・お前・・・」



そこまでたどり着くのに、あの学園祭の別れからどれだけの苦境に立たされ、困難を乗り越えてきたのだ? シモンは問いかけたかった。


シモンとて、今の力も能力も自然に身についた力でも修行などで得た力でもない。


どうしようもない状況下まで追い詰められ、傷つき、もうダメだと誰もが思いかけた時、それでも足掻き続けて覚醒したのが今のシモンだ。


ならば超はどうだ? お前はあれからどれだけの辛い日々を過ごしてきたのかと、聞いてみたかった。


だが、シモンはその言葉を飲み込んだ。



「ふふ~ん、シモンさん。あなたがグレンラガンで戦ったのは数年足らず。グレンラガンなしの戦いに身を投じて1年足らず。しかし私は、あなたという背中を追い続けて、何年も何年も螺旋と科学と魔法という物に身を委ねつづけたネ。それこそ科学書も魔道書も読み漁り、はたまた狂い笑いのユウサがかつて地球に放映した天元突破グレンラガンの映像をフィルムが擦り切れるほど見た結果、シモンさんの言葉の一語一句を暗記するに至るまで・・・さらにはあの堀田博士が・・・っと、これはネタバレになるから言ったらまずいネ」



彼女の笑顔が、「そんなもんどうでもいいじゃないか」と言っているように見えたからだ。



「とにかく、その背中に少しは追いついたのではないカ? だから、後は私に任せてのんびりとしていると良いネ♪」



この超の笑顔は自惚れではなく自信。



「さあ、ロートルのシモンさんに代わって、現役バリバリの私があなたの相手ヨ。アーウェルンクス、かかって来るがいいネ!!」



彼女が言った「私を誰だと思っているネ」という言葉は、自分の道を進み、掘り抜いたからこそ言えるセリフだった。



「苦難苦境、時も世界も超えて私はここまで来た。自らの意思で道を決めた私の溢れんばかりの想い、主に決められた生き方しかできない神の使徒に見せつけてやるネ!!」



世界も時間軸も違うが、彼女は彼女の道を進んで戦っていたのだ。


シモンはその拳をギュッと握り絞める。


怪我は治っていない。しかし、力を貰った。



「まったく・・・俺もオチオチと達観している場合じゃないな。大体、誰がロートルだよ」



途方もない成長を遂げた超鈴音という存在が、シモンに再び活力を注ぎ込んだ。



「おっ、死にかけのシモンさんが、まだ戦うと言うのカ?」



「無理やりお前が叩き起こしたんじゃないか。今思えば・・・学園祭の・・・あの時から」



「ふっ・・・あなたをただのシモンではなく、大グレン団のシモンとして戦わせた学園祭のことカ? 懐かしいネ。私の可愛い学生時代の話ネ。あれはとても楽しい思い出ネ」



「俺にとっては、ついこの間なんだけどな」



立ち上がったシモンには、笑みが浮かぶ。



「成長したお前を見ると、つい数か月前のことを懐かしいと思えるな」



その笑みは、どんな状況下でもいつだって活路を見出した自信に満ちたシモンの笑み。



「無理はやめるヨ。ここでシモンさんに死なれると歴史が変わってしまうかもしれないので困るネ」



超はワクワクとしながら、久しぶりに見たシモンのそのシモンらしい笑みに向かって問いかける。



「死んでたまるか。いつだって無理を通すのが俺だってことを、お前が一番分かっているはずだ」



彼女は今のシモンの言葉を聞きたかった。




「俺を誰だと思っている」




超はシモンには見えない位置で拳に小さくガッツポーズを作り、興奮抑えきれずにプルプルと震えている。


その目には、人によってはうれし涙が滲み出ているようにも見えた。


そんな表情をシモンには隠し、超はニヤッと笑って答える。



「半分違うネ、シモンさん。俺を?」



そう言われてシモンも返す。



「・・・確かにな・・・」



「うむ、俺を? とは、それだけじゃ足りないヨ」



「そうだな、俺だけじゃねえ」



その時、シモンと超。同じコートを着て、同じ大グレン団のマークを背中に背負った二人が並び立つ。




「「俺(私たち)たちだ」」




二人が並ぶ。




「行くネ」




それだけで神にも悪魔にも負ける気がしなかった。




「ああ、ダチ公」




最強タッグが復活した瞬間だった。



「くっ・・・じゃかしいですわァ!! アーウェルンクス三体だけで足りひんのやら、もっと密度を増すまでや!!」



超とシモンの存在感に憤慨した月詠が、造物主の掟を取り出して術を唱える。



「いでよ、百鬼夜行! そして合体や! 鬼芽羅の術!!」



百体の雄々しき鬼たち。今の月詠にはそれが限界だったが、それでもその百体の鬼をまとめてアーウェルンクスに向かって放つ。



「いつまで寝とるんですかえ! アーウェルンクスだが神だか悪魔だか、んなん関係あらへん! あんたはこのムカつくドリル男に邪魔したこの女をぶち殺してくれればええんですえ!!」



超にやられて這いつくばるクィーンデキムは強制的に鬼たちが肉体にまとわりつき、再び肉体を変化させていく。



「さあ、フェイトはんの3倍で足りひんのなら、強化された鬼ども百体合体でどや!! 思い上がった阿呆はどちらか、臓腑に至るまで思い知るがいいですえ!!」



凶暴で、強大で、既にフェイトの面影などまるでない醜く禍々しい化け物。


だが、もうこの二人にとってはそんなものはどうでも良かった。



「「そんなもんは合体じゃない(ネ)!!」」



何故なら・・・



「何人いようと関係ない」



シモンが居る。



「私たちのドリルは掘り続けるネ」



超が居る。



「たとえどんなに強固な壁であろうと・・・」



「幾多の壁が立ちふさがろうとも!!」



シモンの右手と超の左手の指が絡み合い、二人の手はしっかりと握り絞められる。



「「どこまでもだ!!」」



手を握るだけで伝わるお互いの頼もしさ。




(ああ・・・これネ)




(ああ・・・これだ・・・)




学園祭の時はグレンラガンを持ち出して、宿命合体まで果たした二人はあの時と同じことを思い出す。


この無敵な感じ・・・




((負ける気がしない!!))




負ける気持ちなど微塵も感じさせぬ互いの頼もしさが更なる熱を漲らせた。



「な、なんや!? なんなんや!? ドリルて・・・いったい何なんや!?」



ダメだ。月詠は直感でそう思った。




「超・・・久々にアレをやるぞ! 出来るか?」




「笑止! その言葉! 私が何年待っていたと思っているネ!!」




魔力がどうとかパワーがどうとか、能力がどうとか、そういう問題ではない。


神の使徒のアーウェルンクスだろうと、百の鬼の融合だろうと、そういう次元で対抗できるものではない。




「見せてやるネ!」




「これが・・・」





今になって、月詠はようやく分かった。




「「これが俺(私)たちのォォ、合ッ体だァァァァァァ!!!!」」




何故今になって、ようやくそれが分かるようになったのか。



「そうや! でかい・・・でか・・・過ぎたんや・・・デカすぎて分からんかった! こいつら・・・こいつらのことを理解できんかったんや!!」



今こそ放たれる。


正真正銘、大グレン団の魂を乗せた天元突破。




「ドリル命と誇りを懸けて、捻じれた因果を一つに戻す!!」




シモンが叫ぶ。




「この世の道理が阻もうと、己の決意が明日を示す!!」




超が答える。




「「進化合体・時空天元突破ギガドリル!! 俺(私)たちを誰だと思っていやがる!!!!」」




進化した二人を更に高みへ登らせる魂が具現化される。



「な、なにが合体や!? グレンラガンでもないのにアホらしや!!」



月詠は言いながらも声が震えている。確かにシモンと超の合体は、グレンラガンというわけではない。


だが、だからなんだと言うのだ?


そう言わんばかりのシモンと超の圧倒的魂。




「グレンラガンじゃねえ! 俺と超!」




「私とシモンさん、二人の心と魂ぶつかり合いさえすれば、それが合体という奇跡を生み出すネ!」




これぞ超絶をさらに超越した二人の合体。



「「そう、これが俺(私)の、そしてこれが俺(私)たちの10倍返し!!」」



重なった超とシモンの手は一つとなり、その手には螺旋力の渦が絡み付き、やがて二人で一つのドリルが拳に生まれる。


そのドリルを、未だに己を神と名乗るその思い上がった者に突き立て、今こそ風穴開ける。



「我は神の使徒なり! いや・・・ワレコソガ神ナリ!!!!」



幾多の精神や魔力の融合を制御出来なくなり、自我を保てなくなるほどの錯乱したアーウェルンクスだった化け物。



「我々が管理セネバならぬのだ!! 救いなき世に、セメテモノ慈悲を! それが完全なる世界!!」



強大なスペックと巨大な大義を掲げながらも、それに見合う心も魂も無き使徒に、今こそ超銀河級の想いが突き刺さる。



「神に祈ることがあったとしても、結局どうするのかは自分たちで決める!!」



「そうでなければ、倒れていった者たちに対して失礼ネ!!」



シモンと超。



「相手が神でも、人にはやらなきゃならねえ時がある!!」



「やるかやらぬか自分次第! 出来るかどうかは腕次第ネ!!」



この世の道理にも因果にも運命にも、ましてや神にも束縛できぬ二人の想いのうねりがドリルとなって、魔法世界を天元突破したのだった。




「「超絶必殺!! 時空天元突破ギガドリルブレイク・大グレン団スペシャルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」」




その溢れんばかりの想いが籠った閃光は、世界を一周するだけでは留まらなかったのだった。





そしてこの瞬間、シモンの魔法世界での最後の戦いが幕を閉じたのだった。












魔法世界の崩壊による大魔力の影響を受けて、ゲートで魔法世界と地球を繋いでいる麻帆良学園。



時間の流れが違う地球と魔法世界。ネギたちが数か月間魔法世界に居たのに対して、こちらの世界では数週間程度しか時間がたっていない。



彼らの安否と無事を祈り、また最悪の事態を想定して緊急に対策をすべく動く麻帆良学園にて、一触即発の睨み合いが起こっていた、



「いつまで睨んでおる。カスめが」



「ッ!? ・・・こ、殺してやるッ!!」



一人の寂しがり屋の少女は、人類の王に牙を向けていた。


かつてこの二人にどれほどの因縁があったのかは、二人にしか分からない。


だが、方や人間社会から恐れられて闇の世界で生きるしかなかった人外の少女。


方や人間社会の頂点に立ち、管理する存在である男。


ジェノム・テンジョウとエヴァンジェリンは決して互いに歩み寄ることのない間柄なのである。



「ふぉっ! やめい! ジェノム殿も挑発はそれまでにしてほしいのう」



「キティ。この男と戦えばあなたとてただではすみません。ここは大人しくするのです」



エヴァンジェリンと同じ世界最強クラスの学園長にアルビレオ・イマはエヴァンジェリンの気を宥めて落ち着かせようとする。


いつでも動けるように待機するジェノムの護衛の忍者はただ黙ったまま。


このままでは埒が明かないと感じた詠春が、二人の間に入って双方の言葉を聞くことにした。



「まったく・・・まず、ジェノム殿。あなたもあなただ。いかにあなたといえども、許可なくこの学園に来ることは許されない。法や規制を重んじる立場なら、事前に知らせてほしかったですね」



「ふっ・・・事は急を要したのでな」



「・・・まあ、とりあえず今はいいでしょう。それより、あなたほどの人物が何の用があってここに?」



詠春たちは心してジェノムの言葉を待つ。何故ならジェノムの言葉は世界の言葉に直結するからだ。


それほどまでにジェノムの言葉は重く、絶大な威力を持つ。


さらには、麻帆良学園としてもやましい事が無いわけでもない。ジェノムがどこまで掴んでいるのかが今後の全てを左右すると思い、彼らはジェノムの言葉を待った。



「近衛詠春・・・貴様の娘を始め、多数の生徒が魔法世界に入国したそうだな。あのサウザンドマスターの息子と共に」



やはりそのことか。


ある意味覚悟していたが、それでも学園長たちは痛いところを突かれたと思った。



「入国審査で例の小僧と生徒数名・・・さらには魔法と何のかかわりもない一般生徒の密入国・・・そして、応援のために高畑・T・タカミチやシスター・シャークティだけでなく、一般男子高校生を数名派遣したそうだな」



反論のしようもない純然たる事実。



「まったく・・・この・・・・・・・戯け共がァァァァァァァ!!!!」



無言で押し黙る学園長たちに、ジェノムは僅かな間を置いて拳を力強く地面にぶつけた。


その余波で、崩落してしまうのではないかというほど建物が揺れた。



「ぬう・・・ジェノム殿・・・怒りはもっともじゃが、こちらにも・・・」



「何も聞く気はない! 今日ワシらは例のトラブルを一掃することと、貴様らに通告しに来ただけじゃ」



「ほっ?」



学園長の言葉を遮って、ジェノムは言い放つ。



「ネギ・スプリングフィールドが例えこの学園に生徒を連れて帰還したとしても、即刻に審査会にかけて教員特別許可の廃止と強制送還を行う!」



「「「「!?」」」」



「さらに、魔法使いとしての権限や資格も排除! 魔力を永久的に封印させる! 貴様ら学園の魔法教師側も懲戒処分程度ではすまさんので覚悟しろ!!」



一切の慈悲すら許さぬ処分内容。だがその処罰に対して、学園長がジェノムを睨みつける。



「ふむ・・・しかし、残念じゃが一方的過ぎるそなたの言うことなど、聞き入れられぬのう」



その言葉は仲間内にも意外だったのか、詠春もエヴァも驚いた顔で学園長を見る。



「近衛近右衛門・・・貴様・・・誰に反発しているのか分かっているのか?」



「ほっ。ワシより何十年も生きとらん若造こそ、誰に向かって言っておるのか分かっているのかのう?」



「なにィ?」



一触即発の空気が漂う。空気がパチパチと火花が飛び散っているように見える。


だが、学園長は微塵も引く気は無かった。



「ネギ君も・・・タカミチもシスター・シャークティも・・・そなたが巨大ビルの最上階で偉そうにふんぞり返っている間、戦場で血反吐を吐いて這いずり回っておる。その彼らに対して、よくもそのような口が利けるのう」



「ふん。所詮は幻想の世界で粋がって何になる? オンラインゲームの英雄が現実世界で称えられるか? それにネギ・スプリングフィールドなど完全なる私情で生徒まで巻き込んでいるであろう?」



「どうかのう? ネギ君を一度も見たことのないヌシになにが分かるというのじゃ? 書類だけでは判断できぬぞ? あの、ネギ君という者の可能性をのう?」



その瞬間、ジェノムの額が再びピキッとなった。


これは、頭に血が上って再びこの空間を破壊するかのような怒りをぶちまけるかもしれないと、誰もが即座に身構えた。


だが、その時だった。



「・・・むっ!?」



「「「ッ!?」」」



その瞬間、この場に居た誰もがその気配に気づいた。


「な、なんだ?」


「こ、このエネルギーは・・・」


「まるで・・・学園全体が揺れているような・・・」


いや、感じたのは気配ではない。波動だ。

力強く、そして何故か血が騒ぐ。

そして、どこか温かいエネルギーの波動。



「・・・あっ・・・」



一番早くその力の正体に気付いたのはエヴァだった。



「この・・・この圧倒的なエネルギーは今まで感じたことが無い。しかし、これを発している者は・・・感じたことがある・・・ま、・・・まさか・・・」



エヴァはガクガクと震え上がる。


それは、ジェノムと対面した時の怒りや殺意などが頭の片隅に消えてしまうほどの衝撃。



(こ、これは・・・繋がった魔法世界からか!? しかも・・・これは・・・ワシと同じ螺旋のエネルギー!!)



ジェノムもまた顔つきが変わった。

突如発生した謎の高エネルギーに神経を傾け、この力の正体を探る。



(クロニアではない・・・奴にこれほどの力は無い・・・・・・ならば・・・まさか、例の・・・)



ジェノムが「何か」にたどり着いたとき、エヴァの一言が全てを確信に変えた。



「シ・・・・・・シモン・・・」



シモン。


その名前に。アル、学園長、そして詠春もゾクリと震え上がった。



「シモン? ボス・・・それは確か・・・」



「うむ・・・例の男であるな」



ゼンゴとジェノムもエヴァの一言で、ようやくこの力の正体が分かった。


そして、改めて空を見上げる。



「なるほどな・・・奴もいるのか・・・しかも、よりにもよってあの世界へ」



「ボス・・・どうするだすか?」



「・・・・・・ネギ・スプリングイールドに例のシモンという若造・・・まさか二人そろってあの世界に居るとはな」



彼らが見上げて映るのは徐々に空が広がり、魔法世界とこの麻帆良学園が繋がっていく光景。


空より高い場所、しかし天よりも近いその場所には、ネギとシモンが居る。



「シモン・・・シモンが・・・居るのか? はは・・・あの男め・・・か、帰って・・・い、いや私の目の前に居ないから帰ったとは言わんが・・・まさか・・・ふ、ふはははは」



エヴァは誰かに支えてもらわねばすぐに尻もちつきそうなほど狼狽している。


無理もない。彼女が再び前を向いて生きる希望となった男。


学園祭の別れから今日まで待ち続けた男が・・・


次元も宇宙も違う、手も声も届かぬ天の向こうへ行ったシモンが、見上げた空の向こうに居るというのが分かったのだ。


エヴァに落ち着けと言って、落ち着けられるわけがないのである。


それは詠春も・・・



「そうか・・・彼が居るのか! 彼も居てくれるのか! 木乃香・・・・・・ならば、お前は今無事に決まっているな」



娘の愛した頼もしき男の存在にうれしくて拳を握りしめる詠春。



「ふぉっ・・・どうやらシスターシャークティが豪徳寺君たちを連れて行って正解じゃったようじゃな。白き翼に新生大グレン団が揃っておるのじゃからな」



学園長も。



「ふっ・・・まあ、彼のことですから。あの世界でもとんでもないことをやらかしているでしょうけどね」



関わりの少ないアルですら、シモンの存在に喜ばずに居られなかったのだった。


この、エヴァたちのシモンの存在を感知した瞬間に魅せたこの喜びようで、シモンという男の存在感がジェノムたちにも感じ取れた。



(こやつらほどの者が、これほどまでに・・・なるほど・・・どうやら、ただの同族では無さそうだな)



エヴァたちと、天の向こうから感じるエネルギーの波動を交互に見るジェノム。


彼は少し目を瞑った後、決意を秘めた目でついに動き出すのであった。



「ゼンゴよ! この場はお前に任す! 念のため、完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)の者たちが学園に侵入してくる場合も想定にいれておくのだ」



「ん? いいだすけど、ボスは?」



「現場に直行する」



その言葉に、喜びから一瞬でエヴァたちは引き戻された。



「なっ、貴様! 何のつもりだ!」



「ジェノム殿!?」



「ふん、ワシの能力を使えば、魔法世界との行き来など容易いものだ。貴様らの相手はワシが帰ってからだ」



エヴァたちは知らないのである。


ジェノムという男の振るう力の正体を。



(む、ワシの索敵にクロニアも引っかかる・・・奴め、勝手をしおって・・・だが、丁度良い)



ようやく王座から動いた男の瞳には、既に新たに吹き始めた新時代を見定めていた。



「学園長よ。ネギ・スプリングフィールドとやらはワシが現場の奴を見て見極めようぞ」



「ぬっ!? ジェノム殿!」



「ただし、ワシの目に敵わぬようであれば、その場で引導を渡してやるわ! あの世界の崩壊と共にな!」



「ジェノム! 貴様ァ!」



ジェノムが光に包まれた。その能力は、エヴァたちも初めて見た。


赤く輝く不吉な光。シモンの光と少し似ているが、その感じる気配は対極に感じた。



(シモンとやらよ。ついでに貴様の正体も暴いて見せよう。あの、堀田と関わりがあるかもしれぬからな・・・)



そしてジェノムは消えた。それはワープの能力だ。クロニアの父であるこの男に使えないということは無い。


ただ嵐のように現れ、嵐のように過ぎ去ったジェノムの居なくなった空間を、学園長たちは複雑そうな表情を浮かべて見ていた。



「しまった・・・とんでもない男がネギ君たちの元に・・・」



「困りましたね。これではさすがのシモン君たちでも・・・」



「う、うむ・・・」



最悪の展開かもしれない。完全なる世界とトラブルが起きているかもしれないネギたちの元に、大嵐が乗り込んだかもしれない。


魔法世界の情報が一切入ってこない学園長たちがそう心配しても仕方が無かった。


だが、エヴァだけは不敵に笑った。



「ふっ・・・やれやれ、仕方ないな。丁度あの世界と繋がったということは、私も行けるということであろう?」



「キティ?」



「やれやれ、仕方ないな! うんうん、仕方ない! きっとピンチであることだし、私が助けに行ってやるしかないか!」



仕方ない。そう言いつつも、エヴァはどこか顔がニヤけていた。


「うれしそうじゃの~」


「まあ、察してあげてください」


「私は木乃香を応援する立場ですが」


そう、エヴァはうれしかった。そのうれしさが魔力となって溢れ出ている。



(ふっ、ふははははははは、シモンめ! ようやく帰って来たか!! 何で魔法世界に居るとか、私の前に現れずに何をやっているかとか、今は聞かん! だが、・・・だが・・・!)



エヴァンジェリン。恋する乙女は火がついた。


その火はもはや消すことなどできず、誰にも彼女は止められない。


エヴァンジェリン。無敵の魔法使いがついに参戦を決めるのであった。




「さあ、今すぐ助けに行ってやるぞ! これほどのエネルギーを放出するということは、どうやら大変な目に合っているのであろう! 坊やと一緒に助けて、私の株を上げてやろう! わははははははははははははははは!!」













しかしシモンのピンチはとっくに終わっていた。






後書き


魔法世界篇って、魔法世界では数か月程度。現実世界では2週間程度なんですね。
でも、私からすれば何年やってることやら・・・

そもそもエヴァとシモンは2009年から会っていないことになっています。どうりで懐かしいと思うわけだ。
まあ、超鈴音とダリーという存在が感動の再会など許さぬわけですが。


とりあえずシモンの魔法世界篇でのバトルはこれで終わりのつもりです。あとはちょっと超との内緒話と高みの見物。


後は、ヨーコとヴィラルに、そしてネギの活躍書いてさっさとケリつけましょう。
まあ、これでフェイトと戦わなかったネギが誰と戦うのかが分かりましたよね。
かつて若かりしシモンが大グレン団を引き連れて世界の王、螺旋王に挑んだ。あれと同じことをやります。


ネギの戦い何てどうでもいいから、ダリーとシモンの絡みを出せと思ったそこのあなた! 一応話の筋は通したいのでご勘弁を。


原作は・・・うんうん、読んだけどあんまり支障無さそうでした。
造物主の容姿がナギも、まあ、想定の範囲内というか多分多くの人が「ふ~ん、やっぱりね」と思ったのではないでしょうか。
最終更新:2011年08月23日 00:52
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。