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135-まるで世界が人のように

第百三十五話 まるで世界が人のように 投稿者:兄貴 投稿日:11/12/28-07:11 No.4471



「びっくらこいた! 下手したら死ぬとこだったわい!」



ガンメンという超巨大メカに乗れば、視点も正にソレとなる。ガンメンから見下ろした人間など蟻のように見える。

しかしだ。今のジェノバは正に自分がそうやって見られているような感覚に襲われた。

マジンガンというガンメンに乗っているというのに、突如壁を突き破って拳だけ宮殿内に入れ、質量が大きすぎる故に宮殿内に全身を入れられない超級のガンメン。

そのガンメンを目の当たりにして、今のジェノバは恐れるどころか、むしろ瞳を爛々と輝かせていた。




「ぬはははは、やりおる。デカ物との合体は正にパイロットの器の表れ。なかなかの螺旋力を持っているようだな~!」




これは喜びだ。




「驚いたのう。まだこんなのがおったとわのう! 久方振りに故郷を思い出したわい」




既に遠い過去となってしまったジェノバの居た世界。それが千年経ってこれほどのものが表れた。

懐かしさのあまりに涙腺が緩みもした。



「うおっ!? 起き上がりやがった! って・・・こいつグレンラガンタイプのガンメン!?」



「うん、間違いないよ、ギミー! レーダーにもちゃんとその反応が出てる! あれは間違いなくグレンラガンタイプのガンメンだよ」



グレンラガンタイプのガンメン。

それは、ラガンという合体したメカを取り込んでしまう螺旋族最強のガンメンの種類。

ギミーとダリーも偉大な先人たちから受け継がれたそのガンメンの力を良く知っている。

だからこそ、この世界にグレンラガンタイプのガンメンが存在していることに目を疑った。



「かっかっか、大したものじゃ! マジンガンが重大な損傷を受けておるわい。これほど傷つくのはいつ以来か・・・・・・・ぬぬッ!?」



マジンガンは立ち上がったものの機体の損傷が激しく、糸の切れた人形の様にヨロヨロしている。それすらもジェノバはむしろ嬉しそうにしていたのだが、急に様子が変わった。



「ぬぬ・・・ぬあーーーッ!!!! まさか貴様がそうじゃというのかァ!?」



それどころか急に何かに気づいたかのように怒り出した。それは先程までの子供のように陽気に笑っていた時とは違う。

それは・・・




「まさか、キサマらがシモンとやらでないじゃろうなァ!?」




シモン。

どうやら、この巨大な魔道大グレンラガンを見て、ジェノバはこれを動かすパイロットがシモンなのではないかと問うた。

無理もない。ヴィラルやヨーコ、そしてネギたちも一瞬そう思ったぐらいだ。

すると、コクピットの中でギミーは誇らしげに胸を張った。




「俺はシモンさんじゃない。だが俺は、そして俺たちは、シモンさんたちの意思を受け継いだ者たちだ!!!!」



「ぬっ!?」




「その証こそがグレンラガン! シモンさんとカミナさんが生み出した銀河に風穴を開けた戦士! そして今のこいつこそ、新時代の戦士、魔道大グレンラガンだッ!!!!」




その言葉に偽りなし。

この猛々しい弩級のガンメンこそがその証であった。

自分たちはシモンではない。しかしその意思を受け継いだ。

誇りも心も魂も、そしてガンメンも。

ギミーも、そしてダリーもその意思を全面に出していたのだった。

その言葉を受けて、ジェノバは軽くため息ついた。



「ふ~~む・・・な~るほどのう。ネギとやらといい、キサマらといい、どうも最近は受け継ぐ者たちのオンパレードじゃな。今、どの宇宙でも新たな風が吹き始めているか」



どこか余裕が感じられ、何かを考えているジェノバ。

ギミーとダリーからしてみれば「ところでこいつは何者なんだ?」というところだ。



「っていうか、お前は何者なんだよ! こんな世界にガンメン引っさげて・・・ロージェノム軍の残党か何かか!? それとも反新政府軍の勢力か何かか?」




ギミーの問いかけに、ジェノバはコクピット内で小さく笑みを浮かべる。



(ふん・・・残党か・・・どうやらアニキ・・・本当に死んだようじゃな・・・)



それはどこか切なさが篭っていた。



(時代の流れか・・・まあ、千年も経っておれば不思議ではないが・・・)



ヴィラルとヨーコの言葉だけでなく、こうして目の前に超弩級のガンメンを操る若者が芽を出している。



「ロージェノムの残党ではない。ワシはただのロージェノムの弟じゃ」



「なっ!? なにっ!?」



「ロージェノムの・・・って、ええっ!? ヴィラルさん、ヨーコさん、本当なの!?」



千年前までは銀河に名を轟かせたロージェノムも、そしてジェノバのマジンガンですらこうしてボロボロにされた。


時代の流れをジェノバは改めて実感した。



「ヌシ・・・では、そのシモンとやらがかつてロージェノムを倒したのは、そのガンメンで間違いないか?」



「えっ、ああ・・・そうだけど・・・っていや、それ以前にどういうことだよ! ロージェノムの弟とかいきなり!?」



だがジェノバはその思いと同時に・・・・




「ヌシら、本当に大したものじゃ。しかし・・・嬉しい反面、憤りもまた多いな・・・贅沢かもしれぬが・・・」




深く失望したのだった。




「なんとも嘆かわしいことじゃ! アニキ! アンチスパイラルよ! これはあんまりじゃ!」




「「なッ!?」」




その時、ジェノバは心底ガッカリしたかのような表情と言葉を漏らした。





「これはだいぶ違うであろう、アニキ。こやつらが才も勇も揃った者であるというのは分かるが、だからと言ってあのアニキが・・・アンチスパイラルが・・・・『この程度』のガンメンに敗れたというのか?」





「「「「「「「「「「えッ!!!!????」」」」」」」」」」





そのジェノバの失望の声はスピーカからも漏れ、この場にいたネギたちやギミーたちにも聞こえた。


ジェノバは言った。「この程度」と。




「ふっ、ふざけんな! この程度だと!?」




当然、ギミーが直ぐに食いかかる。

当たり前だ。

ギミーとてシモンたち大グレン団が生み出したグレンラガンのレベルにまで達したとは思ってはいないが、それでも今日生み出したこの魔道大グレンラガンは、ギミーとダリーの揺るぎなき想いと共に生み出したもの。

シモンたちに追いついたとは言わないが、それは決して「その程度」などと言われるモノではないと自負していた。

だが・・・




「いいや・・・この程度じゃ・・・何故ならどんなに貴様らがやりおると分かっても・・・・ワシの想像の枠を超えるものでは決してないからじゃッ!」




「なにッ!?」




「ようやく分かった。どうやらアニキは、ラゼンガンで戦いはしたが、『カテドラル・テラ』を使用した『カテドラル・ラゼンガン』で戦ったわけではないのじゃな」




「「「「ッ!!??」」」」




カテドラル・テラ。

ラゼンガンとはロージェノム専用のガンメンのことだ。

ラゼンガンで幼少時代のシモンたちと戦っていた。それまでなら、ネギたちでも知っていた。

だが、カテドラル・テラに関してはネギたちはキョトン顔。

カテドラル・テラというものはネギたちは知らない。思わず顔を互いに見合わせて首をかしげている。

ゆえに、ジェノバの発した言葉を知っていたのは、ヴィラル、ヨーコ、ギミー、ダリーの四人とブータだけだった。




「あの、ヨーコさん・・・その、カテドラル・テラって何ですか?」




「ああ、ネギたちはまだ知らないのね。カテドラル・テラ・・・それはかつてロージェノムの使用していた超大きいガンメンのこと。
さっき言ったアンチスパイラルって奴にロージェノムが負けて取り上げられ、私たちの世界にある月の形に変形されて、私たちの星を監視していたのよ。
100万匹の猿が地上に現れた時、月が地獄の使者になりて螺旋の星を滅ぼす。ロージェノムが残したその遺言通り、私たちの世界の人口が100万人を超えたとき、月が変形して私たちの星を襲ってきたのよ」




・・・・・・・・・・・・・・・ネギたち、目が点になる。



「いや、ちょっと待ってくれ・・・あんたら大グレン団がいくら底なしのバカとはいえ、ガンメンが月の形になったぐらい、本物か偽物か区別つくだろ」



千雨が額を抑えながらツッコンだ。



「い、いや・・・確か元々地上に住まずに地下で暮らしていたシモンは本物の月を知らないという描写もあったが・・・」



「焔ちゃん、せやけど、千雨ちゃんの言うことも分かるえ。だってウチらもシモンさんの記憶映像でシモンさんたちの世界の月を見たけど、何も変わったことはあらへんかったやん!」



「お嬢様の言うとおりです。いくらなんでもアレがガンメンなど・・・」



そう、彼らもシモンたちの世界の月を知っている。

シモンの記憶映像で、地上に出たばかりのシモンたちが物珍しそうに夜空に輝くデカイ月を見ていた映像があった。

あの月はなんの変哲もない、自分たちでも良く知っている月と同じだった。

あれが、ガンメンを変形させた偽物など、誰が信用・・・・




「だから、そうなのよ」




「いえ、でも、ヨーコさん・・・」




「だからあのデッカイ月は、カテドラル・テラっていう超デカイガンメンが変形したものだったのよ」




「おいおいおい! だからって月だぞ月! いくらデカイガンメンだからって、月と同じなんて・・・」




「だから、カテドラル・テラっていうのは、星より大きいガンメンってことよ。そのカテドラル・テラと合体したのが、カテドラル・ラゼンガンよ」






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・しばらくネギたちの思考停止。









「「「「「「「「「「ちょっと待てえええええええええええええええええええええええええッッッッッ!!!!!!!!!!??????????」」」」」」」」」」









もはや本日一番の衝撃かもしれない。




もう、ネギたちはジェノバどころではなかった。




大グレン団を知った気になっていた。しかしまだまだ序の口だった。





「「「「「「「「「「ほ、星より大きいガンメンって、おいいいいいいいいいいいいいッ!!!!????」」」」」」」」」」





よくシモンたちが宇宙とか銀河とか口にしていたが、どうやらそれはただの比喩表現ではないようだ。


星と同じぐらい大きなガンメン?


どう考えても本当に銀河クラスの戦いをしていたのかもしれない。


いや、かもしれないではなく、絶対にそうなのだ。



「ぼ、僕はなんてことを! い、急いでシモンさんの記憶映像の続きを見なくちゃ!」



ネギも・・・



「確かアレって、拳闘大会の会場にあったはずや! ネギ、急いで取りにいかな!」



小太郎も・・・



「あああああん、絶対にその戦いでシモンさんもっとすごいことやっとるッ!! ほんで超さんは絶対にその話も知っとったえ!」



「なんという早とちりを! 私はシモンさんの戦いの序章を見た程度であの人を知った気になっていたのか!? 超鈴音・・・どうりで余裕たっぷりだったはず・・・そして好意度ランキングでダントツ一位なわけか!」



木乃香も刹那も・・・




「「「「「っていうか、俺たちはその序章すらしらねええええええッ!!!!」」」」」




豪徳寺や美空たち、拳闘大会で流されたシモンの記憶映像を、チコ☆タンたちと戦っていたために見れなかった者も・・・



「あれで序章だったの? シモンさんたちって・・・」



「ま、マジいだろ・・・こいつらマジで宇宙戦争してやがったのかよ・・・」



千雨たちも・・・



「「「「「急いで見なければ!!」」」」」



フェイトガールズすらも同じ。


驚き、呆れ、ひっくり返り、そして興奮しながらたどり着く思いは同じ。




―――チョー見てえ・・・




ただ、その思いでいっぱいだったのだ。






一方で、ネギたちの様子は放っておき、先ほどジェノバに指摘されたギミーたちは悔しそうに歯噛みしていた。



「あ、ああ・・・それは否定しねーよ・・・ロージェノムはカテドラル・テラを使用しなかった・・・」



「やっぱりのう。恐らく今、ヌシらが合体しているのは、カテドラル・テラどころか、アーク・・・いや、せいぜいダイガンレベルのガンメンに過ぎんじゃろう! そんな程度の変形合体でワシの想像を超えるなど、片腹痛いわァ!!」



「で、でもシモンさんは違う! シモンさんは・・・」



「受け継ぐものがこれでは同じことよ! ましてやアンチスパイラルを倒したなど、馬鹿げているにもほどがあるわい! なんじゃいそれは! ワシラは何のために負けたのじゃ! 何億年も生き過ぎてアンチスパイラルもボケたか!? こんな程度の力に銀河を明け渡すとは!!」



既に機体がヒビだらけで損傷激しいマジンガンから聞こえてくる失望と怒りの声。

だが、それが決して的外れではないとギミーたちも自覚している。



(くそっ・・・そうだ・・・俺は何をいい気になってたんだよ・・・)



(そう・・・シモンさんは、アークグレン・・・そして超銀河大グレンまで変形合体させたんだ・・・私もギミーもまだまだ・・・)



先程まで戦場で誰もが自分たちの力や振る舞いに衝撃を受け、驚愕と大歓声を上げてくれた。

その声援を受けながら、自分たちも先人たちに恥じない戦士になったと思っていた。

しかし、それは思いあがりだった。むしろまだまだだった。



「どうやらワシに郷愁を感じさせても、ワシを唸らせるほどのものは無いようじゃな」



ジェノバに対して言い返せないことが、それを証明していた。



「新たな時代の流れ・・・聞こえは良いが、何とも許せぬものだ! こんな想像内で収まりきる器の者たちの力で、想像を遥かに超える戦を繰り広げたアニキやアンチスパイラルがやられるとは!」



次々と来る新たな風に新しいものを感じる嬉しさを思う一方で、ジェノバはその抗いようのない時代の流れに自分の尊敬すべき者や最大級の宿敵までもが飲み込まれたことに、憤りも感じていたのだった。




「・・・だ・・・黙れッ!!!!」




「ぬっ?」




「黙れ、それでも時代は変わっていく。そしてあの時の俺たちは紛れも無く貴様の想像を超えていた! アンチスパイラルと戦った『あの時』はな! そして、命と魂を燃やし尽くした!」




その時、ジェノバの言葉に声を失ったギミーとダリーに代わり、ヴィラルが真っ向から否定した。


あの時のシモンは・・・


あの時の自分たちは・・・


絶対に銀河史上の想像を超えていたと。




「ジェノバよ。どれほど嘆こうが、ロージェノム様は死んだ! そしてアンチスパイラルも消えた! そしてその全てを打ち破ったシモンもまた次の世代に意思を託し、時代は流れていく。それが真実だ!」




そして、どれほどジェノバが嘆こうが、既に時代が流れているのは否定しようのない事実なのである。


それは決して覆されない。



「ジェノバよ。貴様のすることは、この世界を導いてまだ見ぬ明日を見ることではない。アンチスパイラル・・・螺旋王・・・そして最後に残った貴様自身の魂を成仏させることだ! 完全に次の世代へバトンを渡すことだ! 明日は貴様が見せるのではない! 貴様が見せてもらうのだ!」



「獣人め・・・」



「しかし一人で成仏するのが嫌だというのなら、俺が力づくで冥土に送ってやっても構わんぞ? この手で介錯してやろう!」



エンキドゥドゥ・改が剣を構える。

今まさに一人の武人が、かつての先人の介錯をしようというのだ。

既にボロボロのマジンガンにエンキドゥドゥ・改が一歩ずつ近づいていく。

今のマジンガンに力はない。

そう、例えジェノバが時代の流れを否定しようとも、ジェノバは既に詰んでいるのである。

だが、だというのに・・・




「新たな時代の流れなど知ったことかッ!!!! 求めるのはただ、ワシらが求める時代の先のみ!」




ジェノバは更に猛る。




「「「「「「「「「「ッ!!!???」」」」」」」」」」




既にボロボロのマジンガン。


だというのに、みるみるうちに螺旋エネルギーが目で確認できるほど溢れ出ている。



「な、なんのつもりだ!?」



「ギミー、ヴィラルさんも気を付けて! その人、まだ何かをしようとしている?」



そう、ジェノバはまるで降伏の意思を見せない。


それどころか、まだ何かをしようとしているようだ。


魔道大グレンラガンの登場で誰もが緊張の糸が緩んだが、再び緊迫した空気が肌に突き刺さった。



「ふん、『あの時』にワシの想像を超えただと? ならば、『あの時』などと言わずに、『今』ワシに証明してみせろ! ワシの人類の想像を超えた合体の極みでな!」



「なんだと?」



「合体を・・・あくまでコアマシンとガンメンやメカのみでしか捉えておらん貴様らには到底分からんだろうがなッ!」



その時、ボロボロになったマジンガンがここに来て変形した。


両足を無理やり一つにして、胴より下の機体を巨大なドリルへと化した。



「合体・・・それはメカ同士で行うものだと勘違いする者が多いが、何も合体はガンメンとだけしか出来ないわけではないということじゃ!!」



何を言っている?



「ちょっ、何なんだよ! 私らはあんたたちグレン団のスケールでかい過去話で動揺してるってのに、何やらかすつもりだ!」



「ち、千雨さん落ち着いて!」



「いや、ネギ、そら無理やで! 俺ももはや何がなんだかよう分からん!」



「んで、結局あのおっちゃん何をしようとしてんのさー!」



「ブーター! お前もシモンとずっと一緒だったんだろ! 私にも分かるように解説してくれよーッ!!」



「ぶぶ、ぶぶむ、ぶるむ(サラ・・・いいけど時間かかるよ)」



この混乱の中、ジェノバは何を企んでいる?


誰もがそう思った次の瞬間・・・




「「「「「「「「「「あっ!!!!????」」」」」」」」」」




マジンガンが宮殿の床を突き刺して大きな穴を開けて地中へと突き進んだ。


一体何をするつもりだ?



「なっ、どこへ行く気だ!」



「何を企んで・・って、危ないッ!」



そう思ったネギたちだが、床に巨大な穴が空く。その衝撃で揺れたために足場が崩れてきたネギたちは慌てて一箇所に固まろうとする。



「ちょっ、危ないわ! 今の衝撃で床が・・・フロア全体に亀裂がッ!?」



「お、落ちたら大変です! 皆さん、フロアが崩壊する前に一箇所に集まってください!」



「ギミー、ダリー、急いでこいつら全員をグレンラガンの中に避難させろ! それだけデカければ可能だろう!」



「分かった! 皆さん、急いでグレンラガンの掌に乗ってください。ここは危ない! 離脱する!」



「ま、待ってください、まだアスナさんがッ!」



「大丈夫だ、ネギ君! アスナ姫はこの宮殿の最上階にいる! このフロアが崩壊したからといってここより上の階が崩れるわけではない。だから心配いらない」



ヴィラルの指示に従い、宮殿内に突っ込んだ魔道大グレンラガンの掌の上に皆が乗る。

最初は「いいのか?」と互いに緊張して恐る恐ると足を踏み出したが、乗ってみればもはや落ち着くことなど不可能なぐらい少年少女たちはハシャイだ。



「うおおお、すげー!! とうとうグレンラガンの掌の上に!?」



「すげえ! 男の中の男だ!」



「あかん、俺もゾクゾクしてきたでー!」



「ぬわあああ、カメラのフレームに収まりきらないよー!?」



「ちくしょー、シモンの奴はこんなスゲーの昔使ってのか? なあ、ブータ!」



「ぶみゅうる!!」



それは、白き翼や新生大グレン団だけでない・・・



「す、すごいです、フェイト様! グレンラガンの中に入れるそうですよ!」



「お、おい、そこの女。そのカメラで取った写真を後で私たちにも・・・」



「あっ、グレンラガンをバックに一枚私にも・・・」



今起こっている危機がどうとか、床下を掘り抜いて消えてしまったジェノバが何を企んでいるのかなど、ぶっちゃけ今の彼らにはどうでも良かった。



「あ、あの~、みなさん! 僕たちも急いで脱出しましょうよ! うれしいのは分かりますけど・・・そうだ・・・点呼を取らないと! あ、あと朝倉さん! その写真は後で僕にも下さい! あと、できれば皆さんでグレンラガンをバックに記念撮影も!」



「君もはしゃいでいるではないか、ネギくん!? デュナミス・・・何か言ってやったらどうだい?」



「いや・・・テルティウムよ・・・私ももはやスケールがでかすぎて、何もかもがどうでもよくなるような・・・」



とにかく脱出しよう。このフロアは底が抜けて崩れる一方だ。


全員がワクワクしながら、規格外の大きさのグレンラガンの掌の上に乗ろうとしたが、その時、全員の無事を確認しようとしたヨーコとシャークティだけが気づいた。



「ちょっ、あんた何やってんのよ!! 早くしなさい!!」



「テンジョウさん!?」



それは、身動き一つせずに顔を俯かせているクロニアだった。


彼女はこの状況下でも何の反応も見せなかった。


そして、床の亀裂がとうとう彼女の足下にまで行き渡った。



「良いのです・・・もう・・・」



ただ、一言彼女はそう呟いた。



「バカ言ってんじゃないわよッ!?」



「あ、危ない!?」



何故クロニアは逃げない? 下の階までどれほどの距離があるか分からない。受け身も取らずに落下すれば大怪我も免れない。


だが、それすら今の彼女はどうでもいいとすら思っている様子だ。


それどころか・・・



「ただの・・・始祖の欲望を叶えるための道具でしか無かった・・・それだけの人生・・・・・・私のこれまでの全てが・・・無駄になりました」



世界を、人類を守るため。そのためだけにテンジョウ家に生まれた彼女は自分の使命と宿命を背負って生きてきた。


そのために多くの物を犠牲にした。普通の人として歩むことが出来たはずの人生を全て切り捨てて、ただ使命のためだけに人生を捧げた。


だが、ここにきて明かされた始祖の真実。


ジェノバの本音。



「私は・・・何のために・・・」



全てに絶望した彼女は、このまま落ちて自身の全てを終わらせようとしたのだった。


そして、その時は来た。


床の亀裂がフロア全体に行き渡り、床が崩壊してクロニアはそのまま落下していく。


目を瞑り、ただ、少しでも早くこの人生から逃げ出したかったのだった。


だが・・・



「ふざけんじゃないわよ! たとえあんたが何者だろうと私の前で、ニアと同じ顔した奴を二度と死なせるわけないじゃない」



「させるものですか!」



落下していくクロニアに飛びつくかのように、ヨーコとシャークティも無我夢中で床穴へと飛び込んだ。



「ちょっ!?」



「ヨーコさん!?」



「シスターシャークティ!?」



バカな!? こんな底も分からぬ下層に叩きつけられれば命の保証もない。


誰かが後に続いて二人を助けようとするが、この状況下ではそれもできない。


そしてここで三人が落ちた穴をずっと眺めていてもどうしようもない。



「大丈夫だ! 奴らを信じろ! 奴らなら生き延びる!」



「で、でも・・・」



「奴らを誰だと思っている!」



ヴィラルがその場に留まろうとした者たちを鼓舞する。


大丈夫に決まっていると。


もちろんその言葉には根拠がないが、だが今は彼女たちを信じるしかない。



「出せ、ギミー!」



「了解した!」



彼女たちの安否を憂いながらも、今はこの場にいる者たちの安全確保が優先だ。


ギミーとダリーは魔道大グレンラガンを起動させ、その巨大な掌にネギたちを抱えながら、すぐに墓守人の宮殿から離れたのだった。


すると・・・



「み、見てみいや、ネギ!」



「う、うん! 墓守人の宮殿の底が・・・」



こうして外から離れて宮殿を見ると、なんと宮殿の底に大きな穴が貫通していた。


どうやらジェノバはあのまま宮殿を突き破り、外にまで飛び出したようだ。


だが、肝心のジェノバの姿もマジンガンの姿も見えない。



「マジンガンがおらん・・・せやけど、ほんまに宮殿そのものは無事そうや」



「ええ、そしてあの最上階に・・・」



「アスナが居るってことね!」



「あっ、そうだ。パルやハカセたちにも連絡しとかないと」



「ならばあそこにはコレットも居ますので、私が念話で連絡するです」



「後はタツミーとポヨさんもどうしてるだろう」



「それとリーダーにもな!」



「おい、見ろよ! あっちの空に、魔法世界連合軍の艦隊が見えるぞ!」



「ほんとー! なになに! 全然無事そうじゃん!」



「そういえばデュナミス・・・外にいた召喚魔たちはどうしたんだい?」



「・・・恐らくは全滅したかと思うが・・・50万体はいたのだがな・・・」



宮殿の自分たちが居たフロアより下は崩れているが、そこより上は無事そうだ。


だから最上階の祭壇にて眠っているアスナはきっと無事だろう。


後は、壊れた飛行船修理のために飛行機に残ったハルナ、ハカセ、高音、愛衣、コレット、茶々丸、田中エンキ。しかし彼女たちは、現在ユエが念話をして安否が確認されているようだ。


そして、敵を引きつけたシモンと龍宮だが、これは尚更無事だと思える二人だ。


ならば残されたのは・・・



「シスターシャークティ・・・ヨーコさん・・・」



「大じょーぶだって、美空」



「サラちゃん・・・」



「あの二人はシモンの家族とシモンの仲間なんだろ? だったら無事だって!」



「ぶみゅう!」



「ほら、ブータも当然だって言ってるぞ!」



大丈夫・・・今はそう信じるしかない。


きっとまた全員揃って再会できると、彼らは心の中で強く信じることで今の自分たちを保つのであった。



「さて・・・ジェノバの奴はどこへ消えた・・・ギミー! ダリーよ! レーダーで反応は無いか?」



一方で、ヴィラルは消えたジェノバの行方を四方を見渡しながら探していた。


ギミーとダリーも見える範囲を気にしている。


先程の流れから、ただ逃げたとは限らない。


恐らく何かを企んでいる。


何故なら奴の言葉は、決してハッタリなどを感じさせなかったからだ。



「ギミー、気を付けて。どうもさっきから・・・」



「ああ。嫌な予感がしてくるぜ。ったく、こっちは早くシモンさんに会いたいってーのに」



「って・・・見つけた! ジェノバの反応を!」



「なに!? どこにいやがるんだ!」



「こ、これは・・・この・・・真下・・・地中? それもすごく奥深く・・・って、地中の奥深くに!? きっと宮殿の底を貫いてそのまま真下にある大地を堀り進んで・・・でも何のために――――――――――――――――――」



しかしその時だった!!








―――――ガーハッハッハッハハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!!!!









どこまでも高らかに笑うジェノバの声と同時に・・・




「ネ、ネギ!? あれ見てみい!?」




「なっ・・・あれは!?」




「フェ・・・フェイト様!? 大地が・・・」




「う、うん・・・ど、どういことだ! 大地が・・・いや・・・大陸が・・・」




眼下に広がる広大な大陸が割れた!




「ちょっと待てえええええええええええええええええええええええええ!!!!」




「なななな、なんだよありゃッ!?」




そう、地平線の彼方まで見渡すことのできる大陸が砕け、その破片が魔道大グレンラガンめがけて一気に襲いかかってきたのだ。




「ギミーッ!!!!」




「わーってるよ!!」




急にこれはどういうことだ!?


ギミーとダリーがすかさず襲いかかる大陸の巨大な破片を迎撃していくが、その動揺は隠しきれない。



「とりあえず急いでガキどもを機体内に入れろ!! 何が起こるかわからんぞ!」



ヴィラルもこの状況が一体どういうことなのか、未だに理解出来ていない。


だってそうだろう。


この超巨大な魔道大グレンラガンよりも遥かに大きい広大な大陸が突如砕け、その直径何キロメートルにも及ぶ破片が無数に襲いかかってくるのだ。


それもただ砕けて襲いかかってくるのではない。


まるで何かの意思があるように・・・



「ギ、ギミーさん、上ッ!!」



「えっ?」



機体内に入ろうとするネギたち。ネギがチラッと上を見上げた時、その変化にネギはすぐに気づいた。


声に連れられて皆が上を見上げると・・・



「そ、・・・」



「空がッ!?」



「全員、急いで中に避難しろッ!!」



今度は空が急に荒れ出した。


黙々と漆黒に染まる雲の塊が魔道大グレンラガンの上空に集まりだし、無慈悲な雷迎が銀河の英雄に降り注いだのだった。




「ぐわあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」




その苦しむ声は、誰か一人のというよりも、この魔道大グレンラガン内にいる全ての者たちから等しく出された声だった。


そこに強い弱いも関係ない。


広大な魔道大グレンラガン内にすら、その膨大な電撃が駆け抜けたのだった。



「っつ~、くそ、何だよこれは!?」



「み、皆さん、無事ですか!?」



だが、魔道大グレンラガンは耐え抜いた。急いで機体内に避難したネギたちも無事だ。


当然だ。これしきでやられるほどヤワではない。


だが、それでもこの状況が一体どうなっているのか、誰にもわからない。





『ぐわははははははははは、己の小ささを存分に噛み締めたか?』





「「「「「「「「「「ッッッ!!!!????」」」」」」」」」」





そして再びジェノバの声が響きわたった。




「くそっ、どこだ! どこにいやがる!」




「レーダーに反応が・・・でも、これはどういうこと!?」




ギミーもダリーもグレンラガンのコクピット内で動揺が加速していく。




ジェノバの声はどこから聞こえてくるのか。




空から? 下から? 右? 左?




いや、違う。




「ダリー! レーダーの反応はどうなんだ!」




「どうなんだって・・・これ・・・私が聞きたいよ!」




「どういうことだ!」




「だって・・・あのマジンガンってガンメンの反応が・・・レーダーの画面の範囲・・・ううん、この世界全体から反応を感じているの!」




「な、なに!?」




この世界そのものからジェノバの声が聞こえてくる。




「まさか、キサマッ!!??」




魔道大グレンラガンの周囲を飛ぶエンキドゥドゥ改。そのコクピット内で、ヴィラルの全身の毛が逆立った。



ヴィラルが「そんなことが可能なのか!?」と大グレン団の彼ですら思ってしまうようなことに気づいた。



そんなはずはない。



そう否定したいが、どうしても嫌な予感しか感じられず、ヴィラルの全身の毛が逆立ち、汗が滝のように流れた。






「まさかジェノバ!! 貴様・・・この・・・この星と合体したのかッ!!!!????」






そう、ジェノバが合体した物は・・・・





『これぞ合体の極み! 惑星合体・マーズ・マジンガンッ!!!!!』





―――――――――――――――――ッ!!!!!!??????




そう、ジェノバは火星の魔法世界そのものと合体したのだ。



メカでも人でもなく、世界と合体する。



可能か不可能の問題ではない。



銀河の果てまで戦った大グレン団ですら想像も出来なかった、惑星合体。





『この世界、大地も海も空すらもワシの意のまま!! この魔法世界がワシ自身じゃ!!』





「「「「「「「「「「な・・・なん・・・なんだそりゃあアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」





今、文字通り世界そのものが彼らに牙を向くのだった。
















正に魔法世界そのものがジェノバと化した。

この世界、どこへ行っても最早逃れる術はない。



「な、なんだ!? この衝撃は!?」



「どうやら・・・惑星合体に入ったようネ。シモンさん、我々も急ぐネ」



世界全体の震えを、未だ墓守人の宮殿内でさ迷っているシモンと超鈴音も感じ取った。



「どういうことだよ。それにさっきもいきなり天井を突き破ってマジンガンが下まで突き抜けていったし・・・」



「だから、惑星合体ネ」



「もう少し詳しく教えてくれ!」



シモンも未だに感じたことのない、この世界を包み込む底知れぬ何かに嫌な予感が尽きない。



(なんだ? それにこの感じ・・・なんだろう・・・まるで世界が人のように・・・興奮しているかのような揺れ・・・まさか、ジェノバって奴が・・・)



超は何を知っている? 今何が起こっている? 自分は本当に手を出さなくてもいいのか?


いや、この全身に感じる嫌な予感はハンパではない。ネギたちの力を認めないわけではないが、とても自分一人だけ高みの見物を決め込めるほど余裕な相手ではない。


それどころか、それこそ自分や仲間たちの全戦力を注ぎ込んで立ち向かう必要があるほどの大きさをシモンは感じていた。


だが、



「ダメネ、シモンさん。ここでシモンさんが一緒に戦ったり、皆を率いたりしてしまえば、何も意味が無くなってしまうネ」



シモンの心情を察したのか、シモンの手を超が強く握り締めた。



「超・・・だけどこいつは!」



「そうネ・・・デカイ・・・デカすぎるヨ・・・だからこそ、あの子達は超える必要があるネ。ネギ坊主も・・・シモンさんの意思を継いだ後輩たちもネ。そうやって受け継がれていく」



超はいつもは、ふざけた発言やギャグで真剣な場面をかき乱したりするが、本当に本気の時だけは昔からこうやって真剣な眼差しで想いを語っていた。


どうやら超は本気のようだ。


シモンですら危機感を感じるこの馬鹿でかい『何か』を、新時代たちに託そうとしているのだ。


そして、明日の全てを握らせようとしているのだ。



「超・・・」



仲間を信じる。いつもは簡単に口にしてきた。しかしそれはシモン自身も一緒に命を懸けて共に戦ってこその話だ。


自分だけ何もしないで、ただ仲間を信じて見守るだけが果たして・・・





「ちょっとちょっとおーーーーーー!?」





「あ、危ないですーーー!?」






と、その時、シモンの思考が中断させられた。




「・・・・・・・・・・え?」




マジンガンがぶち破った天井から・・・




「って、シモン!?」




「シモンさん!?」




「・・・・・・・・・・・・・・えっ!? えええって、うわあああああああッ!?」




「あ、危ないヨ、シモンさん!?」




シャークティとヨーコと、気を失っているのかぐったりとしたまま二人に抱きかかえられているクロニア。


三人が突如落下してきて、シモンに、それはもう盛大な音を立てて落下したのだった。



「あ・・・あらら・・・」



超鈴音は呆れ顔。



「いたたた・・・って・・・あら、シモンじゃない! ゴメンゴメン! ずいぶん変な再会になっちゃたわね!」



「ごご、ごめんなさい、シモンさん・・・その・・・あっ、でもご無事で良かったです!」



体をぶつけた痛みに少し目尻に涙を浮かべながらも、ヨーコとシャークティは二人のお尻の下でのびているシモンに軽く謝罪をしながらうれしそうに笑った。


しかし、既にボロボロのシモンにとってはトドメの一撃をさされたようなもの。



「い・・・・いいから・・・ちょっ・・・ど、どいてくれ・・・・」



二人に答えるにはもう少しだけ時間が掛かりそうだった。


そしてシモンと同じように、こちらもグッタリとしているクロニア。だが、意識は無いものの、こちらには目立った外傷はなく無事のようだ。



「は~・・・やれやれ・・・これまたイヤ~なメンバーが揃ったネ・・・・・・ヨーコさん、シャークティさん、クロニア・テンジョウさん・・・なぜこー、人がせっかくシモンさんと良い雰囲気の時によりにもよってこの強力なメンツが・・・」



超は「あちゃー」と額に手を当ててため息付く。


このメンツを見ながら超はもはや半笑いになる。




「ん? ところで、あんたは誰な・・・・・・えっ!?」




「あ・・・・え・・・・えええ!? ちょっ・・・・あ、あなたは・・・まさか・・・・」




その時、ヨーコとシャークティもようやく彼女に気づき、そしてそのあまりにも見違えた姿に絶句してしまう。




「妻を無くした独身男性に・・・女子中学生ばかりの子達が集う中で集まってしまった・・・・・・・ドリルに魅せられた・行き遅れ女子四天王の集合ネ!!」




「「って、誰が行き遅れよ(ですか)!? まだ私たちは20代前半!!」」



「しかもこのメンバーだけシモンさんの好意度が桁外れになりそうな気もするので、尚且つ悪いネ」



もはや超鈴音も自虐ネタで笑うしかなかったのだった。






後書き


言われる前に言います。ジェノバの惑星合体は、YAIBAのかぐやのマネだってばよ!

実際、星との合体ってあんな感じ。
最終更新:2012年01月10日 14:40
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