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136-俺たちと一緒に明日を見届けろ!

第百三十六話 俺たちと一緒に明日を見届けろ! 投稿者:兄貴 投稿日:12/01/01-15:19 No.4472



否定したいのに認めざるを得ない残酷な現実が、全ての常識を覆して世界の終りを告げようとする。




――大洪水




――大地震




――大爆雷




――大噴火




――大氷河




――大暴風




ありとあらゆる天変地異の猛威がただ一つの物体めがけて集中的に襲いかかる。


その猛威に曝されているのは、魔道大グレンラガン。その光景を世界中が目撃していた。


ユウサが世界各地にばらまいた世界同時中継画面。


ユウサがT・鬼神という規格外の怪物を生み出して、世界の連合軍艦隊を蹂躙する光景を世界中に見せつけ絶望と恐怖を与えるために設置した。


だが、それは彼の思惑通りには行かなかった。何故なら絶望を与えるはずの恐怖が、グレンラガンの登場という希望で上書きされ、魔法世界は怯えるどころか興奮がヒートアップしたのだった。


そしてT・鬼神という化け物を魔道大グレンラガンという新たなる英雄が打ち砕いた。その光景を全世界が目にしていた。


しかしその後、その映像を流していた画面はどうなったか?


実はユウサが敗れた今でもその画面の中継は止まっていなかった。


だからこそこの戦いはまだ終わっていないことを世界中が理解していた。





『ヌハハハハハハハハハハハハハハ!!!!』





その時、世界と一つになったジェノバの笑い声が聞こえた。



『ヌハハハハハハハ、いつまで持つかな?』



「ちっ、ジェノバ!」



ギミーがこの強大な壁を前に、コクピット内の壁を叩いた。



『ワシらの時代において、星との合体すら些細なこと。戦いの中では惑星すら砲丸のように投げ、銀河をブーメランのようにぶん投げることもあったからのう! おかげでアンチスパイラルには仲間を見捨てても尚も前に進むのが螺旋族とか酷評されたがの!』



「へっ・・・・・・知ってるよ・・・」



ギミーもダリーもヴィラルもそれを知っている。その銀河の戦いを駆け抜けてきたからだ。


だが、知っているのと、それに見合うだけの力があるかどうかは話が別。


あの時は、超巨大飛行船・アークグレン、惑星と同じぐらいの大きさを誇る超銀河大グレンもあった。


しかし、今の自分たちにはそれが無いのであった



『ふん、星との合体は予想外じゃったか? まあ、これを出来る奴はあんまりおらんかったからのう』



「うるせえ! 偉そうに! 大体、なんでガンメンでもない、星と合体なんてできるんだよ!?」



『カッカッカッ、・・・・・・・・・気合いじゃ!』



「ぐっ!? ふざけんなと言いたいが、大グレン団として納得せざるを得ないッ!?」



『まあ、ワシも細かい理論はよー分からんが、別に合体もメカだけとは限らぬ。生命ともやろうと思えば可能じゃ。そして星もまた生命じゃ!』



「なっ、なに~?」



『星は自己調節機能を持つ一個の巨大な生命体じゃ。ワシのように超気合いに溢れた男にはこの通りよ!!!!』



生命との合体。それを試したことはギミーにもダリーにもない。


だが、その意味は何となくだが分かる。


それは、アンチスパイラルとの最終決戦の時。


天元突破グレンラガンを生み出した時だ。


アンチスパイラルと決着を付けた場所。超螺旋宇宙。認識が実体化するその宇宙で大グレン団メンバーの思念を取り込み実体化した最大最強、そしてグレンラガンの最終形態。


銀河すら凌駕するそのグレンラガンを生み出したのは、思念の融合。魂の融合。エネルギーの融合。つまり生命の融合だ。



(生命・・・すなわちそれはエネルギーとの融合・・・ならばあり得る・・・星が生命と呼べるのなら、可能よ)



当時の戦を思い出しながら、ダリーは心の中でジェノバの説明に納得した。



『だからワシは、宮殿を突き抜け、そのまま大地を掘り進み、星の核と呼べる中心部にスピンオンした! 今ではこの火星を触媒にした魔法世界、水一滴から砂一粒にいたるまでワシ自身じゃ!』



恐らくこの魔法世界の誰もが納得できないだろうが、ギミーにダリー、そしてヴィラルだけは納得できた。




『ぬははは、進化とは意志の力で生命が宇宙になること!! それに比べれば、こんな星の自然の超常崩壊現象で慌てふためく貴様ら程度で、ワシを砕き飛ばせるかァッ!!!!!!!』




突如砕ける大陸。


割れる空。


荒れ狂う大気。


今正に、星が牙を向いて魔道大グレンラガンに襲いかかっていた。


そう、真の最終決戦が今こそ始まったのだった。














『こ、これは一体・・・この光景はどういうことです!?』



今現在、集った無数の世界連合艦隊を実質的に指揮取る、オスティア総督のクルト・ゲーテル。


軍人、騎士団、戦乙女などの世界の総力たちが呆然とする中、彼が真っ先に声を上げた。


スピーカーが開放状態ゆえに彼のその叫びは全艦隊に波及した。


しかし誰もが「何を取り乱している!」などと注意したりしない。むしろクルトの言葉は当たり前だったからだ。


そして、この場にいる誰もが同じことを思っているからだ。


世界に無限の希望をまき散らした魔道大グレンラガン。その魔道大グレンラガンが星の脅威に襲われている。


この超異常事態をすぐに理解するなど、誰にも出来ない。



『おおい! こ、こりゃあ、世界崩壊の前兆か?』



『いや、リカードよ、よく見てみるのじゃ! 明らかにあの割れた大陸や自然の猛威は、魔道大グレンラガンを標的に襲っておる!』



『信じられないわ!? まるでこの世界が・・・意思を持ってグレンラガンを攻撃しているというの!?』



首都主要艦、帝国軍艦、アリアドネーの主要艦隊、それぞれの艦にて同じようにこの光景を見ている軍隊の最高権力者、リカード評議員議員、テオドラ皇女、セラス総長。

若かりし頃は世界を巻き込む大戦のど真ん中にて武勇を上げていた彼らですら、この異常事態にはもはやこれまでの常識を全て覆されるような感覚だった。

相手が強いとか、戦の規模がデカイとかそういう問題ではない。

星が意思を持って襲いかかってくる。

未だ嘗て誰もが目の当たりしたことのない衝撃的な事態に、ただただ彼らはその場に立っているだけでやっとだった。



『くっ・・・魔道大グレンラガンのケルベロス乗員! 聞こえないか! パイオツウ氏! アムグさんでもいい! 一体何があった! 報告してくれ!』



タカミチはマイクを掴みながら、魔道大グレンラガンの一部となった巨大戦艦ケルベロス改め、魔道大グレンのクルーたちにこの状況を確認しようと叫ぶ。



『モフフ、こちらパイオツウ! って・・・・ぬうう・・・振動が・・・』



スピーカーから聞こえてくるパイオツウの声に、まだ乗組員たちも無事であることにタカミチたちはホッと胸をなで下ろす。

しかしスピーカーから聞こえる振動音やせっぱ詰まった様子から、状況がやはり異常であることを物語っていた。

すると・・・



『タカミチ、そしてクルトさんを始め、リカードさんたちにも状況は僕から説明します!』



スピーカーから突如聞こえてきたのはネギの声だった。



『ネギ君! よかった! 無事だったんだね!』



『うん・・・まあ、この状況ではそうとは言えないけどね』



『ああ、それよりどうして君たちがグレンラガンの中に? そしてこの状況は?』



『うん、ちょっとトラブルがあって墓守人の宮殿内の足場が崩れたところを、魔道大グレンラガンに助けて貰ったんだよ。って、今はそれどころじゃない!』



ネギたちの安否に安堵するが、ネギの言うとおり状況は急を要している。

ネギも必要最低限の言葉だけで簡潔に伝える。



『千年間世界の覇権を握っていたテンジョウ家・・・その現当主のジェノムさん・・・彼の遺伝子の中に眠っていた初代当主のジェノバさんが目覚め、彼の持つ合体の力で、彼はこの魔法世界と合体したんだ!!』



それはあまりにも簡潔で、数秒で終わった説明だった。

それゆえそれだけで詳しい内容の全てを把握することは出来ない。

だが、それだけでも十分に伝わった。



『なっ、テンジョウ家!?』



『ジェノム氏がこの世界に来たというのですか!? そして・・・それどころか始祖の魂が目覚めた?』



『ジェノム・・・あの野郎が・・・しかし初代当主だと!? どうなってやがる!?』



『バカな・・・魔法世界と合体じゃと? そんなことが・・・』



『もはやこれは魔法の力とかそういうレベルじゃない・・・正に・・・神・・・』



この世界の主要な人物たちは全員ジェノムの名前も人物も良く知っていた。

中には快く思わない者や、その強さや覇気を良く知る者も居た。

そして、既に魔法世界の真実を知り、崩壊しかない世界を少しでも救おうと動いていた、クルトを初めとする者たちの前にはいつもジェノムが立ちはだかっていた。

武力でも政治でも、ジェノムこそが『完全なる世界』と同じように魔法世界の脅威そのものであった。

ジェノムという男の出現は、魔法世界にとっても緊急事態と言えた。

しかし、今の事態はそれを遙かに超えた。

そして、ネギのそのスピーカーから発せられた言葉は全艦隊に行き渡った故に、この正に絶対的絶望とも言えるべき世界の終わりに全ての戦士たちはその場で力を失って呆然と立ちつくしたのだった。




「神は・・・運命は・・・どこまで我々を試すのか・・・」




この後に及んで再び襲いかかる空前絶後の絶望。




「そんなに愚かなことなのか・・・この世界を守ろうというのが・・・」




もはや、一体いくつの絶望を超えれば終わるのだと、オスティア総督クルトはとうとう膝の力が抜けて崩れ落ちそうになった。

そして彼だけではない。


「なんだよこれ・・・」


「どうやって戦えばいいんだよ・・・」


「無理だ・・・星と戦えなんて・・・神様じゃないか・・・」


「死ぬ・・・終わりなのかよ・・・」


「な、なんなんだよ・・・さっきまでグレンラガンの登場にみんなで大騒ぎしてたってのに・・・なんでこんなことになるんだよ!!」


今度こそ、もうどうにもならない。

例えグレンラガンが居たとしても変わらぬと、誰もが戦意を心ごと持っていかれそうになった。

だが・・・



「項垂れている場合ではない。立つんだ、クルト」



「タカミチ!?」



艦内で思わずよろめいたクルトを無理やり立たせるタカミチ。クルトの腕を力強く握り締め、決して倒れることを許さない。

そしてタカミチはこのブリッジにいるクルーたちを見渡す。誰もがもはや希望の光のない色褪せた瞳をしていた。

その状況下、タカミチはただ一人厳しい顔つきのまま、画面に映る光景を睨んでいた。

そして己の拳をギュッと握り締め、館内にいる全ての軍人、そして・・・・




『君たちも・・・いや、この空域に集った全戦士達もだ』



――――――!!!???




マイクを通してこの空域にいる全連合艦隊に対して言葉を発したのだった。

かつては紅き翼で名を馳せたタカミチの言葉は、瞬間的に全艦隊、全ての戦士達の耳に入った。




『君たちの目には何が見える。この戦場をちゃんと見るんだ』




戦士達は改めてモニターやその瞳に映る光景を見る。

世界を救うために現れた救世主・魔道大グレンラガンが牙をむいた星の猛威に苦しめられていた。




『たった今、この世界に存在する何千万何億人の民たちの命が危機にさらされているんだぞ? それもこの世界を丸ごとだ。事態に立ち向かえるのはこの空域に集った者たちだけだ。それなのに足掻いているのはグレンラガンとその機体に乗っている新生大グレン団に白き翼の幼い少年少女たちだけだ。分かっているのかい? 長く続いた戦争だが、今こそ正念場なんだ。今ここに集った我々と彼らがこの星の全ての命運を握っているんだ。我々が敗れても逃げても全員死ぬ。君たちの守りたい者や帰りを待つ者たち、一人残らず。一人残らずだ!」




一人残らず死ぬ・・・・

その現実は誰もが一度は思いかけたが、決して口にはしなかった。

口に出したら全てが終わると思ったからだ。

気づけば一人、また一人と悔しそうに涙を流す。

世界の危機、完全なる世界、群がる何十万という魔物、狂い笑い、そしてT・鬼神。

諦めそうな絶望の中、希望を見出してようやく世界は救われたと彼らは一度は歓喜した。

しかしその歓喜から再び絶対的絶望に叩き落とされたのだ。

その失意は計り知れないだろう。

しかし、タカミチはあえて口にした。全員一人残らず死んでしまうと。このまま諦めたら本当にそうなるのだと。




『現実から目をそらすな! 神や道理が阻もうと、決して屈するな! 多くは求めない! ただ、戦うぞ!!!! 僕たちも!!!!』




勝てとは言わない・・・


「お・・・・」


生きろとは言わない・・・


「う・・・うお・・・」


ただ、戦おう・・・


「くそ・・・くそ~~・・・う、うおおおお」


最後まで・・・




「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」




勝ち目なんて知らない。


攻略法など知らない。


だが、戦おう。


その意思を持って、世界連合艦隊全てが全速前進し、猛威に振り回されている魔道大グレンラガンの援護へと飛んだのだった。















「ぐわははは・・・ジェノムの祖先か・・・まさか・・・知らんかったわい」



「ああ、動いたらあかんって、アムグはん。うまく治療できんて」



「ふん、それがどうした? 怪我してようが治ろうが、この場に置いて何の意味があるのじゃ?」



魔道大グレンラガン内のだだっ広い機内。


機内の中に入り、シモンが連れてきたケルベロス改め、魔道大グレンの乗組員たちと再会した木乃香たち。


既に戦いでボロボロになった者たちの手当をしながら、ただこの状況に心が暗くなるばかりだった。



「ちょっと待てよ・・・星と合体だなんて・・・」



「今はまだ耐えられてるけどよ・・・」



皆、最後の言葉は出来るだけ口にしないようにしていた。


ただ、必死に否定して飲み込むばかりだった。



「チッ・・・・・・・」



あのチコ☆タンも・・・



「ジェノム・・・」



「くそう・・・」



「やって・・・らんないね~」



ミルフやマンドラにディーネなどの魔法世界に轟く豪傑たちも、もはや騒ぐ気力しかない。

誰もがその言葉を口にしないだけで精一杯だった。




――これで終わりなのか?




誰もその言葉を口にしないが、この状況、いつ出ても既におかしくは無かった。


(シスターシャークティ・・・兄貴・・・ヨーコさん・・・)


ココネと手を繋ぎながら、外の光景をただ見るしかできない美空。今の彼女はこの不安な状況に加え、行方知れずの家族が気がかりで仕方なかった。


「美空ちゃん・・・」


「くっ・・・リーダー・・・姐さん・・・ヨーコさん・・・」


同じ仲間の豪徳寺たちですら美空に掛ける言葉が見つからない。当たり前だ。彼らとて不安で仕方がないからだ。

彼らは無事だ。心配ない。そうやって叫んでいようとも、無意識に最悪のことばかりが頭に浮かぶ。

いくらグレン団の看板を背負ったところで、彼らも人間だ。不安や恐怖を感じないわけがない。


「今、コレットと念話が通じて、無事に脱出したようです。ジェノバ氏の意識が我々に向いているために離脱は容易のようでした。あと、途中で戦いを中断した龍宮さんとポヨさんを回収できたようです。今、グレートパル様号でこの近くの空域に待機しているようです」


「そ、そっか~、龍宮さんも無事だったんだ・・・良かった・・・」


「はい・・・ですが・・・その・・・やはりシャークティさん、ヨーコさん、そしてシモンさんは乗っていないようです・・・」


脱出班として待機していたハルナ、ハカセ、茶々丸、コレット、田中エンキ、高音、愛衣のグループも無事に脱出できたようだ。

ユエのその報告にのどかも、ぎこちなくホッとする一方で表情は晴れない。


「なにしてんだろーねー、あたしたちは・・・悪の大組織をぶっ飛ばして、アスナを救って、地球に帰ってハッピーエンドって目標だったのに・・・随分と話がソレちゃったよねー」


朝倉が苦笑しながら呟いた。その言葉に誰もが顔を落とした。


「くそ・・・俺も壁を突き破りたい思って成長したと思ったんやけど、まさか壁の向こうにこないな分厚い壁がまだあるとは知らんかったわ」


「小太郎君・・・私・・・怖いよ・・・」


「ああ。そやろな。夏美姉ちゃん・・・俺かてな・・・怖いなんて口には出したくないが、体の震えが止まらんわ・・・」


いつもケラケラと笑っていた小太郎にいつもの笑みはない。ただ、怯える夏美を宥める一方で、自分の心とも戦っていた。


「パパ・・・私たちさー、色々世界中旅してさー、超危ない目にも何度もあったけどさー、まさかこんなんがあるなんてスゲーよな」


「ああ。どうやら私たちは・・・駆け足で来すぎたようだね・・・まあ、後悔なんて微塵もないんだけどな」


「うん、・・・僕もそうだよ・・・」


まるでこれが最後かのように家族三人で手を繋ぐ、サラ、ハルカ、そして瀬田。

どんなピンチでも笑い話にしてしまいそうなこの家族ですら、この状況を馬鹿笑いする気にはなれなかった。


「ねえ、・・・私たち・・・どうなっちゃうの、焔?」


「な、情けない声を出すな、暦! 私たちはまだ・・・まだ・・・」


一度はこの世界を滅ぼすことにも何の躊躇いもなかったはずの『完全なる世界』のメンバーも、今は普通の少女に戻っていた。


「神の力・・・か・・・笑えるのやら笑えないのやら分からぬな、テルティウムよ」


「いいや、笑えないさ、デュナミス。・・・そう・・・笑えないさ・・・」


デュナミスもフェイトも同じだった。

この機内には強い奴も頼もしい奴らもいくらでも居るが、それすらも何の意味も持たないジェノバの超越した力は、全ての者の心をへし折るのであった。

振動が伝わる。

衝撃が走る。

パイロットのギミーとダリー、そしてエンキドゥドゥ・改で側の空域を飛んでいるヴィラルの舌打ちする声も聞こえてくる。

相当頑丈だからか、まだ魔道大グレンラガンが大破することはないが、いかにこの機体とていつまでもつか分からない。

そのいつ終わるか分からぬ不安が恐怖を更に加速させ、

そして何よりも・・・


(・・・シモンさん・・・)


刹那が心の中でその名を呟いた。


(ちい、やべえな・・・こんな時に旦那がいりゃーよう・・・ネギの兄貴はまだ王たちと話しているだろうし・・・)


カモも心の中で同じ男を思い浮かべる。

そう、いつもならこういう状況を「燃えてきた」とばかりに笑って、自分たちをいつだって引っ張ったシモンが居ない。

だからこそ、この絶望だらけで埋め尽くされたこの空気を打ち砕いてくれる者がいない・・・

いや・・・



「ちっくしょう!! グレンブーメラン・スパイラル!!!!」



「ギミー! 上空から雷! 横からは巨大な台風! って、正面から直径3キロの岩・・・っていうか大陸の破片が!?」



「だあああああ!! 次から次へと多すぎるぞ!?」



「岩は俺が引き受けた! 空からの攻撃には注意しろ!」



粘るギミー、ダリー、そしてヴィラル。


そう、まだ彼らがいる。一度は銀河の絶対的絶望を打ち破った彼らがいる。


彼らは持てる操縦技術をフルに活用し、次から次へと襲いかかる、星と一体となったジェノバの起こす猛威にただ堪えていた。


しかし、それでもガンメンの動きが思ったよりも鈍いのであった。



「ダリー! ちょっ、どうなってんだ!」



「うん、魔道大グレンラガンのエネルギーが・・・上昇しない・・・」



「なんで!?」



「不安なんだよ・・・今、ここにいる人たちの不安が表れているんだよ・・・」



今、この魔道大グレンラガンの中に居る者たちの不安を反映している。だからこそ、魔道大グレンラガンのエネルギーが上がらず、動きも鈍い。


そんなマシンが人の心に左右されるなど・・・とギミーは言わない。むしろ納得した。


心のあり方が状況をどう左右するかなど知り尽くしているからこそ、ギミーもダリーも、そしてヴィラルですら悔しそうに唇を噛みしめた。


そう、如何に彼らがまだ居るとはいえ、それでは耐え凌ぐだけで、打破するだけの力が無かった。



(くそ・・・そりゃそうか・・・でもどーすりゃ・・・こんなとき・・・こんなとき・・・あの人たちは・・・あの人は・・・シモンさんなら・・・・・・・・・・・・カミナさんなら)



この場に今は居ない男や、遠い過去に散った男を思い浮かべるギミー。

確かに彼らならこの状況下でも意気揚々と絶望に立ち向かったかもしれない。

まだ自分では無理なのか?

足りないのか?

ギミーは皆を奮い立たせる言葉を探すと共に、自身の不甲斐なさに唇を噛み締めた。

だが、その時だった。




『いつまでも下ばかり見ないでください、皆さん! 今・・・歯を食いしばらないで・・・足掻いて足掻いてジタバタしないで・・・どど、どうするんですか!!!!』




「「「「「「「「「「・・・・・・・・・えっ?」」」」」」」」」」」




ギミーもダリーも思わず「えっ?」と言ってしまった。



『僕たちは・・・僕たちはまだ・・・何も成し遂げていないじゃないですか! 今やら・・・今やらないでいつやるんですか! 皆さん!』



魔道大グレンラガンの魔道大グレンのブリッジだった場所から、機体全体に行き届くスピーカーから幼い少年の声がした。

その声の主は、ネギ。



『敵の想像が上回ったからどうしたんですか。天地が僕らの敵になったから何だと言うんですか! 星がどうしたんですか! 僕たちはただ星や世界に生かされているのではなく、自分たちの意思で今この場に居るんじゃないですか!! それが相手が自分たちの想像を上回るぐらいが何ですか!!!!』



その少年の言葉は本人自身も必死だったのか、あまり要領を得ない言葉だったかもしれない。



『ぼ、僕だって・・・い・あ・・・だから・・・こういう時こそ上を向いて・・・だから!!』



というより、多分言っている本人もいっぱいいっぱいなのだろう。

口調が震えている。

そう、ネギもまた恐れていた。



『とと、とにかく! とにかくです!!』



だがしかし・・・




『だから、僕はやります! 僕がやらないで皆さんがやりますか!?』




ただ一つのことだけが魔道大グレンラガンの中に居る者たちには理解できた。




『皆さんがやるなら僕もやります!!! だから僕がやるから皆さんもやりましょう!!!!』




それは・・・・




『要するに、僕たちがやらなくて誰がやるんですか!!!!』




――――――――!!!???



この僅か十歳の少年は諦めていないということだった。




「「「「「「「「「「うるせええええええええええええええええええええええええええええッ!!!!!!!」」」」」」」」」」




その瞬間、魔道大グレンラガン内に耳を塞ぎたくなるほどの大怒号が響きわたった。



「誰に物を言ってんだ、小僧!!」



「何が皆さんもやりましょうだ!! 俺たちはガキじゃねーんだぞ!!」



「つーか、お前に言われるまでもねえってんだよ!!」



「ってか、ビビッてんのはお前だろうが!!」



元々がガラの悪い魔法世界の大監獄から連れてきたチンピラや犯罪者や賞金稼ぎたち、更にはその空気に感化されて好戦的になった首都の騎士団や軍人たちで構成されている連中がここには居た。



「うがあああああ!! この俺、チコ✩タン様に向かって親子揃って生意気言うんじゃねえ!! 要するにこの世界を粉々に吹っ飛ばせば野郎は死ぬんだろうが!」



「ミルフ隊!! 武器の整理じゃ!! 魔力の残っている者は今すぐ名乗りあげよ!!」



「くけえええ、神速部隊!! 倒れた仲間たちの弔い合戦はまだ終わらぬぞ!」



「へっ、やったろうじゃんかよ!!!!」



「ぐわはははは、親子揃ってバカを言うのう!」



まだ諦めていない馬鹿が居た。

その馬鹿はまだ子供。

ならば自分たちが先にギブアップするものか。



「ネギ!! あんにゃろう、やるやないか!! 震えた声のくせしてあんだけ吠えりゃ上等やッ!!」



「小太郎君・・・・うん、そうだよ! まだ・・・」



「そうっすよ! ネギ君も諦めちゃいない! アニキが居ないからこそ、残った新生大グレン団の私たちが先にギブしちゃダメっすよ!!」



「っしゃああ、行くぜ美空ちゃん!! 野郎ども!!!」



「どんなに傷ついても、一人残らずウチが治したる!!」



「その意気です、お嬢様!! そう・・・まだ終わっていません!!!!」



「で・・・ござるな!」



「そうアル!」



「おっしゃあ、復活! 燃えるよブータ!!」



「ぶみゅうううう!!」



「フェイト様!!」



「テルティウムよ・・・だそうだが?」



「ふん、甘く見られたものだな、ネギ君! 君に言われなければ意思を持てないほど、僕たちも未熟じゃないさ!」



そう、言葉はなんだってよかった。


ただ、キッカケが欲しかった。


諦めないキッカケ。


奮い立つキッカケ。


そのキッカケをネギが作った。


だからまだ希望の橋は掛かっているのだ。



「っ~~~って・・・やるじゃんか・・・あいつ!!」



「うん・・・あれがヨーコさんの言っていた・・・ネギって子ね!」



スッカリ自分がするはずだった役目を奪われたギミーとダリーは苦笑した。


そしてその代わりを存分に努めたネギに、胸が踊った。



「なんかカミナさんっぽいセリフだったけど、どっちかっていうと、カミナさんの影響を受けたシモンさんの影響を受けたって感じだな!」



「うんうん。シモンさんの意思はこんなところにも届いているんだね・・・・なら・・・・ギミー!!」



「おう! シモンさんの意思を最初に受け継いだのは俺たちだ! 先輩が後輩に負けていられるかってんだ!!!!」



魔道大グレンラガンのエネルギーゲージ再び回復し出した。


今のネギの檄に感化された戦士達にグレンラガンも呼応したのだ。


相変わらず状況は変わっていないかもしれないし、打開策も見つかっているわけじゃない。


だが、これで何とかできるかもしれないと思えるようになった。




「そいつの言うとおりだ、みんな! 遥かに想像を超えられたからって、諦めるぐらいなら今すぐこのグレンラガンから降りろ! こいつはなー、最後まで諦めない奴にしか壁を突き破らせてくれねーんだよ!!!! すがるもんが必要ならこいつにしがみついていろ!!!! 行くぞ!!!! 振い落されんじゃねーぞ!!!!」




「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」」」」」」」」」」





魔道大グレンラガン。


新生大グレン団。


白き翼。


そして完全なる世界。




「「「「「「「「「「魔道大グレンラガンを援護だッ!!!!!!」」」」」」」」」」




更には駆けつける魔法世界連合艦隊。


この光景の映像を通して見ている魔法世界人たちも思いは一つ。


世界の人々の心のベクトルが、今まさに一つの方向へと向いたのだった。



「ふん、そうこなくてはな! そうでなくては血が滾らぬ!!」



ヴィラルもエンキドゥドゥ・改のコクピット内で武者震いから来る笑みが止まらなかった。


面白い世界だ。


気に入ったぞ。


その笑みはそう思っていた。



「うひょーーー、なにやらすごいことに!」



「ハルナさん、落ち着いて! 急いでグレンラガンの側に!」



「またなんかすごいもんが・・・」



「ポヨ・・・」



「・・・やりますね・・・グレン団・・・」



「気合レーダー探知・・・計測不能」



「もう何がなんだか!」



「頭が痛いですわ・・・」



「お、お姉さま! 私たちもアレに乗せてもらいましょうよ!!」



別待機組のハルナたちもグレートパル様号に乗って現れた。彼女たちも魔道大グレンラガンという最早ぶっ飛びすぎたこの光景に興奮のボルテージは最高潮にまで達していた。


さあ、世界の人類の反撃開始だ。




「よ~っし、いける・・・これならいけるぞ!」




グレンラガンのコクピット内で、ギミーはニヤリと笑みを浮かべた。



ギミーは心の中で確信した。



(これだけの気合いが溢れていれば・・・)



ギミーは、後から出てくる感情を抑えきれずに、笑みが零れた。


今、ギミーの頭の中ではこれから自分がやろうとしていることを想像しただけで興奮が押さえきれなかった。



(俺たちの『アレ』に終わりなんてねーんだ・・・だから・・・まだまだ見ていてくれよ、先輩たち・・・そしてシモンさん!)



ギミーがしようとしている『アレ』は、ジェノバや偉大なる先人たちに対抗し、そしてこの絶望をぶっ飛ばすためのもの。


それは、まだまだジェノバをしびれさせるものではないかもしれない。


まだまだ天元突破にまで至ったグレンラガンには遠く及ばないだろう。


それでも、これが今の自分の精一杯。ならば何の物怖じもしないで、堂々とこの世界に見せつけてやる!



「ギミー。こっちも準備OKだよ」



「ダリー!」



そして、流石はダリー。


彼女はこの戦場の状況だけで、次にギミーが何をしようとしているのかを、簡単に理解していた。


何故なら彼女もまた、それを想像するだけで笑みが零れているからだ。



「よっし、上等だぜ!!!! ダリー! この空域全体に俺の声が届くようにスピーカーの音量を最大にしてくれ!!」



「分かったわ!!」



操縦桿を握ったまま、ギミーがそこで深呼吸。


興奮が激しすぎて、一端落ち着かないとまずいことになりそうだった。


しかし、それだけで収まりきるほどの興奮ではない。


ならば構わない。興奮が収まらないなら、どこまでも興奮したまま全てをやり通してやる!




『よく来てくれたぜ、みんな!! だが、それでも敵はデカイ!! すごい合体だ!! これに対抗するには俺たちもするしかない! だからみんな、アレをやるぞ!!!!』




この空域だけではない。



中継映像を通してこの光景を見ていた全ての魔法世界人たちもギミーの声を聞いた。




「「「「「「「「「「―――――――――――――――アレ?」」」」」」」」」」




多分、この戦場で粘っている者たちは全員せっぱ詰まっていたので、一瞬ギミーの言葉の意味が分からなかった。


だが、徐々に・・・


え・・・・?




『合体で相手を圧倒するなんて、俺たちのやり方だ! それを台無しにされて俺はもう、相当キテんだよ!』




まさか・・・・!?




『合体で受けた屈辱は、合体で返す!!』




戦士たちの表情が変化した。


そしてギミーは言う。





『合ッッッ体だああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!』




―――――――――――――――!!!!!!!???????



ちょっと待て! そう誰もが叫ぼうとしたが、その口を閉ざした。


待てと言って止まる奴らではない。


やると言ってやらない奴らではない。


ならば自分たちはどうする?



「う・・・うお・・・・」



「おお・・・おお・・・」



「・・・・ッ!!」



出来ないなんて言うわけにはいかない。


大グレン団がやると言っているのだから、やるしかない!




「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」」」」」




この空域に集った全艦隊の全戦士たちがギミーのその叫びに応えた。


その瞬間、魔道大グレンラガンの全身から無数のドリルが伸びだ。


フルドリライズ形態で伸びたそのドリルは・・・




『うおおおお、来たッ!!』




リカード率いる首都の超巨大戦艦スヴァンフヴィードを始め何十隻と集った艦隊。




『ぬはははは! 妾らも行こうぞ!!』




テオドラ率いる帝国軍艦隊・・・




『ついに来たのね!!』




セラス率いるアリアドネー・・・




「ふっ!! 最後の締めはそうでなくては!!」




ヴィラルのエンキドゥドゥ・改・・・



「ちょっ・・・」



「私らにも来たああああアアアアアア!!!!」



「なんですの!?」



グレートパル様号。



この場に集った全総力に魔道大グレンラガンはドリルを突き刺し、その全てを螺旋の渦のように巻き込み、今一つになる。



そうだ・・・



世界は・・・



人類は・・・



この時を待っていた!



これが・・・






「星の導(しるべ)が指し示そうと!!」






「覚悟と決意が運命(さだめ)を砕く!!」






「那由他の夢幻が覚めようと!!」






「無限の思いが真(まこと)に変える!!!!」






世界が叫ぶ。




「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「螺旋と魔法と心を一つに! 明日への歴史は己で刻む!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」




そして星が震撼する。





「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「全機合体・超魔道ダイグレンオー!!!!!!!!!! 俺(私)たちを誰だと思っていやがる!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」






役職も階級も人種も思いも魔法も螺旋も過去も未来も希望も何もかもを織り込んで、その全てを一つにした最強の象徴が出現したのだった。

しかしそれでも、ジェノバは笑う。





『ヌハハハハ、だからどうした! 小っちゃいのう!! この星も世界も完全にワシが支配している! ここでお前たちの勝つ可能性はゼロじゃ!』





そんなことは誰もが分かっている。


だが、それでも人類は抗う意思を捨てたりはしないのであった。























(私は、死んだのでしょうか?)



全ての真実を知り、自分の存在を改めて思い知らされたクロニアはただ意識を闇の中に落としていた。


シモンと戦い、自分がただの人間であると指摘され、ジェノバが現れ、自分の本当の役割を教えられた。


自分の人生全てを犠牲にしてまで捧げてきた使命。その全てを根底から覆された彼女は、今すぐにでも消え去りたい衝動だった。



(自分は選ばれた人間だと多くの人類を見下し・・・管理し・・・自分は普通とは違うのだと、得られたかも知れない日常も切り捨てて・・・たどり着いた場所がここですか・・・)



無様なものだと、ただ自分自身を嘲笑った。


もういい。


もう生きる意味もない。


ただ早く終わってくれと、彼女は願うのだった・・・が・・・



「しっかりしろよ!」



「―――――――え・・・」



闇の中に落ちた彼女の世界が一瞬で明かりが差し込んだ。


まぶたを明けたそこには、数刻前に別れたはずのシモンが目の前にいた。



「シモン・・・どうして・・・・・・・・・」



自分は生きている。


ここは一体どこだ? いや、どうなったのだ?


気がついたら体の節々が痛んだ。だが、致命的な怪我を負っている訳ではない。軽い打撲程度だろう。


クロニアがキョロキョロと回りを見渡すと、中腰になって自分をのぞき込んでいるシモンが、親指をある方向へ向けた。



「ヨーコとシャークティに感謝するんだな。二人が助けなかったらどうなっていたか」



「えっ・・・?」



シモンが指し示した方向には、シャークティとヨーコが軽く包帯を体に巻くなどの治療を受けていた。


そしてすぐ側には見知らぬ女が一人。その女はシモンとまったく同じコートを着ていた。



「ふ~ん・・・へ~・・・ふ~ん」



「な・・・なに・・・ネ」



「ううん。ただ、あんたってばどんだけシモンのことが好きなのかなってね」



「なッ!? なにヨ、その勝ち誇ったような顔は!?」



「あーはいはい、二人きりの時間を邪魔して悪かったわね♪」



怪我の手当を受けながら、意地悪な笑みを浮かべるヨーコと、少しムッとしているお団子頭の女性。



「でも、とても素敵な女性に成長しましたね、超さん」



「ふ、ふん、子供扱いはよくないネ。私はもうあなたとも歳が近いヨ?」



「シモンさんと同じ歳ですか・・・狙っていたのですか?」



「だーかーらー、二人してなぜそんなニヤケ面で私を見るネ!」



初めて見る女。しかし様子からしてシモンたちの仲間なのだろうとクロニアもすぐに理解した。


(シモンの仲間でしょうか? お揃いの上着を着ていますし・・・年齢は私と同じくらいでしょうか?)


だが、ただの仲間のようには見えない。戦友にも見えない。

どちらかというと、懐かしい悪友と再会しているかのようなやり取りに見えた。

そして、そのやりとりがどこか眩しく、自分には手の届かないようなものに見えた。


(もし私が・・・テンジョウ家に縛られていなければ・・・私も・・・あのように誰かと・・・笑い合うこともできたのでしょうか・・・)


しかしそこでクロニアはすぐにその考えを頭の片隅へと追いやる。

何を馬鹿なと。そしてそんな甘く愚かなことを考えている時ではないと。


「クロニア・・・?」


俯くクロニアをのぞき込むシモン。その瞳をもはや正面から見ることも出来ないぐらい自分を恥じてしまったクロニアは、ただどこまでも心と共に下を向いた。



「シモン・・・結局あなたは勝ったようですね・・・そして生き残り・・・正しかった」



自分にも勝った。アーウェルンクスにも勝った。そして敵であった自分たちを逃がすために、既に疲弊し切った状態から複数のアーウェルンクスシリーズを相手に立ち向かい、こうして生き残りクロニアの前にいるのである。



「私は自分が愚かで仕方ありません。今こうして生きていることすら生き恥を晒しているとしか思えません。結局私が間違っていたのですね・・・なにもかも・・・だからこそ・・・私はあのまま終わりたかった!」



結局全ての道を貫いたシモンが正しかった。そうクロニアは自分自身を恥じた。

だが、



「いや、俺は生き残り・・・自分のやりたいやり方を押し通しただけだ。それを正しかったかどうかなんて決まった訳じゃないさ」



「えっ・・・?」



「互いに自分のやり方を通したいからこそ、俺はフェイトとも戦ったし、昔はネギたちとも争ったし、そこに居る俺と同じコートを来ている女とも争った」



フェイトにはフェイトにやり方があった。その違う道同士がぶつかり合って、互いに命と魂を懸けて戦った。

ネギと超鈴音も例外ではない。かつて学園祭では、シモンは新生大グレン団としてネギともそして超とも戦った。

その結果、シモンは正しかったから勝てたわけではない。勝ってやり方を押し通しただけに過ぎない。

シモンが正しいと信じているからといって、別にそれが宇宙の真理だなんて思い上がったことはシモンも思っていない。



「・・・ならば・・・何が正しいというのですか・・・?」



クロニアは今までは自分や父であるジェノムが全てを司っていると思っていた。しかしつい先ほど、ジェノバの真実がその全てを根底から覆した。

ならば何が正しいのか? 何が全てなのか? 自分たちは何を目指すべきなのか? 自分たちの思いは?

自分の信じてきたモノ全てを失ったクロニアは何も分からなかったのだった。

だが、何が正解だかなどシモンだって神ではないのだから分かりはしない。


「本当の正解を今すぐ知るのは俺にも分からないよ・・・」


そして・・・



「でも、それを知る方法なら知っている」



「ッ!? ・・・なら・・・その方法とは・・・」



答えを得るためにすべきことならシモンは分かっている。



「その道の先にある・・・まだ見ぬ明日を見届けることさ」



それが正解の答えへ近づく方法の一つだった。



「ッ!? ・・・しかし・・・しかし・・・あなたも分かっているはず・・・始祖の・・・ジェノバから感じるこの螺旋の力が世界を埋め尽くしています・・・もう、明日など・・・」



「明日など? 何言ってやがる。アレを見ろ」



「えっ・・・・・ッ!? な・・・・なんです、アレは!?」



シモンは宮殿外に広がる魔法世界の広大な景色を埋め尽くす超魔道ダイグレンオーを指さす。


その常識道理を突き抜けた存在感に気づいたクロニアは思わずヨロめいた。



「おやおや・・・」



「相変わらず!」



「ふふん、ちょっと乗ってる皆がうらやましいネ」



そのクロニアを背後から支えるヨーコ、シャークティ、そして興奮で今にも飛び上がりそうな超鈴音。

そしてシモンはクロニアを引き起こすように、手を差し出した。

子供の頃から穴を掘り続けて、ゴツゴツとした手。

大柄ではないシモンからは想像もできないたくましい手だった。



「まだ、何も終わっちゃいないじゃないか」



クロニアは三人に支えられながら、誇らしげにそして己の突き進む道に一切の陰りも見せぬシモンの言葉を受け止める。



「明日は来るさ。必ずな。だから俺たちと一緒に明日を見届けろ。クロニア」



その言葉を受けると、自然とクロニアはシモンが差し出した手を握り返していたのだった。


まだ見ぬ『明日』。そして道標から解放されるための世界の夜明けを見届ける。








後書き

あけましておめでとうございます。
新年早々私は何をやっているのかと、自問自答にかられながら、結局投稿してしまいました。

2012年・・・この小説の第一話を投稿したのが・・・2008年!?

二次創作キャリアとしては短いかもしれませんが、よくまー、書いてる暇があったなと振り返ります。
しかし面倒くさくてやめようとした時期もありましたが、皆さんの熱い感想のおかげで螺旋力がキープできました。
ありがとうございました。これからもよろしくお願い致します。
最終更新:2012年01月10日 14:48
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