――――Side Kobayasi Masaru
「げほっ…し、死ぬかと思った…」
『メリークリスマス!クリスマスパーティの始まりよ!』
ボロボロになった身体でよろよろとを歩いていると、マイクを使っているのかバニングスのデカイ声が会場であるホールからかなり離れている此処まで聞こえて来た。
ま、まじかよ…。
バニングスの言葉から分かる様にどうやらパーティは始まってしまったらしい。完全に出遅れてしまった…。
出だし最悪だなぁ~…。
最悪の出だしに先行きが怪しくなるのを感じ俺は溜息を吐き、ポケットに忍ばせて置いた水無月へのプレゼントを取り出した。
良かった。壊れて無い。
水無月のために悩んで買ったプレゼント。色々とボロボロだがプレゼントの方は無事で俺はほっと胸を撫で下ろしてまたポケットにしまう。さて、プレゼントが無事と分かれば何時までも落ち込んでいる訳もいかない。パシンと力一杯に両頬を叩き気合を入れしっかりと足に力を入れ歩き出す。
「気合だ気合!やってやるぜ!!」
気持ちを入れ替え再戦を挑むため俺は会場へ向かって駆け出だした。しかし、口ではどう言おうが心の中では…。
でも、二度とアレに追われるのは嫌だなぁ…。
二人の鬼と出会いません様にとそんな事ありえないと言うのに甘い事を考えていた…。
――――Side Signu
ホールを見渡せる位置にある2階の廊下で私はシャマルとザフィーラに挟まれ、不満そうなのを隠そうともせず会場で楽しそうにクラスメイト達と遊んでいる彩の様子を眺めながらぶつぶつと愚痴を呟いていた。しかもヴィータだけ彩と一緒に居るのが更に気に喰わない(もしもの時のために彩のために待機している)。何故私はあそこに行ってはいけないのか?
「おのれ、あの小僧彩と仲良さそうに…あ゛!?アイツ手を繋いでたぞっ!?許せんっ!」
「シ、シグナム。落ち着いて」
「これが落ち着いていられるか!彩の貞操の危機だぞっ!?」
「大袈裟だ馬鹿者」
「大袈裟な訳あるかっ!こうなったら私が…」
「きゃあ~っ!?ザフィーラッ!取り押さえてっ!」
「ぬぅっ!?いきなりこれかっ!?」
2階から飛び降りようと手摺りに足を掛け様とすると突然両脇にいた二人が私の手と足を掴み取り押さえられ、私は身動きが取れなくなってしまう。流石は私と同じヴォルケンリッター、物凄い力だ。この私でも振り解けない。
な、なにをするだああああああああっ!?
「は、放せっ!?は~な~せ~っ!!」
「シグナムっ!彩ちゃんの楽しみにしてたクリスマスを台無しにする気っ!?」
「ぐ、ぐぬぬぬぬぬ…」
シャマルの言葉にこの日を指で数えて楽しみにしていた彩の姿が脳裏を過ぎる。この日のためにプレゼントを用意していた。数日前からは飾り付けなどの準備をしていた。この日のために可愛らしいお洋服を母上殿から用意して貰っていた。その光景はどれもこれも凄く楽しみにしていた様子だった。それを壊すと言うのか…?
出来る訳無いだろう…。
「ぬぅ…」
振り払おうとしていた身体の力を抜く。すると二人は私がもう暴れないと分かり安堵すると絡めていた腕を解放する。
「ほっ…落ち着いた?」
「ああ…熱くなり過ぎていた様だ」
「…本当にね」
「…私は此処で彩を見守るとしよう」
「そうしてくれ…」
「(これが我等のリーダーだと言うのか…)」
「(これじゃまるで…)」
「「(ストーカーじゃない(か)…)」」
「「はぁ…」」
「む?どうしたのだ?」
突然溜息を吐く二人に私はどうしたのか訪ねたが二人は唯疲れた様な視線を送って来るだけで何も言わず私は訳も分からず首を傾げるだけだった。
――――Side Sai Minaduki
『皆~班に別れた~?』
―――は~い!
アリサちゃんの指示に従って3~4人のチームに分かれてる。次のゲームは『宝探しゲーム』屋敷の何処か(すずかちゃんや忍さん達の部屋は除く)にアリサちゃんとすずかちゃんが宝を隠したのでソレを探せと言う物だ。
ルールは少し複雑で、最初に屋敷の見取り図とヒントの書かれたカード3枚がチーム毎に配られる。例えば『宝は○の○』や『食べ物が集まる場所』や『ホールには無い』等が書かれてある。でも、その内容は本当かもしれないし嘘かも知れない。情報を絞るためには他のチームと情報を交換すると言う方法しかない。出来るだけ自分に有利な情報を交換して宝物の在り処を探すと言う訳だ。あと、カードも屋敷の何処に隠されておりそのカードの内容は嘘は書かれて無いとの事。
私のチームははやてちゃん・ヴィータちゃん・アイリス・私と言うチーム。そして、配られたのは『あべこべの自分』『宝箱は大きな箱の中に入っている』『宝は広い場所には無い』の3つだ。この中に嘘が書いてあるかどうかは分からない。それを確かめるには他のチームの情報を照らし合わせてみる必要がある。だ。丁寧に点字も書かれてあるので助かる。アリサちゃんの心遣いに感謝。
う~ん…やっぱりこれだけじゃわかりませんねぇ。
『宝はこの赤い石!コレと同じ奴が何処かに隠してるから探すのよ?制限時間は一時間!それじゃあ…スタート!』
ゲーム開始の合図と共に一斉に皆が我先にと動き出す。とりあえず私達は慌てず騒がず作戦会議といこう。
「皆さ~ん。集合で~す…(ヒソヒソ」
「了解や~…(ヒソヒソ」
「お~…(ヒソヒソ」
「分かりました~…(ヒソヒソ」
『(逆に目立つ気が…いえ、あえて見守りましょう)』
私達はホールの隅に輪になってしゃがみ込み誰にも内容がバレない様小さな声でカードの内容について話し合いを始める。
「さて、分かっているとは思いますが。この広い屋敷の中を虱潰しに探すのは無謀です。ちゃんとヒントの内容を考えてから探して行きましょう」
「そやな。この屋敷の中を当ても無く探したんじゃ朝になってまう」
ですです。だからちゃんと考えて探して行きましょう。
私は渡されたカードをはやてちゃん達に渡し内容を確認して貰う。『あべこべの自分』『宝箱は大きな箱の中に入っている』『宝は広い場所には無い』この中に嘘が書いてあるかどうかは分からない。それを確かめるには他のチームの情報を照らし合わせてみる必要がある。
「私の予想では『あべこべの自分』と言うのはヒントの在り処だと思うんです」
その根拠は宝の場所を指定していない事だ。○○の○。○○のには宝は無い。と言った感じで『宝は○○に有るか無いか』の二択の選択肢が出てくる訳だが『あべこべの自分』と言うのにそう言う選択肢は存在しない。このカードは恐らくボーナスカード的な物なのだろう。
「あべこべの自分あべこべの自分…反対って事だよな?」
「そうですね。反対の自分…どう言う事でしょう?」
『リインフォースさんは分かります?』
『ゲームは大人のシグナム達が参加していない様なので私も黙っていますね。自力で頑張って下さい』
リインフォースさんに聞いて見たがどうやらゲームには参加しないとの事。確かに大人のシグナムさん達が参加すると直ぐに分かってしまうから仕方ないかもしれない。
う~ん…。
ヴィータちゃんとアイリスがヒントの内容に理解出来ず唸っている。それと反対にはやてちゃんはと言うと…。
「ふふ~ん♪ふ~ん♪」
自信有り気に鼻歌を歌っている。
もしかして…。
「はやてちゃん。分かったんですか?」
「勿論や!答えは鏡や!」
「「「鏡?」」」
「彩ちゃんは普段鏡使わんから気付かんやろうけど、鏡は映している物を反対に…つまりあべこべに映すんや。だからヒントは鏡のある場所と言う事やな」
「あ~!そう言えばそうだ!」
「成程…普段鏡を見ないから気付きませんでした」
あわわ!?凄いですはやてちゃん!私には全然分かりませんでしたよ~!
「鏡…ですか。何処にありましたかっけ?」
「トイレにあったぞ?」
「あとは洗面台くらいやな」
「では、行ってみましょうか」
・
・
・
「あったあった。鏡の裏に挟んであったで~!」
とりあえず洗面台の方に行ってみた所探し物はすんなりと見つかった。私達はカードを取りそそくさと此処から退散すると人気のない場所に移動しカードの内容を確認する。
『宝は12と0が同じ場所を指す箱に中にある』
「「「「???」」」」
12と0が同じ場所を指す場所。どう言う事だろう?明らかに違う数字なのだが…。
「12と0が同じ場所を指す…」
「なんのこっちゃよう分からんなぁ…」
「ですが、ボーナスヒントに嘘が書いてないのは確実です。これが宝の在り処を意味しているのは明らかですね」
「でもよ、12と0って全然違うよな?」
「「「「う~ん…」」」」
わかりません!
とりあえず今はこのヒントは置いておこう。何か手掛かりが見つかれば解けるかもしれない。となれば、他の二つ『宝箱は大きな箱の中に入っている』『宝は広い場所には無い』なのだが。前者の大きな箱の中と言うのはさっき手に入ったヒントと一致しているため本当と言う事になる訳なのだが…。
「逆に小さい小さい箱に入ってる可能性だってあるんですよね。これって…」
「だよな。一致してるのは『箱』だけだもんな」
箱…段ボール、タンスとかそんな感じの物だろうか?大きな箱となると後者のタンス類と言う事になる。12と0が同じ場所を指すタンス…。
タンスに数字って描いてるんでしょうか?
デザインによるが12と0が同じ場所を指すと言うのは説明出来ない気がする。
「情報が足りません。他のチームと交渉するとしましょう」
「やな。で、最後に『宝は広い場所には無い』やけど…」
「広い場所…中庭やホールとかでしょうか?」
「そもそもこの屋敷自体が広い件について」
ヴィータちゃん。それを言ったら話が進みません…。
「ホールとかそう言うとこやろ。たぶん」
「私もそう思います。…出来れば、これは本当であって欲しいですね」
ホールは広い。全部探すだけで制限時間が過ぎてしまう可能性がある。
「でも、アタシ達が準備してた時にはそれらしいもん無かったぜ?」
「すずかさんは私達よりも先に準備していたのを忘れていませんか?その時に隠したのかもしれません」
「どうする?彩ちゃん」
「…情報欲しいですね。判断するにはまだ早いです」
「了解や。それじゃ、なのはちゃん達のチームと情報交換しに行こか!」
・
・
ピョコピョコ(移動中)
・
・
「テメーのヒント寄こせっ!」
「にゃ~っ!?暴力反対なのっ!?」
「ヴィータッ!?」
「こらヴィータ!やめい!」
「よ~こ~せ~っ!」
「にゃ~っ!?始めて会った時と同じ状況なの~っ!」
「ヴィ、ヴィータちゃん止めてください~!?」
「あ、あははは…」
「当初の目的を忘れてますね…」
ルールを理解していなかったのかなのはちゃんに襲いかかろうとするヴィータちゃんを慌てて抑えるフェイトちゃんとはやてちゃん。大事には至らなかったがヴィータちゃんの暴走に無駄な時間を消費してしまった私達、気を取り直してなのはちゃんのチームと交渉する事に…。
「んにゃ~…それじゃあ気を取り直してヒントの交換をしようか?」
「そうですね」
さて、どれを渡しましょうか…?
「母様…(ボソ」
「アイリス?」
何やらアイリスが私の耳元でなのはちゃん達には聞こえない様に囁いて来た。
「先程手に入れたカードは見せないようにしましょう。ポケットにでも隠して置いて下さい」
「え?どうして?」
「ボーナスカードは嘘は書かれていません。ですが、なのはさん達のカードは違います。交換しても此方にあまり利はありません」
成程…。
「ボーナスカードは持っていると気付かれないようポケットに入れておくと良いでしょう。ボーナスカードを見せないと此方も見せないと言われれば厄介なので…」
アイリスの言う事は尤もだ。皆には悪い気もするがこれはチームの勝利のため黙っていよう。
「…はい。分かりました」
「じゃあ、私のチームはこれを見せてあげるね!」
「ん~…じゃあ私はこのカードを」
私はなのはちゃんからカードを受取り、こちらからも『宝は広い場所には無い』の書かれたカードを渡す。流石に既に取られたカードの在り処を書かれた『あべこべの自分』を渡す気にはなれなかった。
渡されたカードに私は指を触れて点字を読んでいく。カードの内容はこうだ。
『木を隠すには森の中。宝を隠すには?』
これはまた…。
カードに書かれていたのはまたよく分からない内容だった。とりあえず私ははやてちゃんにメモを取って貰うとカードをなのはちゃんに返し私も同じように渡したカードを返してもらう。
「う~ん…謎は深まるばかりや」
「分かるかっての!」
「にゃはは、良く分からないよね。」
「そうですね」
まさか森に隠してるなんて事は無いでしょうし…。
「なのはちゃん。そろそろ別の場所にいこ?」
由紀ちゃんが急かす様になのはちゃんに言う。時間が迫っているので焦っているのかもしれない。
「あっ!そうだね!それじゃあ、彩ちゃんはやてちゃんヴィータちゃんアイリスちゃん!また後でね!」
「はい。また後で」
そう言って他の場所へと探しに行ってしまったなのはちゃんチーム。私達もそろそろ移動するとしよう。時間は限られている。
「それじゃあ、移動しながらこのヒントの謎を解いていきましょうか」
「はい」
「そやな、ついでにありそうな所適当に探して見よ」
レッツ探索タイムです!
箱~。
「無いで~」
箱~…。
「…無いな」
は~こ~…。
「無いです」
あわわわ…やっぱり駄目です。
やはり何も考えずに探しても全然見つからない。ちゃんと考えて進もう。
えっと…『木を隠すには森の中。宝を隠すには?』ですか。宝を隠すには多くの宝の中に隠すって意味ですよね?これは…。
「宝が沢山ある場所って何処でしょうね?」
「宝…赤い石が沢山ある場所?そんなのあるのか?」
「…さぁ?」
「さぁって…お前よぉ」
そう言われましても…。
「宝は箱を意味してるのではないでしょうか?」
「「箱?」」
「宝は箱に入っている。これは確定な情報です。宝を箱に置き換えてこのヒントを考えてみるんですよ」
えっと、つまり…。
「箱を隠すには箱の中?」
それは何て言うマトリョーシカです?
「ちがいますよ母様。沢山の箱がある場所です」
ああ、そうですね。間違えちゃいました。
「箱が沢山ある所ですか…」
「私は知らないです…」
今日は殆ど厨房に籠りっきりでしたし、他の部屋に行く理由も暇も無かったですから…。
「あるで~。多分此処や」
「どこどこ?はやて!」
「ココ」
そう言って屋敷の見取り図の広げてぱしぱしと見取り図を叩く。
「物置や。段ボール箱沢山あるやろ?」
おお~!凄いです!はやてちゃん!今日2回目の大活躍です!
「待った。物置にある箱の中を全部探すのか?」
「え?はい」
「…まぁ、良いけどよ」
「「「?」」」
何にやら言い辛そうにしているヴィータちゃん。どうしてヴィータちゃんがそんな反応を示したのか私達はその時は分からなかったが、実際に物置へと移動しその現実を目の当たりにしてヴィータちゃんが何を言いたかったのか理解する。
山だ。段ボール箱の付き重ねられた幾つもの山が物置の殆どを埋めつくしていた…らしい。目の見えない私には埃っぽいと言う事だけしか分からない。
「これはまた凄い数ですね。これ全部探すんですか?」
唖然とアイリスがそう呟くが誰もそれに応えようとしない。この場に居る全員がそんなの無理だと分かっているのだ。もう残された時間は少ない。この場にある段ボール箱を全て調べるには余りにも時間が空くな過ぎる。いや、例え一時間あっても出来るかどうか…。
「此処にはねぇのかもな。この中から探すのは無理だろ。ぜってー…」
「はい…」
「そやなぁ。でも、もう他の場所探してる時間も無いで?」
『後10分~』
ホールの方からアリサちゃんのカウントダウンが聞こえてくる。もう10分しか無い。もうロクに探す事は出来ないだろう。もう既に皆からは諦めの空気が漂い始めている。
む~…諦めたくないです。
どうしても諦めきれない私。残された方法は唯一つ。ヒントから宝物の在り処を割り出すと言う方法だ。しかし…。
『宝は12と0が同じ場所を指す箱に中にある』
恐らくこれが重要な手掛かりを示していると言うのは分かる。しかし、どう言う意味なのか未だに全く理解出来ない。12と0が同じ場所を指す箱とは一体何なのだろうか?
12と0、12と0…う~ん…。どうして一緒の場所を指すんでしょう?
「だ~っ!やっぱ見つかんねぇぞ!?」
「隠すにしても奥に隠す事は無いでしょう。移動するのも一苦労ですし埃が被っている事から察して奥の方は動かして無い証拠です」
「でも、それだと前の方の段ボールも埃被っとるで?」
「やっぱり此処には無いんでしょうか?」
あう~…。
「もう時間ねぇぞぉ~…」
「はぁ~…後何分やろ?」
「さぁ?あ、此処に時計がありますね」
ピクリとアイリスの言葉に反応し身体の止まる…。
…時計?
「大きな柱時計やなぁ…2mとはあるで?」
柱時計…12と0が同じ場所を指す箱…。
思考が急速に回転してバラバラのピースを組み上げて行く…。
「でも止まってますね。壊れてるんでしょうか?」
「ほんまやな。12時丁度に…あれ?」
そして、全ての謎が解けた…。
「それです!」
柄にも無く大きな声を出してしまうが構わず私は人差し指をピンと立ててはやてちゃんの方へと向ける。
「うわっ!?何だよ彩?急に大きな声出して?」
「彩ちゃん。どないしたん?」
「謎は全て解けたのです!」
「解けたって…本当ですか母様っ!?」
はいです!
アイリスの言葉に私は大きく頷きはやてちゃん達に説明を始める。
まずはこの4つのヒントだ。
『宝は広い場所には無い』
『宝箱は大きな箱の中に入っている』
『木を隠すには森の中。宝を隠すには?』
『宝は広い場所には無い』と言う事は狭い部屋の中にあるとい事だ。そして『宝箱は大きな箱の中に入っている』『木を隠すには森の中。宝を隠すには?』の二つのヒントを重ね合わせて宝を箱に置きかえる。木を隠すなら森の中と言うのは木が多い森の中に隠せば見つかり難いと言う意味だ。つまり、箱を隠すなら箱が多い場所、つまり物置を意味する。そして、最後の4つ目の重要なヒント…。
『宝は12と0が同じ場所を指す箱に中にある』
これは時計を意味している。デジタル時計なら有り得ないがアナログ時計ならこのヒントと同じ現象が起きる。12と0は午後12時と午前0の事。そして、その時間になるとどちらの時間もアナログの時計の針は12を指しているのだ。
そしてまた出て来る『宝箱は大きな箱の中に入っている』ヒント。この大きな箱と言うのは2mはある柱時計の事で、宝はこの中に入っていると言う事になる。
「つまり、宝はこの時計の…」
私は柱時計の蓋を開けて手探りで中に何かないか探ってみる。すると、指先に何か当たりコトッと固い物が転がる音が響く。それを聞いて私はにやりと笑みを溢すとその指先に当たった何かを掴み取り皆に見せる様に掲げた。
「ありました!」
「「「お~~~っ!?」」」
パチパチパチッ!
皆の驚く声と拍手に物凄い達成感に支配され、どうだと言わんばかりに胸を張る。でも、内心ドキドキしていたのは皆には秘密だ。これで外れてたら凄く恥ずかしい。
「すげぇ!すげぇよ彩!」
「流石母様です!感動しました!」
「ホンマに凄いなぁ!まさか時計やったなんて…言われてみたらその通りやん」
ふふん!です!
「ほなさっそくホールにもどろ!」
「はい!」
うふふ♪皆驚くでしょうね!
赤い石を大事そうにぎゅっと両手で包みこむと私達は急いで皆が集まっているホールへと向かった。
・
・
・
・
ホールに着いて見れば既に集まっていたクラスの子達が「駄目だったー!」とか「みつからなかったよ~…」と殆どの子達が愚痴を溢しているのが確認出来る。その中を私達は悠々と歩いて行きアリサちゃんとすずかちゃんの前へとやって来た。
「あら?もしかして彩のチームが見つけたの?」
「はい!これを…」
誇らしげに頷き手に持っていた赤い石をアリサちゃんに渡す。
「…うん!確かにアタシが隠した宝ね。凄いじゃない!彩!誰にも見つからない様に本気で考えに考えて隠したのに」
―――ぶー!ぶー!そりゃねぇよバニングス!
アリサちゃんの言葉にクラスの男の子からブーイングの嵐が巻き起こる。しかしアリサちゃんはそれを威嚇だけで鎮めてしまう。
「彩ちゃんおめでとう♪」
「ありがとうございます!すずかちゃん♪」
そう言われると頑張った甲斐がありました♪
「…まぁ、景品は無いんだけどね」
―――無いんかいっ!?
クラスの全員が息を揃えて突っ込んだ。
「だって、見つかるとは思わなかったんだもん」
「ア、アリサ…それはないよ」
「しょうがないじゃないっ!私達だけ参加出来ないんだから憂さ晴らし位させなさいよね!」
「あ、あんまりなの…」
お、横暴です…。
自分達の苦労はとクラス全員がガクリと肩を落とすのだった…。
「それじゃあ、ゲームも終わった事だし!お待ちかねのお食事にしましょうか!」
―――おー!待ってましたー!
―――水無月さんの手作り料理だ~♪
先程の疲れた雰囲気とは打って変わってドッと喜びの声が上がる。そろそろ夕食の時間だし皆広い屋敷の中を歩き回ってお腹が空いていたのだろう。
そして、タイミング良くノエルさんとファリンさんがワゴンに料理を乗せてホールへと運んで来ると、料理をテーブルの上に乗せて行く。
「お~…」
「すっげぇ~…」
「凄く美味しそう!」
皆口々に料理を見て驚きの言葉を上げているのを聞いてはやてちゃんはくいくいと私の服の袖を引くと「やったね」と呟き私は「はい!」と返し互いに密かに喜ぶ。頑張った甲斐があったと言う物だ。
食事はバイキング形式で、クラスの皆に皿が配り終えると皆それぞれ自分と食べたい料理の許へと移動して行く。特に人気なのはやはりクリスマスと言う事でローストチキンだった。確かに、クリスマスの料理で殆どの人が想像する食べ物なのかもしれない。
「ぅんめええええええ~っ!」
「あむあむ…ああ、生きてて良かったぁ♪」
あちこちのテーブルから聞こえてくる「美味しい」と言う感想。料理を作った者としてはこれ以上に無い程の賛辞であり、自分が食べる事など忘れてニコニコと皆の美味しそうに食べている様子を眺めるのであった。
ふふふ♪喜んでもらえて良かったです。
「母様…じゃなくて、彩お姉様は食べないんですか?」
ゲームの時間は母様と呼んでいた所為か、つい母様と呼んでしまい言い直しているアイリスを愛しく思いつつも、笑顔のままふるふると首を振る。
「私は皆に食べて貰えるだけで嬉しいですから」
「いけません!ちゃんと食べなくては!それに、彩お姉様も楽しまないと意味無いです!」
私は十分と言える程楽しんでるんですけど?
「にゃはは、彩ちゃんはそう言う性格だからねぇ♪はい!適当に料理持って来たよ~♪」
「何でこんな所に居るのよ!ホラ!アンタも食べなさいっ!」
「彩ちゃん。美味しいよ?」
「彩!ケーキだよケーキ!美味しいよ!」
「これは私が作ったとっておきやで~!ほら召し上がれ!」
「彩!これギガうめぇぞ!食ってみろよっ!?」
「ほらほら彩ちゃん。沢山食べて?」
いえ、あの…そんなにいっぺんに持って来られても…。
ずいずいと全員が料理で皿一杯に載せられた物を押し付けられても小食な私には当然食べられない訳で、しかもどう考えても子供一人が食べられる量じゃない訳で。困った私は少し考えて、その結果私は一つの案を提示してみる。
「皆で食べませんか?」
それなら問題無くこの量の料理を食べられるだろう。皆さんもそれに賛成し空いてるテーブルに移動するのだった。
「今日のクリスマスパーティ。大成功だね!」
「はい♪」
自分とはやてちゃんで作った料理を頂いているとなのはちゃんが嬉しそうにそう言うと私もそれに同意しなのはちゃんんと一緒にクリスマスパーティの成功を喜んだ。しかしそれは私となのはちゃんだけでアリサちゃんは無邪気にはしゃぐ私達に呆れ、すずかちゃん達も苦笑している。
「アンタ達ねぇ。まだ終わって無いでしょ?プレゼント交換だってあるのに」
「それがメインと言っても良いよね」
おお!忘れてました!?
食事が終われば残るプログラムはプレゼント交換のみ。すずかちゃんの言う通りクリスマスパーティのメインに相応しいとも言っても良いだろう。私もこの時のためにプレゼントを頑張って作ったのだ。本当に肝心なイベントを忘れていた。
「む?此処に居たのか。探したぞ」
「シグナムさん?お料理食べて頂けましたか?」
「うむ。流石だな彩は。どの料理も美味しい」
「ありがとうございます♪」
「彩ちゃんだけかシグナム?私も料理作ったんやけどな~?」
「勿論、主の料理も何時も通り美味しいですよ?」
「ついでって感じな感想やな~…」
「そんな事無いですよ。はやてちゃん。とても美味しかったです」
「毎日主の料理が食べれて我等は幸せ者です」
シグナムさんに続いてどんどん八神家の人達がこのテーブルに集まって来る。周りは子供達しか居ないので必然的に大人グループは一緒に行動するしかないのだろう。ヴォ―タちゃんは何ら問題無くクラスの子達と馴染んでいるが…。宝探しゲーム以外の時は他の事達と楽しんでいたのを覚えている。仲良い事は良い事だ。
『おい。何でこっちに来たんだよ?』
『無理に引き離しても逆にシグナムに怪しまれるだろう?と言うか俺も腹が減った』
『そうそう。何事も適度にね♪後私もケーキ食べたいの♪』
『本音駄々漏れじゃねぇかッ!?』
『『自分だけ楽しんでおいて良く言う(わ)!』』
「む?どうしたお前達。睨みあって…」
『『『お前(貴女)の所為だ(よ!)』』』
「何故私まで睨むんだ?」
「…気にしないで」
「ああ…」
「だな…」
「いや、だから何故睨むんだと…」
何やら険悪なムードがあちらで漂っている様だが、何かあったのだろうか?会話だけではそう喧嘩をする様な内容では無かったと私は思うのだが…。
しかしそんな険悪なムードも露知らず。こちらはケーキを突きながら楽しい雑談を楽しんでいた。
「アリサちゃんは今日プレゼント何選んで来たの?」
「言う訳無いでしょ?ヒ・ミ・ツよ」
「ぶ~!すずかちゃんは?」
「うふふ♪私も内緒♪」
「なのは、私はね「フェイト。空気読みなさい」あう…」
ぺしんと軽い音が響きフェイトちゃん小さな悲鳴が上がる。どうやらアリサちゃんにおでこを叩かれた様だ。音からして痛くはなさそうだったが流石アリサちゃん突っ込み担当。素直に教えようとしていたフェイトちゃんを容赦無く叩くとは。私には到底出来ない。
「…てい!」
何故か私まで叩かれてしまう。
「あうっ!?何で私も叩くんですかっ!?」
「何かムカツク事考えてたっぽいから」
エスパーですかっ!?褒めたんですよっ!?
「フェイトちゃん。そう言うのは貰った人だけのお楽しみだよ?」
「あ、そうなんだ…」
「中身を知ってる時と知らないのとじゃ新鮮味が違うよね?そう言う事だよ」
「成程…」
由紀ちゃん説得力ある説明にフェイトちゃんは興味津々のご様子。逆にソレを聞いていた私は落ち込んでたりする…。
私…中身知られちゃってます…。
どんよりとしたオーラを背中に背負いガクリと肩を落とす私。私のプレゼントはクラスの皆に知られている訳で…。サプライズも微塵も無い訳で…。
「だ、大丈夫だよ彩ちゃん!誰もモデルまで知らないから!」
「そ、そうだよ彩!」
落ち込む私を見て慌ててフォローしてくれる二人も優しさが身に染みる。でも、肝心な事がもう一つ…。
「…なのはちゃん達は知ってますよね?」
「「あ゛…」」
どんよ~り…
更に落ち込む私。二人は慰めようとしてくれるが言葉が見つからず「気にしなくて良いよ」とか色々と言ってはくれるが私の周辺に漂っているどんよりオーラは消え去る事は無かった。すると、私達の会話を黙って聞いていたアリサちゃんが呆れた様子で話しかけてくる。
「…あのね?アタシ達は完成品を見た訳じゃないのよ?」
「そうですよ彩お姉様」
「それにね彩ちゃん。彩ちゃんのプレゼントが私達の所に来るか分からないんだよ?」
「そう、ですね…。そうですよね!」
ウチのクラスは30人強は居るのだ。その中でなのはちゃん達に来る可能性はそれなりに低い事になる。
「でも私は彩ちゃんのプレゼント欲しいなぁ」
「え?」
「手作りだと何かこう…暖かいって言うのかな?気持ちが籠ってるというか。そんな感じ」
「そうね。実はアタシも狙ってたり。こう言う言い方はアレだけど、欲しい物は大抵に入るからね。手作りとかそう言う物の方がアタシとしては嬉しいのよ」
「はぁ…そう言う物なんですかぁ」
「アンタだってお金持ちでしょうに…」
そう言うの自覚した事は無いですねぇ…。でも、手作りが嬉しいと言うのは分かります。一生懸命に作った物なら何だって嬉しいものですから。
「んー…っ!お腹いっぱい!皆もそろそろ食べ終えた事かしら?」
「ホントだ。もう殆どの皿が空っぽ」
気付けば料理は殆どん残ってはおらずノエルさんとファリンさんが空いた皿から片付けを始めていた。
「作った身としては嬉しい限りやな」
「ですね♪」
美味しいと褒めて貰って、残さず食べて貰えるのが料理人として何よりの喜びですから♪
「んしょ…それじゃあ、そろそろメインイベントといこうか?アリサちゃん」
「そうね。二人の片づけ手伝ってさっさとテーブル退けちゃいましょう」
「え?退けちゃんですか?」
折角皆さんが早く来て飾り付けしてたのに…。
「プレゼント交換はちょっと場所使うからね」
「そう言う事よ」
アリサちゃんの話によると、プレゼント交換は皆で大きな輪を作って隣の人にプレゼントを渡していって流している曲が止まった時に持っているプレゼントを自分が貰うと言うものらしい。確かにそれだとテーブルで半分が埋まっている今のホールでは出来そうに無さそうだ。
「ほら!シグナム達も!いつまでも睨み合って無いで手伝い!」
「「「は、はい!(う、うん!)」」」
「どっちが年上か分からないわね。あの家族…」
「八神家の食卓ははやてちゃん次第ですから」
「美味しい料理か漬物とごはんかははやてちゃんの気分次第って訳だね」
「「「(まぁ、それだけじゃ無いんだけどね(ですけどね))」」」
はやてちゃんが夜天の書の主というのが本当の理由なのだが、意外と由紀ちゃんの言う事もあながち間違っていないのかもしれない。何故ならはやてちゃんが料理を作らないとシャマルさんが料理を作る事になり、それはシグナムさん達の命に関わって来るのだから。シャマルさんの料理を食べた事が無い私ではその重大さは分からないがシグナムさん達の必死な様子から考えて本当に冗談じゃ済まされないレベルなのだろう。
でも、命が危ない料理って。毒を盛る訳じゃ無いのに…。
後日、以前約束した通りにシャマルさんに料理を教えた私が皆さんが必死になる理由を知ったのはまた別の話…。
――――Side Masaru Kobayasi
「ふぃ~…飯がうめぇ~…」
御馳走をたらふく食べたお腹をポンポンと叩くと満足そうにゲップし背凭れに身を預ける。始めに散々な目にあってゲームには参加は出来なかったがこんな御馳走が食べれのだから良しとしよう。
いや~、こんな美味しい飯は生れて初めてだぜHAHAHAHA!
「…」
あ~…何か忘れてる気が…って!?
「なんて言ってる場合じゃねぇじゃんかっ!?」
重要な事をすっかり忘れていた事を思い出し周りで食事中の友達の事など気にせず大声を上げ勢い良く椅子から立ち上がる。すると予期せぬアクシデントが…。
「うおおおっ!?」
あ、やべ…。
バンッと立ち上がる際にテーブルを叩いた振動で宙に浮かび料理達。それを見て慌てて受け止める友達達、中には両手が塞がり口でキャッチしている奴も居る。友達は落ちていない事にほっと安堵するとジト目で俺に文句を言って来た。
「何だよ勝!急に大声出して!」
「幾ら男子だけで食べてるからって少しぐらいマナー守ろうぜ!?」
「ふぉうだふぉうだ!(そうだそうだ!)」
「わ、わりぃ…」
今のは完全に俺に悪かったので素直に謝っておいた。
それは別としてどうした物だろうか?ゲームの時は確認して無いがアイリスとか言う奴は本当に水無月から離れる様子は無い。しかもさっき身を以って体験したがあの凶暴性は半端ない。本当に命がやばい。さっきの誤解だけでアレなのだから水無月と二人っきりになろうとしてるのがばれたら…。
『死』しかねぇ…。
と言うか成功しても失敗しても俺には後が無いんじゃないかと今更気付く。あの二人が長時間水無月から注意を逸らす筈が無いのだ。プレゼントを渡せたとしてもその後は地獄が待っているだけ…。
ならば、もう開き直るだけ。目的を達成するためなら何だってやってやろうじゃないか。どうせろくな作戦なんて無いんだ。大胆にいかせて貰うとしよう。一瞬、一瞬だけあの二人から注意を逸らす。その後は野となれ山となれだ。
ククク…やってやろうじゃんか。
何故だろうか。覚悟が決まると妙に気持ちが落ち着いて来た。今までに経験した事が無い位に…。
そして、俺の視線がある物に止まるのだった…。
――――Side Sai Minaduki
「それじゃあクリスマスパーティ最後のプログラム。プレゼント交換!皆!プレゼントはちゃんと手にあるわね?」
―――は~い!
「よろしい!それじゃあ、ラジカセの曲が流れ始めたら時計回りにプレゼントを回していってね!…ノエルさんスイッチお願いね」
「畏まりました」
アリサちゃんはノエルさんにラジカセの操作を任せると、自分もプレゼントを手にとって輪の中へと混ざり、ノエルさんはそれを確認してラジカセにスイッチを入れる…
ガチャンッ…
とその瞬間、がちゃんと屋敷全体に何かが落ちる様な音が響くのだった…。
クラスの子達がざわざわと不安そうに騒ぎ出す。周りの様子からして何か起こった様だが、私は何が起こったのか分からないでいた。音がしただけで周りにざわめき以外に異変は無い、匂いをかいでも耳を澄ましても何も変な所は無いので火事や何かの事件では無いとは思うのだが…。
「え?え?何?何!?」
「…停電?」
「ブレーカーが落ちたのかな?」
…どうやら電気が消えたらしい。それなら私には分からない筈だ。
「丁度良いわ。このまま続けましょう」
「よろしいので?」
「不正を防ぐにも丁度良いしね」
そう言ってアリサちゃんは気を取り直してプレゼント交換を再開する。
~♪~~~♪
明るいメロディーが流れ始め、右から流れて来るプレゼントが渡されてきた。私はそのプレゼントを左へ流していくとまた受取りまた渡す。そんな作業をくりかえしていく。すると、誰かが私の袖を引っ張って来たのだ…。
くいっくいっ…
「?…誰です「シッ…」もご!?」
私はプレゼントを回す手を休めずに、袖を引っ張ってくる人に誰か訊ねようとしたが口を塞がれてしまいそれは妨害されてしまう。
「もごっ!?(だ、誰ですかっ!?)」
「シッ…俺だ」
…勝君?
声で口を塞いでいる主が勝君だと分かった私は大人しく黙るのだった。
「どうしたんですか?」
「静かに…黙って俺に着いて来てくれ」
「でも、それじゃあプレゼントが此処で止まってしまいます」
今私が抜けると私の位置でプレゼントは止まってしまうことになる。それだと皆さんに迷惑が掛かってしまう…。
「代わりの人を置いて行くから大丈夫だ。ほら早く…」
そう言うと勝君は強引に私の手を引く。すると誰かが私に入れ替わる様に私に位置に座ってしまう。擦れ違い様、誰かが私を横切り小さく「いってらっしゃいませ~♪」と呟いていた。勝君と言っていた代わりの人と言うのはファリンさんの事だったのか。
何がどうなってるんでしょう?
私は今の状況について行けず混乱しながら勝君に連れられて何処かへと向かうのだった…。
・
・
・
・
「ふい~冷えるなぁ…」
勝君に連れられてやって来たのはラウンジ。盛り上がっていた会場の所為で火照っていた身体を外の冷気が急激に冷ましていく。でも、それが今の火照った身体には丁度良く。寧ろ心地良くも感じる。
「あの…それで、どうしたんですか?」
どうしてプレゼント交換の最中に私をこんな所に連れだしたのだろう?何か特別な用事でもあるんだろうか?連れだされたラウンジには何も無い。あるのは冷たい冷気と外の音のみ…。
「んっとだな…え~っと…メリークリスマス」
「え?」
急な事に私はきょとんとしてしまう。勝君が言って来たのは「メリークリスマス」と言う挨拶だったからだ。私は困惑したがとりあえず挨拶を返さないと失礼だろうと思い同じ挨拶を返す。
「えっと…メリークリスマス」
「ははは…何だよそれ」
むっ…ソレを言うなら勝君です!
「ム~ッ!勝君が言って来たんですよ?」
ぷく~と頬を膨らませて抗議する私に勝君は笑いながら「わりぃわりぃ」と謝って来るが、それからは謝罪の気持ちが伝わって来ない。どう見てもからかっているようだった。
「もう!知りません!…プイッ」
「悪かったって」
「謝ってるように見えません!」
「あちゃ~…」
「やり過ぎたか」と勝君が嘆いている。その様子からしてどうやら反省している様なので許してあげるとしよう。
「良いです。許してあげます」
「本当か?」
「はい。それで、何で私を此処に?」
話は振り出しへ。これを聞かないとどうも話は進みそうに無かった。
「…今日は楽しかったか?」
「はい。ずっと、憧れてましたから…」
大勢の友達と一緒に騒ぐ事。私にとってそれは憧れだった。前も、その前の学校でもそんな事は有り得ない事だったから…。だから、今はとても幸せで、とても楽しい。今までに経験した事無い程楽しいのだ。
「そっか…良かったな」
「私は、前の学校では友達が居ませんでした」
私に水を掛けて来る人。泥をぶつけて来る人。靴を、鞄を隠す人。それは遊んで貰っているんだ思ってた。こんな駄目な私と遊んでくれているのだと…。『友達』になってくれているのだと…。
「…」
隣で勝君は黙って私の言葉に耳を傾けてくれている。だから私は彼の気遣いに甘えて語りを止めない。
「此処に来て友達と言う言葉を知りました。だからあの人達は友達だと思ってました。でも、違いました…」
あれは、『友達』何かじゃ無かった…。
「それが苛めだと言うのを皆さんは教えてくれました。本当の友達と言う意味を皆さんは教えてくれました。壊れかけの私を救ってくれました…」
もし、皆さんに出会えなかったら。私はどうなっていたのだろう?あの頃以上に壊れていたのだろうか?それとも…。でも、そんな事は考えられない位に私は皆さんの御蔭で満たされている。幸せに…。
感謝の言葉なんて見つからない。どんな事をしたってこの恩は返せない。そして今も、その恩は募って行っているのだ。あの人達は、私の友達は今も私に幸せを与えてくれている。それをどうやって返せと言うのか。私にはその返す方法なんて分からない。
「私は…此処に来て良かった」
「そうか」
勝君はそう短く返すだけ。でも、何だか優しい雰囲気の声だった…。
「なぁ、水無月」
「はい」
「ごめんな…」
「え?」
突然謝って来る勝君に私は驚く。何か彼は私にしただろうか?別に私は何もされていないと言うのに。彼は私には謝る必要なんて…。
「あの時、ちゃんと謝って無かっただろ?お前を苛めてごめんな…」
「そんな、気にして無いですよ」
寧ろ、そんな事なんて忘れちゃうくらいに勝君には良くして貰っている。休憩時間に良く男の子に遊びの誘いが掛かるのも密かに勝君がクラスの男の子と仲良く出来る様に取り計らってくれているとすずかちゃんや由紀ちゃんから実は聞いているのだ。それなのに…。
「都合の良い事だって分かってるんだ。あんな事しておいて今更仲良くし様だなんて。バニングスが俺を気に喰わないのだって分かる」
「違います!そんな事ありません!」
私は、勝君の事を友達だと思ってます!アリサちゃんだって良く喧嘩はしているけど本当に勝君が嫌いって訳じゃないと思います!
本当に嫌いだと言うのなら話しかけはしない。無視をする筈だ。だから、きっとアリサちゃんも心の何処かで勝君を認めているんだと思う。そうじゃないと普段の生活での態度は説明がつかない。
「だと、良いんだけどな」
「きっとそうです!」
私は大きな声でそう断言する。確かな自信を持って。
「そっか…あの、さ?」
「はい?」
「本題なんだけど…これ」
勝君は私の手を取ると、何やら箱らしき物を私の掌の上に乗せて来る。箱は掌に入る程の大きさで大して重い物では無かった。これは一体…?
「えっと…これは?」
「クリスマスプレゼントだ。受け取れよ」
「えっ!でも…」
それならあの場で皆と一緒にプレゼント交換をするべきでは無いのか。私はそう思った。しかしその疑問は私の考えを察してか勝君が何も聞いていないと言うのに私が疑問を訪ねる前に答えてくれた。
「プレゼント交換用は向こうに置いて来てるよ。たぶん一つ余る筈だからそれが俺のって事になる筈だ。これはお前個人に渡したかったんだよ」
「私に…」
勝君が私のためにプレゼントを用意してくれた。それは本当に嬉しい。でも…。
「私は、勝君に何も用意していません。これを頂く訳には…」
「別にお返しが欲しくてソレをお前にやるんじゃねぇよ。ほら、開けてみてくれよ」
「でも…」
「いいから!」
「は、はい!」
箱を開けるように急かして来る勝君に私は慌てながらも慎重にかつ丁寧にリボンを解いて包み紙をはがしていく。
そして、箱の蓋を開けてみてそこに入っていたのは…。
チリンチリーン…
独特な音を発している何か鈴の様な物体だった。
風鈴。最初はそう思ったが吊るすための紐は付いておらず鈴の上に手でつまむ様な物が付いていた。とりあえず私はそれを摘まんで左右に振ってみると綺麗で心地良い音色がラウンジに静かに響いて広がって行く。
これは…。
「ベル、ですか?」
「おう。クリスマスベルだ。硝子のな」
「硝子…綺麗な音ですね」
そう言うともう一度ベルを鳴らして見る。
チリーン…
優しい音。風鈴とは別の意味で心地良い音…。
「これ、高かったんじゃ…?」
硝子細工って高価なイメージがあるんですが…。
「値段聞くなよ。それがマナーってなもんだ。あと大した値段じゃねぇよ。これはホント」
「…本当に?」
私は疑っていますと言った感じの視線を勝君が居るであろう方向へと送ると、勝君は必死に私に訴え掛けて来るが私のじとー…っとした視線は解除される事は無い。
「ホントだって!?」
怪しいです。お母様が「男の子は見栄を張る生き物なのよ♪」ってこの前言ってました。
「いや、そんな疑いの眼差しを向けられても困るんだが…。第一、今時じゃ百均だって硝子の置物あるぜ?」
「え?そうなんですか?」
「ああ」
それは意外でした…。
「でも、これは100円じゃないからな?」
「やっぱり高いんですかっ!?」
「話を振り出しに戻すんじゃねぇよ!?違うって!」
「でもでも!?」
「だーっ!良いから受け取れよっ!それで万事解決なんだから!」
「でも…」
「デモもストライキもねぇ!俺がお前にあげたいってんだからそれで良いじゃねぇか!」
『彩。貰ってあげましょう。少年が彩のために用意してくれたプレゼントですよ?』
今まで黙っていたリインフォースさんまで私の説得に加わってきてしまう。
勝君が、私に…。
なら、受取らなければ逆に勝君に辛い思いをさせてしまう。非礼になってしまうのでは…。
「…………はい。ありがとうございます」
長い沈黙の末、私は笑みを浮かべ精一杯の感謝の気持ちを込めて勝君のプレゼントを受取る。思えば、これが初めて友達から持ったプレゼントだった。初めての貰ったプレゼントがクリスマスの日。偶然にしては出来過ぎている。でも、それはとても素敵な事だと私は思う。
大事にしますね?勝君。
私はベルを両手で優しく、大切そうに包みこむ。これは私にとって大事な宝物…。
「さてと、プレゼントも渡せた事だしそろそろみn「ほう?そろそろ処刑の時間だと良く分かったな?」…へ?」
「あ、シグナムさん」
此方に近づいて来る足音が複数聞こえたのでもしかしたらと思ったが予測した通りの様だった。もう一つはアイリスだろうか?
「では、逝きましょうか?」
やっぱりアイリスでしたね。
「ちょっ…まっ!?」
「最後に良い夢が見れたな?」
「これで迷わず逝けますね?…こっちに来なさい」
「い、嫌だあああああああああああああああああぁぁぁぁ…」
『安らかな眠りにつかれん事を…』
ずるずると引き摺られて小さくなっていく勝君の悲鳴を唖然としながら見送り?ポツンと一人ラウンジに取り残されてしまった私。白杖も持って無いしどうした物かと途方に暮れてしまう。
「…くしゅん!」
うぅ、冷えてしましたね。どうしましょう…?
冷えてきた身体を抱いて困り果てる私。
「彩ちゃ~ん!」
私の名を呼ぶ声。私はその声を聞いて咄嗟に勝君から貰ったプレゼントをポケットに仕舞った。
「あっ!あそこに!」
「彩!こんな所に居た!」
「探したわよ!まったく!」
「寒いでしょ?中にはいろ?」
なのはちゃん達だ。どうやら居なくなった私を探しに来てくれたらしい。
「皆さん…」
「皆さん…じゃないわよ!急にファリンさんに代わってるからビックリしたじゃない!」
「ひゅ、ひゅみましぇん。ひたひれぇしゅ~…(す、すみません。痛いです~…)」
びよ~んと頬を引っ張るアリサちゃんに涙目になりながらも謝る私。冷えきって固くなった頬にそれはイタイ…。
「ア、アリサちゃん。止めて上げようよ…」
「あぅ~…」
「はいはい。しょうがないわね」
引っ張り攻撃から解放された私。ジンジンと痛む頬を擦り痛みを和らげようと試みるも全然イタイままである。
「あっ!そうや!彩ちゃん!」
頬を擦っている私にはやてちゃんが話しかけて来た。その声は何だか嬉しそうなのは気のせい?まさか私が涙目なのが嬉しいんじゃ…。だが、そんな考えも次のはやてちゃんの言葉で吹き飛ぶ事に。
「じゃ~ん!彩ちゃんのプレゼント。私に当たったで!」
「!本当ですか!?」
「ほんまや!ほら、これ!」
そう言うとはやてちゃんは私でも分かる様にプレゼントを手に当てて来る。私はそのプレゼントを撫でるとその形を確認していく。この感触、触り心地、そして形。間違える筈も無い。私が毎日必死で彫っていたサンタクロースの彫像だ。まさか、あの低確率の中ではやてちゃんに当てるだなんて…。
でも、凄く嬉しい…。
クラスの皆さんには悪いが必死で頑張って作ったプレゼントが親しい友達に、はやてちゃんに貰ってもらえるだなんてこれほど嬉しい事は無い。でも不安だ。はやてちゃんは喜んで貰えたのだろうか?私が作った彫像だなんて…。
「あの、はやてちゃん?プレゼント、喜んで頂けたでしょうか?」
「当たり前やん!一生大切にするからな!」
「ぁ……」
嬉しい…。はやてちゃんの言葉を聞いたら胸の奥から何か知らない暖かい物がいっぱい溢れていて、心臓がドキドキ鳴って…。
「…彩ちゃん?何で泣いとるん?」
え?…あ…。
気付けば私は涙を流していた。涙で滲むその瞳からはポロポロと涙が溢れ頬を伝って零れ地面へと落ちる。
何故だろう?喜んで貰えて…一生懸命に頑張って作ったプレゼントが喜んで貰えて嬉しいのに勝手に瞳から涙が溢れて来てしまう。慌てて袖で涙を拭ってもまた溢れてくる涙。何度拭ってもまた…。
嬉しいのに…どうして?
「彩ちゃん…ありがとな?」
嗚呼、そうか…。
「はぃ…はい!」
今までは、プレゼントを上げる人が居なかったから…。喜んでくれる人が居なかったから…。
記憶に過ぎるのは孤独な過去。何時も一人ぼっちだった辛い日々…。学校では味方は居なくて一人壊れた様に笑う日々…。
「彩ちゃん…また、クリスマスパーティしようね?」
でも、今は…。
「は…ぃ!また、皆さんで…!」
こんなにも暖かな友達が居る…。
私は泣くのを止め笑顔で笑った。幸せ一杯の笑顔で。すると、タイミングを合わせたかのように空から冷たい何かが涙で濡れた頬に落ちて来た。
「あっ!皆!雪だよ!」
そう、雪だ。
「あら?ホント…」
「ホワイトクリスマスだね」
「今日はツイとるなぁ~!」
「素敵だねぇ…」
ええ、本当に…。
私には皆さんと同じ景色は見えない。でも此処に一緒に居るだけで、共にこの時を過ごせるだけで私は幸せだと思う。例え皆と同じものが見えなくても…。
「「ねぇ、彩」」
「「「ねぇ、彩ちゃん」」」
―――同時刻
ハラオウン家。
「あっ!クロノ君!雪だよ雪!」
「見れば分かるよ。何そんなにはしゃいでるんだ…」
「もうロマンチックな場面が台無し!ホワイトクリスマスだよ!?」
「僕達には関係ないだろう?」
「ぶ~~っ!」
「はぁ…良いから、仕事をしてくれ」
「つ~ん…」
「エイミィ?」
「…」
「はぁ…ほら、これ」
「え?」
「…クリスマスプレゼント」
「クロノ君…」
「これで満足か?なら仕事に戻ってくれ」
「…ねぇ!クロノ君!」
「ん?」
――――水無月家
「アナタ、雪よ雪」
「お?ホントだな…」
「ホワイトクリスマスか。素敵ね…」
「ああ…」
「彩も今頃は皆と一緒にこの雪を見てるのかしら?」
「ああ、きっとな…」
「今年のサンタさんは最高のプレゼントを彩にくれたみたいね」
「本当に…」
「ねぇ、アナタ」
「なぁ、母さん」
「メリークリスマス!!」
あとがき
疲れたよぉ~…。もう書きたくないよぉ~…。でも外伝は書くぜヒャッハ~~~っ!!!
前作や公式のようにエピローグは書く予定は無いです。その後は外伝でと言う事で…。じゃあ、完結記念と言う訳で盲目と賢者の誕生秘話でも教えちゃいましょうか!
では!彩ちゃん詠ちゃんよろしく~!
「ど、どうも。水無月彩です」
「前作ぶりかしら?工藤詠よ」
「おまけでもお会いしましたよね?工藤さん」
「そうね。でもアレは私であって私じゃないから」
「そうなんですか?」
「そうなの。…それじゃあ、誕生秘話だったかしら?そんな大層な物じゃないけどお話しするわね?」
「よろしく願いします!」
「実はと言うと、工藤詠と水無月彩は本来は同一人物の予定だったのよ」
「ええ!?本当に!?」
「本当よ。物語のスタートは一般で言う無印から。病名不明の盲目の少女が親に育児放棄されるって話ね」
「それって、私の事ですか…?」
「さぁ?名前は決まって無かったら誰でも無いわね。設定なんて物語を書かなかったら妄想と同じよ」
「あ、あはは…」
「話を戻すわよ。そして自分の人生に絶望していた少女は病院である少女に出逢うの」
「はやてちゃんですね!」
「正解。『私が貴女の目になる。だから貴女は私の足になって』その言葉に少女は自分の人生に意味を見出し始めた」
「この台詞は『盲目の少女』でも使われる予定だったんですよね」
「ええ。でもA'Sでは既にヴォルケンリッターが居るのでこの台詞は使われる事は無かったわ。作者もかなり悔やんでたわね。厨二病丸出しの台詞だから」
「…(汗」
「でも、設定に色々と矛盾やらなんやらが出て来てこの話は闇の中に消えたって訳。それで良いとこだけ取って半分こにしたの」
「それが『幼き賢者』と『盲目の少女』ですか…」
「良かったわね。両作とも親が優しくて。元の作品は最低の屑が親よ?」
「わ、笑えませんね…」
「作者は鬱なのが好きだからね。しょうがないわ」
「…はい。これで誕生秘話は終わりです。またの機会にお会いしましょう!」
「案外私とはまた会うかもね。前回のおまけが評判だったから」
「その時はよろしくお願いしますね♪工藤さん♪」
「ふん!昼食代を浮かせるためよ…じゃあ、また会いましょう」
「では、皆さん!子供の私はこれで最後ですが外伝の大人の私をよろしくお願いしますね!」
ご愛読ありがとうございました~!
最終更新:2010年06月24日 21:50