ジデオキシ法(Sanger*法, 鎖終結法)
* インシュリンの1次構造決定でノーベル賞を受賞した人
大腸菌DNAポリメラーゼIのKlenowフラグメントを用い、配列を決めたい1本鎖DNAの相補 的コピーをつくる。この時、DNA合成に必要な4種のdNTP(dATP, dGTP, dCTP, dTTP)以外 に、DNA阻害剤である2',3'-ジデオキシヌクレオシド三リン酸(ddNTP)を少量反応液に加 える。ddNTP(terminatorという)が取り込まれると、DNA合成は停止する。反応の停止 はランダムな位置で起こるので、鎖の長さの異なる様々な断片が得られ、あとは化学的 分解法と同様な考え方で配列を決定する。
1) まず、配列を決めたい1本鎖DNAの3'末端に相補的な短いオリゴヌクレオチドをプライマーとして準備し、プライマーの5'末端を33Pや35Sで放射標識するか,または蛍光色素で標識する。5' CTGACTTCGACAA 3' 未知の塩基配列をもつ1本鎖DNA
3' GTT● 5' 5'標識プライマー
2) 配列を決めたい1本鎖DNA溶液を4等分し、標識プライマー、4種のdNTPを加える。これらにterminator(ddNTP)を1種ずつ加える。
3) DNAポリメラーゼIのKlenowフラグメントを加えて複製を開始する。
->加えたddNTPのため、鎖伸長はランダムな位置で停止する。
DNAポリメラーゼI
dATP
dGTP
dCTP
dTTP
例えばddATPを少量加えた試験管の場合、上の配列では次の
3つの標識断片が生成する。下線はプライマー部分を表す。
ddAGCTGTT-● 5'
ddAAGCTGTT-● 5'
ddACTGAAGCTGTT-● 5'
4) これら4つの試料をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかける。各々のDNA断片はサイズだけで分離される。
5) ゲルのオートラジオグラムを作成する。
[Sanger法による塩基配列決定]
6) 図のように、泳動先端(下端)のバンドから順に上にバンドの位置を辿っていくことで、目的配列の相補鎖の5'→3'方向の配列を決定できる。
これを目的配列(鋳型鎖)に読み替えるには、読みとった配列をひっくり返せばよい。
蛍光標識法を用いる塩基配列決定の自動化
Sangerの原法では、実験ごとにプライマーをいちいち放射標識する必要があり、大変面倒である。波長の異なる蛍光発色団でterminatorを標識することにより、迅速で簡便な塩基配列決定法が開発された。ddATP-● ddTTP-●
ddGTP-● ddCTP-●
波長の異なる4種の蛍光発色団
実際には、rhodamine系蛍光色素
[蛍光標識terminators]
≪蛍光標識法の手順≫
先ず、配列を決めたい1本鎖DNA、プライマー、4種のdNTPを含む溶液に、波長の異なる蛍光色素で標識した4種のddNTP混合物(terminator)を加える。
DNAポリメラーゼで鎖を伸長させる。加えたterminatorによって、鎖伸長はランダムな位置で停止する。
試料をゲル電気泳動にかける。
ゲルにレーザー光を当てて蛍光バンドを検出し、情報をイメージングシステムに転送する(図 8.11)。
検出したバンドの情報をコンピューターで処理し、ピークとして表す。
[蛍光標識法による塩基配列決定]《蛍光標識法の利点》
1. プライマーを標識する必要がない。
2. 反応は1本の試験管で行える。
3. 電気泳動も1試料1レーンですむため、バンドの物理的なゆがみによる読み取り誤差がない。
また、大量の試料を一度に処理できる。
4. 放射能を使用しないので、いつでも実施でき、また、放射性廃棄物を出さない。
5. オートラジオグラフィーが不要。
6. 自動化ができるので、迅速で簡便。
最終更新:2009年02月21日 23:19