わたし達はホワイトベースと接触しないままシアトルを出発し、なおも散発的に現れるジオン残党部隊と交戦しつつ、南下を続けていた。
ブラックハウスはすでにメキシコの高原地帯にさしかかっており、南米ジャブローの連邦軍総司令部までの行程の半分を消化していた。
わたし達パイロットはこの間にBlackCatの操縦に充分熟達していた。
操縦時間が長くなるにつれ機体に特有のクセや動作性などがわかってきたのだ。
だがそれと引き換えにBlackCatのパーツの損耗が激しくなってきた。
これは何もジオン残党との攻撃で損傷を負ったからと言うわけではない。
駆動系に対してそもそも重すぎる武装に加えて、劣悪な補給事情がパーツの交換の障害となったからだ。
それでもSOS団の努力とMKⅡやLv.57の卓越した技術がBlackCatの稼動状態を維持していた。
だが、それにも限界はあった。特に関節部分にかかる負担はいかんともし難く、最悪の場合は戦闘中に足が動かなくなる可能性すらあった。
わたし達はそんな不安なコンディションで戦うことを強いられていた。
これまでは散発的な襲撃が相手だったが、これから先大規模な攻撃を受ければBlackCatはどうなってしまうかわからない。
そして敵はこちらの都合はおかまいなしに、新たな攻撃の準備をしていたのだ。
† † † † †
メキシコの高原地帯は険しい崖と鋭く天にそびえる山と濃密な森林が混在するような場所だった。ジオンはここにも拠点を築いていた。
この拠点にはザクⅡ12機、旧ザク3機が配備され、それらは北米方面からジャブローへ向かう艦船、輸送機、自動車の車列などを襲っていた。
そして彼らは新たな目標を捉えていた。たった今、拠点の司令室に監視所からの報告が届いた。曰く、
「北北西より接近する戦艦1を確認せり。その形状は連邦軍の新造艦、通称木馬に酷似しており、MSを搭載しているものと思われる。」
この拠点の長、カスペン戦闘大隊の部隊長でもある、
ヘルベルト・フォン・カスペン大佐はこの報告書を読むと満足そうに微笑んだ。
だがその微笑みはあくまでも冷徹であった。
格好の獲物を前にして、彼は自分の戦闘意欲が氷の炎のように不気味に燃え上がるのを感じていた。
彼は即座に戦闘準備を下令する。そして自らも出撃の準備をするべく、拠点司令室をあとにした。
ブラックハウスのCICでは、いつものようにカントー少尉が声を張り上げていた。
「接近する敵機を確認!方位340、距離9000、多数のザク!かなりの数です!」
「ザクの数は正確には何機ですか?」
「少なくとも10機はいますが、ミノフスキー粒子の影響ではっきりとはわかりません。敵の反応は明滅しています。」
「コンディションレッド発令、対MS戦闘!副長、ブラックハウスの高度を上げます。針路020、上げ舵10、前進強速!」
「針路020、上げ舵10、前進強速、アイ!」
「アーク少尉、BlackCatを発進させて下さい。」
「アイ・マム!発進シークエンスを開始します。」
BlackCatのコックピットでは、乃人が計器をチェックしていた。BlackCatは今初めて完全武装での実戦を迎えようとしていた。
機体重量は100t近くになり、着地する場所を選ばなければ地盤が陥没してもおかしくない。
武装はどれも一撃必殺の強力なものばかりだが、接近戦に持ち込まれると分が悪い。乃人は戦い方を熟考していた。火力はこちらが上だ。
アウトレンジからの長距離射撃で敵を狙う。
「システムオールグリーン。発進、どうぞ!」
アークからタイミングよく指示が入った。
「BlackCat、乃人、出ます!」
高度2000から射出されたBlackCatは、重力に引きずられて急速に落下を始めた。重量のせいでバランスをとるのにも一苦労だ。
「地球の自由落下ってやつは、言葉で言うほど自由じゃないなッ!」
なんとか機体をコントロールし、頑丈そうな岩盤の上に着地する。ザクとの距離は約6000。こちらが一段高い場所にいる。
第一斉射で2機は仕止めたい。
両腕のビームライフルとネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲の状態を確認した乃人は、それぞれを違うザクに向けて同時に発射した。
カスペン大佐は部下と共にBlackCat目指して突撃していた。
見る限り射撃武装が主体のあのMSに対抗するには、接近戦に持ち込むしかあるまい。
通常なら支援するチームと進撃するチームが交互に前進するべきだが、カスペンは無駄な時間はとらなかった。全員で全力攻撃。
機動に次ぐ機動。それがカスペンのMS戦術だ。
敵のMSは両腕にライフルらしきものを構えている。下腹部にも砲身らしきものが見える。敵は明らかに射撃体勢をとっている。
「敵が撃ってくるぞ。全員、跳べェェェッ!!」
言うや否や、カスペンは自分の指揮官用ザクをジャンプさせた。敵の砲火を避けながら同時に間合いをつめるのだ。
そしてカスペンがジャンプした瞬間、予想通り敵が射撃を開始した。
だが放たれた砲火はカスペンの予想よりはるかに速い初速で飛翔し、ジャンプしかけていた2機のザクをかすめ、1機を直撃し、消滅させていた。
「ビーム兵器で3機もか!しかも一撃でザクを撃破だとッ!」
カスペンは驚きを隠せなかった。これまでジオンのザクは最強の機動兵器として地上に君臨してきた。それが一瞬で覆された。
一撃で3機のザクを破壊、もしくは戦闘不能にしたあのMSこそ、噂に聞くガンダムに違いない。
ならば、とカスペンは思う。この手で、今日この場所で葬ってやる、と。
BlackCatに乗る乃人もまた、驚きを隠せなかった。3機のビームを同時に放った瞬間、なんとモニターの電源が落ちたのである。
幸い3秒ほどしてすぐに復旧したが、もしこれが接近戦だったら致命的だ。斉射は避けねばならないらしい。
だがネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲の威力は想像以上だった。
見事に直撃弾を得たこともあったが、被弾したザクは瞬時に蒸発してしまった。これだけの威力ならば、戦艦すら貫けるのではないか?
とんでもないMSに乗ってしまった。乃人はそう思った。だがそれを噛み締めている暇はない。レーダーに映るザクはまだあと9機いる。
距離は4000にまで迫っている。今度は斉射ではなく、順番に射撃する。手動で複数の目標を同時追尾しなければならない。
この上ない集中力を費やして的をしぼると、乃人は再び射撃を開始した。
右腕のビームライフル。外れた。狙っていたザクは健在。左腕のビームライフル。命中、1機撃破。
ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲。ザクの一機をかすめた。撃破ならずか?
そう思われた次の瞬間、ザクは内部から爆発した。直撃させる必要はないらしい。これで残りは7機。距離3500。そろそろ敵の足を止めたい。
アームストロング砲の射撃は一時取り止め、ビームライフルだけを連射する。だが、ザクはどの機体も勇敢だった。まったく足を止めることなく、砲火をかいくぐって突撃してくる。連射は正確さに欠けるとタカをくくっているのだろう。
事実、一発の命中弾も得ることができなかった。そして今度は、ザクが射撃を開始した。
「ちぃッ!」
乃人はアームストロング砲を発射しようとしていたが、その前に回避運動をとった。
たった今までBlackCatが立っていた場所にザク・マシンガンの弾丸が嵐のように飛来する。
7機のザクは一斉射撃で弾幕を張りつつさらに接近してくる。濃密な弾幕は乃人が狙いを定めるのを妨げる。まったく狙う隙がない。
乃人は意を決してBlackCatの機体を敵前に晒した。
ナガモンによればBlackCatのルナ・チタニウム装甲はザク・マシンガンの攻撃に十分耐えられるそうだ。
ならばそれを信じて攻撃に移るしかない。BlackCatを照準サイトにはっきりと捉えた瞬間、ザクは無数の弾丸をBlackCatに浴びせていた。
想像を絶する衝撃がコックピットの乃人を襲い、しかもそれが延々と続く。
耳元でトラックが激突しているかのような騒音が轟き、乃人の体は不規則に、そして連続的に揺さぶられる。
それでも乃人はBlackCatを駆り、どうにか致命症を避けながら一機のザクにアームストロング砲を向けた。発射。
ザクは攻撃を避けようと横にステップしたがすでに機体の半分が吹き飛ばされていた。残りは6機。
カスペン大佐に初めて焦りが生じていた。戦闘開始から五分足らずで、部隊の半分が失われてしまった。
そして何より、あのMSにはザクの攻撃がまったく通用しないではないか。カスペンは思わず叫んでいた。
「連邦のMSは化物か?!」
その時、BlackCatは新たな一撃を放ち、また別のザクが撃破された。
「大佐ッ!撤退しましょう!あのMSは倒せません!」
部下の一人が通信を入れてきた。完全にパニックに陥っている。
「バカ者が!今背中を見せれば狙い撃ちにされる!なんとしても接近戦に持ち込むのだ!!」
カスペンはそういうと、再びザクをジャンプさせた。彼我の距離は2000にまで縮んでいた。
この跳躍で敵の背後に着地し、一気にカタをつける。彼の部下も続いたが、一機のザクだけが突如反転し退却を始めた。
さっき通信を入れてきた兵士だった。カスペンは唖然とした。自分の部隊から逃亡者が出るとは…。
込み上げてきた猛烈な怒りを、カスペンは敵のMSにぶつけた。
彼の指揮官用ザクはBlackCatの後ろに上手く着地し、他のザクもBlackCatを囲みこんだ。
BlackCatは素早く1機を撃ち抜いたが残る3機は一斉にBlackCatにとびかかった。
1秒の何千分の一かの時間で、乃人は決死の決断を下した。ついに白兵戦距離にまで接近され、今3機のザクが一息に襲いかかってきている。これらを同時に撃破しないかぎり、BlackCatが助かる道はない。
乃人は次の数瞬で3機全てのザクに照準を合わせ、意を決して発射ボタンを押した。
「落ちろォォォォオッ!!!!」
カスペンの指揮官用ザクのヒート・ホークがBlackCatを捉えようとしたその瞬間、彼の視界はまばゆい光に包まれていた。
モニターが真っ白になり、何が起こったのかをカスペンが悟る前に、彼の機体は胸部から上を爆砕されていた。
ほかのザクにも同様の運命が待っていた。ザクはまったく同時にビームに撃ち抜かれ、機体は四散した。
モニターが復旧するまでの数秒間、乃人は呼吸も思考も、ひょっとしたら鼓動までも、止めてしまっていた。
永遠のような数秒の後、モニターが復旧すると、乃人は自分が生きていることを初めて認識できた。BlackCatの周囲にはバラバラになったザクの破片が散らばっている。
指揮官用ザクだけは比較的原型を留めており、パイロットは生存しているかもしれなかったが、乃人はトドメをさそうという気にはなれなかった。彼はブラックハウスに帰還を告げ、戦場を後にした。
カスペンは誰かが何かを叩く音で目を覚ました。コックピットの上部は吹き飛ばされて煙ただよう灰色の空が露になっていた。
音のするほうに目をやると、一度は逃亡したあの兵士がハッチを無理矢理こじ開けようとしているのが見えた。
天井がなくなってもハッチから入ろうとするとは、律義な奴だ。カスペンはただそう思った。
自分の左腕がなくなっているのを見ても、なんの感情もわいて来なかった。
ただ、あの兵士が早く自分を野戦病院に運んでくれればいい、それで逃亡の件は不問にしよう。カスペンそう決めて、再び意識を失った。
† † † † †
わたし達は乃人を迎えに格納庫へ来ていた。12機のザクをほぼ全滅させるなど、空前絶後の大戦果だ。
残念ながら、軍の公式記録としては残らないとあずにゃんは言っていたが、それにしたって素晴らしい戦いっぷりだった。
お祝いしてあげようと待っていたのだが、乃人の反応はずいぶん淡白だった。疲れていたのだろう。ろくに話もせずに自室に籠ってしまった。
「大変な戦いの直後なんだ。そっとしておいてやろう。」
シン・ナガモンがそう言って、わたし達はBlackCatの点検を手伝い始めた。
「まずいぞ。膝の関節は婆さんみたいにガタガタだ。こりゃオーバーホールが必要だな。しかし、パーツが余りにも足りない。」
MKⅡが困りきった表情で言った。SOS団もパーツがないことにはどうしようもないらしく作業は完全に滞ってしまった。
願ってもない連絡が来たのはその時だった。
「艦長より達します。まもなくマチルダ中尉のミネバ輸送中隊と接触します。輸送中隊は私達への補給物資を運んで来てくれました。各員、現在行っている作業は中断し、補給作業の準備に取りかかって下さい。マチルダ隊との合流予定時刻は15分後です。以上。」
うぉおおおおッ!と言う雄叫びがあちこちから上がった。途方にくれていた整備兵たちが先を争って甲板に上がっていく。
甲板に上がっていく?なぜだろう?MKⅡにこの疑問をにぶつけてみると、
「あぁ、男どもは甲板に並んでマチルダさんの出迎えだよ。あの人は大人気だからね。」
と笑う。補給作業の準備はいいのだろうか。
実際に左舷デッキに上がってみると、ブラックハウスの男性クルー全部が整列しているみたいだった。
実際には機械科所属兵など、ここに来れない者も複数いただろうが、来られる者は皆来ているらしい。
遠くにミデア輸送機の姿が見えるようになると、列の中の誰かが号令をかけた。
「親愛なるマチルダ中尉に対し、最大の敬意を払って、全員敬礼!!」
ザッ、と揃った音がして、全員が図ったような敬礼をした。閲兵式の儀杖兵だって、これよりは乱れた敬礼になるだろう。
補給作業は順調に進んだ。まずBlackCatの各種パーツの受け渡しが行われ、続いて食料、医療品、衣服などがブラックハウスに積みこまれた。パーツを受け取った整備兵達はさっそくBlackCatのオーバーホールに着手した。
わたしも手伝おうとしたが、妙に熱心な整備兵達に断られた。よっぽどマチルダさんに良いところを見せたいらしい。
わたしはそのマチルダさんに会ってみることにした。彼女は今艦橋のCICにいる。
CICに入ると、あずにゃんと京がマチルダさんと話していた。あずにゃんはわたしをマチルダさんに紹介してくれた。
「マチルダ中尉、こちらがBlackCatに最初に乗ったパイロット、黒猫中尉です。」
マチルダさんはこちらに向き直ると片手を差し出した。わたしはその手をとって握手する。
「はじめまして。実はあの戦闘のとき、私たち補給部隊も
オークリー基地にいたの。あなたの戦いがなければ私たちもやられていたかもしれない。お礼を言わせてね。ありがとう。あなたはエスパーかも知れないわね。」
素敵な女性だった。男たちが夢中になるのもわかる気がする。
「どういたしまして。正直、あのときのことはほとんど覚えていないんだ。無我夢中だったから。でもこうしてあなたと会えたのはとても嬉しいです。」
もっと話していたかったのだが、とんだ邪魔が入ってしまった。
ギレン・ザビ総帥の世界に向けた演説の放送が始まったのだ。
この模様は
ガルマ・ザビ地球方面軍司令の国葬会場から、世界中に流されていた。
ギレンの演説は圧倒的だった。言葉の端々から磁場のような力が溢れだし、会場を埋めた群衆をひきよせているかのようだった。
いや、ひきよせられているのは会場にいる人間だけではないだろう。この放送を見たすべてのジオン公国国民が熱狂しているに違いない。
ジオンが今日まで戦って来られたのは、一重にこの男の引力によるものなのではないか?わたしにはそうとさえ感じられる。
「何を言うか!」
わたしの思考は突然の叫び声に中断させられた。見ると、京大尉が怒りに肩を震わせ、拳を強く握りしめている。
「世界の人間を殺しつくさんとしている男が、何を言うのか!!」
あまりに強く握りしめすぎて、京の指の爪は手のひらにまで食い込み、血の滴がしたたり落ちた。
「副長、落ち着いてください。あれがジオンのやり方なんでしょう。」
ややおびえた表情であずにゃん艦長が京をなだめた。たしかに、いつも冷静な京らしくない言動だった。
マチルダ隊はほどなくして、あらたな任務のためわたし達のもとを去った。
戦いによる疲労と消耗が極限に達しつつあったわたし達にとって、彼女の部隊からの補給は本当にありがたいものだった。
BlackCatの各種消耗品と追加の武装もわたしとっては水や食べ物のように大切な補給品だ。
格納庫では整備兵達がBlackCatの両手に巨大な鋼鉄の爪、トンガリコーンアタックの装着作業に入っていた。ハルヒが率先して作業にあたっている。
「キョン!さっさとここのプラグカバーを外しなさい!コイズミ君、ここのバルブ点検してちょうだい。こらそこぉっ!私の前では道具を投げない!メガネレンチだって粗末に扱う奴は承知しないわよ!!」
訂正しよう、作業にはあたっていない。さかんに指示をとばし、士気を鼓舞している。部下に仕事を割り振って自分はMKⅡと談笑している。大物だ。
だがひょっとするとあれが彼女の役割なのかも知れない。
その証拠に作業はみるみるうちに進展し、あっという間に片腕のトンガリコーン取り付けが完了した。
SOS団の団員に混じって、もともとブラックハウスに乗っていた整備兵達も手伝っている。
艦内の整備部隊は本来はこの二つに完全に分離している。
すなわち、右舷側のカタパルトおよび格納庫を担当するブラックハウス整備班第一班。彼らがブラックハウスにもともと乗っていた者達だ。
MKⅡが班長ということになるが、彼女はいつも整備士長と呼ばれている。
他方、左舷側のカタパルト、格納庫を担当するのが第二班、SOS団である。
いつも快活なハルヒ・スズミヤ技術中尉に率いられた彼らの腕は確かに見事だ。
両班は互いに手助けをしあい、いい意味でのライバル意識を燃やしている。
もっとも今第一班の手元にあるのは2輌の61式だけで、BlackCatとその関連機器はすべて左舷側にあった。
そしてこれまで61式には出撃する機会が全くなかったのである。
第一班の面々が自発的にSOS団を手伝うようになるのに、たいして時間はかからなかった。
† † † † †
マチルダ隊と別れたブラックハウスは、再び針路を南にとり、ジャブロー目指して天空を疾駆した。
パナマ地峡を何事もなく通過し、南米大陸に入った頃には、誰もが皆ジャブローへ無事にたどり着けるだろうと思っていた。
しかしジオンは、新たな部隊を地球に降下させていた。その部隊の名は「
黒の騎士団」。ジオンが誇る精鋭の独立遊撃部隊である。
彼らは今、ザンジバル級巡洋艦
ダモクレスに搭乗し、大気圏への突入を図っていた。
ダモクレス艦橋、フロアから少し高くなっている艦長席よりもさらに一段高いところに、黒の騎士団の指導者、ゼロと呼ばれる男が座っていた。ゼロの姿はほかのジオン兵とは似ても似つかない。
彼は素顔を特異な形状のマスクで覆い隠し、尊大なまでの威圧感を感じさせるマントを羽織っていた。もちろんこれはジオンの制服ではない。
ジオンでは特別な勲功をうち立てたものだけが個性的な衣服の着用が認められる。赤い彗星ことシャア・アズナブルはその典型である。
つまりこの人物は、これまでにシャアに匹敵する戦果を上げてきたのだ。
そんな彼が率いる黒の騎士団が、今ブラックハウスの面前に立ちはだかろうとしていた。
最終更新:2010年09月08日 21:18