第1話【アホはお断り】
どこにでもあるごく普通の家、僕はその家の息子であり、長男である。生活は一般人より怠けて見えるかもしれないけれど、これでも忙しいのだ。
僕はリビングのソファーに寝っ転がり、リモコン片手にケータイ片手にいつもの一時を過ごしている。
母「趣里ー。卵買ってきてくんない?」
台所から母さんの声が聞こえた。
趣里「えーめんどーい…里兎に頼めよ…」
里兎とは僕の妹であり、受験生的存在だ。
母「里兎は明後日受験でそんな余裕ないし、あんた原付き持ってるでしょ!」
全く自分勝手な親だな…買い忘れたのが悪いのに…
里兎「ちょっとうるさいんだけどー」
里兎が不機嫌そうな声をあげて言った。
母「あ、勉強はもう良いの?」
里兎「疲れたし、後はノートまとめるだけだからちょっと休憩…兄ちゃん、買い物行けよ」
そう言いながら、台所へ向かい、冷蔵庫を開けて麦茶を取り出した。
趣里「………」
ホントこの親子は人を使うのが、好きだよな。僕も人のこと言えないけど。
母「あんた晩飯いらないの?」
趣里「そりゃいるけど…外寒いし……」
母「じゃあ行ってきてね」
勝手に会話を終わらせ、母は財布を取り出す。里兎も財布を取り出した。
里兎「百円渡すからクーリッシュも買ってきてよ!」
言うと同時に百円玉を投げつけてきた。
趣里「いってーなおい…ていうか準備いいな」
里兎「気のせいだって」
明らかにご機嫌な表情になった里兎は二階へ登っていった。
母「はい五百円!」
ビュンと五百円玉を乱暴に投げてきた。
趣里「い、いってーなおい!買ってくるのは卵だけ?」
母は笑顔で頷き、ソファーに座り、テレビを見始める。
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07/11 07:53 K002 [46]
僕は手袋とマフラーを部屋から取って、玄関へ向かった。靴を履こうとすると里兎に声をかけられた。
里兎「兄ちゃん。事故れよ!」
反応するのがめんどかったので無視した。外へ出るとやはり寒かった。ひんやりした風が、頬や身体中を襲う。なんとか我慢してバイクにかけてあるシートを外す。
エンジンをかけるが、一週間ぶりなのと、冬という事もあって、なかなかかからなかった。
何故一週間ぶりにエンジンをかけるのかというと、僕は事故ったのだ。
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07/11 20:33 K002 [47]
事故ったというか、雨の日に転倒しただけでそんなに大した怪我はなかった。それでも母さんはパニクって「精密検査」だの「入院」だの騒いでたな…おっと、思い出に浸ってる場合じゃないな。
やっとエンジンがかかる。メットを被り、マフラー装着、手袋装備。
アクセルをひねって発進させる。バイクに乗るのに抵抗はあったが、運転してる内に不思議と何も思わなくなった。
発進してから数分後、学校の門の前を通ろうとした時、急にエンジンが止まった。止まった場所は前に事故った所だ。バイクを歩道に上げて降りる。メットを脱いで、着地した瞬間、バイクが鈍い音をあげて吹き飛んだ。幸い、周りに誰もいなかったため、何も起きなかった。
僕は吹き飛んだ方と逆の方を見る。そこには意味不明な行動を取っている西沢を見つけた。
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07/11 20:46 K002 [48]膝小僧
西沢「最近の魔物は手応えありすぎだっての」
西沢がなにやら鋭利な物を振り回して何か呟いている。その鋭利な物は剣、槍にも取れそうな不思議な武器だった。
劇の練習か、撮影なのかわからなかったが声をかけてみる。
趣里「西沢ー何やってんの?なんかの撮影?」
西沢はビックリした表情をして、
西沢「こ、古仲…ぐふぅあっ…」
突然西沢が頭を地面に叩きつけるような勢いで倒れ込んだ。僕には理解できなかった。
急いで西沢の下へ行くと、
西沢「……い…ってぇ…逃がした…か…」
よろよろした足取りで立ち上がる西沢。
趣里「なにしてたんだ?ていうか大丈夫か?」
西沢「古仲…」
趣里「なに?」
西沢「…背中貸してくれ」
仕方なく肩を貸すと、校内の隅にある自販機とベンチが置いてある所まで連れていってやる。
西沢「サンキュ」
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07/11 20:59 K002 [49]
趣里「何回も聞いて悪いが、西沢…あれ何やってたんだ?」
西沢を支えて、目に写った行動を聞いてみる。
西沢「……ん?あれか…ここ最近、事件や事故が多いって思ったことないか?」
趣里「それがどうした?お前のワケわからん行動に関係あんの?」
西沢[……いいや、なんも関係ねぇ]
西沢の姿を見て、疑問に思う点がいくつもある。
変な眼鏡に腕に付けてる剣…槍にも取れそうな武具。
人々は思うだろう。今、現時点でおかしな方はどっちか、百人中百人が間違いなく西沢の格好をおかしい、と思うはずだ。
西沢は自販機で飲み物を買い、機械らしき物を操作していた。
趣里「西沢?さっきの衝撃みたいのなんだったんだ?僕のバイクぶっ飛ん…あ!」
慌て校庭を走り、校門へ行く。バイクはベコベコに凹みまくっていて、もはや鉄屑の以外の何物でもないくらいに廃品だった。
趣里「…あ……僕のバイクが…西沢!お前どうしてくれんだよ?…西沢?」
西沢はいつの間にかいなくなっていた。涙が込み上げる最中、冬の寒い道を僕はバイクを押して、一時間かけて帰宅した。
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07/11 21:10 K002 [50]
里兎「ちょっと兄ちゃん遅いよ~晩飯まだなんだかんね~」
不機嫌そうな顔をしながら里兎が玄関まで来た。
趣里「うっせ…色々あったんだよアホ」
袋からクーリッシュを取り出して投げつける。
里兎「よっと…サンキュ兄ちゃん。あ、なぁなぁ、兄ちゃん事故った?」
趣里「…ギクウッン…じ、じゅこってねぇしみたいなぁ!」
事故…あれは事故だったのか?僕の記憶違いなのか?あの時、確かにバイクが止まった。別に衝突したワケじゃない。降りたと同時にバイクが吹き飛んだんだ。
里兎「お母さ~ん。兄ちゃん事故ったってぇ」
趣里「ばっか…事故ってねぇって…」
正気に戻り、叫ぶが遅かった。
里兎「だって、兄ちゃん頭から血が出てんだもん…事故ったんじゃないの?」
言われて頭を触った。微かにだが、指に血がついていた。何故だろう、言われるまで何の痛みもなかったのに、いきなり激痛が脳内を走った。走馬灯のように子供の頃の思い出が駆け巡り、1つの声が頭に響いた。
「あなたもあの人たちと同じ…同じモノ。逃げてばかりの嫌な人」
声が響いた後、全身の力が抜けて起きているのか寝ているのかもわからなくなった。
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07/11 21:12 K002 [51]
数時間後、少しの頭痛と共に目が覚めた。そこには母さんと里兎がいた。僕は気を失っていたらしい。それにしても救急車呼ばないとか、どんだけパニクってたんだよ。周りが酷く散らかってた。
里兎「…兄ちゃん!起きたか?なぁ、兄ちゃん起きた?ちゃんと見えてる?息できる?記憶ある?日本語理解でき…」
趣里「あ~うっせうっせ…頭に響くはボケ」
母「このバカタレが、どこで事故ったの?」
この家族は…まぁ心配してくれるだけ感謝しとかないとな。
趣里「…いや、事故ってはないんだ」
記憶をたどってみてもやはり事故などしてない。頭の傷はなにでできたものなんだろうか…
里兎「でも兄ちゃんのバイク凄いベコベコになってるじゃん」
う~ん…それは僕にも理解できない。校庭で西沢が変な儀式を………西沢!?
趣里「西沢だ!」
急に大声をあげる僕に、二人は驚いていた。
母「ニシザワ…って」
趣里「ほら、クラスにいるじゃん?西沢って奴。めちゃくちゃおとなしくてひ弱そうな…」
僕はなにか変な事に気づいた。めちゃくちゃおとなしくてひ弱そうな…さっき会った西沢は全くの正反対だぞ!?意味不明だ。不意に母さんの声が聞こえた。
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07/11 21:15 K002 [52]ピザ厨
母「あ~西沢さんね。西沢さんがどうしたの?」
趣里「………やっぱなんでもない…勘違いだった」
これ以上、考えても無駄だな。明日本人に聞いてみるか。それに眠くなってきたしな。ゆっくり起き上がり、二階へ上がろうとしたが止められた。
里兎「兄ちゃん晩飯は?今日はおで~んだよ?いらないの?」
趣里「……ちょっと待て、そこは体調の事を聞くだろ?」
里兎「兄ちゃん大丈夫なの?今日はおで~んだよ?」
趣里「それじゃかわらん」
里兎「兄ちゃんおで~んなの?頭大丈夫?」
趣里「…うっせうっせ…食欲ないし眠たいから寝る」
下らないやり取りしたせいで頭痛が酷くなってきた…でも大丈夫なはず、なんの根拠もないのに自信だけはあった。
自分の部屋へ入る。他にも傷がないか確かめようと、服を脱ぎ、鏡を見る。
相変わらず、女子並な体つきだな…筋肉も全然ないし…ってそれどころじゃない。身体中を見てみるが、特に何も見当たらなかった。だが、服を着ようと後ろを向いたら、背中に傷があることに気づく。気味悪かったので、すぐに服を着て寝る。
その夜、夢を見た。昔の夢だ。僕がまだ硬式テニス部だった頃の夢。夢の中で疼く左腕を押さえながら、僕はその光景を見た。
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07/11 21:39 K002 [54]
その夢の僕は今と違ってとっても生き生きしている。新品のラケットを左手に持ち、松並先輩と乱打をしている所だった。
松並「もうちょっとボールを見て打て!」
趣里「はい!」
打っては走りの繰り返してるだけで笑ってる夢の中の自分にイラついてくる。コートには何十球ものボールが転がっていた。
趣里(あれは…大会二週間前の時のか)
趣里「先輩、僕少しは上手くなりましたか?」
松並「う~ん、スマッシュ、サーブ以外は中々いい線言ってると思う」
趣里「仕方ないっすよ… 僕、腕の力が付きにくいんですから」
松並「それって生まれつき?」
松並先輩はペットボトルの口を開けて飲みながら、聞いてきた。
趣里「はい。生まれつきなんですよ。無理をしない程度なら運動やっても良いみたいだけど…病名とかは忘れました」
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07/12 16:14 K002 [55]
松並「ていうか、腕の力無いのによくテニス部入ろうと思ったね」
趣里「僕、妹がいるんですけど、そいつがテニスやってて面白そうだなって…それで入部しました」
松並先輩はタオルで汗を拭き取った後、
松並「乱打もっかいしよっか」
僕も立ち上がって、
趣里「はい」
また乱打が始まった。二人とも面白そうにやっていた。僕も凄い笑顔だった…数時間後、僕はケータイの着信音で目が覚めた。
時間は午後10時頃、相手は登録していない相手から、普段なら電話には出ないが、なんとなく出てみる。
趣里「はい、古仲ですけど」
寝起きで声が低いので相手に不機嫌だと思われたのか、
???「えっ、どうした?怒らせたか?」
趣里「……いや、寝てたから声が低くなってるのかも…別に機嫌は悪くない」
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07/12 16:30 K002 [56]ピザ声で高らかに愛を叫ぶにゃんっ///
???「そうか?お前に話がある。学校の正門で待ってるから」
言うだけ言って切られた。もし、これが寝起きではなく、美少女からの電話だったら喜んで行くが、相手が見知らぬ男だと思うとその気持ちもない。
趣里「どうしよっかな…行こうかな?」
もう面倒だから行くのやめるか、寝よ寝よ。もう一度寝ようとベッドに潜り込むと、また電話がかかってきた。また知らない相手からだ。
趣里(もう僕は寝るの。電話なんかシルヴァニアファミリー森の幼稚園だ)
数分して、やっと電話が鳴りやんだ。よっしゃ!僕はサイレントマナーにして眠りへつこうとする。次は、家のインターホンが鳴った。
母「はぁい」
母さんが出たみたいだ。
???「あの~、古仲くんいますか?」
相手は女だった。多分里兎の友達だろう…等と考えていると、
母「趣里は今寝てる。起こしてこようか?」
???「…寝てる?…ならまた今度にします。失礼しました」
へっ?僕に用件?レディが?僕に?マジで?2月なのにもう春到来?スプリングシーズン?こうしちゃいられねぇ。
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07/12 18:28 K002 [57]膝小僧が悩みや質問、疑問に答えるスレ
まずは、自然に起きる。この時、眠そうにするのを忘れない。そして、喉が渇いたと、あくまでその女に興味があって降りてきた訳じゃないアピール。最後に僕に会いに来た女に対して、あ、君誰?えっ?僕に用なの?うん、良いよ。という精神を忘れない。
趣里「さって、スタート!」
僕は目が覚めた。理由は喉が乾いたのだマジで。ゆっくりと立つと、まだ眠たいのか足下がおぼつかないマジで。ドアを開けて自然に階段を降りるマジで。僕はあくびをしながら階段を降りた。そして、さりげなく玄関の方を見る。
母「あ、趣里。良いところに来たね」
趣里「ど、ど、どうしたの?かか母さん母さん」
やべっ…噛んだ。
母「あんた頭大丈夫?」
この問いは間違いなく怪我に対してのものだろうが、イラついた。
趣里「ん…大丈夫。ところで何が良いところなの?あっ…」
津田「古仲くん、こんばんは。ちょっと用があるんだけど良い?」
相手は津田さんだった。津田雪葉、僕とは違うクラスであまり喋った事もない。
趣里「よ、用?なにかな?」
津田さんは頬を赤らめて、
津田「こ…ここじゃ、外行こっか」
来たぁー!ついに春が来たぁー!僕にも春が来たぁー!
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07/12 18:48 K002 [58]飛燕流舞
僕はパジャマ姿のまま、靴に履き替えて、津田さんと外に出た。どうしよう…津田さんけっこう可愛いなぁ…良いにおいもするしクンカクン…ってそんな事してる場合じゃねぇよ趣里!警察呼ばれたらどうすんだよ趣里!この歳で淫行罪とか洒落になんねぇよ趣里!だいぶ歩いたところで、僕は話しかけてみる。
趣里「つ、津田?さんだよね?どうしたの?」
私服姿の津田さんは新鮮な感じだ…ってじろじろ見てる場合じゃねぇよ趣里!セクシャルでハラスメントな目はやめろよ趣里!この歳で歯止め効かなくなったらマジで洒落になんねぇよ趣里!
津田「ん…それより、頭の傷大丈夫?」
趣里「あ、うん大丈夫。なんか頭に響いたけど大丈夫」
あまり会話も続かず、お互い無言になった。
趣里「で、どこに向かってるの?」
津田「ん…学校の正門」
趣里「学校の正門?なんで?」
この問いに答えてくれなかったが、行けばわかるだろう…ん?待てよ。確か見知らぬ男も正門に来いみたいな事言ってなかったっけ?気のせいだな。きっと気のせい。
数十分して気がついた。寒い!死ぬくらい寒い!いくら雪が降らなくてもこの季節は寒い。
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07/12 19:04 K002 [59]マクナル
津田「ん…寒いの?」
津田さんが気づいてくれた。しかし、僕は男だ。ここでレディに気を遣わせたら…でも、このままだと死ぬわ…
趣里「う、うん。寒い…ヤバイかも……」
津田「ん………これ着る?」
津田さんは上着を脱いで僕に渡す。
趣里「で、でも津田さん寒くないの?それにサイズ合わないと思うよ」
流石に僕も女物の服が着れるほど小柄ではない、と思うマジで。
津田「ん…古仲くんあんまり私と体格変わらないし、身長も変わらないし、大丈夫。それに私、あまり寒がりじゃないから」
僕の身長は四捨五入して163cm。
津田さんの身長は四捨五入なしで163cm。
趣里「しょ、しょうですね…あ、ありがとうございます」
どうしてだろう…こんなに涙が溢れるのはありがたいからかな?それとも涙もろいだけかな?確か歳になると涙もろくなるんだっけ?まぁ良いや。
趣里「あ、着れた…あったか~い。ありがとう津田さん」
上着はもふもふして暖かい。それに良いにおいが…一応言っておくけど温もり的な意味でね。
津田「ん…古仲くんって女子と大差ないよね」
趣里「…よく言われる。そんなに小柄かな?自分じゃけっこう成長したと思ってるのに」
津田「ん…古仲くん。いきなり下ネタに走るとか、どう対応したら良いの。突っ込めば良いの?あ、古仲くんが突っ込む方か」
えっ?
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07/12 20:20 K002 [60]
趣里「えっ?」
思わず口に出てしまった。津田さんが下に走ってるよ。あの優雅でくっそ可愛い津田さんが下に走ってるよぉぉ!
津田「ん………ごめ聞かなかったことに」
趣里「…う、うん。何も聞こえなかった」
まぁそんなこんなでやっと正門までたどり着いた。
???「ちょっ…めちゃくちゃ遅いんだけど…凍えて死にそうなんだけど」
津田「ん…ごめ。西沢くん」
趣里「あ、西沢!お前なにやってんの?ていうかどういう事?」
どうやら僕は呼ばれたらしい。なんでか知らないけど。
津田「やっぱり私が行って正解だったね」
西沢「そうみたいだね。古仲、なんで遅かった?」
いつもとふいんき…じゃない雰囲気が違う西沢は凄いオーラが…なんか通常に喋ってるだけで怖っ!
趣里「そ、それは…もう一度寝ようかなって…ねぇ…寝起きだったし、夢かと思ったし、知らない番号だからイタズラだと思ったし…」
西沢「…あ、ごめんごめん。そりゃ仕方ないな。で、なんで寝ようと思ってたのに今起きてんだ?しかも津田さんの上着を着て」
怪しい物を見る目付きで睨まれる。
津田「ん…古仲くんパジャマ姿で寒そうだったから貸した。それに古仲くん、誰かさんのせいで頭怪我してる」
西沢「………」
そういえば津田さん、なんで怪我してる事知ってるんだろう?
趣里「ね?なんで僕を呼んだの?」
とりあえず呼ばれた理由だけでも聞いてみる。このままだと、話が一向に進まないからな。
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07/12 20:42 K002 [61]サングレ
西沢「今からお前に話すことは他言無用だから…準備は良いか?」
津田「その前に服を脱いで」
趣里「あ、ごめん。今返すね」
一体何を言うんだろう…他言無用ってくらいだから内容が凄いんだろうな。僕は脱いだ上着を津田さんに返すと、
津田「違う…上半身裸になって」
趣里「えっ……わ、わかった。でも寒いよ」
西沢「大丈夫だ。すぐ終わるから背中だけめくってくれ」
趣里「うんわかった。」
僕は言われた通りに背中を向けて、服をめくった。
津田「ん…やっぱり…」
西沢「だな。やっぱお前もか」
意味がわからないぞ。
趣里「何がやっぱりなの?教えてよ」
頭がパニックになった僕には一つも理解出来ない。だって背中にあった傷は気味悪い形のものだったから。津田さんが自分の服をめくって説明してくれた。ていうか寒くないの?恥ずかしくないの?
津田「古仲くんは私と同じ傷が背中に出来てる」
津田さんは指でピッピッと指して言う。
津田「そして川橋さんが言うには、この傷がある人又は突然出来た人は魔物に呪われてるって…」
趣里「へっ?」
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07/13 09:32 K002 [62]
津田「…だから…古仲くんは魔物に呪われてるって…私達同じでわかった?」
西沢「そういう事。これ他言無用な」
趣里「ちょっと待ってよ!意味がわからないよ!それで、二人はその…川橋?さんに言われて鵜呑みにしてるの?」
正直焦ってきた。何故か冷や汗が噴き出して悪寒がし始める。
西沢「お前も見ただろ?バイクが吹き飛んだのと、俺が地面に叩きつけられたの」
趣里「え、え、何を言ってるの?じ、冗談はやめて…よ…だって非現実的すぎて…わからない…」
なんだか怖くなってきた。なんでかは知らないが、このままここにいるのは危険な気がした。
津田「ん…アホのくせに今の状況は把握出来てるんだね」
津田さんはそう言ってどこから出したのか、銃らしきモノを持って構えた。
西沢「今日俺が逃がした歩行型だ。津田、どうする?」
西沢も槍を構えた。
津田「ん…私は古仲くんを守りながら戦う。西沢くんは無炎灯で囮になって。歩行型は私がチェーントラップを掛けるから、掛かったら一斉攻撃」
いつも無言の津田さんが今は滑舌良く喋って指示をしていた。
また始まった。見えない何かが暴れている。その見えない何かは地面を蹴りあげてるのか、周りには砂利が飛び散っていた。次の瞬間、
津田「ん!」
津田さんが二メートルくらい上へジャンプした。僕は津田さんに押されて倒れた。
津田「西沢くん!早く無炎灯使って!」
西沢「わかってるっての!」
見えない何かは、西沢の方へ向かったのか、僕はパニクって叫んだ。
趣里「おい!なんだよこれ!!」
西沢「あのアホ…せっかく誘き寄せたのに…」
見えない何かは、動きを止めて僕の方を見た気がした。
津田「ん!危ない!!」
凄い勢いで津田さんが押してきて、僕は少しだけ飛んだ。
趣里「い…いってぇ」
三メートル程転がって、辺りを確認すると津田さんが血を吐いて倒れていた。
津田「ん……コホッ…コホッ…」
西沢「ちっ、大丈夫か津田!!?古仲、津田を抱えて逃げろ!!」
趣里「え……」
僕はうずくまる津田さんを抱えると、ゆっくりだが、走る。津田さんの体は血で汚れていた。
西沢「…ふぅ、こりゃあ…こっちも腹くくって戦わないとな…」
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07/13 11:54 K002 [64]
趣里「…僕のせいで津田さんが…」
やっと安全な場所へ運ぶことが出来たが、問題はここからだ。僕は治療はもちろん応急措置だってできない。日頃、ちゃんと保健の授業聞いとけば良かった。このままじゃ西沢も危ない。でも僕じゃ何もできない。できるのは邪魔だけ…多分、津田さんは臓器のどこかをやられたはず、血を吐くのはそのせいだろう。骨が折れて刺さったのか?
津田「はぁ…はぁ…コホッコホッ…古仲…くん…大丈夫?」
趣里「…なんだよ…津田さん…自分の体より僕の体の方が大事なの?…ごめん…本当にごめん」
津田「ん………多分…これ…入院しないと…いけない…かも…身体中が…痛い…コホッコホッコホッコホッコホッ…」
血を吐く頻度が多くなった。
趣里「今、救急車呼ぶから!」
ケータイで呼ぼうとするが、圏外になっていた。校内で圏外になるなどあり得ない。
津田「ん…今この空間は閉じているの。イレギュラーな…私達は…この空間の…
ルールを無視して…入れるけど…イレギュラーじゃないモノは一切の…干渉が…不可…能」
言い終えると、力が抜けたように津田さんは動かなくなった…
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07/13 23:12 K002 [65]
初めて人が死ぬ瞬間を僕は目の当たりにした。
趣里「………」
胸辺りから多量の血が流れていて、死因は僕の無理やりな運び方だったのかもしれない。西沢に抱えろと言われたが、僕には力がなく、人を負担を掛けずに運ぶなど無理な話だった。それに、こうなったのも僕のせいだ。
津田さんは、その呪いを解くこともできず死んでいった…イレギュラーなまま…
西沢「……はぁはぁ…なんとか追い払う…事はできたか…」
それにしても津田大丈夫か?あの傷じゃ危ないだろう…俺は槍を杖がわりにして、足を進めた。そして、古仲達の下へたどり着く。
西沢「?…なにしてんだ古仲…津田は大丈夫だったか?」
趣里「………西…沢…津田さんが…」
西沢「どれ、見せて…み………」
西沢は津田さんの姿を見て絶句した。当たり前の反応だ。
西沢「…退場したのか………」
趣里「……退場?」
西沢はただ立ち尽くしている。退場とはどういう意味なんだ?
次第に津田さんの体が透けていくのがわかった。
西沢「…イレギュラーが…イレギュラーじゃなくなった時…この空間での存在が不可能になる…津田は…この空間で死んだが、現実では津田の死はなかった事に…なる…存在も…イレギュラー以外は…津田の存在を…忘れる…」
僕はその言葉を聞いて、津田さんが消える前に血で汚れた上着を取ると、それを抱き締めた。僕たちは津田さんが消えるまで、無言でその光景を見ていた。
この時、僕は決心した。津田さんの分も生きて魔物とやらを全部倒すことを…そして、津田さんのことを一生忘れないと…
最終更新:2010年07月21日 00:21