【花】
春。
あたたかな風が新たな生命の芽吹きを促す頃、れいむとまりさは恋に落ちた。
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群れ一番の美ゆっくりと謳われるれいむ。群れを統率する長の長男であるまりさ。二匹は、お互いの両親の勧めで見合いをした。
互いに見知らぬ仲ではなかったが、面と向かって話をしたことはない。
見合いの席には、淡い桃色の花びらで着飾ったれいむと、勇壮な毛皮の衣をまとったまりさが緊張の面持ちで現れた。
面をあげ、数瞬、互いに見つめ合う。
虹色に輝くときめきの花が、二匹の心に咲き誇った。夫婦の絆を手繰り込み、愛すべき者を見つけたのだった。
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れいむは良い妻となり、まりさは良き夫となった。困難も苦悩も悲哀も、二匹の仲を割くに足りるものではなかった。睦み合い、やがてれいむは腹に児を宿した。
まりさは以前にも増して食料の調達に精を出し、れいむは生まれ来る我が子に教育するべき事柄を考えていた。まりさは、気の早いことだと苦笑しながら、溢れる幸福感に身をふるわせていた。
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夏が過ぎ、鳴り虫の合唱が秋の涼しげな風に乗って運ばれゆく頃、れいむは児を出産した。れいむによく似た美しく愛らしい赤れいむと、まりさに似た強悍で目つきの鋭い赤まりさ。両親は、大切な我が子の未来に幸運の光あれよと願った。
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花は、その盛りを永遠に保つことはできぬ。いわんや、か弱き小動物の終わらざる日常をば、長らえることも叶わず。
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積み上げるは難く、崩し去るは易く。歳老いたれいむを棄てたまりさは流れ者のありすと懇ろになり、二匹の子は食料の分配に因るいがみ合いの末に、群れを引き込んだ争いを起こし、その渦中にあって死んだ。
まりさはありすに家財を奪われ、前途に闇を見たれいむは川に身を投げた。
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冬が来た。
もはや寄り添うべき温もりはなく、庇護を求める手合いもいない。
思い返してみれば、なんと儚い花の夢。散るが悲しく美しくあらば、いっそ川面に波紋を立てん。
清くささやかに流れる水鏡の向こうに、いつか見た虹色の大輪が咲き誇る。
桃色に包まれた伴侶の、淋しげな笑顔が見えた気がした。
完
最終更新:2010年10月17日 02:06