【舌に訊け】
とある森。
「ゆゆーん! まりさはかりのてんさいなんだぜ! きょうもごはんたくさんとったのぜ!」
まりさは得意の狩りで、食料を大量に手に入れました。手はありませんが。
「ただいまなのぜ!」
「まりさおかえり!」
「おちょうしゃんおきゃえり! れいみゅ、いいこにしてちゃよ!」
家には愛する妻とかわいい子供。帽子からご飯を出して、家族に成果を見せます。
「わあ、すごいね!」
「ごちそうだにぇ!」
「みんなでおなかいっぱいになるんだぜ!」
「「「いただきまーす!!!」」」
もぐもぐ。
むしゃむしゃ。
ごくりごくり。
満腹になったら、家族みんなでころころしたりすりすりしたりします。温かな体温、柔らかな肌はとてもゆっくりできます。
彼らはそのまま、眠りについてしまいました。
―――――
目の前には、おいしそうなご飯がある。舌を伸ばし、舐めて、そこで気付く。
―――――
「おちょうしゃんやめちぇぇぇぇぇぇぇ!? れいみゅをたべにゃいでぇぇぇぇぇぇ!」
れいむは、子供の泣き叫ぶ声で跳ね起きました。まだ覚醒しきらない頭を振って、状況の確認をします。そこには、信じられない、否、信じるべきではない光景がありました。
まりさが、子供の赤れいむを押さえつけてその小さな体にかじりついているのです。まりさは恐ろしい形相をしていました。目は血走り、汗をだらだら流して、必死に子供を食べています。
れいむは、これは悪い夢なのだと思いました。しかし、いつまで経っても悪夢は終わりません。そのうちに、まりさが大きなゲップをしました。
赤れいむは、もういませんでした。地面にこびりついた餡子の染みだけが、赤れいむの生きた証でした。
まりさは、れいむに向かって言いました。
「れいむもしっているはずなのぜ。あのあじを、においを、しっているはずなのぜ……」
れいむには、まりさの言いたいことがわかりませんでした。
「わからなければ、それでもいいのぜ」
まりさは、猛然とれいむに飛びかかってきました。体の半分ほどを喰われたとき、ようやくれいむは思い出しました。
あの味を、匂いを。
―――――
れいむたちにはたくさんの子供がいました。ある夜、悪いことをした赤ちゃんたちを外に出して、お仕置きをしました。次の日の朝、その赤ちゃんたちは死んでいて――――。
完
最終更新:2010年10月27日 23:01