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Шквалシュクヴァール

◆◆◆◆◆シクヴァール関連

 【質問】
 シクヴァールの存在が明らかになったのは,いつのことか?

 【回答】
 野木惠一によれば,公式には1995年であるという.
 以下引用.

ロシアの「超高速魚雷」の噂は1990年代に入ってから西側でも流れ始め,1995年にはロシア自身がシクヴァール(Shkval)の名称と共に,情報を一部公開した.
当初はしかし,開発意図のさっぱり分からない奇想兵器と認識され,伝わってきた最大速度200ノットの性能も,懐疑の目で見られた.
なにしろ200ノットといえば,現用の魚雷の3~4倍前後の速度で,プロペラやポンプ・ジェット式の推進機関では,キャビテーションの限界からとうてい達成不可能と考えられたからだ.

〔略〕

ソ連における超高速の水中投射体の研究は,1960年代に24科学研究所(NII-24)で始まったようで,1977年にシクヴァールが登場した
NII-24は1969年に国立特殊設計局47(GSKB-47)と合併して応用水力学研究所(NII-PGM)となり,ソ連邦崩壊後はレギオン科学生産公団(NPO Region)と名を変え,今や世界にシクヴァール(輸出型の名称はシクヴァールE)や対潜魚雷を売りこんでいる

この経過からすれば,シクヴァールが配備されたのは1980年代前半のはずで,西側の諜報機関は当時から存在を知っていただろうが,それが何故1990年代の半ばになって急に話題となり,脅威と騒がれるようになったのかは,ここでは追及しないでおこう.

( from 「世界の艦船」2002年12月号,p.106-107)

 【質問】
 シクヴァールは魚雷なのか?

 【回答】
 魚雷と呼ぶよりは,水中ロケット弾あるいは海中飛翔対潜ミサイルとでも呼ぶべき存在であるという.
 以下引用.

シクヴァールは,ロシアの533mm長魚雷とほぼ同じサイズ(全長8m弱)で,発射重量は約2700kg.
弾体は,魚雷とは違い,先細りで先端は尖っている.
内部は半分以上が固体ロケット・モーターで占められ,後端には大きなノズルが開いている.
その周辺にある8本の円筒は,起動モーターと見られている.
弾体中央部の側面からは,4本の細い円筒が突き出る.
弾体の半分は弾頭部で,先端部の周囲には,ガスを噴出するスリットが開いている.

最初,シクヴァールはこのスリットからガスを海中に噴射して,ガスの膜に包まれて高速で進むものと思われていたが,むしろ高速自体によって生み出される,スーパーキャビテーション Supercavitation と呼ばれる特異な現象を利用する,画期的な水中飛翔体である事が間もなく判明した

■スーパーキャビテーション
魚雷や艦艇の速度を制約するキャビテーションとは,どのような減少だろうか?
キャビテーション(空洞現象)は,高速の流体中に圧力の低い部分が生じて,気泡ができる現象を言う.
水中で高速で回転するプロペラや流体のポンプ(インデューサー)で見られ,効率を低下させ,振動や騒音を生じ,また,空洞が潰れる際の高圧で金属表面のエロージョン(壊食)を起こすなど,悪い事ずくめと思われてきた

在来型のプロペラは,キャビテーションの発生により,30数ノットが実用上の限界で,それ以上の速度では特殊なプロペラやウォータージェット式の推進手段が選ばれる
ウォータージェットやポンプジェットは効率はプロペラより劣るが,速度が50ノット以上になってもキャビテーションで効率が低下しない.

ところで,従来のプロペラの効率がガタッと低下する,40ノットから50ノットくらいの領域にかけても,比較的高い効率を維持するスーパーキャビテーティング・プロペラ(SCP)なる推進機関がある
SPCはそれまでとは全く異なる,包丁の刃のような断面を用い,プロペラの翼全体がキャビテーションに覆われたスーパーキャビテーションの状態で使われる
スーパーキャビテーションに入ると,翼の揚力は若干増大し,抵抗はかなり減少する.
運動する物体全体が単一のキャビティに包み込まれたスーパーキャビテーションの状態では,物体の最先端を除いては水(流体)と接していない
シクヴァールのような細長い,軸対称の物体の周りにできるキャビティは,物体の後方まで長く伸びた紡錘形の空洞となる.
空洞とは言っても真空ではなく,水蒸気に満たされているが,周囲の水とは接しないので摩擦抵抗が極端に少なくなる.
抵抗は,プールの中を歩くのと霧雨の中を歩くのくらい違うだろうか.

スーパーキャビテーションの状態に入るには抵抗の山を乗り越えねばならない.
シクヴァールは起動モーターで100ノット近辺まで加速して,最先端のキャビテーターで海水を押し退け,先端のノズルから固体ロケットの燃焼ガス(海水の蒸気も混入か)を吹き出してスーパーキャビテーションを生じさせるのだろう.
さらに,メイン・モーターで加速して200ノットに至るのではないかと思われる.
スーパーキャビテーション下の飛翔(航行と呼ぶのは似合わないだろう)の問題の一つは,弾体がキャビティの中で振動して周囲の水に叩き付けられる事で,進路が乱れたり弾体が破壊する危険がある.
シクヴァールの弾体の中央部にある展開式の円筒は,一種の受動的安定装置の役割を果たすのではないかと見られている.

〔略〕

シクヴァールが先鞭を付けたスーパーキャビテーションの利用には,まだ大きな可能性があり,現在は西側でも盛んに研究されている.
例えばアメリカのCテク・ディフェンス社は,スーパーキャビテーションを生じて水中を安定して進む弾丸を開発して,RAMICS(Rapid Area Mine Clearance System)と呼ぶ機雷爆破用機銃を提案している.
西側でもシクヴァールのような水中ミサイルが研究されており,スーパーキャビテーション超高速潜水艇まで語られている.
本家ロシアでは,さらに高速のシクヴァールの後継の開発も噂される.

(野木惠一 from 「世界の艦船」2002年12月号,p.106-107)

 通例としては「魚雷」と呼ばれているようではあるが

 【質問】
 シクバルって実戦配備されてましったっけ?

 【回答】
 現在は,されていません.
 もともと冷戦時代の発想として,核弾頭を装備して米機動艦隊のど真ん中や敵潜水艦がいそうな場所にぶちこんであぼーん,という兵器なので,誘導なしで実用もできそうだったのですが,そんな状況がなくなってしまった.
 通常弾頭積んだShkval-Eを中国が数十発購入したといわれますが,最終誘導なし.
 終末で減速して探索するバージョンが1998年に実験され,アメリカも対魚雷対策などに応用できるとして興味を示しています.
 ロシアでは1990年初期に無誘導型が実戦配備されています.※


 ※野木惠一は「シクヴァールが配備されたのは1980年代前半のはず」と述べている.別項参照.

 【質問】
 シクヴァールの性能は?

 【回答】
 核弾頭付きであり,秒速100mで迫る.これを回避する手段は西側にはないという.
 ただ,射程が短いため,核弾頭を使用すれば発射側も被害を受けかねない.その点が謎とされている.
 以下引用.

シクヴァールの射程は約7~10kmと言われ,おそらく核弾頭付きと推測されている.
200ノット(秒速100m)で迫る核弾頭水中ミサイルを回避する手段は,西側にはない.

〔略〕

今のところ,シクヴァールが誘導可能とする積極的な主張はないが,この〔弾体中央部にある展開式の〕円筒や推力偏向ノズル,あるいは先端のキャビテーターの傾きを調節することで,飛翔経路をコントロールすることも可能と思える.
もちろんシクヴァールの速度や飛翔形態では,アクティヴでもパッシヴでもソナー使用は不可能だが,弾体後部に誘導ワイヤのディスペンサーとも見える部品が付いているのが気になる.

ところで,シクヴァールの狙いについては幾つかの説がある.
シクヴァールがソ連海軍の核弾頭魚雷の後継兵器であるとするならば,その用途には米艦隊の一挙撃滅や港湾攻撃が含まれよう.
また,対潜用とするならば,目標位置の不確定を高速と核弾頭の威力で補う強引な兵器と考えられる.
しかし,いずれの場合も射程が10kmでは,自艦にも被害が及びかねない危うさがある.

ある説ではシクヴァールは反撃兵器で,西側の潜水艦の有線誘導ホーミング魚雷の発射を探知したら,すかさず〔シクヴァールを〕発射し,相手が驚いて回避行動をとり,魚雷誘導を諦める(ワイヤを切断する,あるいはワイヤが切れる)のを期待してるのだという.

(野木惠一 from 「世界の艦船」2002年12月号,p.106-107)

 【質問】
 「シクヴァール」という言葉の意味は?

 【回答】
 野木惠一によれば,「驟雨(しゅうう)」「突風」だという.
 以下引用

щквалはロシア語で「驟雨(しゅうう)」「突風」(英語のsquall)を意味し,水中兵器の名称としては奇妙にも聞こえるが,気相液相入り混じったスーパーキャビティの内部の様子と見れば,これほど相応(ふさわ)しい名前もない.
液相入り混じったスーパーキャビティの内部の様子と見れば,これほど相応(ふさわ)しい名前もない.
シュクヴァル,シェクヴァルなど色々に表記されるが,ロシア語のアクセントまで考えに入れれば,シクヴァールが一番適当ではないか.

(野木惠一 from 「世界の艦船」2002年12月号,p.107)

 【質問】
 ロシアのロケット魚雷からの防御方法は有るのですか?

 【回答】
 対抗策についてのソースは知らないので憶測回答になるけど・・・

 ロケット魚雷というのは,シクヴァルのようなスーパーキャビテーション魚雷のことだよね?
 これは仕組み上,以下のような問題点を抱えている.

  • 大きな音を出すので撃ったことも発射位置もバレバレ.
  • 泡と騒音のせいでソナーでの自立誘導ができず,有線誘導しかできない.

 撃たれたほうは魚雷なり対潜ロケットなりを撃ち返して,相手に誘導を諦めさせることになる.(間に合えば)

 というか,シクヴァル自体が,「先に相手に撃たれたときに撃ち返す」という目的で開発が進められた兵器.
 自艦が発見されてない状態で発射するのは自殺行為.

 潜水艦の兵装としては,無音発射(スイムアウト)できる自律型誘導魚雷のほうが怖い

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最終更新:2011年01月05日 02:59
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