[2]まぼだき
僕は家族の顔を全く覚えていない。
養父の話によれば僕は死んでいる実母の腕に抱かれながら、眠っていたそうだ。周りには戦闘機の残骸が散らばっていて、状況から察するに被弾して制御不能に陥った戦闘機は真っ直ぐに僕の家族が住んでいた家に突っ込んだようだ。
当時上空では地球連合の空軍とオデッサという組織が空戦を繰り広げていて、市民は避難の真っ最中だった。避難の準備を終え、家を出ようとしたところに戦闘機が突っ込んだのだ。どうして僕だけ助かったのか、養母にも分からなかった。
そして僕は今日本共和国という島国で養父母、義姉と四人で生活している。義姉は僕のことをいつも気にかけていて、僕がイジメられる度にイジメた相手を呼び出してボコボコにしていた。
けどそんな優しい家族とも別れて今僕はニュートーキョーに三年前新しく開校した吉山国際学園の寮に入った。
明日は入学式。
明日に備えて早めに寝ることにした。
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04/24 15:26 W61SH(e) [3]まぼだき
2
私は巫女に呼び出され、森深くにある神殿に来ていた。巡礼者の服を纏っていないと例え巫女と親しい仲であっても神殿に足を踏み入れることはできない。
従者に案内されたのは広い礼拝堂。祈りを捧げる台座に彼女はいた。
両目を眼帯で覆い、鈍く輝く金属製の腕に聖典を持っている。彼女の肌は15年前と変わることなく、艶やかだ。この神殿の巫女は過去にもなかなか老化が進まなかった者がいると聞きに及んでいるが、彼女はそれ以上に老化が進んでいない。むしろ15年前から彼女自身の時が止まっているかの様だった。
イヴァ=エルス。
それが彼女の名前。あの醜い戦争を共に戦った戦友であり、無二の親友。今では彼女に仕える身だが、それでも絆は健在だ。
暴走した機械天使『雪華』との激戦の末、何とか撃墜できたが代わりに視力を奪われてしまった。その眼帯の下には虚空を見つめたままの、硝子細工のような瞳が残されているがすでに本来の機能は失われていた。
「シェロ来てくれたのね」
今日の彼女はやけにテンションが高い。何か良いことでもあったのだろうか。
「シェロ=ルミーク。巫女様の命により戻って参りました」
「もう堅苦しい挨拶はいい、って言ったのに」
「けじめだよ」
そう言い返すと彼女はクスクスと笑った。従者の手を借りて台座から立ち上がると私の傍まで歩み寄ってきた。眼帯のせいで顔の半分が隠れてしまっているが、今は微笑んでいるのが感じとれた。
「シェロ=ルミーク。貴女にお願いしたいことがあります」
一拍置いて。
「吉山国際学園がどんな学校か調べてきて?」
そんなことがあって私は吉山国際学園学生寮の一室で自分の荷物を整理していた。制服もすで包装を解いてハンガーにかけてある。
しかし何故イヴァはあんなことを言ったのだろうか。真意は読めなかった。
そして心なしか明日の入学式を楽しみにしている自分がいる。学生証を手に取ってみる。
「友達、イヴァ以外にできるかな」
隣の隣の部屋から騒ぐ声が聞こえてくるので、ヘッドホンで音楽を聴きながら眠ることにした。
ちなみにヘッドホンから流れていたのは日本のアニメソングだというのは、秘密だ。
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04/25 00:46 W61SH(e) [4]DD
透明なガラスの向こう側で揺らめく複数の光。
気持ち悪い色の液体で充たされた大きな容器。
そして、私を見つめている紅い瞳―――瞬きすらせずに、じっと私を凝視している二組の双眸。
それが私の最初の記憶。私がまだ"私"になる前の………
午前5時30分―――
日の出とほぼ同時に私のサイクルは廻り始める。
いつものように寝床から這い出て、いつものように食糧を摂取し、いつものように………そうやって毎日同じ行動を繰り返していく。別に他人から押し付けられた訳ではなく、自身で決めた"必要最低限で最も効率的"な生き方だ。
少なくとも、七年前に比べると幾分かマシな生活になっていると思う。慣れてきたから当たり前だけど……
午前5時41分―――
必要な荷物を纏め、昨日までの"住居"を処分する。
探すのに数日、作るのに数時間、そして壊すのに数秒…そんな粗末な存在。それでも"住めば都"なのだと実感できる"家"だった。
午前5時45分―――
騒々しいサイレンと共に河川敷に人が集まってくる。その様子を後目に、私は迎えに来た黒のセダンに乗り込んだ。
運転席からの「待たせちゃったかな?」という声に対して「3分です」と返せば、相手は「それなら上々ね」と苦笑した後、ゆっくりと車を発進させた。
午前5時53分―――
河川敷に発生した小規模火災の中、1つの焼死体が発見された。
被害者の身元は不明。早朝のため目撃者も無く、現場もホームレスの溜まり場だった事から"浮浪者の火の不始末"で片付けられ、大したニュースにもならなかったらしい。
午前6時22分―――
都市郊外の森林に存在する開けた場所―その中心に高さ20cmほどの石塔があり、私はその前に立っていた。そして、その下に眠る"彼等"に対して黙祷を捧げる。
静かに目を開けば、隣に濃い茶色のコートを羽織った彼女が私と同じように佇んでいるのが見えた。私の視線に気付いた彼女は薄く微笑み、来た道を引き返して行く。その後を追うように私も歩き始める。
振り返ると、石塔の上に蒼い翅を持った小さな蝶が留まっていた。
午前6時38分―――
7年前、あの事件が起きてお父さんとお母さんが死んだ。
7年前、私は"私"を見つけた。二人の子供としての"私"を…
そして7分前、私は17回目の誕生日を迎えた。
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04/27 14:06 W62H(e) [5]零
2157年9月11日
世界はレクイエムの下、大戦に勝利した。
数多もの時間、資源、命を費やし勝ち取った未来、
だが、引き換えに失った未来も多い、
終戦から15年―――
世界は復興の道を歩んでいる、首都機能は回復、国家間の貿易も再開し大戦前の生活を取り戻し始めていた、だが生活から大戦の傷は消えず、都市の直ぐ隣には廃墟が広がり、形だけの墓地には毎日のように人が訪れる。
10億人の死者を出したこの悲劇は人々の心からその影を消すことなく、15年たった今も鮮明に爪痕を残していた。
2172年4月6日
日本共和国・ニュートーキョー・沿岸部
頬を優しく風がなでていく、目の前に広がるのは深い蒼の海、水平線を挟んで対峙する蒼から碧へのグラデーションが砂浜と純白の雲をあしらい、濃緑色の木々には、季節の始まりを知らせるように花を咲かせている。
「気持ちいいね」
隣に立っている女性がふと言葉をもらした。
アリア・マーキュリー
軍事国家アルテミス、七君主の1人であり私の家族
「そうだね…」ため息
「不安なの?」
不安、確かに不安だ。
私は明日から生まれて初めて学校へ通う事になる、勉強が分からないから不安に感じているわけではない、
「大丈夫だよ、クリスなら」根拠のない励まし
「私なら…」
「そう、クリスなら大丈夫、友達なんて直ぐできるよ、ね?」
軽く背中を叩いてくる、
「うん、ありがとうアリア姉さん」
クリスは立ち上がりスカートに付いた砂を落とし、ニーソックスを上げる
「姉さん、時間は?」
「14時29分だよ」
「寮の受付は3時からだよね?」
「今から行けばちょうどいい時間になるかな」
「じゃあ、もう行かないと」
クリスは振り返り海に背を向け駐車場へ走っていった。
「行ってらっしゃーい!!
わざわざバイク使わなくても送ってあげるのに、ね、アパレシオン」
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04/27 23:29 H001(e) [6]米酢
ピピピピピピ!!!
「う~ん・・・」
ピピピピッ
「んっ?・・・やば!?」
ニュートーキョーの一等地に建つ億ションの一室に住むファッシネーションドクター。ロストの死をきっかけに解散した請け負屋、その後彼女はこの地で生活をしていた。最初の方こそは貯金も腐るほどあり困ることは無かったが少しばかり豪遊が過ぎ貯金は減る一方。流石に不味いと感じた彼女は仕事を始めるも長続きはしなかった(主に同僚や患者に手を出すため)。そして今回の仕事は・・・
「まさか学校の保健室の先生になる日が来るとは思ってもみなかったは。それにしても通勤初日から遅刻とか・・・確か今日は学校の教師の皆様に挨拶もあったはずだしなおさら遅れるわけにはいかないは!」
彼女は手早く化粧を済ませると化粧台の上に置いてある写真楯を見た。そこには彼女ともう一人かつて請け負屋を束ねていた男の姿が。
「行ってくるはね愛しの――」
15年経っても老いを感じさせない顔に気合いを入れて学校へと急ぐのだった。
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04/30 00:04 N02B(i) [7]ラルド
2172年4月8日
吉山国際学園始業式
「オルガ、起きなさい!初日から遅刻したいの?」
始業式の朝、天気は良好、気分も良好
お母さんに叩き起こされなければ、だが
「もう、お母さん大丈夫だって。まだ、余裕で間に合うもん」
もちろん走れば、だが
「たまにはゆっくり歩いて行きなさい。」
「はぁ~ぃ」
まぁ、たまには早く起きるのも悪く無いだろう。
「おはよ、お父さん」
「あぁ、おはようオルガ。あまり母さんを怒らせるなよ、恐いからな」
そんなことを言うお父さんの顔は笑っている。
「大丈夫よお父さん、お母さんを怒らせるような事はしないから。」
朝食を食べながらの他愛の無い会話をする親子。
戦後15年掛けて漸く平和と呼べる世の中になったと言えるだろう。
「ごちそうさまでした。行ってきます!」
食器を下げると鞄をもって玄関へ向かう。
「オルガ、ちょっと待って…はいこれ」
外に出ようと扉に手を掛けたところでアイーシャに呼び止められる。
「何これ、御守り?」
オルガは手渡された物を見る。
「そうよ、御守り。お婆ちゃんの持っていた物よ。ストラップを長くしておいたから首から掛けておきなさい。」
「うん、解った。じゃあ今度こそ行ってきます!」
オルガは御守りを首に掛けると扉を開けて、学校へ向かった。
「オルガ様の御守り…ラピスラズリか」
「ええ、一応所有権はあの子になってるから」
そうか、とガネルは呟くと窓から空を見上げた。
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04/30 00:19 Android() [8]まぼだき
4月8日午前7時。
暖かくなってきたとは言え、この時間はまだ若干肌寒い。部屋で制服に着替えて通学鞄に必要なものを入れて一階に降りる。
顔を洗って歯を磨いて、お母さんが買ってくれたカチューシャを付けてリビングに入る。リビングには作業服姿の姿で新聞片手にコーヒーを飲むお父さんと、エプロンをして食べ物の席に朝食を並べてくれるお母さんがいる。
「おはようベルネ」
「おはようお父さんお母さん」
「おう」
相変わらずお父さんの返事は少し荒っぽいというか何というか・・・。
席に着き、祈りの言葉を捧げてベーコンエッグを口に運ぶ。絶妙な焼き加減。やっぱりお母さんの作る料理は美味しい。
「そういえばベルネ」
お父さんが新聞を畳みアタシに話かけてきた。食べ物を噛んでいる時に話かけないでよもう。
「6月から中等部では軍事教練が始まるよな」
「うん。男子は強制、女子は希望者だけ」
「お前はどうするんだ。教練、受けるのか?」
お母さんも心配そうにアタシを見ている。
二人には申し訳ないけどはアタシは軍事教練を受けるつもりをしていた。むしろ受けないといけないのだ。
「アタシの場合、受けないと駄目なんだって。でも機甲部隊の訓練だから車輌乗り回すだけらしいよ」
「・・・まぁベルネはアレ作っちゃって普通に乗り回してるものねぇ」
「機甲部隊が欲しがるのも無理ないか」
朝食を食べ終えて最後に自分の部屋を片付けて外に出る。家の横にあるガレージのシャッターを開ける。
今日もコイツで登校だ。
ハッチを開けて鞄をほうり込み、続いて操縦席に身体を滑り込ませる。ハッチを閉め、エンジンを始動させた。重い音が鳴り響き、車体全体が震える。
「パンツァーフォー!《戦車前進!》」
早朝の閑静な住宅街に物々しい音を立てて姿を現したのは旧ナチスドイツのⅥ号戦車ティーガー2型。
轟音を響かせ住宅街を突き進む旧世代の兵器は実にシュールだった。
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04/30 02:27 W61SH(e) [9]米酢
6
「やっぱあれね、電気自動車の難点は充電忘れると乗れないとこに限るはね」
彼女は現在国鉄に揺られながら目的地に向かっていた。ガソリンならちょちょっと入れれば走る優れもの、しかし今の彼女にそんな高価な物を買う金はない。その為彼女は乗りたくもない満員電車に乗っていた。
「はぁ・・・臭い」
中年期独特の加齢臭と闘いながら資料に目を通す。
「吉山国際学園あのヨシマエが創立した学校・・・癖の有りそうな子が多そうね。斎藤 佐倉もうドクターの名前を使う事は無いのねぇ」
彼女・・・斎藤は自分の旧名を名残惜しそうに呟いた。
「「次は――次は――」」
無機質な声が目的地を告げる。
「早くつかないかな臭い・・・」
しかしこの後動作不良のために20分近く加齢臭を堪能するはめになるとは思ってもみなかった。
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04/30 15:41 N02B(i) [10]まぼだき
2
吉山国際学園の入学式は午前中の在校生始業式の後に総合体育館で行われる。中等部、高等部と一括して行われる為にあらかじめ用意された保護者席は満員となり、遅れてきた保護者は40分間立ちっぱなしで自分の子供たちの晴れ姿を見ることになるので、朝早くから体育館前に居座る保護者がいるのは毎年のことなのだそうだ。
あらかじめ配られたクラス表を見て、少し落胆する。
HN1-C。
これは高等部(High)普通科(Normal)1年生、C組ということだ。A~D組まであるけど僕のクラスはつまり推薦合格組ということで、一般試験をくぐり抜けてきた猛者どもはA、B組に振り分けられる。
番号順に指定された席に座り、開式まで30分も暇を持て余すことなった為か周りと喋りだす生徒からちらほら見られるようになった。
僕の左右は女子ですでに右の子は前列に座っている友達と雑談を始めていた。
「出身はどこ」
「えっ」
急に左の子が僕に話しかけてきた。僕は焦って変な答え方をしてしまった。
「に、日本だよ」
「うん日本のどこから来たの」
今になって恥ずかしくなってきた。
「もしかして話すの苦手?」
痛いところを突かれた。
図星を言われてどんどん気分が沈んでいくのが自分でも分かる。
「私はシェロ=ルミーク。月の生まれで、育ちはロシア。君は?」
「野鹿貴也。生まれは日本で育ちも日本だよ」
「生粋の日本人なんだね。日本人て自分の刀が折れると激しく落ち込むって本当?」
どれだけ時代錯誤した先入観なんだ!
僕はシェロ=ルミークと名乗ったクラスメートを見た。青いスカイブルーの瞳、真っ直ぐに伸びた銀髪。まるでお伽話に出てくる人形のようだ。
「?」
彼女は首を傾げて何故僕が彼女の顔を見ているのか疑問をあらわにした。それに気づき僕はまた恥ずかしくなった。
顔が熱い。
早く始まってくれよ入学式。
[11]零
5
4月8日 8時57分
吉山国際学園 女子学生寮
「…zzZ……zzZ」
「起きろ!!」
「……zzZ」
「起きろーー!!」
「ラルフ…あと1時間…zzZ」
「何があと1時間だーッ!!」ゴンッ!!
「痛ッ!!…うぅ~ん…もう朝?」眠い…
重たい体を起こし目を開けるとウサギがいた、腰に手をあて何やら怒っている
「もう朝?じゃね!!何時だと思ってんだ!?、9時だぞ9時!!初日から遅刻じゃねーかッ!!」右アッパー
まぶたを擦りながら時計を見る……!!?
「なんで起こしてくれなかったの!?」
今日は吉山国際学園入学式、新しい生活の始まり、なのに遅刻
「俺は起こしたぞ、何度も何度も!!お前が起きなかったんだろ!!」右ストレート
さっきから怒鳴っているのは私の友達、正確にはウサギ型ロボット、名前はラルフ
「うぅ~~」
「うぅ~~じゃねえ、さっさと準備しやがれ!!」左フック
「わかったから、もう殴らないでよ~!!」
初日から寝坊してしまった、ついつい深夜番組に見はまってしまったのが失敗だった、ても面白かったな~♪
寝間着を抜き制服に着替え、髪をさばき後ろで結ぶ、そして鏡で確認する。
映るのは、まだ硬さの残る制服を着た自分。
今日から高校生なんだ、ワクワクするな~♪
頑張らないと!!
「早くしやがれーーッ!!」跳び蹴り
9時24分
「ラルフ、バイクお願い!!」
「よっしゃ、まかしとけ!!」
鞄を持ったまま走って体育館へ駆け込み扉を勢いよく開ける。
中は薄暗く既に生徒達が椅子に座って雑談に華を咲かせていた、幸い入学式はまだ始まっていないみたいだ、
「よかった、間に合った~」
息を整え自分の席を探す、確か番号は【HN1-C-9】
「5…6…7…あった!!」
1つだけ席が空いている。
私はその席に座り時計を見る、入学式は9時45分からだ。
「9時33分、ギリギリセーフ」
なんとか間に合った。
「早く始まらないかな入学式」
気持ちが弾む、もう少しで私も此処の生徒、高校生活の始まりだ!!
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05/01 20:20 H001(e) [12]まぼだき
吉山国際学園の入学式は至ってシンプルだ。開式の辞、学園歌斉唱、学園長挨拶、在校生代表挨拶、来賓紹介、軍事教練についてのガイダンス、担任紹介、閉式の辞。このような順番で行われる。
今は軍事教練についてのガイダンスだ。これといって運動が得意な方な僕にとっては思い課題になる。何故ならこれもカリキュラムに含まれていて、実技と筆記テストで成績が決まる。
高等部の男子は強制、中等部と女子は希望者のみが受けるこの軍事教練。何でも地球連合が吉山国際学園を設立した
ヨシヤマ重工業に圧力をかけているから、カリキュラムに組み込んだとかなんとか。
そんな社会の裏事情なんてどうでもよくて、僕は絶対落ちこぼれ確定だ。ベトナム戦争を題材にした映画、『フルメタルジャケット』の『微笑みデブ』と同じ扱いを教官から受けることになるに違いない。あ、でも『微笑みデブ』は教官を殺して自分も死んだんだっけ・・・トイレで。
そんなのには絶対成りたくなかった。
左のルミークさんは軍事教練を受けるつもりは無いらしく、資料を流し読みしていた。
「ルミークさんは軍事教練、受けるの?」
一応聞いてみることにした。
「受けるつもりはない」
そうだよなぁ、女の子が進んでむさ苦しくて体力を限界まで使い果たす軍事教練なんて受けるはずがないし。
「野鹿くんは受けないと駄目」
「・・・分かってるよ」
しかし軍事教練は一年生の秋頃から始まるとのことだったので、少し安心した。
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05/01 22:56 W61SH(e) [13]DD
この世界は腐っている―――呆れ返る程に――歪んでいる。
それが今に始まった事じゃねぇのは分かってる。けど、頭ン中で何かが……俺の知らない誰かがそう言ってる――そんな風に考えるようになったのは、いつ頃からだったか……今じゃ、微塵も思い出せなくなっちまった。
―――ただ、俺はまだ諦めちゃいねぇ。
このクソッタレな世界にも、まだ望みは残ってんだよ。
だからなァ―――
◆
今、俺の目の前に横たわってるのは"ウジ虫"だ。喚くだけ喚き散らして、挙げ句の果てに意味不明な倫理観で物事を計ろうとする、そんなイカレた野郎……だった物だ。
先週までは辛うじて原型を保っていたが今は文字通り"ウジ虫"になり果てている。
「…フツーの奴なら一発で保健室直行だろうな。ま、こんなの見せらんねぇけど…」
どれだけ技術が進歩しようが、死体から得られる情報なんざ限られている。古人曰わく"死人に口無し"ってやつだ。
「ったく、とんだ無駄足だったな…」
傍にあった蛇口の水で手に付いた汚物を洗い流すついでに、壁に掛けられた時代錯誤な時計が視界に入った。その短い針は既に9の数字の隣にある。
「あ………ヤッベ、遅刻じゃねぇかッ!!」
一瞬で頭の中に、ネチネチと説教垂れるクソオヤジとそれに耐える俺の図式が完成する。このままだと新学期早々、ガキ共の前でイビられ晒し者にされる。
「冗っっ談じゃねぇッ!!」
俺は全力疾走でその寂れた建物から飛び出した。
ここからだと走れば20分で着く距離だ。猛ダッシュの途中で見知ったガキに声をかけられたが、今の俺に応える余裕は無い。
ただゴールを目指して俺は風になった――
――18分後、当然ながら職員会議に遅刻した俺は、待ち伏せしていた教頭に説教を食らう羽目になった。唯一の救いは、始業式やら入学式やらで生徒が1人も職員室に居なかった事だった。
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05/02 00:01 W62H(e) [14]ラルド
7
4月8日午前11時20分
「っん~、終わった~!」
始業式ということで、授業は無しで午前終了なのだ。
「オルガ、部活行くの?」
同じ部活のクラスメイトが話し掛けてくる。
「ごめん、今日は休むわ。なんか、お客さんが来るらしくて速く帰ってこいってさ」
何でも昔の友達が来るとか
「そういう訳だから、先生に言っといて」
オルガは鞄を掴むと教室をでた。
「ふぅ、結構キツいな~」
校門までノンストップで走ってきたオルガは校道の脇にあるベンチで休憩を取っていた。
「ん?」
どれくらい座っていただろうか、微かに地面が震動していることに気付く。
「なん……!?」
気付いた時には既に遅し、目の前には戦車としか言い様のない物が
「あ…(私ここで終わちゃうの?)」
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05/02 02:32 Android() [15]まぼだき
14
「ぎゃー!ストップストップ!」
ブレーキを踏み込み、ティーガーの思い体駆をストップさせる。思いっきり前のめりになったが、それでもなんとか止まってくれた。
操縦席のハッチを開けて、進路上にあるベンチに座っていた女子生徒に声をかける。
「大丈夫?怪我は・・・って、オーイもしもーし?」
目の前で手を動かすが、女子生徒は固まったままでびくともしない。「ここで終わりか」と死を目の当たりにしたような、そんな表情を浮かべたままだ。
「気絶してるし」
一度ティーガーに戻り、少し後退させてから方向転換して女子生徒とにらめっこしないように前面を別の方向に向ける。
「・・・これがマウスだったらどうなってたことやら。ティーガーで良かった良かった」
女子生徒の隣に座り、ティーガーを見つめる。
「うん今日もカッコイイ」
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05/02 17:08 W61SH(e) [16]ラルド
15
「ん?」
オルガは気付いたらベンチに横になっていた
「時間は……11時40分!?」
どうやら20分ほど気絶していたらしい。
「全く、戦車がなんでこんなところに…っあ!」
オルガは思い出す、一人の名前を。
この学校に唯一戦車登校する規格外な生徒。
足音に身体を起こすと一人の女生徒が走ってくるのが見えた。
セミロングの金髪に改造制服
「……ベルネ=T=グランシュカー」
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05/03 04:59 Android() [17]まぼだき
16
「あら起きちゃったか。これ一応お詫びに買ってきたんだけど・・・」
そう言って先程自販機で買った缶ジュースを女の子に差し出す。でも何かすごい睨まれえるし、多分許してもらえないだろう。
「えっと、もしかしてコーラが良かった?アタシはペプシ派なんだけど」
謝ろうとしたのに何か凄いこと口走ってしまった気がする。
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05/03 10:28 W61SH(e) [18]DD
13
「今月に入ってもう3人目か。厄介だな、こいつは…」
黒スーツを着た体格の良い男が、目の前に散らばった物体を見てそうこぼした。彼は口から煙草の煙を吐き出すと、吸い殻を投げ捨てようとして――途中で止めた。
「安藤さん、こっちはダメでした。な~んも残ってませ~ん」
「渡辺ェ!!仕事中は"警部"と呼ばんかァ!!」
安藤と呼ばれた男は正面を向いたまま怒鳴り声を上げる――その瞬間、建物全体が僅かに振動した。しかし、隣の部屋から現れた当の本人は
「おっと、スンマセンでした"警部殿"」
と、それを意に介すること無くヘラヘラ笑いながら返した。
安藤のスーツ姿に対し、渡辺はジーンズにアロハという締まりの無い格好。それだけでも、この2人の関係が普通ではないのが見て取れる。
「で、そっちはどうでした?安……警部殿」
安藤は軽く渡辺を睨み付けた後
「右に同じだ」
と溜め息混じりに答えた。
「……表の連中はどうしてる」
「まだ気付いてませんよ。ま、裏側で何があろうとマトモに対策しないのが"警察"ですからね」
渡辺は相変わらずヘラヘラした笑いを崩そうとはしない。安藤は無言でそんな渡辺の背中を殴ると、出入り口に向けて踵を返した。そのすぐ後ろには「ウゥ…」と呻き声を上げながら渡辺が続く。
「嫌な天気だ…」
と呟き、先程の吸い殻を携帯灰皿に入れた後、安藤は次の一本に火を点ける。
4月8日午前10時23分―――
雲一つない穏やかな晴天日だった。
◆
私はいつもの坂道を歩いている。私以外の学生がこの道を使う事はほとんど無い。事実、約一年間ほかの学生と出会った記憶は無いのだから…
この道で出会うとしたら、野良猫や野良犬。そして――
「ウオォォォォォ!!道を開けやがれェェェェェェッッ!!」
――遅刻ギリギリで全力疾走する一部の教師だけだ。
「あ、おはようござ……」
「ウラァァァァァァ……!!」
私が挨拶を終えるまでに、彼の姿は見えなくなった。
現在時刻は9時37分……彼は遅刻確定だ。私も、だけど…今更急ぐ気は無い。どうせいつもと変わらないのだから……
10時21分―――
私は教室には行かず、そのまま部室棟へ向かう。その一番奥、名目上"新聞部"の部室が私の居場所だった。
鍵を開け使い慣れたソファーに寝そべると、私は外の景色を眺めた。
外は雲一つ無い良い天気だった。
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05/03 15:41 W62H(e) [19]ラルド
17
「っぷ……あははは…」
思わず笑が溢れてしまう。
「あ、ごめんなさい。別にコーラが嫌な訳でも貴女が気に食わない訳でもないの、ホントにごめんなさい。」
いきなり笑いだした私を見てベルネはポカンとなっている。
「あ、そうだ!貴女も家に来ない?そろそろ良い時間だし」
オルガの腕時計はそろそろ12時を指そうとしている。
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05/03 18:53 Android() [20]まぼだき
19
「家に来ない?」何てこれまで言われたことなかった。そのせいか気分が上々になってしまう。
「うん!行く行」
「ベルネ」
聞き覚えのある声がした。
声がした方向に首を向けると、そこには真新しい高等部の制服を着た銀髪の女子生徒がいた。彼女はベルネといた女子生徒に一礼して、ベルネに向き直った。
「あは、あははシェロさん何でここに」
血の気が一気に引いたのをベルネは嫌という程自覚した。
「巫女様の命令」
「何でですか・・・」
「あの人は何を考えてるのか、私にも分からない。それじゃ私行くから」
「あ、ハイさようなら」
シェロと呼ばれた女子生徒は真っ直ぐ校門に向かって歩いて行った。
ベルネは息を思いっきり吐き出してぼやいた。
「・・・うは~ん、何であの人がこんな辺鄙な所にいるの~」
[21]ラルド
20
「ベルネ」
「!?」
オルガは突然聞こえたベルネを呼ぶ声にビックリした。
声のした方を向くと一人の女生徒?がいた。
ベルネの知り合いみたいだが何か様子がおかしい。
明らかにベルネが怯えている。
それに、彼女からは人間の暖かみが感じられない。
「ベルネ…今の人、何?」
シェロと呼ばれた女性が居なくなるとオルガはベルネに訪ねる。
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05/05 22:24 Android() [22]まぼだき
入学式が終わって僕は部活勧誘の嵐に晒されていた。もちろん上級生の部活勧誘はしつこいものが多い。運動部なんてもってのほかだ。
部活勧誘のビラを貰って、その後ごみ箱にまとめて捨てる。勧誘ビラの内容に関心が無かったから僕にとってはただの紙屑だった。
束のままごみ箱に落としてその場を離れようとしたとき、誰かに衿を引っ張られて一瞬呼吸ができなかった。
振り返ると白を基調とした警備服を着た金髪の女の子がいた。その顔には怒っているような表情が浮かび、眉は釣り上がっていて僕に対して腹を立てているようだ。
「何か用」
女の子は何かを言おうとしたが直ぐに口を閉じてしまった。そしてごみ箱の中を指差した。
「別にいいだろゴミなんだし」
『ゴミの分別も出来ないのか根暗野郎』
・・・今どこから声がしたんだろう。
『なんだ新入生か。なら我のことは知らないな?』
いつの間にか女の子はスピーカーを持っていた。どうやらスピーカーを介して喋っているらしい・・・・・・どういうことだよ。
『我のことはさて起き、お前は普通科1年C組の野鹿貴也だな。ペットボトル専用のごみ箱によく紙屑が捨てられるな』
「あ、これペットボトル専用だったのか知らなかった」
『黄色のごみ箱はペットボトル専用だしっかり覚えとけ』
そう言って女の子は帽子を風で吹き飛ばされそうになりながら去っていった。
「・・・一体なんだったんだ」
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05/05 22:30 W61SH(e) [23]まぼだき
21
隣の子が心配そうに声をかけてくれたおかげで何とか正気に戻ることができた。本当に苦手だ、あの人。
「うん、ちょっとした知り合い・・・ってアタシ自己紹介したっけ?」
何故アタシの名前を知っているのだろうか・・・もしかしてプライベートつつ抜け?
「まぁいいや!改めまして、アタシは中等部機械学科3年A組のベルネ=T=グランシュカーだよ。皆と制服ちょっと違うけど、これは学校公認なのです!」
えへん、と胸を張ってみる。ねぇ今どんな気持ち?
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05/05 22:38 W61SH(e) [24]ラルド
23
「私は普通科3年のオルガ・ナイトウイング。宜しくね。」
私は挨拶を返す。
「貴女、普通科ではかなり有名人よ?戦車登校だし、制服違うし、かなり人目を引くし…」
実際間近で彼女を見てかなり綺麗な人だと思う。おそらくオルガの知り合いの中でもトップクラスだろう。
「まぁ、立ち話もなんだし、そろそろ行こうか?」
時刻は12時を過ぎている。
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05/06 11:15 Android() [25]まぼだき
24
「アタシそんなに有名人だとは思わなかったよ」
オルガに催促されてアタシはティーガーによじ登って操縦席のハッチを開ける。操縦席に座ろうとしたところで、オルガだけ歩かせるのは悪いと思った。
席に余裕はある。
もともとティーガーは5人乗りだ。とりあえずスペースが広めの無線室に乗ってもらうか。
「ねぇ、乗ってかない?道は教えてくれれば行けると思うから」
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05/06 12:57 W61SH(e) [26]零
11
12時30分
吉山国際学園 F1 食堂
疲れた…
全身が怠く重い、椅子まで果てしなく遠く感じる。
まるで鉄アレイでも引きずっているような。
そんな錯覚に陥りながら私はようやく椅子にたどり着いた。
「はぅ~……」
「ずいぶんお疲れだな」
「部活勧誘しつこいよぉ~」
「そりゃ、どの部活も新入部員集めに必死だからな」
この時期、ほとんどの部活は活動をないがしろにし部員勧誘に人員を割く、理由はいたって普通、優秀な人材を勝ち取るため、かわいいマネージャーを手に入れるため、廃部を逃れるため。
特に最後の廃部を逃れるために活動している部はしつこかった、確かにわからないでもないが…。
「で、お前はどの部活に入るんだ?」
「まだ決めてない、でも陸上部か剣道部が候補かな」
「得意分野か」
「うん、この2つは自信あるからね!!」
「まぁ、いいが他の部はいいのか?、たくさんチラシもらってるみたいだが」
「うん、いろいろあるみたいだけど…」
「だけど?」
もらったチラシをめくっていく。
柔道部、剣道部、野球部、陸上部、サッカー部。
最初はいたって普通、ありふれた定番の部活ばかり、だが…
「なんだこれ…」
心霊研究部、魔術部、麻雀部、SOS団、お伽銀行、リトルバスターズ…etc
「最後のは部活なのか…」
「わかんないけど楽しそうな人達だったよ」
「そうか…」
「うん♪」
「なんか他にまともな部活はねーのか?」
ラルフがチラシを広げ何かないかと探していると1枚のチラシが床に落ちた。
「ラルフ、チラシ落ちたよ」
私がチラシを拾おうとしたその時、一瞬日光が遮られたと思うと稲妻の如き轟音が食堂に響いた。
「えっ!!なになに!?」
窓がガタガタ揺れ、机の上の飲み物が波立つ。
私は窓の外を見たがそれは既に遥か彼方へ行ってしまった。
私は再びチラシに手を伸ばし、その内容に目を通してみた。
【戦術部】
才能ある貴方をお待ちしてます、興味がある方はぜひ部室まで!!
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05/06 22:20 H001(e) [27]まぼだき
20
まさかあの子ベルネがこの学園に通っているなんて全然知らなかった。しかしあの子、何故私にあんなに怯えていたんだろう。
イヴァの神殿で引き取っていたときに勉強を教えていただけなのに。避けられる理由が分からない。
そういえばベルネと一緒にいた子、誰かに似ていた様な・・・。名前が出てこない。だが別の連中を思い出した。
かつて砲火を交え、共に戦った連中。
「まさかアイツらの内の誰かの子供?」
どうやらまたアイツらと関わらなくてはいけないようだ。今ではすっかりいい年した大人になっているに違いない。永遠に朽ちることのない身体を持つ私に取って、アイツらの『老い』に羨ましすぎるものだ。
『16歳の小柄な少女』という身体に縛られるのが周りを見ていて苦痛になってきていた。
ヨシヤマ重工業の試作機として生まれ、月面都市連合の尖兵として戦い、今ではイヴァの身の回りの世話係となっている。しかしそれでも戦う技術は劣ることなく、逆に洗練されてしまった。
「ルミークさん」
声をかけられて振り向いた先にはクラスメートの野鹿くんがいた。
「なに野鹿くん」
「そこ僕の部屋なんだけど・・・」
本当だ。私の部屋は隣だった。
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05/06 23:58 W61SH(e) [28]DD
18
珍しく私は今、部室のソファーに座っていた。原因は一つ…それは、向かい側の席で熱弁を振るう教師のせいだった。
―――約20分前
今日ほど面倒な日はあまり無い。というのも、どうやって嗅ぎ付けたのか新入生を名乗る生徒達がこの部屋に押し掛けて来るからだ。
確かにこの部屋は"新聞部"の部室になっている、しかしそれは名目上に過ぎない。実際、去年も大した活動はしていないし部員の募集もしていない。
にも関わらず、人が訪れる。最初はそういった旨を説明して追い返していたのだがだんだん面倒になってきた私は、部室にあったハンドガンを持ち出した。勿論、対人射撃訓練用の非殺傷仕様だ。
あとは、部屋の扉が開いた瞬間にこいつをぶっ放す。新入生は耐性が無いから、それだけで逃げ帰る。たまに逃げ出さない生徒もいるが、ソイツらは腕や足に直撃弾を撃ち込んでやれば、十中八九逃げ出す。
咄嗟の思い付きにしては上々の結果を出せていたと思う。
「入るよ……っ!?」
ただ誤算だったのは、新聞部顧問を名乗る新人教師に向けて発砲してしまった事だった。
「……という訳なんだけど?」
「………」
「あの…城崎さん、聞いてる?」
「ちゃんと聞いてます。要は、もっと積極的に活動しろって事ですよね?」
「そういう事」
新堂と名乗った教師は当事者の私以上に熱心だった。明らかに厄介事を押し付けられたにも関わらず―――
「…って事だから、ハイ」
そう言って彼は、鞄から大量の紙束を取り出し、テーブルの上に並べて載せる。
「あの…コレは?」
「勿論、勧誘用のチラシだよ。今からでも行動しないと…」
「え…と、私が…ですか?」
「当たり前じゃないか!僕も手伝ってあげたいけど、これから職員会議だから」
「はぁ…」
「それじゃあ、城崎さん頑張って!!」
それだけ言い残し、彼は部屋から出て行った。残されたのは、精神的に疲労した私と圧倒的存在感を持つチラシの束だけだ。その一枚を手に取り、サッと流し読む。
「手が込みすぎ……」
それが感想だった。
「はぁ…面倒な事になったなぁ…」
両手に可燃ゴミを抱え、私は窓辺に立っていた。
そして―――
「ここが三階で良かった」
中庭にソレをぶちまけた。
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05/07 01:18 W62H(e) [29]ラルド
25
「え!?乗って良いの?」
まさか戦車に乗れるなんて思ってもいなかったオルガは思わずベルネの手を掴んでしまう。
「あっ……ごめんなさい私ったら」
オルガ自身も自分の行動にあたふたしてしまう。
「えっと…道は結構簡単で…」
オルガとベルネは戦車に乗るとナイトウイング邸へと向かった。
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05/07 12:47 Android() [30]ラルド
4月8日午前12時20分
「オルガ、遅いわね」
キッチンで昼食の準備をしていたアイーシャが玄関の方を見て呟く。
「なに、心配いらないさ。大方、友達とでも喋ってるんだろう。」
ガネルはパソコンから顔を離すと、紅茶を啜る。
「そういえばアイーシャ、いったい誰を呼んだんだ?いい加減に教えてくれても良いんじゃないか?」
「えっとね~…一応ジークリンデさんとその娘さんをよんであるけど、追加で勝手に誘って良いですって言ってあるから増えるかもしれないわね。」
この二人、元は軍人で先の大戦で戦術機兵として最前線で戦っていた人物である。
二人とも既に30歳を越えているが、見た目は20代にしか見えない。
「案外オルガも誰か連れて帰ってくるんじゃないか?」
「かもしれないわね。」
二人して親バカっぷりを発揮していると不意に地面が微かに震動し始める。
「なんだ、地震か!?」
「あなた、これってもしかして……」
「「戦車?」」
軍人とは恐ろしいものである。
音と震動から有力な情報を瞬時に割り出す。
勿論それに対しての対応速度もこの二人は速すぎる。
「「!?」」
ガネルとアイーシャはそれぞれに武器を手に外へ出ると、思わずポカンとしてしまった。
「あ、お父さんお母さん、ただいま!」
だってそうだろう?
娘が戦車で帰ってきたら。
[31]まぼだき
学園警備の為に配備されたDE-KOY甲型と乙型は双子の姉妹機ということになる。私と私の助手ができる限り非殺傷能力を搭載するのに全力を尽くした『娘』たちは総勢201体。
その内一体が甲型、残りが乙型だ。残念ながら甲型は複雑で難しい演算回路、つまり私がコピー生産されないようにちょっとした細工を施したから量産は不可能だ。ライセンスも私だけ。
乙型は助手の安達が手掛けてくれたが奴は自分の趣味に走ってしまい、メイド型というヨシヤマ重工業始まって以来の・・・ 『オタク』受けがいい警備アンドロイドを作り出した。
「主任が好きにしろって言ったんじゃないてすか!」
と彼は喚き立てていたが、確かに装備観点は私が指定が外装や人格設定では特に何も言わなかった。
しかし外装はともかくさすが私の助手と言うべきか、見事に甲型の全面サポート及び単独警備行動に特化していた。
だが私の『娘』は、反面堅苦しいというかどうにも気難しい性格になってしまった。世間一般の、思春期の娘を持つ父親たちの気持ちが痛い程分かるようになった。
強がっているのか一人称が「我」だ。本当は一人称を普通の少女のようにしたいのだろうが、自分に与えられた役割の為にあぁいう言い方をせざるをえないのだろう。
だからこそ『リリアン』という名前を付けたのだが・・・ どうも本人は余り気に入ってはいないようだ。もっと可愛らしい名前が良かったのだろうか、それともカッコイイ名前が良かったのだろうか。
おっと、そろそろ昼飯時だな。
久々に学食で『チーズ唐揚げ丼』でも食べようか。
「金子先生ー!」
中等部の生徒が数人、廊下を歩いていたところを呼び止めた。
「何ですか」
「今から一緒に学食行きましょう!」
「いいですよ。ちょうど私も学食に行くところでしたから」
金子隆、ここ吉山国際学園機械科の一教師としての私の名前だ。
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最終更新:2011年06月14日 23:21