【歌う者】
「ゆっくりー♪ まったりー♪ みんなだいすきゆっくりのひー♪」
道端に響く歌声。通り行く人は雑音に舌打ちして、何も見なかったように過ぎ去る。
「ゆうう……みんなゆっくりしてないよ……」
れいむはそう呟いて、近くに置いた空き缶を覗き込む。飴玉が一粒だけ入っていた。
「お金さんがないよ。これじゃあごはんもらえないよ……」
飴玉を口に含み、れいむはその場を去った。
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次の日も、その次の日もお金はもらえなかった。れいむは街に住むゆっくりである。木の実も昆虫も皆無な環境のなか、食料調達の方法といえば、ごみを漁るか人間にもらうくらいしかない。が、ごみを漁れば怒った人間に駆除される。汚い野良ゆっくりに餌を与える奇特な人間もいない。
だから、れいむにできることといえば、歌を唄ってお金をもらい、自分で買うしかなかった。
スーパーやデパートは入り口で門前払いを喰らうが、駄菓子屋を営む老人などは比較的にゆっくりに優しいのを、れいむは知っていた。なにより、栄養豊富なお菓子を安価で買えるのだ。人間が気まぐれで投げた五十円で、数日をしのげるのである。
だから、れいむは歌う。来る日も来る日も、この場所で。
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「うぃーうぃーるうぃーうぃーるろっくゆー。うぃーうぃーるうぃーうぃーるろっくゆー。ばでぃあまぽーまんびっくのいず……」
れいむは高らかに歌う。天使の美声、ゆっくり最高の歌声と呼ばれるそれは、今や世に知らぬ人はいないとされるほどの有名ぶりだった。 れいむは語る。
「ろっくはたましい。りくつじゃない。おんがくはすべてをすくう」
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「ゆぴ……ぼ……うぃ……ろっく……」
雨の日の翌日、俺は道端に俯くれいむを見た。何事かをわめく姿はまさに畜生。俺は近くに転がっていた空き缶をれいむの頭に置き、手に思い切り力を入れた。
一瞬で、れいむはぐずぐずの塊になった。
空っぽの缶は、れいむの頭の中身を表していた。
完
最終更新:2012年04月01日 13:23