「アムロ兄さんなんてこっち見もしないで『今忙しいんだ!』って」
俺は自分の部屋でベッドに座っていた。
「キラ兄さんとシーブック兄さんは出かけちゃってて居ないし」
隣には憤慨した様子で喋るウッソが居る。
「シロー兄さんとロラン兄さんまで『アルにも自分で解決させるようにしてるんだから。』って」
どうやら宿題のことで困っていたのに、皆が相手をしてくれなかったらしい。
「ジュドーにガロード・ドモン兄さんは話にならないし」
きっとタイミングが悪かったんだろうな。
「コウ兄さん寝ちゃってて起きないし」
それで最後に俺のところにきて、愚痴ってるわけだ。
「アルは…ってそうだよ!アルのためには
家族会議までしたのに…僕のことはどうでもいいんだ…!!」
そう言ってふて腐れきっている。
いつもはしっかりしてるウッソがだ。珍しい…。珍しいからと面白がっていては悪いから
「ウッソ、そんなことないよ。」と慰めようとしたのだが
「そんなことなくないですよ!僕、可愛げが無いから…!」と一蹴されてしまった。
仕方ないな…。
「おい、じゃあなんだ?俺はシーブックやロランと違って可愛げが無いから、可愛がられてなかったと思うか?
俺の可愛げの無さはなぁ、お前なんてもんじゃなかったぞ?」
自分で言っていて自分が可愛そうになるようなセリフだったがそれが効いたらしく
「それで…いじけませんでした?」と、哀れむような顔をして聞いてきた。
「いじけたよ、そりゃ。ロランは良い子の見本みたいだし、シーブックはいたずらっ子だったけど愛嬌があって…
2人とも誰にでも愛されるタイプだった。でも俺は容量悪くてね…
可愛がられたいとは思っていても、甘えられなかったんだよ……
ウッソにそんな話をしていたら、12歳の
夏祭りの記憶が蘇ってきた
たしかシーブックがお面が欲しいって騒ぎはじめて
アムロ兄さんは「もう12歳なのにお面なんて恥ずかしくないのか?」なんて苦笑いしつつも買ってあげた
そしたらロランが「僕も欲しいな」って言って買ってもらって…
俺も本当は欲しかったんだけど、恥ずかしくて「僕も、」の一言が出なかった
そしたらなんだかつまんなくなっちゃって、1人で家に帰ったんだ…
あれ、その後どうしたんだっけ…
あ、そうだ、帰ってきたドモン兄さんが黙ってお面をくれたんだ
しかも欲しかったやつでさ…嬉しかったなぁ
シーブックだって綿あめ買ってきてくれたし、ロランも的屋でとったガラスの玩具くれたし…
何でもないことなのに、泣きそうになっちゃったっけ
今思えば、あれってスネて帰った俺に気を使ってくれたのかな?
それにしても、あのドモン兄さんまでねぇ…。
そう思うとおかしくて、少しうれしくて、クスっと笑ってしまった。
ウッソが不思議そうな顔をして、俺を見ている。
「素直に甘えられなくてもさ、ちゃんとわかってくれる人は居るさ、ちゃんとな…。」
そう言いながら、ウッソの髪を撫でてやった。
そういえばこんな風にウッソと2人きりで話すのは初めてだ。弟の頭を撫でるなんてことも、無かったよな…。
そのままゆっくりウッソの髪を撫で続けた。
「そう、ですね…。」ウッソは少し微笑んで目をつぶり、頭なでられたの久しぶりだ…と言いながら、寄りかかってきた。
俺はその重みを心地よく感じながら、甘えられるのと甘えるのって似てるな。なんて事を思った。
その後、俺の膝の上に頭をのせ寝てしまったウッソをベッドまで運んだ。
部屋にはさっき帰ってきたらしいキラがいて、俺がウッソを運んできたのを見て驚いて、そのあと微笑んだ。
そんなにガラじゃなかったかな。
ちなみにウッソが困っていた宿題というのは、どうも絵だったらしい。
13歳にしても、あまり上手くない部類に入りそうな絵が机の上に広げられていた。
何度も描き直したらしく紙が少しボロくなっていた。
アルも絵が下手だけど、変なところが似てるんだな、と変な感心をした。
そのあと、キラも手伝ってくれて完成した絵の横には、メモを添えておいた。
次からは最後まで自分でやるように。
でもアドバイスはするから、聞きに来いよ。 カミーユ
最終更新:2017年06月15日 20:07