197 名前:ガンダムファイト :2009/09/24(木) 13:17:33 ID:???
「え?そーなんだ。一緒に行けないのは残念だけど……いやいや、アイナが謝る必要なんてないよ。
うん、わかった。大丈夫だって、他に行く人を探すよ。それじゃ、また連絡するから」
通話が終わるとシロー=アマダは携帯電話を持ったまま、しばし考えこんだ。
今夜は勤務明けに恋人のアイナ=サハリンとデートの約束していたのに、たった今ドタキャンされたからだ。

普段から病弱気味であるアイナの兄、ギニアスが何度目かの発作を起こして再度入院することになったから
その為に今夜はデートどころではない。という理由だったから、シローも納得せざる得なかった。
さて、誰と行こうか?シローは今夜、行われるガンダムファイト・シャイニングシリーズのチケットを取り出した。

チケットは弟のドモンから貰った関係者用の特等席、独りで観戦するには勿体ない代物だったのだが
シローが真っ先に考えた職場、警察署内だと同じ8課の仲間達は交代勤務でこれから勤務の者だったり
待機中の者だったり、いますぐに暇そうな人間は見あたらなかった。

「暇そうなヒト……警視正はいつも風呂に入ったり、刹那達とガンダム談義したり
けっこう暇そうなんだけど、やっぱりプライベートで俺の方から誘うのは気が引けるなあ。そもそも階級が違い過ぎるし
アリー刑事は……や、止めておこう。嫌な予感がする。ギャバン巡査部長は……勤務中と、いざという時にはなかなか居ないもんだな」

職場関係での選択を諦めたシローは一番気楽な身内、兄弟の長男、アムロに連絡を入れることにした。
「ああ、兄さん、実は(中略)という訳で、今夜のガンダムファイト一緒に見に行けないかな?
……はぁ、そうね、そっちも忙しいよね。いや、無理いってごめん。(中略)え?いや、そんな、いいって
俺はそんな事、頼んでないって!はぁ、話してみたら相手はすごく喜んでいる?そっか、それじゃ、断れないかぁ」

アムロ兄さんの無駄なお節介が炸裂したおかげで、シローは今夜の観戦相手を確保できてしまった。
アムロの勤める会社の受け付け嬢が、ガンダムファイトのファンらしいという情報を事前にチェック済みだったアムロが
シローの意志とは無関係にその娘を誘い、今夜の話を振るとこれが大乗り気で
二つ返事でオーケーを出し、既にガンダムファイトを見る気マンマンらしい、というセッティングが既になされていた。

まったくアムロ兄さんは女性の事にかけてはどんな些細な情報でも逃さないんだな、と妙に納得しながらも
どんな娘を誘ったのか?聞きそびれたために事前情報がなにも無いまま、不安を覚えつつも
シローはガンダムファイトの会場へと急いだ。

198 名前:ガンダムファイト :2009/09/24(木) 13:19:26 ID:???
「アナタがシロー=アマダさんですね。どうも、私はミユ=タキザワ。二十歳です!今夜はお誘いありがとうございます」
目の前でかわいく敬礼ポーズをとっているこの娘が、どうやらアムロ兄さんがセッティングした相手らしいとわかった。

「あ、どうも、シロー=アマダです」
職業病なのだろう、敬礼には敬礼で反射的に返してしまうシローとミユの二人は
会場前でぎこちない挨拶を交わした後、入場ゲートへと歩きだした。

「アムロ部長から話しを伺った時は、驚きましたけど、そーですよね。よく考えなくても
あのキング・オブ・ハート!ドモン=カッシュが兄弟ですから、観戦しほーだいですよね。いいなー」
「あ、シローさんを見つけられたのは、私がアムロ部長から画像データを貰っていたからで……」

「そうですね、私はけっこう最近になってガンダムファイトに嵌ったクチで、テレビ中継とかは見てましたけど
生観戦は今日が初です!で、キッカケはソーマ=ピーリスですよ!最初はガンダムファイト自体まったく興味がなかったんですけど
ほら、彼女の場合、精肉店で働いていた素人がガンダムファイターとして今、リングで闘っていて
歳も私と近い女の子が頑張ってるんだな~と思ったら急に親近感が沸いてきて、それからですね」

シローが聞いてもいないのに、ミユは自分がどれだけガンダムファイトが好きなのか
お気に入りの選手は誰か、等、矢継ぎ早に語りだしたら止まらない状態になり、シローは相づちを打つので精一杯だった。
初観戦でテンションが上がっているのだろう。ミユの顔は赤みを帯びて、額にはうっすらと汗をかいている。

場内に入ると客席から人の熱気が籠もり、少し熱く感じるほどだった。
「わーここが会場ですか、人、いっぱい入ってますね。すごい!すごいですよ!はぁ~中はすこし暑いですね」
さきほどからハイテンション状態のミユ=タキザワは上着を脱いでノースリーブ姿になる。

初見からグットルッキング、グットプロポーションなのはわかっていたものの
薄着になると更にもっと、クッキリ、ハッキリと……アムロ兄さんがチェックしてる娘だけあるな、流石、兄さんグッジョブ!
いやいや、何を血迷ってるんだ俺。俺にはアイナが……アイナが、アイナが、アイナが、アイナが。
と、
シローの密かな葛藤などは気にも留めず、無邪気におっぱいを揺らしながら、今夜の試合に出る選手のことやら
対戦カードの見所などを興奮気味に語るミユ=タキザワであった。

199 名前:ガンダムファイト :2009/09/24(木) 13:22:33 ID:???
「今夜はソーマ=ピーリス対ドモン=カッシュがあるんですよね!MFを使わない生身で戦うエキシビジョン・マッチですけど
目玉カードだから、これを生で観戦できるなんて、本当にありがとうございます。シローさん」
「いや、別にいいよ。チケット余っていたから、こっちこそ、試合が好きな人を誘えて……」
「あっ!始まりますよ!」

場内の照明が消えて、派手なオープニングが始まる。選手が顔見せにぞくぞくと入場してくる度に
シローの隣に座るミユ=タキザワは立ち上がり、騒いでいた。
ミユが立ち上がる度に、彼女の胸が上下左右にユサユサ揺れて、それはノースリーブ越しにもハッキリとわかる形だった。
目のやり場に困るシローではあったが、ついつい見てしまうのも男としての性だ。

これは仕方ない。俺が悪いんじゃない、不可抗力だ。でも、ま、見ても減るもんじゃないし……いやいや、盗み見は不味いな
と、自答自問するシローのことなどまったく気にかけず、ミユは独りで喋りまっている。

「ソーマ=ピーリスには【殺し】がある!って週間ガンダムファイトの井上編集長がコラムで書いてあったんですよ。
井上編集長の【殺し】って何を指してるのか?私にはわからないですけど、公園に住む青鬼とか赤鬼とか……
まったくチンプンカンプンです。ま、平成のデルフィンには理解できないって事ですかね、はぅ」
シローには理解不能なI言語を用いた喫茶店トークをミユ=タキザワがしているうちに、時間は経ち
今夜の目玉カードであるソーマ=ピーリス対ドモン=カッシュのエキシビジョン・マッチが始まろうとしていた。

200 名前:ガンダムファイト :2009/09/24(木) 13:25:50 ID:???
「さあ、ガンダムファイト!いよいよ注目の第7試合、生身と生身がぶつかり合うエキシビジョン・マッチの開始です!!
まずは青コーナー!!ロシアの秘密兵器、超兵!ソーマ=ピーリスの入場!!」
コスチュームに着替えたソーマを先頭に後ろに続くセコンドの男達が続く。
スレンダーな身体のソーマの後ろに、ごつい男達がピタリと張り付いて花道を歩いている姿は
シローには滑稽に見えたが、ミユ=タキザワには違って見えたらしい。

「うわーソーマの後ろ、セルゲイ=スミルノフとアルゴ=ガルスキーですよ!あ、ヴォルク=ハンもいた!
人革連繋がりなのかな?ロシアン・トップ・チームですね、あっ、こっち、前を通る。ソーマ!ソーマ!ソーマ!」
ミユはテンションMAX状態で席を立ち上がり、ピョンピョンと立ち上がり、ソーマの名前を連呼する。

シロー達の座る関係者席で、ここまで派手に騒ぐ者は他にいないから、余計目立っていた。
「少し、落ち着こうよ、ねえ」
なだめるシローとは反対にますますテンションの上がるミユだった。
「なんで?目の前にソーマがいるんですよ!これが、あっ、こっち見たワー!!ソーマ!ソーマ!頑張れ!!」
「わっ!ちょっと、ミユさん!?」
ソーマがリングに入ると、ミユは急に大人しくなりシローの腕にしがみついて、ジッと座り込んでしまった。

大人しくなってくれたのはいいけど……この姿勢は、ち、乳が腕に当たってるんですけど……ミユさん!?
シローの動揺とは関係なく、力強く腕を掴んだまま放さないミユだった。

「迎え撃つ王者の風は今夜も赤く燃えているのか?赤コーナーからキング・オブ・ハート、ドモン=カッシュ入場!!」
普段とは違う、緊張した顔のドモンとレインの二人が花道を歩く。
一方、客席では試合開始が近くなるにつれて、ミユとシローの密着度が増していた。
ガンダムファイト初観戦、会場の熱気、ソーマ対ドモンの試合のミユにとっては夢のカードを目の前で見られること
そのどれも全てがミユを夢中にさせていた。

試合のゴングが鳴る瞬間まで、シローの腕を掴むというよりも、身体ごとシローにしがみつくような姿勢で
踏ん張っていたのも彼女の無意識からくるモノであったが、シローにしてみれば若くグラマラスな女性がグイグイ身体を
押しつけてくるのは、なんとも気持ちいい……いやいや、かなり困ったことになっていた。

つづく。



203 名前:通常の名無しさんの3倍 :2009/09/24(木) 14:35:07 ID:???
一瞬ソーマが何に乗って戦うのかと思ったけど生身かw


206 名前:ガンダムファイト :2009/09/24(木) 16:12:34 ID:???
リング上ではドモンとソーマの二人が向かい合いながら、レフリーの最終確認を聞いている。
「ソーマ=ピーリス、この試合、エキシビジョンだが俺は本気で行く!おまえも本気で来い!」
「了解した。キング・オブ・ハート、いや、ドモン=カッシュ!私も本気で行きます!」

「ガンダムファイト~ォレディィィゴゥ!!」

試合開始のゴングが鳴った。本来のガンダムファイトとは違い生身同士の戦いになるが
それが逆に拳と拳のぶつかり合い、スリリングな面を際だたせていたし
ソーマ=ピーリスはガンダムファイト数戦目の新人ではあるが、選手間、ファンともに注目選手であり
秒殺デビューという鮮烈な印象から業界内外から期待がかかっていた。

ソーマのような旬な選手と、業界トップのドモン=カッシュがエキシビジョンとはいえ
対戦するカードは、にわかファンだと自称していたミユ=タキザワでなくとも
ガンダムファイトが好きな者にとって、見逃せないカードだったから
試合が始まると客席から地鳴りのような声援が飛び交い、熱狂の渦と化した。

「ドモン!これはエキシビジョンよ!リキみ過ぎないで、リラックスよ、リラックス!」
セコンドのレインが熱くなっているドモンを制する。
「わかってる」言い終わる前に、ソーマのミドルキックを見切って間合いをとるドモン。

ソーマ=ピーリス、超兵か。なかなかやる、今の打撃も良かった。だが……まだまだ
目の前の相手と戦いながらも余裕が生まれたドモンは、別のことも考えだす
そうえいば、今日はシロー兄さんとアイナさんが客席に来てる筈だったな
確か、南側の、ええと……ドモンは渡したチケットの座席番号を目で追いながら、ソーマの攻撃をさばいていく。

あ、シロー兄さんだ!……む?あ、の、隣の女性は誰だ!?
何故アイナさんじゃない?しかも公衆の面前でイチャイチャと腕を組んで身体を寄せ合っているだと!?
シロー兄さん、嘘だよな?そんなのぜんぜん、兄さんらしくない……エ、アッ。

ドモンの視界が途切れて、真っ暗になった。

207 名前:ガンダムファイト :2009/09/24(木) 16:14:55 ID:???
「ダウン!ワン!ツー!スリー!……」

「ドモン!立って!!ドモン!!」
レインの声が聞こえてくると同時に、リングに横たわっている自分自身に気づいたドモンは
カウントがファイブになる前に立ち上がり、ファイティングポーズをレフリーに示す。

場内の大歓声に混じりレインの声が聞こえてきた。
「ドモン、エキシビジョンだからって気を抜きすぎ!試合に集中して!集中よ!」

「さっきはリキむな、こんどは集中しろ、か、まったくどっちなんだよ、レイン
だが、しかし、不意を突かれたとはいえ、良いのを一発もらったんだ。覚悟しろよ!ソーマ=ピーリス!」
以後、ドモンの反撃が始まるも、暫くして試合は終わった。

エキシビジョン・マッチなので元々、勝敗はつかないモノだが
【ドモンから最初にダウンを奪ったソーマが格闘技的には勝ち】と、この試合を伝えた
週間ガンダムファイトの記事に書いてあるとおり、ソーマの放ったハイキックが
ドモンを捕らえてダウンを奪った事実はファンや関係者に強烈な印象を残す事となる。

208 名前:ガンダムファイト :2009/09/24(木) 16:20:06 ID:???
全試合終了後、シローとミユ=タキザワの二人はマスコミ用インタビュールームの前を通り
関係者選手控え室前に立っていた。
ドモンからバックステージパスを貰っていたシローは、弟に挨拶するつもりで立ち寄ったのだが
ミーハー気質全開のミユは周囲をキョロキョロ見回しては終始、興奮しぱなしだった。

「今日は、本当に凄かったですね!ソーマのハイキックがこうズバババッと……あ、ソーマだ!
ソーマ選手、ソーマ選手、えと、今日の試合、良かったです。あの握手して貰えませんか?」

インタビュールームでの取材を終えて、控え室に戻るソーマをミユは強引に引き留め
握手とサインまで貰っている。バイタリティあふれる女性だ、とシローはある種の好感を持ったのもつかの間
「シロー兄さん!!アンタって人はああああ!!!」との怒声がインタビュールームに響き渡ると
マスコミからの取材を受けていたドモンが記者達を押しのけ、シローとミユの前に詰め寄った。

「しぃ、シロー兄さん!!お、俺に説明しろ!こ、こ、この女は何だ!?アイナさんはどうした?」
ドモンに胸ぐらを捕まれたシローは弟の只ならぬ迫力に気圧されて、言葉を濁していると
「シローさん、最低ね。ドモンから話は聞いたわ!アイナさんと添い遂げるとか……それは口だけだったんでしょう。
やっぱりあなたもアノ兄弟の血が流れているのね。貴方たち兄弟は独りの女性だけじゃ満足できないんだわ!」
レインが追い打ちをかける。

「え?何を、あ、えーと、彼女は……」
シローがアワアワしていると、すかさず、ミユがシローとドモン、レインの間に入り
「シローさんは何も悪くないんです。私が(ガンダムファイトが)好きだ、って知っていたから、誘ってくれただけで
別にヤマシイことしてませんし!あ、でも、弟のドモンさんが(他人がチケットを勝手に使ったから)怒るのは無理ないのカナ?」

「あの、ミユさん、そういう、いろいろな誤解を生む発言は……」
制するシローの言葉も聞かず
「なんだ兄さん!この人も好きなのか!?」
「ハイ、私は(ガンダムファイトは)大好きですよ!当たり前じゃないですか!じゃなきゃ、ここにはいません!」
「き、君は(兄さんとの関係が)本気なのか?」
「ええ、本気ですよ!(ガンダムファイトが)大好きです!」
焦るドモンに絶妙の追い打ちをかけるミユ=タキザワのやりとりは後に【好き大好き問答】として
全ての出来事、一語一句、やりとり全てが網羅されて、来月号の週間ガンダムファイトに掲載され、後世に残るのモノとなった。

209 名前:ガンダムファイト :2009/09/24(木) 16:25:06 ID:???
フラン「ふふ、良い見出しデキタ!!一面はこれで決まりね!」

翌日のノックス・クロニクル誌

キング・オブ・ハート、女性関係でお家騒動か!?

昨夜、ネオ武道館で行われたガンダムファイト・シャイニングシリーズの舞台裏で起きた悲劇。

ソーマ=ピーリスとのエキシビジョン・マッチを終えたドモン=カッシュ(20)は
試合後、マスコミ向けの取材を中断して、実兄であるAさん(24)仮名と人目を憚らずに
怒鳴り合いを続けていた。騒動の原因は実兄Aさん(24)の連れていた女性にあるらしい。

関係者談
「Aさん(24)には長年、交際を続けている女性がいるんですけどね……なにかあると、添い遂げる。添い遂げる。とか
ま、一種のノロケみたいなもんだと思っていましたよ。でも、今回のことでね
やっぱりAさん(24)も、あの兄弟の一員なのかと。正直、落胆が大きいですね。ああ、ドモンは大丈夫なのかしら?」

記者は取材を続けていくうちに、この兄弟の驚くべき破綻した人間関係の構図を手に入れたのであった。
そもそもこの家の長男が一夫多妻制を目論んでいるとの情報が入ったのだが……詳細は次号に続く!


カイ「芸能ゴシップが一面ってのが東スポ的なノリが俺は好かんが、うちの部数は落ちる一方だしなぁ。商売商売と
今回もアムロに泣いて貰うことにするか、フラン、この後追いの記事は?」
フラン「任せて下さい!あの兄弟はネタの宝庫です。叩けばいくらでもホコリはでます。、むしろ、いろんな方面からヒネリだせますよ!」
カイ「ま、そうだろうさ(アムロ、いつもスマン……)」

おしまい。

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最終更新:2014年03月19日 18:20