~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~     教師のハマーンは、休日を漁業区域で釣り糸を垂れて過ごすことが多くなっていた。
⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~    日頃の激務から解放されて、水平線をボーっと見ながら時間を潰すのが良いのだ。
~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~  決して、好みの男が釣れないから魚釣りで憂さ晴らしをしているわけではない。
~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒  
.      /⌒⌒丶   /|        若くて美人のハマーンに、釣り指導と称して下心アリアリで近づく香具師は何人でもいる。
     / ,/Wλ)  /  |        そんな彼らは全員突き落とされて魚の餌にされていた。
     く  ゝ `-ノ /            彼女の好みに合う男など、そうそう居るものではない。
     ノ⌒ ~⌒つ

(続く)


532 名前:太公望ハマーン その2投稿日:03/05/24 19:55 ID:???

~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~       「ここ、いいかい?」 ハマーンの横に釣り人が来た。
⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~      金髪のショートヘアで気の強そうな顔立ち、男性的な格好だが、若い女だ。
~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~    横で釣る彼女の手つきはつたない。ド素人丸出しだ。
~⌒~,,,,,~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒   えさは針につけられないし、つけても針をうまく水中に垂らせないし、
   /"",,,"ゝ   /    /⌒⌒丶.   /|  たまに魚がかかってもうまく引き寄せられず、逃げようと激しく動く魚に大騒ぎして、
  ( 彡_,ヾ、ゝ /    / ,/Wλ) /  |  周りに迷惑をかけてしまう。隣のハマーンの糸は彼女の糸に何度も絡みつかれていた。
   ''、 、.ノゞ´ /    く  ゝ `-ノ /     「俗物め…」 見かねたハマーンは彼女に釣りのやり方を教えてやった。
  _| ー,´_/ミ)     ノ⌒ ~⌒つ      礼を言った彼女は、ラーカイラム社勤務のケーラ・スゥだと名乗った。


~⌒魚 r'⌒⌒^'、~⌒~⌒~⌒~⌒~   ハマーンがケーラ・スゥに釣りの心得を講義していると、
~⌒┃(,(,(、r'ノ,rソ ~⌒/⌒\~⌒~    15メートルほど離れた水面から、原始的に素潜りで魚を取っていた少年達が顔を出した。
⌒~(3 ヾ ・∀・ノ∩ / ´・ω・)モキュ?⌒   御存知、ハマーン教室の問題児ジュドーと、地元の漁師でタマン※という黒人の少年だ。
~⌒~⌒~⌒~⌒~ U彡~⌒~⌒~   ハマーンはこの漁師の少年のことは一つも知らないが、ジュドーの友人なのはわかった。
⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~   ジュドーは教室では手に負えないアホたれだが、誰からも好かれている。
~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~    何よりも友人を大事にする性格だし、友人に上下関係をつけないからだ。
~⌒~,,,,,~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒   古い友人も新しい友人も、男も女も、金持ちも貧乏も、年齢差も関係ないし、
   /"",,,"ゝ   /    /⌒⌒丶.   /|  助けが必要そうなら東西南北どこだろうと行って、特に恩も着せないし見返りも求めない。
  ( 彡_,ヾ、ゝ /    / ,/Wλ)  /  |  偏見や世の中のしがらみからも自由に生きている。時には世間全てを敵に回すだろうが、
   ''、 、.ノゞ´ /    く  ゝ `-ノ /     彼はそれでもめげないだろう。ジュドーは見上げ果てた馬鹿だ、とハマーンは思う。
  _| ー,´_/ミ)     ノ⌒ ~⌒つ      

ジュドー「あ、ハマーン先生だ。おーい先生、そこから釣れるかーい?」
ハマーン「ジュドー、貴様のんきに遊んでいるが、宿題はやったのだろうな?」
ジュドー「おう、やってやったぜ!!」
ジュドーの答えには主語がない。果たして本当に自分が宿題をやったのやら。
ハマーン先生、ジュドーという人物は好きだが、問題児ぶりに対して指導のムチをゆるめるつもりはない。
ハマーン「その言葉に嘘があったら…覚悟は良いだろうな、ジュドー!」
ジュドーは答えなかったが、まるで「やれるもんならやってみな」とでも言うように尻を向けて潜っていった。

(続く)

541 名前:太公望ハマーン その4投稿日:03/05/26 00:43 ID:???
ジュドーが潜っていってしばらくたって、ハマーンは釣竿が重みを増したのを感じた。
釣り針に獲物がかかったのだ。手ごたえからすると大物なのは間違いない。

~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~        ケーラ「手伝おうか?」
⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~      ハマーン「頼む」
~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~     しゃくだったがハマーンはケーラと二人がかりで魚を引き寄せようとした。
~⌒~,,,,,~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒. /|    大物との引き合いは実際には十秒程度だった。
   /"",,,"ゝ       /⌒⌒丶  / |    突然、竿にかかる重さがなくなり、勢いでハマーンは後ろへ転がった。
  ( 彡_,ヾ、ゝ     / ,/Wλ) /  |   ハマーンの負けだ。せっかくの大物は仕掛けを食いちぎるしかして逃げたのだろう。
   ''、;дノゞ     く  ゝ `-ノ /  ■   リールで仕掛けを巻き上げると、黒い布のようなものがかかっていた。
  _| ー,´_/ミ)     ノ⌒ ~⌒つ      水泳パンツだ。持ち主は脱いで逃げたのだろう。


後日、ラーカイラム社。
ケーラ「その人さ、海パン握り締めながら「釣り逃した魚は大きいということか」って不気味に笑ってんだよ。
     なんだか怖くて、突っ込み入れられなかったよ」
アストナージ「どんな奴なんだよ」
ケーラ「何ていったかな。ハ……ハマ…ハマさんでいいや」
アムロ「おい、営業だったら名前を一回で覚えるのは鉄則だぞ」

(続く)


542 名前:太公望ハマーン 蛇足その1投稿日:03/05/26 00:53 ID:???
その3で登場したタマンはZZ第24話「南海に咲く兄弟愛」でのゲストキャラ。
金欲しさからネオジオンのアフリカ方面軍に現地徴用された漁師の少年で、
妹のアヌと二人暮らしというジュドー兄妹と似た境遇でした。
アヌは兄の危険な仕事を嫌がっており、ジュドーも自分のためにリィナを危険にあわせた負い目から、
自分の分身のようなタマンが戦争に身を投じるのを止めさせようとしました。
結果、ジュドーに説得され、漁師仲間がネオジオン兵に粛清されるのも見たタマンは、
乗機のカプールを捨て、妹のもとに帰ることを選びます。

本筋はこれで終わりです。あとは後日談をどうぞ。


543 名前:太公望ハマーン 蛇足その2・後日談投稿日:03/05/26 00:55 ID:???
ゼクス「ちょうど良かった、アムロさん家にお届け物ですよ」
アムロ「そうか、ありがとう」
アムロは家の前で運送のバイトのゼクスから包みを受け取った。

カミーユ「海パンがないから貸してくれって…お前のは何処にやったんだ。何でもっと早く言わないんだよ?!」
ジュドー「友達と漁業区域で潜ってたら、釣り針に引っかかってさぁ。息が苦しくなってきたから脱いで逃げたんだ」

     \
⌒~⌒~\⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~
       \
         \        ?!
          \   r'⌒⌒^'、          ∋<;;;)゚>
          (\\ (,(,(、r'ノ,rソ      ∋<;;<゚)
         ⊂二■( つ;・∀・ノ⊃━━∈  ∋<;;;)゚>

カミーユ「話の内容がとっぴ過ぎて、信じ難いな」
ジュドー「カミーユ兄ちゃんが信じなくても事実なんだよ!」
アムロ「ジュドー、こんなのが届いたぞ」
ジュドー「俺の海パンだ!ちゃんと洗ってある。ほら、言った通り、俺の海パンは釣り上げられてたんだよ」
カミーユ「…送った人にはお礼を言っておけよ」
ジュドー「おう、送り主は……」
ジュドーは硬直した。
カミーユがジュドーの握り締めているメッセージカードをひったくって読むと、覚えのある筆跡で、
「先日は楽しんだか?学校で会うのを楽しみにしている。 ハマーン・カーン
と書かれていた。
アムロ「ハマーン先生に会う約束だったのか?…何をやっていたんだか…」

兄たちの白い目を浴びつつもその場はやり過ごせたジュドーだったが、何処からその話は漏れたのか、
ジュドーはルー、エル、プル、プルツーのそれぞれに小一時間問い詰められたのだった。しかしそれはまた別の話。
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最終更新:2018年11月13日 23:34