834 名前:ハート・トゥ・ハート投稿日:05/02/01 16:20:07 ID:???
ロランがギンガナムの学費援助を受けて学校に通うようになって暫く経つ。
学校での成績は上位グループに位置し、赤服に手の届くところまできている。
今現在、兄弟一家の家事一般を仕切っているのはラーカイラム社の試作ロボット・キャプテンガンダムである。
「商品化されたら、ウチにも一台ほしいねぇ」
「いい食材を選んで買っていったキャプテンの眼光の鋭さ、ロランちゃんそっくりだよ」
「ロボットも飼い主に似るのかねぇ」
「いや……昔ロランちゃん以外にもあんな目つきをした人がいたんだよ……」


ここ最近、ギンガナムの姿を食卓で見かけない。
仕事の関係で、暫くは地球に降りてこれないらしい。
そのおかげでキラが朝食にありつけるのだが。
ドモンは遠征試合で地球圏を転戦している。
見慣れた面子が欠けていて少し寂しいが、平穏無事な日々が流れていた。
もっともそれは懲りない面子のミンチの上に成り立つものだったが。
そんなある日、アルが1枚のプリントを持ってきた。
「アムロ兄ちゃん、これ」
「参観日のお知らせか……◎月X日?駄目だ、この日は大事なプレゼンテーションがある。シロー、その日は非番か?」
「残念ながらその日は勤務中だ」
「ドモンも当分帰ってこれないしな……すまないアル、欠席するしかなさそうだ……」
「ちぇっ、仕方ないよな……」
もともとアルは参観日があまり好きではない。
他所の家と自分の家との違いを見せ付けられるから。
ロランが来た時はなぜかちょっぴり嬉しかったけど、学校に通うようになったからもう無理だ。
コウは暇がありそうだが……声すらかけてもらえなかった。

835 名前:ハート・トゥ・ハート投稿日:05/02/01 16:21:07 ID:???
参観日当日
ヒソヒソ…
ザワザワ…
「(あれアルん家のロボットだぜ……)」
「(プ)」
「(とうとうロボットが親代わりかよ!)」
参観日に出席できない家族の代わりに来たのはキャプテンガンダムだった。
アルは泣きたいのを必死で堪えた……

「どうして来たのさ!すっごく恥ずかしかったんだよ!」
「誰も出席できない以上、代わりに私が出向くのは適切な判断だ」
「だれも来てくれなんて頼んでないよ!」
「キャプテンになんて事言うんですか!」
「ロラン兄ちゃんはいつもキャプテンに守ってもらっているだけのくせに!」
「!」
険悪なムードの中、バーニィとアクシズ社製の試作ロボット──ザッパーザクが現れた。
「キャプテンガンダム、勝負だ!」

話はクリスマスイブの夜に遡る。
バーニィはクリスを誘い損ねて一人寂しく小さなケーキの前にいた。
「ザクウォーリアの扱いは難しすぎるし、今年中にガンダム相手に白星は付けられそうにないな……」
溜め息とロウソクの明かりが狭い部屋の中を支配する中、窓の外を見ると1機のワッパが飛んできた。
「あ、あなたは!」
「メリー・クリスマス!アクシズ社からのクリスマスプレゼントだ。受け取ってくれたまえ」
そのワッパは冷蔵庫位の大きさのコンテナを吊り下げており、こう書かれていた。
  ─Zapper Zaku─
アクシズ社の新製品のモニターに当選したのだ。
「やった!ありがとうクワトロさん!」
「いまの私はサンタクロース!それ以上でも以下でもない!」
それ以来、バーニィとザッパーザクのキャプテンガンダムへの挑戦が始まった。

キャプテンガンダムの拳がザッパーザクとバーニィを粉砕した。
「うわあ、ミンチよりひどいや」
毎回繰り返される光景。だが、
「いつもそうだ!ロラン兄ちゃんの事は守るくせして、ボクの友達はミンチにしちゃうんだ!」
バーナード・ワイズマンは所構わずガンダムタイプに喧嘩を売る危険人物だ」
「だからなんだっていうのさ!?ボクだってガンダムは嫌いだ!ザクの方が断然カッコいいよ!キャプテンなんか嫌いだ!」
アルは涙目になって叫ぶと部屋に篭ってしまい、夕食にも来なかった。

846 名前:ハート・トゥ・ハート投稿日:05/02/06 03:07:53 ID:???
「アムロ、私の判断は間違っていたのか?」
「いや……お前の判断は正しい。お前は完璧な心の持ち主……俺がそうプログラムしたんだ」
「だがアルを傷つけてしまったようだ……アムロ、所詮私は機械でしかないのか……?」
「人間のほうもロボットとの付き合い方を考える時が来ているのかもな……」

「はぁ、今日もガンダムに勝てなかった」
スクラップと化したザッパーザクの前に溜息をつくバーニィ。
ついさっきミンチになったばかりなのに、驚くべき復活速度である。
これからザッパーザクを修理の為にアクシズ社に運ばなければならない。
もはや新製品の運用モニターの筈が、耐久テストと化している。
「今回も随分と派手にやられたようだな」
サングラスをかけた赤い人物──クワトロ・バジーナ──表向きはアクシズ社の営業らしい──が出迎える。
バーニィはこの男の正体と本性など知りもしないのだが。
「駄目だよ!クワトロさん!全然勝てないよ!」
「別に他社の製品と無理に戦わせる必要はないのだが」
「だってコイツ、他には掃除しかできないんです!この間料理をさせたら、スパゲッティがミート煎餅になってたんですよ!」
「うーむ、わが社のロボットの開発コンセプトは『愛嬌のあるロボット』なのだが……やはり改良の余地があるな」

「いいな、バーニィの家にはザクがいて」
「いや、結局今回も負けちゃって修理中なんだけどさ……アルん家のキャプテンは強いな。おまけになんでもできる」
「あんな奴どうだっていいよ!ロボットのくせに保護者面してさ!」
「アル……?なにかあったのか?」
「参観日にキャプテンが来たんだ……おかげでボクはクラス中の笑い者だよ!」
「……」
「アムロ兄ちゃんやロラン兄ちゃんなら、ボクの父さんと母さんの代わりでもいい!笑われたっていいよ!
でもキャプテンは違うんだよ!キャプテンじゃ駄目なんだよ!おまけになんでガンダムなの!?ザクでもいいじゃないか!」
「(あーあ、こうなったらアルは何を言っても聞きゃしないだろうな……
そういえばクワトロさんが、今度の修理は時間がかかるから代わりの新型をよこすって言ってたっけ……)」

847 名前:ハート・トゥ・ハート投稿日:05/02/06 03:11:08 ID:???
「アムロ、どうして私をガンダムにしたんだ?私だけじゃない、開発中のガンイーグルとガンダイバーもガンダム型だ」
「ラーカイラム社のロボットの開発コンセプトは『頼りになるロボット』だ。強さの象徴たるガンダムこそがふさわしい」
「アルは私が嫌いらしい。私が他のMS──例えばザクの姿を模した姿ならどうだろう」
「あいつのザク好きにも困ったもんだ。たしかにザクは汎用性に優れたいいMSだが……」

バーニィはアルと別れると家に戻り、ザクウォーリアの整備を始めた。
兄弟一家にどういう訳かガンダムタイプがそろっているように、バーニィはなぜかザクタイプのMSを入手できてしまう。
そしてガンダムタイプに戦いを挑み……連戦連敗。
ヘッポコな女性パイロットの乗ったM1アストレイ位にしか勝利したためしがない。
このザクウォーリアは最新型でストライクなどのGATシリーズに匹敵する性能なのだが、
コーディ用などと呼ばれる扱いの難しい機体の為、いまいちバーニィには扱いきれていない。
不意に呼び鈴が鳴った。
「誰だろう……?ひょっとして、例の新型が届いたのかな?」
玄関に向かうとそれはいた。
「私はアクシズ社のコマンダーサザビー。それ以上でも以下でもない!」
「ちぇっ、ザクじゃないのか……」
「私をザク如きと一緒にしてもらっては困るな」
「まあ、モノアイがあるし、アイツの修理が済むまで我慢するか……」
「では早速キャプテンガンダムの性能とやらを見せてもらおう」
「いきなり勝負しにいくのか!?いまいち気乗りしないな……」
「実は既に奴を呼び出す手筈は整えてある」

シャアはダイクン社の会長室に戻って来ていた。
クワトロ・バジーナの姿はグループ内をお忍びで視察する際のスタイルだったりする。
コマンダーサザビーは、彼の警護用として傘下のアクシズ社に開発させたものだ。
それにはロランにちょっかいを出しに行く際の警護も含まれる。
当然、最大の障害であるキャプテンガンダムを相手にする事も想定されているのだ。
因みにAI開発の際、シャア自身のデータを参考にしている。
会長秘書のナナイが入室してきた。
「会長、アクシズ社の技術部より報告があるのですが」
「うむ、話したまえ」
「コマンダーサザビーの良心回路に欠陥があるので、緊急に改修を要するとの事ですが……」
「緊急?それ程重大なバグなのかね?」
「人に危害を加える恐れがあるとの事です」
「ならばラーカイラム社のロボットは欠陥品そのものではないか!」
「あれは害虫を駆除しているだけでしょう?」
「私は害虫ではない!」
「別に会長の事とは言っていませんが。そんな事よりもあれをどこにやったのですか?まさか……この蓑虫め……」


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最終更新:2019年11月07日 20:47