私、セシリー=フェアチャイルドは、いつもよりも少し早い時間に家を出た。

ボーイフレンドであるシーブック=アノーと私はお互いの都合が合わず、最近デートもご無沙汰だった。
このままだと不味い!って事で、私はある計画を企ててみた。
今日はウチの(カロッゾのパン屋)定休日だし、シーブックもバイト休みよね?
ここで一発。デートをガッーン!と噛まさなきゃ。ってことで

私は学園の正門を通ると、校舎の端の方に隠れて、シーブックが来るのを待ち構える。
30分は待っただろうか?…そろそろ来る時間帯だ。あ、来た、来た…。

「シーブック!おはよう」
「おはよう、セシリー」

さり気なく…あくまでさり気なく。偶々、偶然、遭ったって風に装わないとね。

「ねぇ、シーブック。今日はウチの店休みでしょ」
「うん、そうだね」

まずは小手調べ。獲物を網に誘い込むように、早速軽い牽制をしてみせる。
「それで…放課後は、何するつもりなの?」
「グライダーを飛ばすつもりだけど?
こないだまで組んでた奴がやっと完成したからね。それのテストをしてみたいんだ」

ブゥーッ。ブゥーッ……。何ソレ!?この私より、グライダーの方が良いの?
この私の、才色兼備な魅力がアンタの作ってる玩具に負けるってぇの!?…
信じらんない。ムカっく……。シーブック鈍すぎ!私のモーションを軽く無視!?
……ところがドッコイ!私は狙った獲物を逃さない主義。ここで引けますかってえのを!!

ここで引き下がっちゃぁ~ミスカントリーサイド覇者である私のプライドが許さないのよ。
こうなったら意地でも食い下がってやるぅ!!
「シーブック?」
「何?」

「あのね…。文化祭で出す演劇部の演目なんだけど…少し悩んでいて。決めかねているから
良かったら…なんだけど。シーブックの意見も聞きたいなぁ…と思っているんだけど」
「俺?…俺は演劇なんか分んないけど」

「それでもいいのよ!(あ、不味い、不味い。つい本音が)…あ、その…文化祭の舞台って
みんなが喜ぶような演目をやるべきだと思うの。演劇部だけの意見だけじゃ
どうしても演劇好きの、狭い意見しか出ないでしょう。それでシーブックのような普通の人の意見が聞きたいんだけど…駄目かしら?」
「ふ~ん…。俺で役に立つんなら…そりゃ、話を聞いてもいいけど」

やりぃ!!ナイス。私ぃ。
シーブックの『人から頼まれたら中々断れない』と、いう弱点を見事にを突いた攻撃が的中。
我ながら恐ろしい程のポイントゲッター振りだ。ま、私が本気になれば軽くこんなもんよね。ふふ~ん。


187 名前:エリシャとお風呂とシーブックとセシリーは投稿日:03/10/24 01:48 ID:???
なんとか放課後にシーブックを誘い出す口実を取り付けた私。
身柄ささえ確保しちゃえばね。あとは上手いこと丸め込んで……クククッ。

私は意気揚揚とシーブックを引き連れて、高等部の下駄箱置き場へと向かった。
「放課後、待っているわね」
「分ったよ。演劇部の部室に行けば良いんだろ?」

ここまでは万事、私の計画通りに事が進んでいた。完璧な私の世界……そう、あの子。
あのエリシャ=クランスキーとか言う馬の骨が、私の前に姿を現すまではね!!

「あ……」
「……お、おはよう」

下駄箱置き場でパッ見、冴えない地味な子がシーブックに挨拶しきた。
ええ、私はね。ちゃあ~ん、この子もチェック済み。その辺の抜かりは無いのよ。
シーブックとは偶に工科の選択授業で一緒になるクラスの女子でしょ。
ま、私と比べたら…この子なんかザコキャラの三等兵。相手になんかなんない、なんない。
ザコキャラはザコキャラらしく、私とシーブックの前から早く消えなさいな。
二人だけの輝かしい朝の時間を邪魔しないでよ。全くぅもぅ。

「き、昨日は…その…あの…すいませんでした」
「う、うん」

んぅ……!?何?この子…。『昨日はすいませんでした』って何よぉ!?ソレは!!
謎ワードだ。このザコキャラは昨日、シーブックと何かがあった訳なの?
シーブックもシーブックだ。私という超絶美少女が横に居るのに
こんな馬の骨に…ザコキャラに…鼻の下をデレデレ伸ばしちゃってさぁ…。

ここで私が探りを入れようとしたら、授業開始の5分前のチャイムが鳴ってしまった。
タイムアップだ。上手く逃げきったな。ザコキャラめ…。

う~~~っ。き、気になるぅ。
シーブックとあのザコキャラ。もとい…エリシャ=クランスキーとは何があった訳なの?
引っ掛るなぁ……。あの二人の態度は明らかに怪しい。

もしかしてシーブックが?…まさか、まさかね。シーブックがこの私を差し置いてあんな地味な子になびく筈が…。
や、待てよ…。私がスペシャルディナー。高級店のフルコース料理だとしたら、それとは少し違った庶民の味。
コロッケとか、肉じゃがとかが欲しくなって…ついつい摘み口とか?
や、激ニブのシーブックがそんなに器用な事、出来る筈ないし…。けど…。ああ、疑い出すと切りがない。

私は悪い胸騒ぎがして6時限目終了のチャイムが鳴ると猛ダッシュで工科のクラスへと向かった。
が、遅かった…。シーブックとザコキャラは二人で何処かへと消えたあとだった。
ヤラレたぁ……。この私が不覚を取るとは。クソォォォォォォォォ!!!
ええ、いいわ。そっちがそう来るなら…私にもやりようってもんがあるわよ。


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最終更新:2018年12月03日 11:58