私と
シーブック君の二人は工科準備室までの廊下を会話も交さずに、無言で歩いている。
最初は私とサム=エルグの二人で機材を片付ける筈だったのに
シーブック君は自分からサム君に掛け合って、代わりを引き受けたようだ。
教室でのシーブック君の行動を見るとそうのように思えた。
やっぱり、昨日の事……彼の裸を覗いちゃったのを未だ怒っているのかな?
一応は朝、顔を合わせた時に謝ったけど…途中でチャイムが鳴って、ウヤムヤになっちゃったしなぁ~。
けど、その事とサム君と代わった事って、何か関係ある?う~ん…私から聞くのもなんか聞き辛いしぃ…。
「エリシャさん、あのさ…」
「は、はい?」
不意を突かれた。シーブック君が突然喋りだすものだから、私は驚いて心臓が止まるかと思った。
「昨日の事…朝は途中で話、終わったちゃったけど……」
「はい…」
「その…ずっと君に謝りたかったんだ、昨日の事を。今日は一日、そればっかり考えてた。
いつ話そうか、キッカケが中々掴めなくって…サムに準備室へ行くのを代わって貰ってさ、それで…」
「シーブック君が謝るなんて…あれは、私が…」
私は予想もしてなかった展開に唖然としてしまう。が、そんな私の気持ちも構わずにシーブック君は喋り続ける。
「俺、君がウチに来てるなんて、全く知らなくって…。それで風呂場から出たんだけど
それで、その、驚かせちゃって…ごめん。謝るよ。悪かった」
「え?…いいのよ。そんな、シーブック君が謝る事なんてないのに。私が悪いんだから」
「いや、俺が悪いよ」
「悪いのは私よ」
「いや、俺だよ!」
「私の方が!」
互い、意地になって引くに引けなかったけど…、私はある妥協案を思いついてそれを口にしてみた。
「…じゃあ、そうだなぁ…昨日の事は、タイミングの悪い事故だった。っていう事で…そういう風にしません?」
「君がそれでイイんなら、俺の方は構わないけど…。それでイイの?」
シーブック君は少しはにかんだ表情をして私の方をチラリと見る。
「ええ、それで結構です」
これで昨日の一件は解決かな?…良かったぁ。ホッとした。シーブック君もさっきより、表情が少し和らいだみたい。
意外だったのは…シーブック君が『私のことを一日考えてくれてた』という事。
あ、いやいや、私のことじゃなくて…それは昨日の事件を考えてた、って事よね?
ま、どっちでもいいかな。
最終更新:2018年12月03日 12:03