ガロード「兄ちゃん…」
ある日の夕方、深刻そうな面持ちで話しかけてきたガロード。
ロラン「どうかしたかい? ガロード」
ロランは鍋をかき回していた手を休め、弟の方を振り返る。
ガロード「あのさ…俺…」
なかなか言い出せない弟を見て、ロランの脳内に最悪のケースがおよそ五百件ほど駆け巡る。
ロラン「(まさかティファを妊娠させたとか…いや、兄さん達やウッソやキラなんかと違ってガロードに限ってそれは…)」
いろいろよからぬ想像を巡らすロラン。そんな兄を尻目にガロードは遂に決心を固めたのか、口を開く。
ガロード「兄ちゃん…俺…塾行くよ。生きたいんだ、塾に!」
直後、派手な音をたてて鍋の中身がひっくり返る。床を見ると、ロランが白目をむいて倒れていた。

アムロ「ガロードが塾に?!」
一瞬、黒目が反転しそうになったアムロをロランが必死に呼び戻す。
シロー「俺も最初は疑ったが…どうやら本気らしい」
帰宅直後、ロランに話を聞かされ、同様にトリップしかけたシローが大きく頷く。
アムロ「しかし、何だって急に塾なんか」
ロラン「それが、話を聞いてみるとそう突飛な話でもないんですよ」
アムロ「ガロードが必死になると言えば…ティファか」
ロランが詳しく聞いてみたところ、ガロードの恋人であるティファが、最近出来た塾に通い始め、なかなか会う時間が作れないないという。
シロー「それで自分も同じ塾に通えばその分だけ一緒にいられると、そういう訳らしい」
アムロ「動機は不純だけど、本人が自発的に勉強したいと言ってるんだ。家族としては応援してやるべきじゃないか?」
ロラン「それはそうですけど…」
ちらり、とロランの脳裏に今月の家計簿が浮かぶ。そしてそこに書き加えられる赤い文字…。
ドモン「金のことなら心配ない、そうだ」
いつの間に来たのか、ドモンが会話に加わる。
ドモン「『こんなこともあろうかと、とっておいた取っておきのジャンクパーツ…」
基本的に商品はすぐ金に換えて、あっという間に使ってしまうガロード。
そのガロードが「いつかの為に」などと貯蓄するまでに成長するとは…思いがけない弟の成長に兄達は眼を細める。
ドモン「…とキッドが言っていた、隠し場所も知ってる』とガロードが言っていた」
兄達の喜びは、あっけなく崩れ去った。

アムロ「…まあ、塾の学費くらい、俺がなんとかしてやるさ。せっかくのやる気を潰したくはないしな」
シロー「むしろそうしなければ、俺たちのガンダムまで売られかねないからな」
ドモン「うむ、こうと決めたらどこまでもやりぬく。奴はそういう男だ」
アムロ「それで? どういう所なんだ、その塾というやつは」
ロラン「これなんですが…」
ガロードから渡されたパンフレットを広げる。そこには

「新たな世界の引き金は君が引け! 新世紀のNTを守り育成する自由殿塾」
とデカデカと書かれたキャッチコピー。更にその下には
「現役NT二人が新世代NTに新世紀を生きぬく力をレクチャー、君も刻が見える!」
塾長 ジャミル・ニート
副長 ランスロー・ダーウェル
と講師紹介が。何故か満面の笑顔にサムズアップして載っている。
そして最後に
「君がニュータイプだ!」

アムロ「それはエゴだよ!」
突然キれだした長兄をドモンが羽交い絞めにする。
シロー「まあ、ともかく熱心さは伝わるな」
ロラン「それはそうなんですけど、ここ。最後の一文見てくださいよ」
ロランが指差した箇所をシローは覗き込む。
シロー「なになに…『当塾はNTによるNTのための指導をモットーしております。その為、NT以外の旧人類の入塾はお断りしています』?」
ロラン「………」
シロー「………」
ロラン「…兄さん、ガロードって、NTでしたっけ」
シロー「俺に聞くな。…待った、まだ続きがある。『ただし、当塾がNTの素質があると認めた方に限り、直接勧誘し、会員となっていただきます。ご了承ください』」
ロラン「………」
シロー「………」
コウ「兄さん大変だ! ジュドーとウッソ、それにカミーユにシーブックが今、変な連中に連れ去られて…」
居間に、コウの声だけが虚しく響いた。


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最終更新:2019年01月07日 14:54