201 名前:八月三十一日 ①投稿日:2006/08/31(木) 11:32:21 ID:???
八月三十一日、この日はこの一家にとって、恒例行事の日である。
その行事は一人の男の怒声から始まる。
アムロ「おまえたち!全員宿題持って下りてこい!どいつもこいつも、どうして早めに済ませておかないんだ!」
怒鳴るアムロの横でアストナージが困った顔をしながら、頭をかいていた。
アストナージ「あさっぱらから呼ばれた理由がこれか、…アムロせめて中学レベルにしてくれよ」
アムロ「すまないアストナージ、でも君には勉強ではなくて夏休みの工作を手伝ってもらおうと思っている」
アストナージ「良かった、工作なら任してくれ」
ほっとしながら取り敢えず居間の隅に座る。
兄弟一同あわてて宿題に取り掛かるが一行に進まない。
そんな中、家の呼び鈴が鳴りロランが出る。
シーマ「ロランちゃんお早ようさん、仕事終わったからコウさらいに来たけど居るかい?」
ロラン「シーマさん、丁度良いとこに、ちょっと上がって手伝って!」
ロランに有無を言わさずシーマの手を引いて家へ引きずり込む。
家の中では兄弟達の地獄の光景が繰りひろがれていた。
シーマ「何だい、宿題かい?何で早めにやらないかねぇ」
半ばあきれ顔で状況を飲み込む。
ジュドー「じゃあ、シーマさんは宿題ちゃんとやったのかよ!」
そんなジュドーの問いに、当たり前と言う様にふんぞり返って答える。
シーマ「そんなの当たり前じゃないかい、宿題に予習・復讐、感想文まであたしは七月中に終わらしたよ」
少し勝ち誇るシーマの横からアムロが声をかける。
アムロ「すまないシーマ、こんな状態なんだ、助けてくれないか、いつも早く済ませろと言っているのにこいつらは…」
そんなアムロの横からロランが口を挟む
ロラン「アムロ兄さんも宿題溜めるくちでしたけどね」
それを聞いた宿題坊主一同からブーイングがとぶ。
キュピーーン
そんな中、アムロの額に稲妻がはしった!
アムロ「ロラン、今ここで服を脱げ!」
つづく
209 名前:八月三十一日 ②投稿日:2006/08/31(木) 13:54:47 ID:???
アムロ「ロラン、脱げ!」
ロラン「ちょっとアムロ兄さん、唐突に何を言いだすんですか!」
アムロの素敵な要求に困惑するロラン
アムロ「いいから脱げ、話しはそれからだ、脱げば分かるさ」
そんなアムロに逆らえず、恥ずかしそうに体をくねらせながら服を脱ぎ始める。
そのさまはまるで女性である。
シーマ「あらロランちゃん、とっても色っぽいじゃないかい」
そんなシーマのちゃちゃと兄弟達の冷やかしで益々女性らしい仕草になる。
そんな中、アムロは見逃さなかった、壁の一ヶ所が【もっこり】としていることに。
アムロ「そこっ!!!」
アムロはもっこりの位置から頭部の位置を予測し、渾身の力を込めてヒートホークをたたき込む。
注)・バーニィーからもらったアルの宝物
壁にめり込んだ斧の横から壁の絵がめくれ、中から額に脂汗をかいたシャア(総帥バージョン)が現れる。
シャア「…、アムロそんな物が当ったら怪我をするではないか」
アムロ「心配するなシャア、怪我で済ますつもりはない、だが今は緊急事態だ、貴様にも手伝ってもらうぞ」とニヤリと笑うアムロ
シャア「事情は分かったがアムロ、君はこの私シャア=アズナブルに家庭教師の真似をしろと言うのかね」
さすが総帥、自分の立場も考えず偉そうにふるまう。
アムロ「嫌ならこのまま
ミンチだ」
シャア「喜んで引き受けよう、…で、私は何をすれば良いのかね」
アムロ「シャア、得意分野はなんだ?」
シャア「取り敢えず何でもこなすが、しいて言えば政治経済だな」
得意気に話すシャア
アムロ「丁度いい、ならコウの課題レポートを見てやってくれ」
コウはアムロに言われ、恐る恐るレポートを差し出す。
シャア「コウ君は大学生だったな、どれ貸してみなさい、…っておいアムロ、何だこの課題は!」
コウ「MS工学によるサイコフレームの可能性による研究です」
シャア「何が丁度いいだ、政治経済と何の関係もないぞ!それにこの様な課題なら君の方が得意ではないか!」
アムロは見向きもせず答える。
アムロ「俺はサジを投げた」
シャア「サジをと言うが、確かに計算間違いも多いし、仮に私が教授なら再提出だが」
コウ「それ修正版です、その前のはアムロ兄さんに見せた途端、破って燃やされました、それから話ししてくれない(涙」
目が点のシャア、我関せずのアムロ。
シャア「あ、
アムロ君、兄弟は仲良くだな…」
アムロ「妹に口も聞いてもらえん貴様に言われたくはない」
シャア「うぐぅっ…、(アルテイシアは恥ずかしがり屋さんなだけだ!)」
シャアは心に深いダメージをうけていた。
そんなシャアやコウを無視しつつ、アムロは中学生組の宿題を見ているシローに話しかける。
アムロ「シロー助っ人を呼んでくれたそうだが」
シロー「ああ、多分もうすぐ来ると思う」
つづく
212 名前:八月三十一日 ③投稿日:2006/08/31(木) 14:56:04 ID:???
アムロとシローの会話の後、しばらくすると呼び鈴が鳴りシローが慌てて玄関にでる。
シロー「いらっしゃいアイナ!」
アイナ「遅くなって御免なさいシロー、お手伝いに来ましたわ」
鼻の下3㍍伸ばしたシローとラブラブなアイナの間に長身の男が割って入る。
ギニアス「妹をたぶらかすのはお前か!」
シロー「!!ギニアス!お兄さんっ!!!」
ギニアス「貴様にお兄さんと呼ばれる筋合いは
無い!それに妹に貴様の兄弟の宿題をさせようとは、サハリン家を愚弄するきか!」
と、一方的な熱い戦いを繰り広げられる横で、
アムロ「アイナちゃんいらっしゃい、いつもシローが世話になっているようですまない」
アイナ「アムロお兄さんですか?こちらこそよろしくお願いします、あとこれ、
差し入れです」
アムロはアイナからお菓子を受け取り礼を言うとロランを呼びお菓子を渡す。
そんな様子を横目で見ていたギニアスがアムロに気付いた。
ギニアス「失礼だがあなたは、技術者のなかでも名高いアムロ=レイではないか?」
アムロ「名高いかは分かりませんが、アムロ=レイです、サハリン重工代表自らお越しいただいて恐縮です」
ギニアス「妹をたぶら…いや妹が思いを寄せる男の兄があなたとは」
アムロ「立ち話も何ですし、中へどうぞ」
ギニアスが自分に関心を寄せている内に自分のテリトリーに引き込むアムロ。
居間に通されその光景に茫然とするギニアスと、すぐにロランと共に小学生組の宿題を手伝うアイナ
ギニアス「…どうしてこんなになる前に済ましておけなかったんだ…」
天才の気質からか立ち直れないギニアス
アイナ「お兄様、そんな事言うものじゃありません、お兄様も研究ばかりで夏休みの宿題を溜めていたじゃないですか、私、手伝った覚えありますよ」
ギニアス「アイナ!そのような事人前で言うものじゃない!分かった、乗り掛かった船だアムロ=レイ、私も手伝おう」
ギニアスは罰が悪そうにしながらも、体裁を取り繕うかのように振る舞う。
アムロ「それは助かります、それなら俺とアストナージとあなたで夏休みの工作を終わらせましょう」
と言うわけで、各分担が決まる。
某サテライト予備校並の優秀な講師陣を迎え、この兄弟の宿題は無事終わるのだろうか。
つづく
213 名前:八月三十一日 ④投稿日:2006/08/31(木) 17:46:16 ID:???
居間では、宿題との壮絶な戦いが繰り広げられていた。
シャアはコウのレポートを、シーマは高校生&中学生組を、シローは中学生組を、ロラン&アイナは小学生組に付いてテキパキと手助けをしている。
その部屋の隅で工作部隊三人が何やら設計図を広げ、あれやこれやとやっていた。
時間が過ぎ
夜もふけて
居間で必死に宿題に取り組んでいた者達から次第に
「出来たー!」
「終わったー!」
との声が上がりだす、そんな中シャアは部屋にアムロ達三人が居ないことに気付く。
シャア「アムロ達を知らないか?」
誰に言うでもなく尋ねるが、皆首を横に振るだけである。
ロラン「多分、格納庫じゃないですか?あそこなら工具とかそろってますし…」
シャア「なら、皆の宿題が終わったら行ってみるとしよう」
シャアの提案に皆が頷き、早く済まそうと終わった者も手伝う。
しばらくして、皆が宿題を終える。
シロー「工作はどんなのが出来ただろうな、超一流の技術者が揃っているから楽しみだ」
ここに居るほとんどの者はシローに同意見だろう。
アイナ「シロー、超一流だから心配です、アムロお兄さんもそのお友達の方もお兄様と同じ匂いがしました」
シャア「私もいやな感じがする、とにかく格納庫に行こうじゃないか」
その声に全員がぞろぞろと格納庫に向かった。
格納庫の扉を開けるとそこには格納庫からはみ出したサラミス改とその前に三人が向かい合ってシャンパングラスを掲げていた。
ギニアス「我々はついに完成させた!」
アムロ「ああ、完成だ!」
アストナージ「夢の動力が完成だ!」
かなり異様な雰囲気である。
シーマ「ちょっとあんたたち!何が完成したんだい?」シーマが尋ねると嬉しそうにアムロは答える。
アムロ「技術者の夢の動力、波動エンジンが完成したんだ!」
シャア「それは素晴らしい、で、夏休みの工作は何処だ!」
アムロ「何を言っているシャア!波動エンジンが完成したんだぞ!そんな小さな事」
シャア「アムロ!戯言は止めろ!工作が出来なければ、明日君の弟達が怒られるのだぞ!そうなれば、我々の努力は水泡と帰すではないか!」
しかし三人はすでに自分達の偉業に酔い痴れている。
シャア「アムロ!貴様が正しいと言うのならば、今直ぐ彼等に夏休みの工作を授けてみせろ!」
そんなシャアを見てギニアスが口を開く。
ギニアス「ネオジオンエンタープライゼス(仮名)総帥の言葉とは思えませんな、この偉業が分からないとは」
そんなギニアスの目は、いやそこに居る三人の目がすでにいっている。
ギニアス「見よ!膨大なエネルギーを作り出す、実現不可能と言われた動力、波動エンジン!」
アストナージ「そのエンジンのエネルギーを前方に打ち出す波動砲!」
アムロ「そして、その膨大なエネルギーにより実現したワープ航法!」
ギニアス「我がサハリン重工と」
アムロ「ラーカイラム社が共同で開発したんだ!」
兄弟をはじめ皆すでに呆れている。
シーマ「で、工作は?…やれやれ、アル、シュウト工作にペットボトルロケットでも作るかい?」
シロー「じゃあ、他は木工でもするか?」
ロラン「遅くなったけど夕食作らなきゃ」
アイナ「ロランさん手伝います」
シャア「今回は私もローラの料理をいただく権利を要求しても良いのではないかな」
シロー「ええ、今日はあなたには助けてもらいましたから食べていってください」シャア「そうか、なら夏休みの研究ということで、それらしく捏造してやろう」
などとしゃべりながら各自居間に戻っていった。
そして、格納庫には三人の高笑いがいつまでもつづいたのだった。
後日談、兄弟達の宿題は無事終え、こちらは問題なかったのだが
サハリン重工とラーカイラム社合同のお披露目式の時、波動エンジンが暴走し突然ワープ、大損害を出しながら宇宙の彼方へと飛んでいったそうな。
END
最終更新:2019年03月19日 18:16