356 :遭難のバナージ:2014/07/28(月) 00:15:26.50 ID:???
ジンネマン「見渡す限り一面の砂漠、ここにいると俺達の小ささを実感する」
バナージ「ええ。涙が出てきますよ」
ジンネマン「日常を離れてこういう場所に行くのも悪くは無いだろう?」
バナージ「墜落して遭難しているのでなければ、誰だってそう思いますよ」
ジンネマン「……」
バナージ「……」
バナージ「誰か助けてえええええええええ!!!」
ジンネマン「叫ぶな、水分を浪費するだけだ」
バナージ「誰のせいでこうなったと思ってるんです!?」
ジンネマン「被害者根性は止めろ。付いてきたお前にも責任の一端はある」
バナージ「到着地が砂漠ならともかく、
大気圏突入に失敗して墜落するなんて誰も思いませんよ!」
ジンネマン「旅行とは気まぐれなものだ」
バナージ「ええ。今までジャブローから方向転換して北極に行ったり、宇宙のパラオと言っておいて南の島のパラオに突っ込んだりしましたよ!
あんたはいつもそういう人だ!でもちゃんと旅行先には着いていたでしょう!?」
ジンネマン「俺の着いた場所が目的地だ。
突き破りたい雲があったから突き破って、その先に砂漠があった。それだけの事だ」
バナージ「そんな無茶な事をしたら墜落するってどうして分からないんです!
シャトルを運転して3日の子どもじゃあないんでしょう!?」
ジンネマン「今は若い奴らに任せる事が多いが、お前が生きている年数くらいは転がしている」
バナージ「いちいち格好つけないで下さい!この流れなら情けないだけですよ!」
ジンネマン「男は子どもに戻っちまう時があるのさ」
バナージ「時と場合をわきまえてください!」
ジンネマン「……」
バナージ「……もしかして、泣いてます?」
ジンネマン「……なんでこんな事になっちまったんだろうな」グスッ
バナージ「あんたのせいだ!」
357 :遭難のバナージ:2014/07/28(月) 00:16:34.51 ID:???
バナージ「このままじゃどうしようもないです。帰る方法を探しましょう。通信機器はあるんでしょう?」
ジンネマン「圏外だ」
バナージ「ニュータイプ的な何かは?」
ジンネマン「お前の得意分野だろう?」
バナージ「俺は誰かに向けないと駄目なんです。ある程度どの方向にいるのか分からないと」
マリーダ「……ユニコーンを呼べ」
バナージ「その手があった!感謝します、マリーダさん」
ジンネマン「さすがマリーダだ。喋らずに出番も抑えて体力の消費も抑えている」チラッ
バナージ「そこで俺を見ないで下さいよ……とにかく、呼びますよ」
バナージ「√√」
マリーダ「……どうだった?」
バナージ「……『美白に砂漠は禁物』って拒否されました」
ジンネマン「血管浮き出るガリガリ女が!」
マリーダ「……バンシィ!あれなら最初から日焼け済みだ!」
バナージ「乗った事無いけど……やりますよ!」
バナージ「√√」
マリーダ「……今度は?」
バナージ「『ワイハと湘南以外では焼かない主義』だそうです」
ジンネマン「帰ったら府中の競馬場に放置してやる!」
バナージ「こんな手は使いたくなかったけど……フェネクス!!」
バナージ「√√」
マリーダ「来たら来たで厄介そうだが……来るか?」
バナージ「『砂漠はドバイ限定だ』って」
ジンネマン「鳥取砂丘に埋めろ!」
ジンネマン「終わりだな、俺達も」
バナージ「諦めるのはまだ早いですよ。他にも助けを呼ぶ方法はあります」
ジンネマン「何をする気だ?」
バナージ「こうやって、地面にSOSを書けば、飛行機か人工衛星が見つけてくれるはずです……」
マリーダ「協力する。バナージはS、私はO、マスターはSを書いて下さい」
ジンネマン「分かった」
――――
バナージ「来ませんね」
ジンネマン「
来ないな」
バナージ「タイミングの問題でしょうか……?」
同時刻、某コロニー
シロッコ「ヤザン、あれは何だと思う?私にはSOSサインに見えるが」
ヤザン「砂漠に書かれた文字か?最後のは洒落たXに見えるぜ」
シロッコ「SOX……靴下か、それともアメリカの球団か……」
ヤザン「案外Oも隠れ文字かもな。[自主規制]でもアピールしてるんだろ」
シロッコ「……下品な、これでは人に品性を求めるのは絶望的だ」
ジンネマン「来ないな」
バナージ「来ませんね」
358 :遭難のバナージ:2014/07/28(月) 00:18:59.64 ID:???
ジンネマン「万策尽きたな。あとは死ぬだけだ」
バナージ「早すぎますよ。どんな手を尽くしても最後までやってみないと」
マリーダ「生きる確率を上げる方法がある。といっても、すぐ助かる、というものではないが」
バナージ「どんな方法ですか?」
マリーダ「私達の内2人が
ミンチになり物資の消費量を抑える」
バナージ「本当に最終手段ですね」
ジンネマン「だが、1人では張り合う相手がいなくて、すぐにくたばっちまう」
マリーダ「なら1人でも良い。当面の人数を減らさなければ共倒れだ」
ジンネマン「だが、誰が……」
バ・マ「「……」」
ジンネマン「な、なんで俺を見る!?」
バナージ「マリーダさんをミンチにする訳にはいきませんから」
ジンネマン「それならお前がなればいいだろう!?いや、まずお前がミンチになるのが筋だ!」
バナージ「今だってニュータイプの感応で助けを呼んでいるんです。俺には残る理由があるんだ」
ジンネマン「さっき駄目だ、って言ってたよな!?そんなニュータイプの力より経験の方が大事だ」
バナージ「それでも可能性に賭けてやってるんですよ!それとも、すぐ諦める経験を優先しろと言うんですか!?」
ジンネマン「そうだ。それに……
マリーダ「体格順だ」
ジンネマン「何……?」
マリーダ「単純に体格順で決める。これなら文句は無い」
バナージ「ええ、ありません。最初にキャプテン。その次は俺ですね」
マリーダ「ああ。幸い私も
強化人間だ。常人よりは長く持つ」
ジンネマン「し、正気か……!?」
マリーダ「マスター、ごめんなさい……」
マリーダ「(ここであの台詞を言ってしまおうか……)」
ジンネマン「何を言おうとしてる!俺は許さんからな!俺を殺す我侭など許すものか!心に従うな!」
バナージ「貴方が誰だって構わない、必要な犠牲だって言ってくれ!」
ジンネマン「暗に不要って言ってるよな!?不要だから死んでくれって言ってるよな!?」
バナージ「マリーダさん、やりましょう」
ジンネマン「無視か!?」
マリーダ「ただ、この方法には1つ問題が……」
バナージ「何です?」
マリーダ「マスターをミンチにする手段が無い」
359 :遭難のバナージ:2014/07/28(月) 00:20:18.32 ID:???
ジンネマン「ふ、ふふふ。それなら仕方ないな」
バナージ「じゃあ、コロニーが落ちるのを待ちましょうか」
マリーダ「何年先かな?」
バナージ「その辺りに放置しておけば砂漠の虎が轢いてくれるかも」
マリーダ「助けが来たな」
バナージ「DOMEにマイクロウェーブで焼いてもらいましょう」
マリーダ「それだ!」
バナージ「あ、でも月が出てないですよね」
マリーダ「夜まで待とう」
バナージ「ええ、そうしましょう」
ジンネマン「ちょっと待て!!」
バナージ「何ですか?」
ジンネマン「途中から俺をいかにミンチにするかになってないか!?」
バナージ「不満ならキャプテンも考えてくださいよ」
マリーダ「マスターの意向は最大限反映する」
ジンネマン「だから何故俺をミンチにする事前提なんだ!?
今ミンチに出来ない以上、出来ないってするしかないだろ!」
バナージ「中年の絶望を押し付けてもらっては、困る!」
ジンネマン「お前が絶望だ!」
マリーダ「√!? この感覚は!?」
バナージ「キャプテン、少し痛いけど我慢してくださいよ!」
マリーダ「何かが飛んで、向かってきている……ユニコーンのシールド!?」
バナージ「ユニコーンが拒んだって……それでも、あんただけは、落とす!」
ジンネマン「冗談だろ……冗談だよな!?」
バナージ「冗談なもんか!自分が死ぬのも、人が死ぬのも冗談じゃないって思うから、やれる事をやってるんでしょう!?」
マリーダ「……なあ、バナージ」
バナージ「何ですか?重力で動かすのって難しいから、静かにしていてもらえますか?」
マリーダ「それに乗れば帰れるんじゃないか?」
バナージ「……あ!」
バナージ「ほら、町が見えてきましたよ。MSも飛んでる」
マリーダ「何とか助かりそうだな」
ジンネマン「フ、俺が本気を出させたお陰だな」
マリーダ「その様には全く見えなかったのですが」
ジンネマン「まず味方から騙す。作戦勝ちだ」
バナージ「調子が良いんだから……」
ジンネマン「何だと!俺にかかればお前の様な小僧を動かすなんて容易いんだ!」
バナージ「はいはい、騒ぐと揺れて落ちますよ。こんなに繊細に動かすのは初めてなんですから」
ジンネマン「く……覚えていろよ!」
おわり
最終更新:2016年04月13日 06:30