623 名前:邂逅~レイジ×セイ~ :2014/11/06(木) 21:00:45.89 ID:24ViQMfM0
 それは少し昔、セイとレイジが出会う前のお話…

レイジ父「よいかレイジよ、アリアンの男たる者一人前になるには外の世界に出なければならぬ。特に王子はな。
     私も昔は数多の猛者と戦い死線を潜ってきたのだ」
レイジ「後半ぜってー嘘だろ」
レイジ父「という訳でレイジよ、己の力で生き抜き強くなって帰ってくるのだ!」
 ――――――
レイジ「って唐突に言われて出てきたけどよ……アリアンから行ける場所なんてここしかねーんだよな」
ジンネマン「もうすぐ日登町の港に着くぞ。窓を見てみろ」
レイジ「凄え……ここから見える建物全部に人が住んでんのかよ……!アリアンの何倍あるんだか」
ジンネマン「着陸態勢、しっかりつかまっていろ」
レイジ「おう」

レイジ「ありがとな、おっさん」
ジンネマン「礼ならいらん。鉱石を運ぶついでだ。
      それより、行く宛はあるのか?無いなら、ガランシェールで働いたらどうだ?」
レイジ「ここまで運んでくれただけで十分。それによ、あんたの所で働いたら親父に丸分かりだ」
ジンネマン「そうだな。ほれ、受け取れ」
レイジ「ん?金」
ジンネマン「積み下ろしを手伝ってくれたからな、バイト代だ。手持ちと合わせれば2、3日は持つだろう」
レイジ「良いのか?ありがとな」
ジンネマン「もし、どうにもならなくなったらまた来い。寝る場所くらいは貸してやる」
レイジ「ああ、分かった。ぜってー来ないけどな」
ジンネマン「ふん、その意気だ」
レイジ「さて、まずは腹ごしらえだな……」


レイジ「食った食った、しかし都会の食べ物はどれも旨いなー」
 ひょいっ
レイジ「このパンも旨い!」ムシャムシャ
カロッゾ「ほう、正々堂々食い逃げとは中々度胸がある」
レイジ「ん、何だおっさん?」
カロッゾ「私はここの店主だ。そのパンは試食品では無いのでな、お金を払ってもらおうか」
レイジ「は?え?いや、そりゃ店の中にあるなら分かるぜ。けどよ、外にあるって事は自由に取って良いって事だろ?」
カロッゾ「良い場所に住んでいたようだな。だがここはそうではない」
レイジ「ま、要は全部売り物だから金払えって事か。ちょっと待ってろ……あれ?」
レイジ「やべえ……全部使っちまってた……!」
カロッゾ「ならば後片付けを手伝ってもらおうと思ったが洗う物の無い今は警察に叱ってもらうしかないな」
レイジ「嘘だろ……!?」
セイ「ちょ、ちょっと待ってください!」
カロッゾ「む、君はシーブックの弟か」
セイ「聞いていれば悪気があったわけじゃないみたいだし、ここは僕が立て替えますから」

624 名前:邂逅~レイジ×セイ~ :2014/11/06(木) 21:01:47.83 ID:24ViQMfM0
レイジ「ありがとう、迷惑掛けたみたいだな」
セイ「仕方ないよ、キミ、外国から来たばっかでよく分からないんでしょ?困った時はお互い様だよ。ねえ、どこから来たの?」
レイジ「アリアンだ」
セイ「……ごめん、アリアンってどこだっけ?名前は聞いた事ある気もするんだけど」
レイジ「ま、それが普通だよな。ド田舎のコロニーだ。詳しい場所は俺も分かんねえ」
セイ「だめじゃん!?」
レイジ「そんな小さい事はともかく。この恩は一族の名誉に賭けて必ず返す。これやるよ」
セイ「宝石?(なんだか仰々しいなあ……)」
レイジ「そんな高価なもんじゃねーよ、ただの綺麗な石ころだ。えっとお前……」
セイ「セイ。イオリ・セイ・ガンダム
レイジ「俺はレイジだ。セイ、困った事があったらその石に祈れ。どんな状況でも俺が駆けつけて打開する。これは俺の宣誓だ」
セイ「な、なんか凄いね……」
レイジ「じゃあ、またな」
セイ「あっ、ちょっと待って……行っちゃった。お金も持ってないみたいだけど良いのかな。
   ……多分、家族と旅行なんだろう。平気だよね」

セイ「ただいま」
ロラン「お帰りなさい」
セイ「手を洗って……そうだ、ついでにこの石ころも洗っておこう」
アムロ「おかえり、どうしたんだ。その石?」
セイ「これ?知らない人に貰ったんだ。ただの石ころなんだって」
アムロ「ただのって……サイコミュに使うような鉱石の原石だぞ。そうそう配るものじゃない」
セイ「そんな貴重なものなの?確か、その人アリアンから来たって言ってたけど……」
アムロ「ならアリスタかな、他にも採れるから一概には言えないが……セイ、とにかくそいつは肌身離さず持っておけよ。
    そのままだと不安なら、今からでも加工する店に連れて行ってやるから」
セイ「分かった」


レイジ「すっかり暗くなっちまったな……寝床どうするかな……」
レイジ「ま、最悪その辺で寝ればいいだろ。それより……」
レイジ「腹……減っ……た……」バタム

625 名前:邂逅~レイジ×セイ~ :2014/11/06(木) 21:02:36.22 ID:24ViQMfM0
レイジ「……ん?どこだここ」
テクス「目が覚めたかい?」
レイジ「……誰だ、おっさん?」
テクス「私はテクス。町の小さな医者だよ。そして、ここは君が倒れた場所の前にある家だ」
レイジ「医者か。倒れたって、俺どこか悪いのか?」
テクス「そりゃあ倒れていたみたいだからどこかが悪いんだろうね。
    少し血も抜かせてもらったよ」
レイジ「それでこっちの腕に絆創膏が」
リン子「あら、起きたみたいね」
テクス「レイジ君。リン子さんに感謝しろよ。君をベッドに寝かせてくれたのは彼女なんだから」
リン子「もう、店の前でいきなり倒れた時はどうなるかと思ったわ」
レイジ「ああ、ありがとう」
テクス「で、一つ聞きたい事があるんだけど。君はなんで倒れていたんだ?
    血液を調べてみたが、簡単な検査では問題は見つからなかった」
レイジ「腹が減ってるんだよ。なあ、何か食うものないか?」
テクス「腹が……?ハハハ、そりゃあ私も気付かない訳だ」
リン子「そんな事だったの!?よーし、ちょっと待ってなさい。今すぐ作ってあげるからね」

レイジ「旨え!!なんだこの野菜炒め!」
リン子「んっふっふー。私の野菜炒めは世界一美味しいのよ」
テクス「ところでレイジ君。携帯電話も持ってないみたいだけど、親には連絡はしたのかい?」
リン子「そうそう、心配してるわよー」
レイジ「親?んー、いいや。家出じゃねえけど、連絡はしないって約束だし」
テクス「……事情があるみたいだね、聞かせてくれるかな?」
 ――――――
テクス「そうか、それで1人でこの町に来ているのか」
リン子「今時そんな習慣があるコロニーなんてあるのね」
レイジ「なあ、どこか泊めてくれそうな場所知らないか?」
リン子「ふふ、ここをどこだと思ってるの?私が日登町でのママになってあげる」
レイジ「いや、これ以上悪いよ」
リン子「レイジ君、人の素直は素直に受けるものよ」
テクス「そうだぞ。助けてもらったんだから、特にな」
レイジ「……分かったよ、リン子さん」
リン子「ノンノンノン、母さんなんだからママと呼びなさい?」
レイジ「……ママさん、よろしくな」
リン子「宜しい。それともう1つ」
レイジ「何だ?」
リン子「いくらばれないからって王子なんて嘘ついたらダメよ」
レイジ「本当だって!」
リン子「そういう年頃なのね~。じゃあ、後片付けしたらレイジ君の部屋も片付けましょうか。
    テクスさん、ありがとうね」
テクス「いや、礼には及ばないよ。また何かあったら言ってくれ」
レイジ「おう」

リン子「ここがレイジ君の部屋よ。物置代わりだからちょっと埃っぽいけど」
レイジ「ん、何だこの機械?携帯電話じゃねーよな」
リン子「ガンプラバトルの端末ね。ガンプラを擬似コクピットで動かして戦わせる遊びよ」
レイジ「シミュレーションみたいなもんか?」
リン子「んー、母さんは詳しくないから上手く説明できないわね。機械が下にあるから、明日やってみたら?」
レイジ「ああ、そうする」

626 名前:邂逅~レイジ×セイ~ :2014/11/06(木) 21:03:43.72 ID:24ViQMfM0
 翌日…
リン子「はい、新しい端末。これにレイジ君のデータを入れるのよ」
レイジ「レ、イ、ジ、っと……」
リン子「後は大きな機械で登録するだけだけど……今使ってるからその後でね」
レイジ「ずいぶん簡単なんだな。なあ、見てきてもいいか?」
リン子「良いわよ」

ラルさん「おや、リン子さん、その少年は?」
リン子「事情があって預かる事にしたの」
ラルさん「ほう……良い目をしているな。自身と野心に彩られた目だ。それに度胸も良い」
レイジ「見ただけで分かるのかよ?」
リン子「今、ガンプラバトルはどんな感じかしら?」
ラルさん「ラル殿とセイ君がやっているよ。だが、セイ君はいつも通りだな」

セイ「うっ……うわあっ!?」
ラル「どうした?新型はビルドストライクと言ったか、性能に振り回されているぞ!
   兄弟ならばそんな力ではない筈だ!」
セイ「(そうだ。みんなMSに乗っているのに、まだ僕は……
   ガンプラならって思って始めたけど……今日も何もしてないのに終わってしまうのか……!?
   嫌だ!もう負けたくない!!)」
 ぴかー
セイ「え?」
レイジ「お!?」
リン子「何の光!?」
セイ「え……レイジ!?」
ラル「余所見をする余裕は無い筈だ!」
レイジ「前に出ろっ!!」
ラル「うおっ!?」
セイ「レイジ!?今部屋の外にいたはずだよね!?何時の間に!?」
レイジ「お前が祈ったんだ。だからここにいる」
セイ「え?」
レイジ「お前の代わりに俺が戦う」
セイ「やった事あるの!?」
レイジ「MSすらねえよ。けど、任せろ!」シャゲダン
セイ「僕のガンプラにそんな動きさせないでよ!?」
リン子「あら、お友達だったのね」
ラルさん「そのようですな」
ラル「(素人?だが、私の攻撃を避けタックルを仕掛けた……思い切りの良い、手ごわい相手だ……)」

627 名前:邂逅~レイジ×セイ~ :2014/11/06(木) 21:05:56.92 ID:24ViQMfM0
ラル「だが、舐めるな!」
レイジ「大体分かった!」
 グフの薙ぎ払いをジャンプで避けるビルドストライク。
セイ「避けた!?」
ラルさん「初めてであのマニューバ……あの少年、レイジ君と言ったか……ニュータイプか?」
ラル「やるなガンダム」
レイジ「セイ、何か武器は?」
セイ「3番目のスロットにビームサーベル!」
レイジ「こいつか!」
ラル「面白い!」
 再び距離を詰めたビルドストライクがグフの迎撃の嵐をを掻い潜る。
ラル「この動き……アムロか!?」
セイ「(僕が求めていた……理想の……!)」
レイジ「これで、終わりだああ!!」
 Battle Ended
セイ「勝った……僕のガンプラが……」
ラル「見事な勝利だった」
レイジ「面白れーな、これ。またやってもいいか?」
セイ「もちろんだよ!レイジ、一緒にガンプラバトルをやろう!君と一緒に戦いたいんだ」
レイジ「いいぜ。俺の宣誓でもあるしな」
ラル「ほう、これではモビルスーツの性能のおかげでもパイロットのおかげでも無くなってしまったな」
ラルさん「良いではありませんか。セイ君に良いパートナーが出来たのですから」
ラル「そうだな」
セイ「あっ、でもレイジってずっとここにいるの?」
レイジ「ああ。ママさんにお世話になるって決めた」
リン子「そうよ。レイジ君は昨日からここで暮らしているのよ」
セイ「そうなの!?」
レイジ「いつだって会えるぜ。もちろん、お前が祈れば俺はどこへだって駆けつける」

――――――

セイ「って事があったんだよね」
レイジ「ああ、俺達が会った時ってそんな感じだったよな」
アムロ「アリアンには戻っているのか?」
レイジ「いや、世界大会に1回優勝しただけじゃ戻らねえよ。もっともっと勝たねえとな」
アムロ「しかし、レイジ君がプラフスキー粒子とか、サイコミュ鉱物の事を全然知らなかったとは思わなかったな」
レイジ「まー、主要産業で輸出してるのは知ってたけどな。どう使うかなんて考えた事も無かったぜ。
    こういうのを知るのが社会勉強って奴なんだろうな」
アムロ「そうだな。それに、ガンプラバトルだって」
レイジ「ああ。もっと強くなって、無敵のファイターになって帰ってやるぜ!
    セイ、そん時はお前も来いよ。最高の相棒って紹介してやるからな」
セイ「うん!絶対現実になるって信じてる!」
ロラン「お代わりできましたよ」
リン子「今日はセイ君とレイジ君の優勝祝いなんだから、遠慮せず食べなさい」
レイジ「おお、待ってたぜ!どれもこれも旨そうだなー!!」
 終わり

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最終更新:2016年04月27日 14:26