25 名前:通常の名無しさんの3倍 :2015/03/23(月) 15:23:36.34 ID:4Gq8It7z0
 その日、キシリア=ザビはガンダム主人公兄弟達の家の前にやってきていた。

キシリア「失礼する」
アル「こんにちは」
キシリア「町内会の集まりのことでやってきた。
     今度みんなでやる祭りのイベントなのだが相談に来た。
     アムロはいるか?」
アル「いないよ。休日出勤だよ」

キシリア「そうか。それは大変なことだ。セレーネはいるか?」
アル「いないよ。休日出勤だよ」
キシリア「マイはいるか?」
アル「いないよ。休日出勤だよ」
キシリア「さっきと同じ返答ではないか!」

アル「だからウチには僕以外誰もいないよ。僕も今家に帰ってきたばかりだよ」

 キシリアは帰ろうかと考えた。
だがその立ち止まっているキシリアにアルが笑顔で声をかけた。

アル「ウチに来たら? 僕でよければ相談にのるよ」

26 名前:通常の名無しさんの3倍 :2015/03/23(月) 15:25:46.68 ID:4Gq8It7z0
 普段なら帰ろうかと考えるキシリアだが、
なぜか言われるがままに兄弟家の家の中に足を踏み入れた。
アルのあとに続いて部屋に入り、テーブルの前の座布団に座る。

キシリア「それでここに来たのは他でもない、町内会の祭りのことだが」
アル「ほうほう」
キシリア「町内会費から出る予算の配分のことだ。
     ジュースやお酒をもっと用意した方がいいのではないか?」
アル「ほうほう」

キシリア「具体的にはだが町内会の予算のコピーを持ってきた。
     私もこのスレをよくしたいと思っているのでな。
     というわけで実際の金額出すために電卓を用意してきた。
     この前の期の繰越金を使って……」
アル「ごめん、まったくわからないや」
キシリア「なら聞くな!」

 大声でつっこみを入れるキシリア。しかしアルは全く悪びれずに笑った。

アル「ごめんなさい。こういうのは上の兄弟にまかせっきりだから」
キシリア「ん? まあ、そうだな。その気持ちはよくわかる」
アル「それは僕が子どもだから?」
キシリア「ああ、そうか。それもあるが私は兄弟がいるからな。
     兄上には色々とまかせて、押しつけてきたものだ」

アル「へえ」
キシリア「小さい頃の話をしよう。例えばな……」

 キシリアとアルはそうして少しばかり雑談をした。
身をのりだして、キシリアの話を聞くアル。

キシリア「……そうして私は父に言ったのだ」
アル「へええ、家族想いなんだねえ」
キシリア「私がか?」
アル「うん」
キシリア「……うれしいことを言ってくれるな」

 顔をうれしそうにゆがめるキシリア。
アルは目の前の彼女にあることを言った。

27 名前:通常の名無しさんの3倍 :2015/03/23(月) 15:28:19.83 ID:4Gq8It7z0
 ここは同じくガンダムの主人公兄弟の家の中。
たださっきと違うのは台所にいるということである。
じゅうじゅうと音をたてるフライパン。せわしなく動く包丁。
それを使っているのはいつものここの主、ロランではなくキシリアである。

キシリア「まったくなぜ私がこんなことを……」

 ここでキシリアがどうして料理を作っているのか時間をさかのぼって説明してみよう。

アル「ウチには誰もいないから昼ご飯作ってよ」
キシリア「ここの兄弟で普段料理を作っているのは誰だ?」
アル「ロランだよ。ロラン兄ちゃん」
キシリア「電話で連絡すればよいではないか。それか作り置きの弁当があったり」
アル「連絡つながらないよ。ロラン兄ちゃんは今日朝早く何かの用事で出て行ったよ。
   昼飯の用意が出来ない日もあるよ」

キシリア「ではクリスは? 普段仲がいいしこういう時だからこそ……」
アル「家にいないよ。休日出勤だよ」
キシリア「ではバーナード=ワイズマンは?」
アル「家にいないよ。夜にクリスとデートする場所の下見にいったよ」
キシリア「誰もいないではないか!」

アル「そうだよ。バーニィと一緒にクリスとデートするスポット、
   デパートとかレストランとか色々見てたんだけど、
   やっぱり僕がいちゃバーニィは集中できないからね。
   結局家に戻ってきたんだよ。そしたら誰もいなくてさ」

 というわけで誰もいないのでキシリアはこの家で料理をしているのだ。
居間のテーブルの上に置かれたお昼ご飯は彼女の料理レベルの高さを示していた。

アル「おいしいそうだねえ。いただきます、と。おいしい!」
キシリア「やはり手料理を褒められるのはうれしいものがあるな」
アル「ギレンさん家はご飯大丈夫なの?」
キシリア「カップラーメンがあるはずだ。
     それにしてもこの家には袋入り麺の一つもないのか」
アル「そういう時もあるよ」

 アルは用意されたデザートまでおいしくたいらげた。
キシリアはそのアルの目の前で自ら作った料理を食べる。
食事を終えたキシリアはおもむろに自分の上着を脱いだ。

キシリア「食後の運動でもするか」
アル「えっ、それって何?」
キシリア「体の運動だ。気持ちのよいことだ。ふふ……」

28 名前:通常の名無しさんの3倍 :2015/03/23(月) 15:31:00.90 ID:4Gq8It7z0
 ここはこの兄弟スレの公園。青い空が一面に広がっている。
『ご自由に球技遊びをして下さい』と書かれた看板の立つ広場で、
キシリアとアルはキャッチボールをしていた。
公園によってはボール遊びが禁止なところもあるのだ。
幸いにしてここはそうではないのでキシリアはアルの家から見つけてきた
ゴムボールを使ってキャッチボールをしている。

アル「……というわけでね『ザクとは違うのだよ、ザクとは』なんて言われたんだよ。
   ザク派の僕としてはフンガイしちゃうなあ」
キシリア「それはグフよりザクの方が弱そうだから仕方あるまい。
     男子のメンツなどどうでもよい。勝てばよい」
アル「ええ?」

 そう言いつつ、話すアルの表情は明るい。キシリアも同様だ。
アルの投げた球は確実にキシリアに向かい、キシリアの投げた球は
糸をひくようにアルの手の中へと吸い込まれた。

キシリア「シャアと名乗るキャスバルともこうして遊んでやったことがあるぞ」
アル「えっ、キャッチボールしたの?」
キシリア「ああ、したぞ。
     その後、大人になってからシャアは赤いからという理由で広島ファンになってな」

アル「うんうん」
キシリア「私は広島ファンではないのでな。絶対応援しない」
アル「あのシャアって人、ザクが全部赤いものであるべきだと勘違いしてるよね。
   僕もカープはちょっとね。ザクは好きだけど」

 キシリアはプロ野球のスカウトが思わず見惚れてしまうような
きれいな投球フォームで球を投げた。

キシリア「どうやら私達は気が合いそうだな」
アル「お互いにね。ザク派じゃないのが残念だけど。ご飯ありがとう」
キシリア「今日はアルの母親代わりにでもなれたか?」
アル「ううん、なんかね、お姉ちゃんっていうか……。恋人みたいな感じ」

 突然キシリアが膝を折り、腰を折ってうずくまった。

アル「えっ!? どうしたの!? お腹でも痛くなった!?」
キシリア「アルがいう『恋人』と私の思う『恋人』は違うと思うんだが……。
     ……『恋人みたいな感じ』か。うれしいな」

29 名前:通常の名無しさんの3倍 :2015/03/23(月) 15:33:54.88 ID:4Gq8It7z0
 キシリアが帰ってしばらくしてアムロがクリスとともに家の前に戻ってきた。

アル「おかえり! クリス、早くデートに行かなきゃ! バーニィが待ってるよ!」
クリス「もう! どこまで知ってるのこの子は。仕事から帰ってきたばっかりなのに」
アル「でも事実なんでしょ?」
アムロ「ふうん、そうか。ところで今ウチには何人いるんだ?」
アル「全然。アムロ兄ちゃんが帰ってきたの最初だよ」

アムロ「あれ? じゃあアル一人か」
アル「うん。それでね。今日は素敵な女の人に遊んでもらったの」
アムロ「へえ」
アル「自分の兄さんのことを兄上なんていうの」

アムロ「兄上? それはまた古風な言い方だな。三つ指ついて人を出迎えたり、
    和服着てそうなイメージだな。私見だが」
アル「和服は着てたら似合うかもねえ。それでその人と公園でキャッチボールしたの」
アムロ「それはよかったなあ。そこまでしてもらって悪かったなあ……」

アル「その人、野球は広島ファンじゃないんだよ」
アムロ「それは素晴らしい! 絶対、間違いなく素晴らしい! 100%素晴らしい!」
クリス「アムロさんセリーグは広島ファンじゃないから……」

 その頃、キシリアはブライトの家を訪問していた。
居間のテーブルの上には町内会の予算のコピーが置かれている。

ブライト「なるほど。こんなに繰越金が余っているなら、
     今少しでも使いたくなる気持ちもわかるな」
ミライ「キシリアさん、何かあった? とてもうれしそうだけど」
キシリア「実は今日は素敵な殿方に手料理を」
ミライ「まあ、手料理を」

 それを聞いて、持ってきた書類のコピーに目を通すキシリアには
やわらかな微笑みがうかんでいた。

ハサウェイ(うわっ、ここの町内会、こんなにお金持ちなんだ?
      マフティーの組織の予算に少しくれないかなあ)

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最終更新:2016年05月09日 10:37