190オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2019/07/07(日) 15:51:30.23ID:CIvWUBjy0
日登町西区上空:マザーバンガード

サンダース「隊長、署内にいた民間人は全員無事です」
シロー「そうか。よかった」
ミケル「これも海賊たちが助けに来てくれたお陰ですね」

 ミケルの何気ない一言に、シローは眉間に皺を寄せた。

ミケル「あっ……! すいません」
シロー「いや、気にするな。本当のことだ」

 そこへ、先行偵察から戻ったクロスボーンガンダムX1とダークハウンドが、格納庫に入ってくる。

キンケドゥ「朗報だ、警察諸君。住民たちは中央区の学校で全て引き受けてくれるそうだ」
アッシュ「あそこはまだデビルガンダムたちの被害を受けていない。キミたちも少しは休めるだろう」
シロー「すまない、礼を言う」
キンケドゥ「だから気にするなと言った」
アッシュ「我々は我々のすべきことを成したまでだ。それに、事態はまだ終わっていない」
キンケドゥ「それはアンタもそうだろう、お巡りさん?」
シロー「ああ、そうだな」

 シローは大きく頷いた。

シロー「俺たちは、一刻も早く町の危機を救わなきゃならない。そのためにも、まずはアムロ兄さんたちのケンカを止めないと」
キンケドゥ「なら、一つアンタに教えておかなければならないな」
アッシュ「我々の『協力者』が教えてくれた情報だ」
シロー「情報? なんだ、もったいぶらずに早く言ってくれ」
アッシュ「驚くなよ? アムロ・レイの分裂から始まったこの事件。一見バラバラに見えて……実は裏で全ての糸を引く黒幕がいる」
サンダース「黒幕だって!?」
ミケル「一体だれなんですかソイツは!」
キンケドゥ「それは、フル・」

 その時だった。

『トランザム………バースト!!』

 日登町全域を、高濃度のGN粒子の奔流が津波のように覆いつくす。
 それはシローたちのいるマザーバンガードも例外ではない。

シロー「これは……! 頭の中に声が直接響く。刹那か?」
キンケドゥ「トランザムバースト!? こんな時に!」
アッシュ「やばい! すぐにここから逃げるぞキンケド」

 突然の事態に、キンケドゥ・ナウとキャプテン・アッシュはキャラも忘れて狼狽した。

 何故なら、GN粒子によって増幅された脳量子波により、
 人々は言葉を交わさなくとも誤解なくわかりあえるようになる。
 そう、さながら全裸で向かい合ったかのように……

 シロー(全裸)「あ」
 シーブック(全裸)「げ」
 アセム(全裸)「う」
 シロー(全裸)「おまえたち……ここでなにやってるんだ?」
 シ・ア「バレたーーーーーーーーーーーー!!?」

192オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2019/07/07(日) 23:27:35.00ID:CIvWUBjy0
日登町中央区:ガンダム兄弟の学校

 時刻は少し遡る。
 学校の校庭にはダブルオーライザーの姿があった。
 両隣にはビグ・ラングとユニコーンガンダム、それからZガンダムが囲むように立っている。
 機体は、それぞれ太いコードで結ばれていた。

カミーユ「準備はいいか」
マイ「いいかい刹那。これからダブルオーライザーにはGN粒子で町全域を包み込んでもらう」
アルレット「壊れたオーライザーの分、細かい調整はこっちでするから刹那はトランザムに集中してね」
マイ「トランザムバーストのタイミングはこちらで指定するよ」

 トランザムバースト。
 それは覚醒したイノベイターと2機のGNドライブが揃った時だけ発動できる特殊なトランザム。
 高濃度のGN粒子により形成されたフィールドは、人間が皆、普段わずかに発している脳量子波を数百倍に引き上げる。
 マイたちはこれによって日登町全住人の意識を繋ぎ、封鎖された通信網の代わりにしようとしているのだ。

ジュドー「で、ユニコーンとZはサーバとか増幅器の代わりか」
バナージ「上手くいくんですか、これ?」
アルレット「理論上はね」
マイ「とにかくやってみよう。刹那、トランザムを起動してくれ」
刹那「了解……トランザム!

 ダブルオーライザーの全身が紅く輝き、GN粒子が放出されはじめる。

キャプテン「大気中のGN粒子濃度上昇。量子空間の拡大を確認」
マイ「いいぞ……このまま行こう。トランザムバーストだ!」

 ダブルオーライザーの発光はさらに激しく、粒子は激流のように四方に迸る。

カミーユ「ぐっ! なんて負荷だよ」
アルレット「大丈夫、まだ想定の範囲内!」
刹那「トランザム………バースト!!」

日登町北区

ヨナ「これは……人の意識が繋がっていく!」
キラ「あ、学校の方からGN粒子反応。どんどん広がってる」
キオ「刹那兄ちゃんだ!」

193オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2019/07/07(日) 23:30:04.10ID:CIvWUBjy0
日登町西区

ヴィダール「頭の中に声が直接聞こえるだと? 一体なにが起こっている!」
フリット「刹那兄さんのトランザムバーストですよ!」
ベルリ「GN粒子によって人の意識だけがピックアップされていく……全裸に見えるってこういう理屈か」
ウッソ(全裸)「くそう! カメラを持ち込めたらお姉さんたちの裸撮り放題なのに!」
ティファ(全裸)「ガロード……」
ガロード(全裸)「テテテテテティファ!? なななななんで裸に!!」
フリット(全裸)「しっかりしてガロード兄さん! このヴィジョンはあくまで脳がそう誤認してるだけだから!」
ウッソ(全裸)「無理ですよ、もうとっくに気を失ってます」
ガロード(全裸)「(鼻血を出しながら幸せそうな顔で失神中)」

マザーバンガード
シロー(全裸)「アセム……シーブック……」
シーブック(全裸)「い、いやシロー兄さん、あのねこれはね」
アセム(全裸)「シーブック! 下手に取り繕ってもこの空間じゃ無駄だ」
シロー(全裸)「おまえたち……まさか」
シーブック(全裸)「ああ、もう! ごめん、シロー兄さん! 今まで黙ってたけど実は俺たちが」
シロー(全裸)「俺の危機を察して、助けに来てくれたんだな?」
シーブック(全裸)「へ?」
シロー(全裸)「だけど間に合わなくて、お前たちもこの船に救助された……そうだろう?」

 シーブックとアセムは顔を見合わせた。

シーブック(全裸)「ヒソヒソ(これ、ひょっとして俺たちがキンケドゥとアッシュだって)」
アセム(全裸)「ヒソヒソ(うん、気づいてないっぽいな)」

 二人は無言でアイコンタクトを交わすと、すぐにシローに向き直る。

シーブック(全裸)「そ、そうなんだよシロー兄さん! 俺たち兄さんを助けにきたんだ!」
アセム(全裸)「でも相手が相手だから全然敵わなくてさ。すんでのところで脱出してきたよ」
シロー(全裸)「そうか……大変だったんだなお前たちも」
シーブック(全裸)「な、なんかゴメンね。役に立たない弟で」
シロー(全裸)「そんなことはない! 俺はとても嬉しいよ。兄弟で力を合わせて、絶対にリベンジだ!!」
アセム(全裸)「お、おー…!」

 満面の笑みを浮かべてサムズアップするシローを見て、罪悪感できりきりと胸を痛めるキンケドゥとキャプテン・アッシュであった。

シーブック(全裸)「よかった……シロー兄さんが思った以上に天然で」
アセム(全裸)「ほんとそれ」

194オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2019/07/08(月) 01:37:47.53ID:EwkJTEmk0
日登町中央区:再び学校

 GN粒子の奔流は遂に町全域を覆い、長大な脳量子波のネットワークを構築した。
 人々は謎空間に立つ全裸の自分たちに、はじめは少し困惑しているように見えた。
 が、そこは人がミンチになっても復活する町の住人。
 すぐに平静を取り戻す。

ルー(全裸)「あらルナ。アンタまたちょっと胸大きくなったんじゃない?」
ルナマリア(全裸)「いやいやそういうルーさんこそ中々ご立派なモノをお持ちで」
クーデリア(全裸)「な、なんですかこれは! わたし、どうしていつのまに服を脱いで」
カテジナ(全裸)「クーデリアさん……あなた意外と着痩せするタイプだったのね」
ファ(全裸)「うんうん」
クーデリア(全裸)「み、見ないでくださぁい!!」
ルイス(全裸)「あ、あれ刹那くんじゃない?」
ネーナ(全裸)「ホントだ! せっちゃ~ん! おお~い!」

 ネーナ(全裸)は元気よく、ブンブンと手を振った。
 しかし刹那はトランザムに集中し、周囲に気づく様子はない。
 代わりに彼の隣に座っていたマイが口を開く。

マイ「日登町の皆さん。突然こんなことに巻き込んでしまい申し訳ありません」

 マイは立ち上がり、人々に向かって深々と頭を下げた。

マイ「僕はオリヴァー・マイ。今日は皆さんにお伝えしたいことがあり、兄弟の力を借りてこのような場を設けさせていただきました」
ジュドー「固い! 固いってマイ兄さん! 仕事じゃないんだからさあ」
劉備「まあマイらしいって言えばマイらしいけどな」
マイ「お伝えしたいことと言うのは他でもありません。この町を今襲っている騒動についてです……」

 マイは極めて冷静に、かつわかりやすく的確に騒動のあらましと現在わかっていることを説明した。

 分裂してケンカを続けるアムロとシャア軍団のこと、それに同期するように出現した怪物MSのこと、
 『ヅダエール』のこと、そして全ての黒幕と思しきフル・フロンタルとその一派のこと。
 人々は固唾をのんでその言葉に耳を傾けていた。

マイ「……以上が僕たちが今わかっていることの全てです」
パーラ「なんか、薄々気づいてたけどエラいことになってたんだな」
ザコ「ほんとザコ。アムロさんたちがケンカしてるタイミングでデビルガンダムが襲ってくるなんて、悪いことは重なるものザコね」
グラハム「果たしてそれも偶然だろうかな」

195オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2019/07/08(月) 01:41:58.86ID:EwkJTEmk0
 その時、GN粒子の放出を続けていたダブルオーライザーの肩部で小さな爆発が起こった。
 すると同時に、人々の意識を繋げていた空間がゆらぎ、崩壊し始める。

刹那「くっ! ここが限界か!」
カミーユ「こっちもバイオセンサーが焼ききれそうだ!」
バナージ「もう少しだけ頑張ってくれ、ユニコーン!」
アルレット「マイ、量子空間崩壊まであと1分切ったわ!」
マイ「皆さんにお願いがあります。僕たち兄弟は全てを懸けてこの騒動を終わらせます。そのために、みなさんのお力を貸していただきたいのです。
   なんでも構いません。少しでも怪しい現象や噂を耳にしたら僕たちに教えてください。
   全ての情報を記録して分析する。それがきっと、フル・フロンタルの企みを打ち砕くカギになると僕は」

 だが、マイが語り終えるより早く量子空間は砕け散り、繋がっていた人々の意識はまたバラバラに戻った。

刹那「……トランザムバースト、解除」
アルレット「あ~GNドライブから変な煙が出てる。やっぱ無理させすぎちゃったか」
刹那「もう俺は戦えないのか、アルレット姉さん」
アルレット「動かすことくらいなら時間が経てば出来るでしょうけど、トランザムは無理ね。専門家に一度見てもらわないと」
ジュドー「まあやるだけのことはやったでしょ。お疲れ、刹那兄。マイ兄もね」

 ジュドーから手渡されたドリンクを受け取りながら、マイは大きく息を吐いた。

カミーユ「なんだよ、本当に疲れてるなマイ兄さん」
マイ「当然だよ。そもそも僕は、こういう人前で何かを言ったり演説したりするのは慣れてないんだ。言いたい事だって、あれでちゃんと伝わったか」
バナージ「いや、立派だったと思いますよ俺は」
キャプテン「私もそう認識している」

 兄弟たちの賛辞の声。マイは珍しく、照れくさそうに笑った。

マイ「コホン。ともかく、これでフル・フロンタルの計画に少しでも影響を与えられればいいんだけど」
リタ「それならもう、結果は出てるんじゃない?」
劉備「結果ってどういうことだ?」

 その時、ずっと沈黙していた通信機に突然大きなノイズが入った。
 やがてスピーカーから聞こえてくる、よく見知った声。

ヨナ『……し、もしもし! 聞こえてるかマイ!』
シロー『通……害が突然直って……聞こえてるなら返事をしてくれみんな!』
マイ「ヨナ兄さん! シロー兄さん!」

 その瞬間、日登町全域で発生していた通信障害は一斉に復旧した。
 ガンダム兄弟は知る由もないが、それは>>50で
 フル・フロンタルが想定していた30分より、5分も早い。

フル・フロンタル「……やってくれるな、ガンダム兄弟」

 どこか閉ざされた空間。
 独りきりのコクピットでフル・フロンタルは愉快そうにそう呟いた。


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最終更新:2023年02月22日 11:02