840オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/08/31(月) 01:49:09.17ID:q1k0DyKd0
 AM 05:52 ネオジオン社:森の中の湖

 ガンダムDXとガンダムアシュタロン、ガンダムAGE-2とガンダムヴァサーゴ。
 4機のMSは、時折相手を入れ替えながら空中で激しく切り結ぶ。

ガロード「答えろ変態兄弟! おまえらどうしてセレーネ姉さん『なんか』を攫ったんだ!」
アセム「お前らが攫ったのはセレーネ姉さんだぞ! 
    このスレに初登場してから大分経つのにヒロインぽい扱いなんて殆どされたことのないあのセレーネ姉さんだぞ!?」
ガロード「言え! いったいどんな特殊な理由でお前らはセレーネ姉さんを攫ったんだ!」
オルバ「やれやれ、実の姉に向かってひどい言い草だね。攫った僕らが呆れるよ」
シャギア「セレーネ・マクグリフを放っておけば、いずれ彼の計画に支障をきたすことになった。だから口封じさせてもらった。それだけのことだ」
アセム「『彼の計画』……? フル・フロンタルのIMD計画か」
ガロード「お前らはIMD計画のこと、全て知ってるんだな!? 答えろよ! アイツは一体何をしようとしてるんだ?!」
オルバ「質問ばっかりだね、君たちは!」
シャギア「仮に知っていたとして、君に教えてやる義理はない!」

 再び睨み合う4機。そこへコウのガンダム試作1号機がやってくる。

コウ「あ、いたいた! お~い、アセム、ガロード!」
ガロード「コウ兄!」
アセム「コウ兄さん、あのネオ・ジオングは? もう倒したの?」
コウ「まさか! なんとか隙を突いて逃げ出してきたよ。ただ足回りにダメージは与えたから、早々追っては来れないはずだ」
ティファ「……ネオ・ジオングに足はありませんけどね(ポツリ」
ガロード「え、なんか言ったかいティファ?」
ティファ「ううん、何も」
アセム「ともかくこれで3対2だ。フロスト兄弟とも一気にケリをつけて、早く姉さん探しを……」
シャギア「いいや、戦況は3対3。振り出しにもどっただけだ」
コウ「なんだって?」
オルバ「まさか君がゾルタンに痛手を負わせるとは思わなかったけどね。そのせいで彼、随分お冠みたいだよ」
ガロード「彼って……」
コウ「そんな、バカな!」

 振り返った3人は我が目を疑った。
 ブースターを破壊されたはずのIIネオ・ジオング、
 その巨体がこれまでを上回る機動力でこちらに迫ってきているのだ。

アセム「あの速さ、いったいどういうカラクリだ?」
ティファ「多分、アレのせいです」

 そう言ってティファが指差したのは、IIネオ・ジオングの背中に展開されたリング状のユニットだ。
 怯える声で彼女は呟く。

ティファ「感じます……アレはとてもよくないもの。この世界の理を塗り替えてしまう力……!」
ゾルタン「そうだァ! これがハルユニットの真髄! ネオ・ジオングのサイコシャードというものだ!!」

 ゾルタンが発生させたサイコシャードは周辺の物理法則を書き換え、
 重力すら無視してその機体を縦横無尽に動かしている。

841オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/08/31(月) 01:50:05.69ID:q1k0DyKd0
コウ「バナージのユニコーンといい、サイコフレーム入りの機体はなんでもアリかよ……!」
ゾルタン「そういうことだ! ついでにこんなこともできるんだなァこれが!」

 一瞬、サイコシャードがゆらめくと、IIネオ・ジオングの両腕からオーロラのような光の束が現れた。
 光の束は生き物のようにうねると、ガロードのDXに向けて襲い掛かる!

ティファ「避けて、ガロード!」
ガロード「ダメだ、間に合わない!」
アセム「ちいっ!!」

 咄嗟にアセムはAGE-2でDXを突き飛ばした。
 だが自身は避けきれず、右腕が光の束にさらされる。

アセム「まずい、なんだこれ!?」
コウ「アセム!」

 ライフルを構えていた指先から、AGE-2の右腕は連鎖的に壊れていく。
 危険を感じたアセムは咄嗟に肩から先を切り落とし、それ以上の破壊を防いだ。

オルバ「兄さん、あの現象は」
シャギア「物理的破壊もなしに、武装が勝手に自壊していく……あれがサイコフィールドによる干渉波か」
コウ「リタ義姉さんがやってた、時を戻す力の親戚みたいなものか!」
ガロード「ごめんアセム兄! 大丈夫か!」
アセム「大丈夫だ。たかが右腕を持っていかれただけ、まだ戦える!」
ゾルタン「健気だねえ。だがそんな意地、すぐに張らなくて済むようにしてやるよ!」

 そんな彼らを嘲笑うかのように、ゾルタンは再びサイコフィールドを展開、
 今度は試作1号機とDXの駆動系に強制介入し、その動きを完全に封じる。

コウ「これは、金縛り!?」
ガロード「動け! くそ、動けよDX!」
アセム「コウ兄さん! ガロード!」
ゾルタン「最初の獲物はお前だ青いガンダム! 兄弟たちの前で、バラバラになれぇ!!」
アセム「く……!」

 放たれたサイコフィールドの干渉波は一直線にAGE-2に向かう。
 やられる、アセムがそう覚悟を決めた時だ。

ティファ「ダメ!!」

 だが、そうはならなかった。
 サイコフィールドの光は突如現れたMS数機によって防御され、
 AGE-2は窮地を脱していた。

ゾルタン「なんだ、増援か? どこからきたものだ!」
ガロード「あれはGビット! てことはまさか?!」
ティファ「はい……私が動かしています」

 いつになく真剣な顔で、ティファが答える。

ティファ「あのマシンは……この世界にあってはいけないもの。だからD.O.M.E.にお願いして、力を貸してもらいました」
ガロード「マジかよ……」

842オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/08/31(月) 01:50:47.06ID:q1k0DyKd0
オルバ「これは驚いた。あのティファ・アディールが進んでフラッシュシステムを使うなんてね」
シャギア「それだけネオ・ジオングを……いや、ゾルタン・アッカネンを危険とみなしたか」

 ティファが操る10機のGビットはIIネオ・ジオングを包囲し、正確に攻撃を加えていく。
 その一糸乱れぬ動きに、ゾルタンは翻弄される。

ゾルタン「なんだこの無人MS? いや違う、こいつらの中には人の意思が存在する。これはビットMS、ならばつまり!」

 何かに気づいたゾルタンは、にやりと残忍な笑みを浮かべてDXを見た。

ゾルタン「そこにいたのか、ニュータイプウウゥゥ!!」
ティファ「…………!」
ゾルタン「ようやく合点がいったぜ。今までの戦闘、すべておまえがこいつらを操っていたってわけか。
     妙だと思ってたんだ。でなきゃ俺がただの人間にいいようにされるワケないもんなあ!」
ガロード「何言ってんだ! ティファは普通の女の子だ! 俺たちを操ってなんか……」
ゾルタン「うるせえ黙ってろオールドタイプ!」
ティファ「お願いです、もうこれ以上そのマシンを使うのはやめてください。でないと……」
ゾルタン「やめる? ハイそうですかって聞くわけねえだろ。ましてやニュータイプの云うことなんざ!」

 叫びと共にゾルタンはIIネオ・ジオングの肩部大型メガ粒子砲を発射、
 腕部の有線式ファンネル・ビットと併せて、拡散するメガ粒子がGビットの半数を焼き払う。

ゾルタン「ハハ、能力は本物でも戦闘は素人だな! タネさえわかればこんな人形どうってことはない!」 
ティファ「ううっ……!」
ガロード「ティファ!」
ティファ「大丈夫、まだやれます。せめて、あの背中のユニットを壊さないと……!」
ゾルタン「まだやるか。なら、こっちもお前に相応しいやり方でやってやるよ!」
コウ「サイコフィールドが発生していく……! またあの自壊させる攻撃が来るのか?」
ゾルタン「この俺がそんな芸のないことするわけないだろ! とっておきだ、喰らえよニュータイプ!」

 IIネオ・ジオングは胸の前で両手を組み、サイコフィールドを共振させた。
 するとサイコフィールドは変質し、波紋状のエネルギーになってガロードたちに襲い掛かる!

ティファ「これは……い、イヤ、あっ、あ…あぁぁぁぁぁっっっ!!」

 突如頭を抱えて苦しみだしたティファ。
 それにひきずられて、残っていた6機のGビットの動きも止まる。

ガロード「ど、どうしたんだよティファ!? 急に声を……あ、ぐあああああああ!!」
アセム「ガロード! ティファ!」
ゾルタン「見たかニュータイプ! サイコフィールドを応用すればこんなこともできる。これがゲル結界というものだ!!」
コウ「ゲル結界? なんだよそれは!」
ゾルタン「思考回路を破壊するビームだよ! 感応性の高いニュータイプには効果覿面だろ、ハハッ!」
アセム「そんな危険なものを……ぐうっ!」
コウ「きょ、距離が離れている僕たちまで頭痛が……!」
ゾルタン「さあ、早く逃げ出さないと数分で脳細胞がぶっ壊れちゃうよぉ!? もっとも、もう指一本すら動かせないだろうけどなあ!」

843オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/08/31(月) 01:51:55.89ID:q1k0DyKd0
 ゾルタンの言う通りだった。
 IIネオ・ジオングの放つゲル結界。その中心にいるガロードは、激痛で身動き一つ取れない。
 隣で苦しむティファの手を取ることすらできないのだ。

ゾルタン「ビットMSが止まった。ハハ、もう死んだか? それとも意識を失っただけかな? 
     どっちにせよ数分の誤差で結果は同じ事だがな!」
ガロード「ティ、ティファ……あぐっ、うぅ、くそ……動けよ俺の身体……!」
コウ「ガロ―ド! ティファちゃん!」
アセム「このままじゃ二人が……コウ兄さん!」
コウ「わかった、やるぞ!」

 二人は顔を見合わせて頷くと、一気にスラスターを噴かし、IIネオ・ジオングに突貫する!

アセム「うおおおおおおお!」
ゾルタン「うン? なんだテメエら!」

 不意を突かれ、二機のガンダムに取りつかれたIIネオ・ジオング。
 振り払おうと試みるが、彼らはしぶとくしがみつき続ける。

ゾルタン「くそっ! うざったいんだよお前ら! ネオ・ジオングから離れろ!」
コウ「絶対に離すもんか! ラガーマンを舐めるなよ!!」
ゾルタン「このオールドタイプが……やることがイチイチ見苦しいんだよ!」

 業を煮やしたゾルタンは、腹部に内蔵されたハイメガ粒子砲を発射した。
 胸部に取りついていたアセムのAGE-2は、その直撃を受け両ひざから先を失う。
 だが

アセム「今だガロード! こいつの気がそれているうちに、そこから脱出を!!」
ガロード「コウ兄、アセム兄……! く、うおオオオオオオオ!!」

 二人の兄の想いに励まされ、ガロードはGコンを握る手に残った力の全てを注ぎ込んだ。
 ガンダムDXはバーニアを全力で噴射し、ゲル結界の効果範囲から抜け出す!

オルバ「! 兄さん、ガロードがゲル結界から脱出したよ」
シャギア「ほう、やるな。さすがは我々のライバルだ」
ゾルタン「なん……だと? バカな! 一度発動したゲル結界から脱出できるはずが……!」

 ガロードの脱出に、一番驚いているのは他でもないゾルタンだった。

844オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/08/31(月) 01:53:54.25ID:q1k0DyKd0
ゾルタン「オイ、貴様一体どうやって逃げた! ニュータイプでもなんでもないお前が、どうやって……」
ガロード「はあ、はあ、そんなの、根性に決まってんだろ!!」
オルバ「根性だってさ、兄さん」
シャギア「いかにも彼らしい、非合理的な答えだなオルバよ」
ゾルタン「訳がわからない……!」

 歯噛みしながら両手で顔を覆うゾルタン。
 すると彼の困惑に呼応するようにサイコシャードの光が弱まり、
 IIネオ・ジオングは地面に墜落する。

アセム「どうしたんだ、こいつ一体?」
コウ「わからないけど今がチャンスだ。一度ひいて……」
ティファ「待って……! 待って……ください!」
ガロード「ティファ! 気づいたのかい? 身体は平気? 頭は?」
ティファ「平気、です。でも今は私より、『彼』のことを助けてあげて」
ガロード「『彼』?」

 そう言ってティファが指差したのは、沈黙を続けるIIネオ・ジオングだった。

アセム「『彼』って、まさかゾルタン・アッカネンか!?」
ティファ「はい」
ガロード「なんでだ! あんなヤツ放っておけばいいだろ! あいつはウチの家を燃やしてセレーネ姉さんを攫って、その上ティファをこんな目に……」
ティファ「でも、このままでは『あの人』はマシンに取り込まれて壊れてしまう。かつてのルチルやカリスのように」
ガロード「!?」
コウ「じゃあティファ、君がGビットまで持ち出したのは、はじめからアイツのことを救おうと……!?」

 コウの問いかけにティファはこくりと頷いた。

ティファ「でも、私の言葉では届きませんでした。だけど、あなたたち三人なら……きっと……」
ガロード「!? ティファ! しっかりしろティファ!」
ティファ「おねがい、ガロード……」
ガロード「ティファ!!」
ティファ「…………」
コウ「ガロード! どうした? ティファちゃんは無事か?」
ガロード「……うん、大丈夫。また気を失っただけだ。それよりコウ兄さん、アセム兄さん」
コウ「わかってる、ガロード」
アセム「やろう、ティファちゃんのためにも」

オルバ「決意は立派だけどね」
シャギア「そんなボロボロの機体で、IIネオ・ジオングを本当に沈める気かな、アセム・アスノ?」
ガロード「フロスト兄弟……!」

845オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/08/31(月) 01:55:34.40ID:q1k0DyKd0
アセム「俺を舐めるなよ。確かに機体はボロボロだけど、まだ左腕が残ってる。最悪、弾避けくらいなら」
シャギア「そう息巻くな。戦うつもりならば、そこにティファ・アディールの置き土産があると教えている」
アセム「え?」

 アセムが振り返った先には、傷ついたGビットの姿があった。
 シャギアの言う通り、その腕にはAGE-2用の換装パーツを抱えている。
 対Xラウンダー用の砲戦装備、ダブルバレットだ。

コウ「これ、AGE-2の……ティファが持ってきていたのか」
オルバ「早く換装したらどうだいアセム・アスノ。その間くらいは待っててあげるから」
アセム「い、言われなくても!」
ガロード「おまえら……さっきからどういうつもりだ。どうして俺たちを助けるようなマネをする?」
シャギア「勘違いするなよガロード・ラン。別にお前たちのためにどうこうやっているわけではない」
オルバ「僕らがここにいるのはね、ゾルタン・アッカネン、彼を助けるためさ」
ガロード「え?」
シャギア「まあ、先ほどのゲル結界だったか? あんなものを使われては我々も手の出しようがなかったが」
オルバ「傍観もここまでだね。……見ろ、ここからの彼はもう、誰も制御できないぞ」

 オルバの見つめる先――IIネオ・ジオング。
 ずっと沈黙していたその巨体が、再び動き出そうとしている。

ゾルタン「く、くく、ハハ、ハハ。もういい。もうウンザリだ」

 その背中に光るサイコシャードは、先ほどよりも遥かに凶暴な輝きを宿している。

ゾルタン「本当にウンザリだ。お前ら愚鈍なオールドタイプも、傲慢なニュータイプも!」

 そう言いながらIIネオ・ジオングは今度は両腕を地面に突き刺した。
 すると地面が小刻みに揺れ始め、やがて地割れを伴うほどに大きな揺れになる!

コウ「な、なんだこれ?! なにが起こっている!」
オルバ「兄さん、これは」
シャギア「ああ、非常にマズいな」
ガロード「おいお前! 今度はいったい何をするつもりなんだよ!」
ゾルタン「……ネオジオン社の地下には、ヘリウム3の備蓄用タンクがある」
コウ「!?」
ゾルタン「この町のエネルギー10年分を賄えるほどの量だ。もし、サイコシャードでそれを同時臨界させたらどうなると思う?」
ガロード「どうなるって……どうなるんだ?」
コウ「この辺一帯……いや、日登町全域を飲み込むほどの、超巨大な爆発が発生する……!」
ガロード「なんだって!!?」
アセム「おいやめろ! そんなことしたら、お前だって巻き込まれるんだぞ!」
ゾルタン「いいんだよ! どうせもうすぐ消滅する町なんだ。だったら早めに、さっぱりさせようぜええエェェェェ!!」
コウ「こいつ……!!」
ガロード「コウ兄! アセム兄!!」
アセム「わかってる! こいつは……ここで必ず止めなきゃならない! 俺たちの力で!!」

 一瞬のアイコンタクトの後、三機のガンダムはIIネオ・ジオングに向けて一斉に突撃した。


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最終更新:2023年05月01日 13:32