132オールアムロVSシャア軍団VS
ガンダム兄弟2021/05/05(水) 00:16:39.60ID:V1I4teWx0
AM 07:25 アクシズ:後部ユニット内部
誰もいないアクシズでアムロとヨナ、二人だけの殴り合いは続いていた。
いや、正確に言うならば、ヨナのナラティブガンダムが、νガンダムに一方的に殴られ続けていた。
学生時代は『白い悪魔』と呼ばれ、他校の不良からも恐れられていたアムロ。
今だ衰えを見せないその力の前に、ヨナは手も足も出ない。
ヨナ「はあ、はあ、はあ……!」
アムロ「……まだ、やるか?」
ヨナ「当然だ!」
アムロ「そうかい」
猛打を耐え、足元をふらつかせながらみファイティングポーズを取ったナラティブガンダム。
だがν
ガンダムは間髪与えず、ガードをかいくぐってパンチを繰り出す。
顔面に強烈なストレートを叩きこまれ、ナラティブはまたしても無様に地面に這いつくばった。
しかし、それでも。
ヨナ「はあ……あっ!」
アムロ「まだ立つのか……?」
これまでの一方的な戦いで、ナラティブはもはやボロボロだ。
何度も殴られ続けた結果、V字アンテナは片方が折れまがり、メインカメラも砕けている。
それでもまだ戦う意思を見せるヨナを見て、アムロは首を振った。
アムロ「もう力の差は十分わかっただろう? まだやる気か?」
ヨナ「当然だ! 約束の10分はまだ終わってない! 俺もナラティブも、まだやれる!」
アムロ「そうかい!」
νガンダムは一歩踏み込んで距離を詰めると、足を振り上げてナラティブガンダムの顔面を蹴り飛ばした。
プロレス技でいうところのビッグブーツだ。
強烈な蹴りを受けて、膝から崩れ落ちるナラティブ。
今度こそ決まった。アムロはそう思った。だがしかし
ヨナ「ま、まだだ……まだ、終わっちゃいないぞ!」
アムロ「驚いたな。いつも大人しくてロクにケンカもしてこなかったヨナが。どうしてそこまでやる?」
ヨナ「理由があるからだ。理由があるから、俺はまだ、ここで終われない!」
アムロ「理由?」
ヨナ「知っているか、アムロ兄さん。リタが家に来てから、彼女、一度もちゃんと眠ったことがないって」
そう言ってヨナは、荒い息のままじっと兄を睨みつけた。
ヨナ「今のリタは、フェネクスに魂だけが宿っている状態だ。だからもし眠ったら、もう二度と目覚めないじゃないかって……
起きた時にはただのMSに戻っているんじゃないかって……そう言うんだよ」
アムロ「!!」
ヨナ「だから俺は……彼女が安心して眠るために、
もしリタがこの世界からいなくなる日が来ても、俺一人でちゃんとやれるってことを彼女に証明するために!
今ここで、あんたを倒す!!」
133オールアムロVSシャア軍団VS
ガンダム兄弟2021/05/05(水) 00:17:03.07ID:V1I4teWx0
雄叫びを上げながらがむしゃらに突撃するナラティブガンダム。
その気迫に一瞬たじろぎながらも、アムロは冷静に左フックで迎撃した。
強烈なパンチがナラティブの顔面に再び突き刺さるが……
アムロ「なにっ!?」
ヨナ「倒れて……たまるか!!」
そのパンチを、ナラティブは額のV字アンテナ部で受け止めていた。
そしてしっかりと両足で踏ん張り、じりじりとνガンダムへ歩み寄ると……
その顎に、強烈なアッパーカットを叩きこんだ!
アムロ「なんだと!?」
この戦いが始まってから初、いや、人生初めてのヨナからアムロへのクリーンヒット。
その衝撃に、νガンダムは受け身も取れずに背中から地面に叩きつけられる。
アムロ「ぐはっ!」
ヨナ「殴った……! 俺が、アムロ兄さんを、初めて……!」
アムロ「どういうことだ……? ヨナのヤツ、ここに来て急に動きがよくなっている?」
そこでアムロは気づいた。
ナラティブガンダムの全身に装着されたサイコフレームが、
先ほどまでの赤から緑色へと輝きを変えていることに。
アムロ「これは……ユニコーンガンダムと同じ? ヨナの想いを受けて、サイコフレームがオーバーロードしているのか!?」
ヨナ「俺の想いだけじゃない!!」
この機を逃すまいとナラティブガンダムはνガンダムに詰め寄り、首元を掴んで立たせた。
ヨナ「ここに来るまで、アル姉さんやキラにキオが俺の背中を押してくれた!」
そしてこれまでのお返しとばかりに、νガンダムの顔面を、殴る! 殴る! 殴る!
ヨナ「他の兄弟たちだってそうだ!
この事件が始まってから、兄さんがシャアさんと逆シャアごっこで遊んでいる間も、
みんな自分にできることを精一杯やったきた!
その姿は、偽物のニュータイプの俺にも力をくれる!
だから俺は、ここであんたに勝って、胸を張ってみんなのところへ帰るんだ!!」
アムロ「調子に……乗るな!!」
パンチの一瞬のスキを突き、νガンダムは巴投げでナラティブガンダムを投げ飛ばした。
そして今度はナラティブガンダムに馬乗りになり、容赦なく拳を振り下ろす。
134オールアムロVSシャア軍団VS
ガンダム兄弟2021/05/05(水) 00:17:47.20ID:V1I4teWx0
アムロ「何が兄弟の想いだ! 勝手に家を飛び出していった人間が、代弁者ヅラするな!」
ヨナ「勝手に家を飛び出したって……高校のころ、寮に行ったことを言ってるのか?」
アムロ「次男の癖に弟たちが小さくて一番手がかかるころにいなくなって……俺がどれだけ苦労したと思ってるんだ!」
ヨナ「ッ……! ふざけるなよ!」
ナラティブガンダムはνガンダムの顔を掴むと、力づくで馬乗りをひっくり返した。
そして今度は自分がνガンダムに乗っかり、顔面にパンチを浴びせる。
ヨナ「相談した時、『お前が決めたのなら応援する』って言ったのはアンタだろ!?
今になって恨み言をいうんなら、カッコなんて付けるな!!」
アムロ「うるさい! お前こそ、あの頃俺がどれだけ孤独だったかわかるのか!?」
ヨナ「孤独だって!?」
アムロ「ニュータイプに覚醒したはいいけど誰も俺の感覚をわかってくれない。
幼なじみだったフラウ・ボウや同級生のハヤトにも距離を取られる!
カミーユやシーブックがニュータイプに覚醒するまで、僕は家の中でも一人だったんだ!」
ヨナ「そんな……そんなこと! 言ってくれなきゃわかるはずないだろ!」
アムロ「だからお前は偽物のニュータイプなんだよ!」
ヨナ「ニュータイプ、ニュータイプって鼻にかけるな! ニュータイプになるまでは根暗でキラ並みのひきこもりだったくせに!!」
アムロ「そういうお前は子供時代だけは輝かしかったもんな! リタちゃんの七光りのおかげで!」
とても成人男性同士とは思えない、程度の低い罵倒を繰り返しながら二人は戦い続けた。
アムロ「このキノコ頭! 公然わいせつカット!」
ヨナ「黙れモジャモジャ! 一年中ランニングに縞パン!」
時にアンテナを引っ張り合い、時にカメラに指を突っ込むなど、その様子はまるで子供のケンカだ。
そして、AM 07:29
アムロ「はあっはあっ……!」
ヨナ「はあはあ、はあ……!」
荒い息のまま、二人は睨み合った。
いつの間にか、ナラティブはもちろん、νガンダムも負けず劣らずボロボロになっている。
アムロ「思ったより、はあ、粘りやがって……!」
ヨナ「はあ、はあ、当たり前だ。言っただろ、俺はアンタを倒すって」
アムロ「だけど、もう終わりだ。次で決めてやる」
ヨナ「はあっ、はあっ、望む、ところだ!」
ふらつく足取りのまま、二機はゆっくりと互いに歩み寄った。
そして、拳を振り上げ――――
135オールアムロVSシャア軍団VS
ガンダム兄弟2021/05/05(水) 00:18:33.92ID:V1I4teWx0
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二機が放ったクロスカウンターは、彼らの頭部を同時に破壊した。
136オールアムロVSシャア軍団VS
ガンダム兄弟2021/05/05(水) 00:19:15.08ID:V1I4teWx0
ヨナ「これは……?」
アムロ「
相討ち、だと?」
システムダウンしたコクピットで、二人は同時に呟いた。
ヨナ「俺が……引き分けたのか? あのアムロ兄さんと戦って?」
ヨナは信じられないような気持ちで、自分の手を見た。
素手での殴り合いとはいえ、戦ったのはあの伝説の『白い悪魔』。
ごくごく平凡な腕前しかないヨナにとっては、
相討ちさえも大金星だ。だが。
アムロ「……ふざけるなよ、認められるかこんな決着!」
アムロは動かないν
ガンダムから這い出ると、いらだった様子でヘルメットを投げ捨てた。
ヨナ「ア、アムロ兄さん……」
アムロ「お前だってそうだろヨナ!? お前だってちゃんとした決着を望んでいたはずだ。こんな引き分けなんて形じゃなくてな!」
思わぬ激昂を見せるアムロに、戸惑いながらもヨナは答えた。
ヨナ「そ、それはそうだけど。もう機体が……」
アムロ「お前の機体なら、後ろにあるだろう!」
ヨナ「え?」
コクピットから抜け出し、後ろを振り返るヨナ。
するといつの間に現れたのだろう、そこには、金色に輝く一機のMSが恥ずかしそうに立っていた。
リタ「えへへ、来ちゃった」
ヨナ「リタ……! なんでここに?!」
リタ「ごめんね、待ってるっていったけど、どうしてもヨナが戦ってるところ見たくて……リディのバンシィに代わってもらっちゃった」
そう言ってリタ――ガンダムフェネクスはバツが悪そうに頭をかいた。
アムロ「お前はそのままフェネクスに乗れ。俺は格納庫に行って、新しい機体を取ってくる。そしたら再戦だ、いいな!」
ヨナはどうするべきか一瞬迷った。果たしてこの兄弟の戦いにリタを巻き込むべきか。
すると、そんな彼の心を見透かすように、リタが穏やかに語り掛けた。
リタ「ヨナ、私はかまわないよ」
ヨナ「……いいのか?」
リタ「うん、だってあんなに楽しそうに戦うヨナ、初めて見たもの。だからもっと見たいなって。今度は、一番近くで」
そう言ってリタはヨナを自分のコクピットに招いた。
ヨナはシートに座り、ヘルメットを脱ぎ捨てると、額の汗を拭いさる。
ヨナ「リタ、俺、今日初めてアムロ兄さんとマトモにケンカしたよ」
リタ「うん。どうだった?」
ヨナ「意外と悪くないって思ったよ兄弟ゲンカも。
こんなことならもっと早くやっておけばよかった」
リタ「何度だってできるよ、これから先もずっと兄弟なんだから」
ヨナ「その時は……君も隣で見ていてくれるか?」
リタ「うん。私もずっとヨナの傍にいるよ。たとえ、どんな形になっても」
ヨナ「……そうか」
リタ「ほら、アムロが来たよ! 一緒に決着、つけよう!」
格納庫から現れたのは、左右対称のフィン・ファンネルを翼のように装備した青と白の機体、Hi-νガンダム。
そのνガンダムを上回るプレッシャーの前に、
フェネクスは自動的にデストロイモードに変形する。
ヨナ「アムロ兄さん……!」
アムロ「行くぞヨナ! 今度こそ、決着をつけてやる!」
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最終更新:2023年05月10日 11:29