そういうこと! わかってんのよ? 涼しい顔して、アンタ裏では結構キツイことやってるってね!」
フロンタル「ぐうっ!」

 狙い通り、サイコ・シャードによって迎撃されることなくアハヴァ・アジールはネオ・ジオングに激突した。
 響き渡る鈍い金属音。そして巨体を活かし、そのままネオ・ジオングを裏山の岩壁に押し倒す。

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フロンタル「その観察眼さすがだな。確かに今の私ではサイコ・シャードを使うことは難しい。
      それで、ここからどうするつもりだね?」
アルレット「そうね、ならこんなのはどうかしら!」

 そう言ってアルレットはネオ・ジオングを押し倒したまま、アハヴァ・アジールの腹部のメガ粒子砲を展開した。

フロンタル「! ここでメガ粒子砲を撃つつもりか?」
アルレット「そうよ~。私ってば昔っからちょび~……っとだけ射撃が苦手でね。でも、この距離なら外しはしない」
フロンタル「まともではないな。そんなことをすれば君もただではすまないぞ」
アルレット「まともでガンダム兄弟の長女やれるワケないでしょ!」

 アルレットはためらうことなくメガ粒子砲のトリガーをひいた。
 フロンタルはとっさにIフィールドで防御するも、このゼロ距離では防ぎきれず、徐々に装甲を焦がしていく。
 だがそれはアハヴァ・アジールも同じだ。むしろIフィールドを展開できない分、ダメージはこちらの方が大きい。

フロンタル「相討ち狙いか? だが、このままでは君の機体の方が先に壊れるぞ」
アルレット「ふん、忘れてない? アンタはもう一人、別の誰かと戦ってるってこと。ねえ、そうでしょマイ!」
マイ「その通りです!」

 その言葉と共にアハヴァ・アジールの背後から出てきたのはマイのビグ・ラングだ。
 そのままビグ・ラングはアハヴァとネオ・ジオングの丁度真上へとずんずん浮上していく。

フロンタル「なにをするつもりだ……」
マイ「僕はパイロットとしては三流ですし、そもそもビグラングにはMAを一撃で倒せるような火器もありません。
   ですが一つだけ、この機体には他の兄弟たちのMSにはない大きな武器がある!」
フロンタル「まさか!」

 空中でビグ・ラングはスラスターの噴射を止めた。重力に惹かれ、巨体がガクンと一直線に落ちてくる。
 ネオ・ジオング目掛けて!

マイ「ビグ・ラングの全備重量は17,900t。この高度と速度なら、衝突によってネオ・ジオングの破壊は十分に可能……!」
フロンタル「ちいっ! まともでないのは姉弟揃ってか!」
アルレット「おっと逃がさないわよ。このままアンタは私たちと一緒にミンチになるの!」
マイ「たとえ相討ちでも、あなたさえ倒せばあとはバナージがアクシズを止めてくれる!」

 なんとか逃れようとするネオ・ジオングを、アハヴァ・アジールは両腕で無理やり押しとどめた。
 そうしている間にもビグ・ラングは上空から見る間に迫ってくる。
 直撃すればネオ・ジオングとはいえただではすまないことは、フロンタル自身もよく理解していた。

フロンタル「やらせるか!」

 フロンタルは決断した。まずはアームユニットからワイヤーを伸ばし、
 自らを拘束するアハヴァ・アジールをジャックする。
 MSと違い、巨体を誇るMA相手ではわずかに拘束を外すのがせいぜいだったが、今はそれで十分だ。
 続けて両肩のサイコ・シャード発生器の出力を最大限まで上げると、
 ビグ・ラングに向かって両腕から虹色の閃光を発射する!

181オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/06/07(月) 01:01:39.56ID:GiVlaPCI0
マイ「なっ……!?」

 その閃光はビグ・ラングの胴体をかすめた。するとかすったところから見る間に機体がバラバラに自壊していく。
 胴体をすべて分解され、ただのビグロと化したビグ・ラングは、そのままバランスを崩して裏山に激突した。

マイ「ぐっ……ううっ!!」
アルレット「あ、あっれ~……? アンタ確か、今はサイコ・シャードは使えないって言ってなかったっけ?」
フロンタル「ふっ、正確には“使うのが難しい”と言ったのだ。
      多少無理をすれば、ガフッ、一度くらいは使うことは可能だ」

 両耳と鼻から血を吹き出しつつも、フル・フロンタルは冷静にそういった。
 対してアルレットはひきつった表情でマイに連絡を入れる。

アルレット「マイ、マイ? 大丈夫? まだ生きてる?」
マイ「はい……まだミンチにはなっていません。大丈夫、とも言い難いですが」
アルレット「そ、よかった。動けるならアンタは戦線から離脱しなさい。ネオ・ジオングは私がなんとか……」
フロンタル「なんとか、とはなんだね?」
アルレット「きゃ……!」

 そこへ襲い掛かるファンネル・ビットによるオールレンジ攻撃。
 メガ粒子砲発射に伴うジェネレーターのオーバーヒートで、
 Iフィールドの使えないアハヴァは機体にモロにダメージを喰らってしまう。

フロンタル「先ほどの連携は私も驚いた。だがその目論見を潰し、一対一になった今、君が私をなんとかできる未来は万に一つもない」
マイ「姉さん! 逃げてください姉さん!」
アルレット「どいつもこいつも……私を舐めるんじゃない! ファンネル!」

 フロンタルの分析にもマイの訴えにも耳を貸さず、アルレットは後部のバインダーからテール・ファンネルを射出した。
 しかしニュータイプ素養のない彼女ではほとんどマトモに扱えず、
 ファンネルは一発もネオ・ジオングを攻撃することなくすべて撃墜された。

アルレット「くっそ……!」
フロンタル「いつも飄々とした君らしくない攻撃だなアルレット・アルマージュ」
アルレット「アンタに……私のなにがわかんのよ」
フロンタル「これは失礼した。人間だれしも触れて欲しくない部分の一つや二つはあるからな」

 そう言ってフロンタルはわざとらしく謝罪した。

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フロンタル「ただ理解できないのだよ。普段あれほどクレバーな君が、どうしてそこまでムキになるのかを」
アルレット「私が、ムキになってるですって?」
フロンタル「君だけではない。マイくんもだ。いくら他に戦える人員がいないとはいえ、どうしてそこまで必死に戦う?」
マイ「僕たちがどうして戦う、ですか」
アルレット「それはね……時間を稼いでるのよ」
フロンタル「!?」

 その時、突如ネオ・ジオングのレーダーに赤い機影が映った。
 超超高度から猛烈な速度で飛来した“それ”は、ネオ・ジオング上空でぴたりと止まった。
 まるで、獲物を狙い定めるかのように。

「……ターゲット、ネオ・ジオング」

フロンタル「! まずい!」

 フロンタルはプレッシャーからすぐさま機体全面にIフィールドを展開した。
 だが、上空の機体から放たれた強力なビームは、
 Iフィールドを易々と突き破り、ネオ・ジオングの左アームユニットを撃ち貫く!

マリーメイア「あれはなに? 空になにかがいるわ!」
ミネバ「鳥か?」
プル「飛行機かな?」
アル「ううん、違うよあれは……」
シュウト「ヒイロ兄ちゃんの、ウイングガンダムゼロだ!!」

 天使を思わせる、真っ白い翼を持つ機体――ウイングガンダムゼロは、
 アハヴァ・アジールとビグ・ラングを庇うように、ネオ・ジオングとの間に華麗に着地した。

アルレット「も~遅いじゃないヒイロ。おかげで姉さん年甲斐もなくハッスルしちゃったわ」
ヒイロ「すまない」
マイ「いや、ジャストタイミングだったよ」
フロンタル「そうか……やっとわかったよ。アルレット君たちが必死に戦っていた理由が」

 すぐさま破壊されたアームユニットを交換しつつ、フロンタルは言った。

フロンタル「私の最後の相手は君か、ヒイロ・ユイ」
ヒイロ「そうだ」ヒイロもまた、コクピットで無表情に頷いた。「フル・フロンタル……お前を殺す」

ヒイロ・ユイ【ウイングガンダムゼロ】
VS
フル・フロンタル【ネオ・ジオング】開戦。

 時刻はAM07:45
 アクシズ落下まで、あと16分――!!


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最終更新:2023年05月11日 13:05