202オールアムロVSシャア軍団VS
ガンダム兄弟2021/07/12(月) 23:25:34.87ID:z8l8dCK80
ヒイロ「フル・フロンタル。町をここまで混乱させた責任、果たしてもらう……!」
リディ「いや、もとはと言えば所かまわず四六時中自爆しまくるお前のせいじゃねえの?」
ヒイロ「フル・フロンタル、強者など何処にもいない!人類全てが弱者なんだ!俺もお前も弱者なんだ!!」
アルレット「あ、なんか名セリフを叫んで誤魔化すターンに入りましたよあの男」
バナージ「ね、姉さんもリディさんも気持ちはわかるけどそのくらいで勘弁してあげて。でないとあいつまた勝手に自爆しちゃうから……」
マイ「ヒイロ! やってしまったものはしょうがない。気分を切り替えていこう!」
ヒイロ「任務了解……!」
羞恥心を押し隠すかのように、ヒイロの駆るウイングガンダムゼロは猛烈な勢いでネオ・ジオングに襲い掛かった。
シナンジュは両手にもったバズーカと肩部大型メガ粒子砲で迎撃するも、ヒイロはそれらを全て回避。
弾幕をかいくぐり、ビームサーベルで斬撃を加える。
フロンタル「ぐうっ!」
ヒイロ「まだ終わってはいない」
さらに懐に飛び込んだウイングガンダムゼロはサーベルとマシンキャノンで連続攻撃を加えた。
それらすべてを、ネオ・ジオングはなす術なく受け続ける。
アルレット「ぶっとび……! 私たちがあんなに苦戦したネオ・ジオングを一方的に……!」
リディ「いくら今のネオ・ジオングがサイコ・シャードを攻撃に使えないとはいえよ」
マイ「それだけじゃない。ヒイロはフル・フロンタルが抱える弱点を完全に把握したうえで戦っている」
リディ「弱点? そんなもんがあるのか?」
マイ「ええ、見てください。ヒイロの動きを」
ヒイロ「…………」
フロンタル「ちい、ちょこまかと!」
リディ「よく見たらあいつ、ネオ・ジオングの背中を常に狙って動いてるのか」
バナージ「ネオ・ジオングの背中……そうか、あいつの狙いはサイコ・シャードそのものか」
マイ「彼が企むアクシズ落としにとってサイコ・シャードは絶対に破壊されてはならないもの。
それゆえに、狙われたなら必ず守らなくてはならない」
アルレット「そこにつけ込む隙が生まれるってワケね」
マイ「その通りです。もっとも、やってのけるにはとてつもない技量が必要なのですが」
リディ「あいつは会敵したこの数分でそれを悟ったってのかよ……」
バナージ「フロンタルがヒイロを警戒してたって理由、わかる気がするよ」
フロンタル「くっ……メガ粒子砲を全てやられるとは」
バチバチと火花をあげ、遂に沈黙したネオ・ジオング。
背中のサイコ・シャードこそ無事であるものの、すでに機体兵装の大部分を破壊されていた。
そんな機体の様子を、ウイングガンダムゼロは少し離れたところから静かに見つめていた。
ヒイロ「投降しろ、フロンタル。そうすれば
ミンチにまではしない」
ツインバスターライフルの照準を合わせたまま、ヒイロは勧告した。
203オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/07/12(月) 23:27:32.61ID:z8l8dCK80
フロンタル「まだだ! まだ終われん! ここで私が敗れてしまったら、誰がこの世界を救うというのだ!」
ヒイロ「世界を救う、だと?」
そのいつものフロンタルらしからぬ奇妙な物言いに、ヒイロは眉をしかめた。
フロンタル「そうだ。もうすぐこの世界には破滅が訪れる。全てを無に帰す、力の発動だ。
それを止められるのは私の『IMD計画』しかない!」
アルレット「世界の破滅? 力の発動?」
マイ「いったいどういうことだ。それとアクシズ落としとどういう関係があるんだ?」
リディ「耳を傾けるな! どうせいつもの戯言だ! 構わないからミンチにしちまえ!」
ヒイロ「任務了解」
湧き上がる疑問を押し殺し、バスターライフルのチャージをはじめるヒイロ。
だがそこへバナージが声をあげた。
バナージ「待ってくれ! 一体あなたに何が起こってるっていうんですか!
昨日といい今日といい、そんな言い方、いつものあなたとはまるで違う! これじゃまるで……」
フロンタル「普通の人間のようだ、とでも言いたいのかね?」
バナージ「!?」
フロンタル「バナージ君の言う通りだよ。今の私は『空っぽの器』ではない。
今の私を満たすのは、全て私の中からあふれ出たものだ。大志、といってもいい」
それはバナージたちがいつも聞いていた上辺ばかりの空虚な言葉ではない。血肉の通った言葉だった。
フロンタル「全てのはじまりは一年ほど前か。興味本位で手に入れた『ゼロシステム』を始めて起動したとき、私は見たのだ。
近い将来に、この世界がたどる破滅の運命を。
そして私は決意した。どんな手を使ってでもこの破滅は防がなければならないと」
バナージ「破滅、破滅って……あなたは一体何を見たんですか」
フロンタル「フッ、口でいうより実際君たちも見た方が早かろう。私が見たこの世界の最期を」
そう言いながらフロンタルは手元の『ゼロシステム』のコンソールを手早く操作した。
ヒイロ「!? これは……ネオ・ジオングがゼロのシステムにハッキングを仕掛けている?」
隙を突いて行われたネオ・ジオングによる『ゼロシステム』へのハッキング。
それはウイングガンダムゼロだけでなく、バナージやマイたち周りの機体にまで影響を及ぼした。
バナージ「なんだこれ……頭の中に、映像が入ってくる!?」
マイ「この現象はニュータイプ同士による精神感応?
いや違う! 二つの『ゼロシステム』によるオーバーフローが、機体を通じて僕たちにまで未来を見せているのか!?」
二基の『ゼロシステム』によるオーバーフローはネオ・ジオングとウイングガンダムゼロのみならず
周囲にいたアハヴァ・アジール、ビグ・ラング、そしてユニコーンガンダムを飲み込んでいく。
気づけばヒイロたちガンダム兄弟は、人の行き交うにぎやかな街角に立っていた。
204オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/07/12(月) 23:38:39.04ID:z8l8dCK80
ヒイロ「どこだ、ここは……」
バナージ「俺たち、学校にいたはずなのに」
アルレット「あれ? なんか見た覚えあると思ったら、ここ中央区の商店街じゃん」
マイ「間違いないんですか、姉さん」
アルレット「うん。だって姉さんあの角のブティックで最近パンタロン買ったし、右隣の美容室で聖子ちゃんカットにしてもらったし……」
バナージ「古っ!」
フロンタル「アルレット君の言う通り、ここは
日登町中央区で間違いないよ」
そこへ現れた赤いパイロットスーツ姿の偉丈夫――フル・フロンタルはそう言った。
ヒイロ「フル・フロンタル……!」
とっさにヒイロは腰に差していた拳銃を抜き放ち、フロンタルに向けて発砲した。
しかし、弾丸は全て彼を素通りしていく。
フロンタル「無駄だよ。ここは『ゼロシステム』が見せる仮想世界の中。私たちの肉体は今もMSのコクピットの中にあるのだからね」
アルレット「それで? 私たちをこんなところに呼び出してどういうつもり?」
フロンタル「言っただろう? 私が触れた世界の最期を、君たちにも見てもらうと」
言いながらフロンタルは商店街の時計を見上げた。時刻はちょうど、10時を指すところだった。
フロンタル「そろそろか」
アルレット「そろそろってなにg」
問いかけたアルレットの声をかき消すように、遠くから爆発音が聞こえた。
人々の悲鳴が飛び交う中、ビルの向こうには何機かのMSを見える。
マイ「あれは……アムロ兄さんのガンダムとシャアさんのザクII!?」
アルレット「それにνガンダムやサザビー、百式、ディジェもいるわ」
バナージ「てことはこれ、昨日の映像を見てるのか?」
フロンタル「先ほども言ったろうバナージ君。これは『ゼロシステム』が見せたシミュレーション映像……もっとも起こる可能性が高かった未来の姿だ」
そして始まるオールアムロ対シャア軍団の戦闘。その様子を、フロンタルは感慨深げに眺めていた。
フロンタル「とはいえこの辺りは君たちが経験した過去とほぼ同じ。……少し時間を進めるとしようか」
日登町西区:海岸
バナージ「…………」
ベルリ「バナージ! ちょっと起きなさいよロリコン!!」
ミネバ「イヤだ……そんなのイヤだバナージ!! わたしをのこして死なないでくれ!!」
マクギリス「生命反応は無い。逝ったか、バナージ君……」
ハリソン「紳士として見事な最期だったぞ……」
ヒイロ「これは……!?」
バナージ「これって昨日のMA戦か? だけど、あの真っ二つに破壊されたユニコーンガンダムはどういうことだ!?」
フロンタル「だから言ったろう? これは『ゼロシステム』が予測したもっとも起こる可能性の高い未来だと」
フロンタルが手元のコンソールを操作すると周囲の光景はまた変化した。
205オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/07/12(月) 23:40:43.42ID:z8l8dCK80
日登町北区:工業地帯
シャア(一年戦争)「ふ、ふふっ……なりふり構わず私を倒したか。だが、もうわかったはずだ。君のやるべきことは――」
ベルリ「僕のやるべきなのは……アイーダさんの分まで復讐すること――!」
日登町中央区:武道館
アムロ・クワトロ「「クロス・ボンバー!!」」
カミーユ・ジュドー「「ぐわーーーーーーーーーーーーーっっ!!」」
フェリーニ「ジ・オリジンのツープラトンが炸裂、ZZZブラザーズの首が二つまとめて吹っ飛んだーー!!?」
ロザミア「イヤああああお兄ちゃん!!」
アムロ「くっ! いくらフロンタルの目論見を砕くためとはいえ、弟たちをミンチにしなければならないとは……!」
クワトロ「カミーユ、ジュドー……この償いは必ず!」
日登町南区:穀倉地帯
ウッソ「どうしてですかフリット兄さん! なんでシドごと三日月兄さんを……!」
フリット「仕方ないだろう! あのままじゃ全滅だったんだ!
僕だってあんなことやりたくなかった。だけど、多くを活かすためには少しの犠牲を出さなきゃいけないことだって……!」
ウッソ「エゴですよそれは!」
日登町中央区:住宅街
刹那「やめてくれドモン兄さん!
ELSはすでに戦意を失っている!」
ELS「(。´・ω・`。)タ、タスケテ……」
ドモン「黙れええええ! 師匠とシュバルツの仇、ELSは全て殲滅するウウウウウウウ!!」
刹那「兄さん、憎しみに囚われて……ならば、俺が止める!」
その後も流れ続けた光景はどれも悲惨なものだった。
敗北、疑心、不和、あらゆる負の感情を巻き起こしながら
日登町、そしてガンダム兄弟たちはボロボロになっていく。
マイ「これが……ゼロシステムが予言した未来だっていうのか」
アルレット「ひどすぎる……」
バナージ「
こんなことって……」
フロンタル「絶句するのはまだ早い。ほら、そろそろこの世界の終わりが見えるぞ」
バナージ「え?」
フロンタルが指示した先、そこには四方から襲い来る
デビルガンダムの大群と落下するアクシズ、
そして落下を食い止めようとアクシズに張り付くサイコジムの姿があった。
マリーメイア「だめだミネバ、もう、バリアがもたない……!」
プル「あたしたち、ここで終わりなの?」
プルツー「だめだ姉さん、諦めちゃあ……」
アルミリア「お父様、お兄様、マッキー……」
ミネバ「ここまでなのか? なら、わたしたちは何のためにサイコジムに乗って……」
サイコジムは最後の力を振り絞ってアクシズを押し返そうとするも、
圧倒的質量に前に、その巨体はボロボロになっていく。
そして、全ての装甲が剥げ、灰色になったサイコジムの身体から強い光線が発射され――
206オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/07/12(月) 23:41:30.86ID:z8l8dCK80
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そ の と き イ デ は 発 動 し た 。
ミネバ達に与えられたサイコジムという名の巨神、それこそイデが与えた最後のチャンスだった。
だが日登町の住民たちはお互いにそれを拒否した結果、イデはその無限力を開放していき、
ガンダム兄弟たちを含めたすべてを因果地平の彼方へと吹き飛ばしてしまったのだ――
207オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/07/13(火) 00:47:43.55ID:dCql2w4e0
マイ「これが、『ゼロシステム』が予言した世界の破滅……!」
アルレット「あのデッカいジムに、そんな力があるっていうの?」
フロンタル「信じがたいかもしれないが、それが事実だ。戦いを間近でみたバナージ君ならわかるのではないかね?
あの巨神のもつ無限の力と、それに引き寄せられる人々のエゴを」
バナージ「それは……!」
何か反論しようとした彼は、あのとき感じた力の流れを思い出し、じっと唇を噛み締めた。
フロンタル「私は最初に見たこの予言から何千、何万回とシミュレーションを繰り返したが、
サイコジムが現れた時点で未来は全て確定してしまった。ただ一つの『計画』を実行した時以外はな」
アルレット「ただ一つの計画?」
マイ「それがあなたの『IMD計画』ですか」
フロンタル「そうだよ。人類を一つ上の存在へ進化させる『IMD計画』。それがたった一つの可能性なのだ。
とはいえ計画を実現するための道のりは果てしなく厳しかった。
“それでも”私は諦めるわけにはいかなかった。世界を破滅から救うために」
バナージ「世界を……破滅から救う」
フロンタル「そうだ。私は、私の見た可能性を信じている。だから手を貸してくれないか? それが、あのサイコジムからミネバ様を解放することにも繋がる」
そういってフロンタルはバナージに手を差し伸べた。
バナージは何も答えず、じっと俯いたままその手を見つめて逡巡した。
バナージ「暖かい……今のあなたの言葉には確かに熱がある。ミネバのことを想えば、あなたの手を取るのが正しいのかもしれない」
フロンタル「そうだろう。ならば」
バナージ「だけど」
フロンタル「?」
バナージ「だけど、あなたの言葉はやっぱり綺麗すぎる。目的は素晴らしいけれど、そのために巻き込まれた人たちのことをまるで無視している言葉だ」
フロンタル「大いなる変革のためにはわずかばかりの犠牲は許容される。君も子供でないのなら、少しは割り切りたまえ」
バナージ「割り切れ? それをあなたはアルとシュウトの前で言えるんですか?
あなたのその素晴らしい計画のために、思い出の詰まった家を燃やされた二人の前で!」
ヒイロ「そうだバナージ兄さん。大義のために個人の感情が無視される。それは過ちだと俺は知っている」
フロンタルとバナージ、二人の間に割って入ったのはまたしてもヒイロだった。
ヒイロはフロンタルに銃口を向けながら、いつも通りの鋭い目で彼を睨んだ。
フロンタル「その態度……わたしに協力はしないという意思表示かな?」
ヒイロ「そうだ。俺たち兄弟の誰も、おまえの独りよがりの計画に手を貸すつもりはない」
フロンタル「独り善がり、とは手厳しいな」
その言葉を受けて、フロンタルは困ったようにこめかみを抑えた。
208オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/07/13(火) 00:48:24.02ID:dCql2w4e0
フロンタル「だが『ゼロシステム』の予言通り巨神は現れた。システムの見せる未来の正しさは、君が一番よく知っているだろう?」
ヒイロ「それがどうした」
バナージ「ヒイロ……」
ヒイロ「今見た未来など、所詮はゼロが見せた機械的な幻に過ぎない。
それを盲目的に信じるお前は、ゼロを使っているようで、その実ゼロに踊らされているだけだ」
フロンタル「…………」
ヒイロ「お前も本当はわかっているはずだ。バナージ兄さん、カミーユ兄さん、三日月兄さん、ジュドーも、みんなまだ生きている。
ベルリ兄さんやドモン兄さんは憎しみに心を囚われたりしていない。フリットは取り返しのつかない過ちを犯したりはしなかった。
ゼロの見せる望まない未来なんていくらでも変えられる」
バナージ「ヒイロの言う通りだ。俺だって世界の破滅なんて避けたい。だけどそのために誰かを犠牲にする、あなたのやり方は認めない……!」
マイ「あなたが見せてくれたこの事象は非常に興味深いものです。ですが、検証もしないうちに鵜呑みにするのは技術者の態度ではありません」
アルレット「要するに、一昨日来やがれってことよこのスットコドッコイ!」
フロンタル「少しは大人になりたまえ。世界の破滅を救う手段は、私の『IMD計画』しかないのだぞ?」
ヒイロ「俺たちは、これまでずっと自分の力で望む未来を勝ち取ってきた。ならば、今度もそうするだけだ」
フロンタル「一時の激情に駆られて、愚かな選択をするか……。ありもしない可能性を信じて」
バナージ「それでも、あなたのように初めから他の可能性を切って捨てるよりはずっとマシだ!」
フロンタル「交渉は、決裂というわけか」
フロンタルは吐き捨てるように言った。すると周囲の景色が歪んでいき、気づけばヒイロたちはもとのコクピットの中に座っていた。
バナージ「ここは……」
ヒイロ「戻ってきたようだな、ゼロの見せた幻の中から」
リディ「どうしたんだバナージ。一瞬ボーっとしてたぞ」
バナージ「え? 一瞬?」
マイ「確かに、先ほどの戦闘から一分も経っていない」
アルレット「軽い浦島太郎気分ねこれは」
ヒイロ「追い詰められて俺たちを懐柔しようとあがいたようだが……徒労に終わったなフロンタル」
再びネオ・ジオングに向けてツインバスターライフルを構えるヒイロ。だが、
フロンタル「徒労? いや、そうでもないさ」
そう言ってフロンタルはヘルメットを脱ぎ捨てた。その顔の、目、鼻、耳、口から帯びたたしい量の血を流しながら。
フロンタル「おかげで、サイコシャードを使う時間は十分作れた」
ヒイロ「!?」
マイ「みんな! 上だ!!」
突如モニターに響くアラーム音、見ると、巨大な何かが、一直線に学校に向かって落ちてくる!
209オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/07/13(火) 00:50:52.32ID:dCql2w4e0
バナージ「あれは……アクシズの破片!?」
マイ「なんてことだ……気づかなかった! フロンタルが僕らにゼロシステムで未来を見せたのは、あれを落とすための時間稼ぎだったのか!」
ワームホールの向こうにあるアクシズ。サイコシャードによってそこから切り離された直径数キロの小山のような破片は、
速度を上げてヒイロたちに迫ってくる!
マイ「まずい、あんなサイズでも、直撃すれば中央区は確実に壊滅する!」
アルレット「ヒイロ!」
ヒイロ「任務、了解……!!」
アルレットがその名を叫ぶより早く、ヒイロはウイングガンダムゼロを駆り空へと飛んだ。
そして翼を広げたまま空中で制止すると、破片に向けてツインバスターライフルの照準を合わせる。
ヒイロ「ターゲット、確認」
そして発射されるフルパワーのツインバスターライフル。しかし直撃しても、破片は表面が少々溶けただけでビクともしない。
リディ「ああ、クソ! ダメか!」
バナージ「コロニーに比べて密度が高すぎるんだ!」
ヒイロ「ならば、破壊できるまでやるだけだ」
そう言って、ヒイロは慌てることなく、再度ツインバスターライフルのチャージを始める。
フロンタル「確かにその通りだが、私のことを忘れてもらっては困るな」
リディ「! ネオ・ジオングのやつ、地上からウイングガンダムゼロを狙って……!」
バナージ「危ない! 避けろヒイロ!」
だがその言葉が聞こえていないのか、ウイングガンダムゼロは微動だにしなかった。
そして無防備な背中に、ネオ・ジオングのビームが直撃する。
ヒイロ「!!」
フロンタル「動けるはずがないよな、ヒイロ君。破片の破壊には、コンマ二桁まで狂いの無い狙撃が必要となる。
いくら君とて、フラフラと避けながらそんな芸当ができるはずがない。ましてフルパワーのツインバスターライフルならばなおさらに!」
続いて放たれたツインバスターライフルの第二射。だがこれも破片の完全破壊までには至らなかった。
間髪入れず、ヒイロは同じ姿勢を保ったまま、第三射のためにチャージを行う。
フロンタル「背後から狙い撃たれても微動だにしないか。やはり君は完成された兵士だな。
だが、その優しさこそが命取りだ!」
ネオ・ジオングの両腕のアームユニットから放たれたビームは、ウイングガンダムゼロの全身を貫いた。
翼を二枚と左肩、そして右足の膝から先を失い、全身の装甲を穴だらけにしながらも、それでも照準は決してブレることはない。
ヒイロ「エネルギーのチャージを確認。……破壊する」
そして放たれた第三射。その太い光の柱は、今度こそアクシズの破片を完全に消滅させた。
と同時にウイングガンダムゼロは爆発を起こし、黒い煙を上げながら地上に落下していく。
210オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/07/13(火) 00:53:17.00ID:dCql2w4e0
アルレット「ヒイロ!」
マイ「ヒイロ!」
バナージ「ヒイロ!」
ヒイロ「まだだ。俺は……死なない!」
フロンタル「!?」
自由落下しながらもバスターライフルを構えるウイングガンダムゼロ。
その銃口は地上のネオ・ジオングに向けられている。が
ヒイロ「なんだ……ゼロが急に別の未来を提示しはじめた。これは!」
引き金を引く寸前、ヒイロは何かに気づいた。
そして銃身を傾けると、そのままビームを、ネオ・ジオングとはまるで見当違いの場所にある、校庭の残骸へと向けて発射した。
ヒイロ「これで……いい」
安心したように呟くとヒイロは目を瞑った。
そしてそのまま、ウイングガンダムゼロは学校近くの貯水池へ落下していった。
バナージ「ヒイロ!!」
落下の衝撃で激しく立ち上る水柱。バナージは兄弟の安否を案じて彼の名を叫んだ。だが
フロンタル「人のことを心配する余裕があるのか?」
バナージ「!?」
いつの間にか接近してきたネオ・ジオングが、その剛腕をユニコーンガンダムに向かって振り下ろす!
バナージ「がっ! ハアッ……アッ!」
リディ「バナージ!!」
フロンタル「次は君だリディ巡査部長」
リディ「!!」
続けてネオ・ジオングは、バンシィに向けて水平にチョップを繰り出す。
無防備な横っ腹に強烈な打撃を受け、バンシィは石切りのようにバウンドしながら瓦礫へとすっ飛んでいった。
アルレット「バナージ! ヒイロ!」
マイ「まずい……まずいですよ姉さん! ユニコーンガンダムがやられたせいでサイコフィールドが消えて……
上空のワームホールが開いたまま固着します!!」
フロンタル「これで……私の計画を邪魔する者は全て消え去った」
ユニコーンガンダムがやられ、最大限まで広がった日登町上空のワームホール。
その奥に迫るアクシズの姿を見て、フロンタルは満足そうに眼を閉じた。
211オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/07/13(火) 00:54:09.49ID:dCql2w4e0
同時刻 学校:西防衛線
グラハム『ガンダム兄弟! 聞こえるかガンダム兄弟! 誰か……応答せよ!!』
戦場に響き渡るのは、ガンダム兄弟をよぶグラハム警視正の声。
しかし今、その呼びかけに答えるものは誰もいない。
カミーユ「……………」
ベルリ「…………」
刹那「…………」
シン「…………」
ジュドー「……………」
フリット「……………」
ウッソ「…………」
そこには、10万機を超えるデビルトミノ軍団の前に敗北した、ガンダム兄弟たちの姿があるだけだった。
日登町中央区:学校の校庭および学校:西防衛線の戦闘結果
ウイングガンダムゼロ……大破
ユニコーンガンダム……大破
バンシィ……大破
アハヴァ・アジール……中破
ビグ・ラング……大破
ハロ長官……重傷
Zザク……大破
G-セルフ……大破
ガンダムエクシアリペア……大破
インパルスガンダム……大破
ZZガンダム……大破
ガンダムAGE-1……大破
V2ガンダム……大破
ネオ・ジオング……中破
デビルトミノ軍団の残りの数……およそ99万機超
アクシズ……無傷で健在
時刻はAM07:50
アクシズ落下まで、あと11分。
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最終更新:2023年05月15日 13:10