155 名前:俺は
ガンダムだから投稿日:2008/03/31(月) 21:53:56 ID:???
ウッソ 「すみませんねカミーユ兄さん、運転お願いしちゃって」
カミーユ 「いや、構わないよ……お腹すいたな、どこかで昼食を取ることにしようか」
ウッソ 「あ、あそこに
マクダニエルがありますよ」
カミーユ 「って俺のバイト先じゃないか! ……まあいいか、ハンバーガーでも食べていこう」
ウィーン、と自動ドアを開けて店内に入る二人。
サラ 「いらっしゃいませー……ああ、カミーユさん」
カミーユ 「やあ。ハンバーガーセット二つ」
サラ 「店内でお召し上がりですか?」
カミーユ 「ああ、そう……?」
ヘンケン 「……だから、こんなんじゃ困るんだよ」
マリナ 「すみません、すみません」
ウッソ 「……マリナさんですね」
カミーユ 「ここでもバイトしてるのか……」
ウッソ 「なんか、また失敗してるみたいですけど」
カミーユ 「血色悪いな……今にも倒れそうだぞ、あれ」
ウッソ 「カミーユ兄さんより不健康そうですね」
カミーユ 「……おごってやろうかと思ってたがやっぱり止めるか」
ウッソ 「ああうそうそ、冗談ですよ!」
カミーユ 「ふう……さて、飯も食ったことだし、さっさと帰る……?」
ウッソ 「あ、マリナさんが出てきましたよ。バイト終わったのかな……って、うわ!?」
カミーユ 「倒れたぞ!? ちょっと、おーい、大丈夫ですかー? 返事してくださいよ、ねぇ」
マリナ 「う、うぅ……お」
カミーユ 「お?」
マリナ 「お腹が、すきました……」
ウッソ 「……」
~三十分後、某牛丼屋~
マリナ 「すみません、本当にすみません」
カミーユ 「いや……一番安いメニューでそんなに言われても……」
マリナ 「ええ、だけどこんなにいい物を食べたのは久しぶりで……」
ウッソ 「……一体普段何食べてるんですか?」
マリナ 「ええと、昨日は近所で採集した食べられる雑草と、シーリンが採集してきた木の根っこを煮込んだものを……」
ウッソ (兄さん、僕らよりひもじい人がいましたよ。ちょっとした感動がありますねこれは)
カミーユ (お前それ間違ってもロランやアムロ兄さんに言うんじゃないぞ、悲しむから)
マリナ 「ごちそうさまでした……とてもおいしかったです」
ウッソ (涙ぐんでますよ兄さん)
カミーユ (突っ込んでやるなよ……気が滅入ってくる)
マリナ 「ああ、でもこのご恩をどうお返ししたらいいのでしょう」
カミーユ 「いや、別に気にしなくても……」
ウッソ 「あ、それじゃあ、是非とも
聞きたいことがあるんですけど」
カミーユ 「……ウッソ?」
マリナ 「なんでしょうか? わたくしに答えられることならいいのですが」
ウッソ 「ええ、あのですね、刹那兄さんとの出会いとかを聞かせていただきたいな、と」
マリナ 「刹那との……ですか」
カミーユ (おい、なに聞いてるんだお前は)
ウッソ (だって、あの常時仏頂面の刹那兄さんが、貧乏とは言え皇女という超上流階級かつ
中東的美人なお姉さんと知り合いになってるんですよ? 兄さんだって多少は気になるでしょう)
カミーユ (そりゃまあ……)
ウッソ (ここは是非とも二人の出会いについて聞いておいて、今後お姉さんと知り合うための参考にしなければ)
カミーユ (あれだけお姉さんに囲まれてるくせに、まだ新しい出会いを求めるのかお前は……)
156 名前:俺はガンダムだから投稿日:2008/03/31(月) 21:55:01 ID:???
マリナ 「……出会いについてはあれこれと経緯が複雑ですので……」
ウッソ 「そうなんですか? 残念だなあ……」
カミーユ 「……と言うか、二人は今どういう関係なんですか?」
マリナ 「関係……そうですね、ペンフレンド、でしょうか」
カミーユ (……なんだそれ?)
ウッソ (文通相手、じゃないでしょうか)
カミーユ (文通? メル友じゃなくて?)
ウッソ (外見どおり奥ゆかしい人なんですよ、きっと)
マリナ 「ちなみに手紙の中では『せっつん』『まーりん』と呼び合う仲です」
二人 「な」
シーブック「なんとぉーっ!?」
ウッソ 「うわ、びっくりした!」
カミーユ 「どっから出てきたんだシーブック兄さん!?」
シーブック「いや、店の外からみんなが見えたから……そ、それよりもマリナさん、さっきの話は本当ですか!?」
マリナ 「え、ええ。刹那は普段はあまり喋ってくれないのですけれど、手紙ではずいぶん饒舌に」
ウッソ (だからって……そんな。ギャップありすぎですよ)
カミーユ (『せっつん』『まーりん』って……マリナさん頬染めて嬉しそうにしてるし)
シーブック(……俺たちなら『しーぶっ君』『せしりん』みたいな感じになるのか……悪くないな……)
マリナ 「ああ、もうこんな時間! すみません、次のバイトに遅れてしまうので、そろそろ失礼しますね」
カミーユ 「あ、はい」
ウッソ 「さようなら、まーりん……」
シーブック「……なんか、凄いことを聞いてしまったな……」
ウッソ 「これは是非とも」
カミーユ 「問いただしてみる、か……」
~帰宅後~
アムロ 「というわけで、今日はお赤飯だ」
カミーユ 「ちょ」
シーブック「なんとぉーっ!」
ウッソ 「盛り上がりすぎですよ兄さん!」
アムロ 「馬鹿野郎、これが盛り上がらずにいられるか!
あの下手すればヒイロ以上にネジ飛んでて、顔がいい割に全く女っ気がなくて『刹那・喪・セイエイ』なんて
あだ名までつけられてて、『俺がガンダムだ』とか
電波ゆんゆん飛ばしてて
ある意味セレーネ以上に結婚とかが危ぶまれる刹那に恋人だぞ! 赤飯だ、赤飯を大量に用意するんだ!」
カミーユ 「大量に用意してどうするんだ」
ウッソ 「落ち着いてくださいよ兄さん」
シーブック「それに文通相手であって恋人では……」
アムロ 「だが『せっつん』『まーりん』なんだろう? これは確定的じゃないか! 実にめでたい!」
ウッソ (どうしよう……兄さんのテンションがうなぎのぼりですよ)
カミーユ (やはり……本人に聞くしかないんじゃないだろうか)
シーブック(本人……)
157 名前:俺はガンダムだから投稿日:2008/03/31(月) 21:56:10 ID:???
刹那 「……」
ウッソ (うわー、すっごく居心地悪そうですよ刹那兄さん!)
カミーユ (顔が微妙に青い気がするな……)
シーブック(知られたくないことだったんだろうか……)
アムロ 「さあ刹那、お兄さんに話してみなさい。彼女とはどこでどう知り合ってどこまで進んでるんだ、ん?」
ウッソ 「兄さんうぜぇw」
カミーユ 「既にちょっと酒入ってるみたいだなあれ」
シーブック「しかし、実際どこまで進んでるのか……興味はあるな……俺なんてあと十年は……ぶつぶつ」
刹那 「……お、俺は……」
アムロ 「うんうん」
刹那 「……俺が、ガンダムだ」
アムロ 「それはもういいっつってんだろうがぁっ!(ガッシャーン!)」
ウッソ 「うわ、ちょ、アムロ兄さん、ちゃぶ台返しはまずいですよ!」
カミーユ 「落ち着け、兄さん」
アムロ 「ハァ、ハァ……スマン、ちょっと取り乱してしまったようだな」
刹那 「……」
アムロ 「……で、話を戻すが。お前はマリナさんとはどういう」
刹那 「……文通している」
アムロ 「それは聞いた」
刹那 「……ガンダムマイスターとして得た給金の一部を彼女に渡してもいる」
アムロ 「ほうほう……微妙に聞き捨てならんが、まあそれでもって彼女の仲が進展したのならよしとしよう」
刹那 「……ロックオンの勧めで夜這いをかけたこともある」
アムロ 「キターッ!」
シーブック「なんとぉーっ!?」
ウッソ 「落ち着いてくだいよ、二人とも!」
アムロ 「つつつ、つまり、お前達はもうねんごろなわけだな!? 兄さん何も心配しなくていいんだな、そうなんだな、刹那!?」
ウッソ 「兄さん必死すぎてきめぇw」
カミーユ 「しかし……ずいぶんと積極的なんだな、刹那」
刹那 「……なにが?」
カミーユ 「いや……夜這いまでしたぐらいだから、お前はもう……」
刹那 「……よく分からない。
マリナ・イスマイールとは文通仲間だ。それ以上でもそれ以下でもない」
アムロ 「……ちょっと待て。なにか話がおかしくないか? 夜這いまでかけたんだろう?」
刹那 「……ロックオンに、夜中マリナの部屋に侵入するように言われた」
アムロ 「ほうほう」
刹那 「そういう任務だと思ったから部屋に入ったが、その後何をすればいいのかはよく分からなかった」
アムロ 「……なんだと?」
カミーユ 「で、実際はその後どうしたんだ?」
刹那 「朝になるまでマリナの話を聞いた。祖国復興に賭ける熱い想いを留まることなく語っていた」
アムロ 「……で、お前からは何か言わなかったのか? こう、愛の囁きとか……」
刹那 「ガンダムマイスターの視点から見て彼女の考えがどうなのかといくらか質問はされた。
俺はガンダムだ、完璧に答えたつもりだ」
アムロ 「……」
ウッソ (うわ、兄さんが顔真っ赤にしてぷるぷる震えてますよ!)
カミーユ (まずいなこれは……! 爆発寸前だぞ)
158 名前:俺はガンダムだから投稿日:2008/03/31(月) 21:56:58 ID:???
シーブック「ま、まあ、その夜這いのときのことは置いておくとしてだ! ふ、普段はどんなこと話すんだ?」
ウッソ (シーブック兄さん、ナイスフォロー!)
刹那 「……」
カミーユ (……と思いきや、また何か困っているような……)
アムロ 「……どうした、刹那。答えなさい」
ウッソ 「兄さん怖ぇw」
刹那 「いや、どんなことを話す、と言われても……」
カミーユ 「ちょっと年の差はあるが、男女が二人でいるのなら、こう、何か話ぐらいはするだろ、な?」
刹那 「……特にない」
アムロ 「(ぶちぃ!)……ほう……何もない、と。女性と二人きりでいるのに、場を盛り上げる会話すら出来ん、と」
ウッソ 「兄さん超怖ぇw」
刹那 「俺はガンダムだ。そういうことは、よく分からない」
シーブック「い、いや、それでも会話ぐらい……」
刹那 「仕事の話とか、事務的なことならいくらでも……」
アムロ 「口下手なサラリーマンかお前はァッ!」
ウッソ 「ちょ、兄さん落ち着いてくださいよ!」
刹那 「だ、だが俺はガンダム……」
アムロ 「それはもういいと言ったんだ!」
刹那 「ご、ごめんなさい……」
シーブック(あ、あの刹那がしゅんとしてる!)
カミーユ (昔からアムロ兄さんに畏敬の念を持ってるからな、刹那は……)
ウッソ (『アムロ兄さんこそ真のガンダムだ』とかよく分かんない言ってますもんね、たまに)
アムロ 「……じゃあなんだ、仕事の話以外はほとんどしたことがないのか、お前は」
刹那 「手紙なら……」
アムロ 「面と向かって話せないんじゃ意味ないだろうが! ベッドの中で喘ぎながら筆談する気かお前は!?」
ウッソ 「兄さんエロイw」
刹那 「……? ベッドの中というのはどういう……」
カミーユ 「まだ知らなくていいよ、多分……」
アムロ 「もう一回聞くぞ!? 彼女とまともな会話を交わしたことはないんだな、お前は!?」
刹那 「い、いや……あると言えば、ある……」
アムロ 「どんな!?」
刹那 「……アザディスタンの内紛が治まって……太陽光発電のおかげで人も戻ってきて……
だから俺はもう戦わなくていいと……」
アムロ 「おお、ずいぶんと心癒される会話じゃないか」
刹那 「いや、でもこれは夢の中の話……」
アムロ 「アァ!?」
刹那 「ヒッ……!」
ウッソ 「まあまあ、落ち着いてくださいよ、アムロ兄さん」
カミーユ 「刹那が涙目になってるじゃないか」
アムロ 「だがこいつは……! ええい、なんでこうウチの弟たちは異性関係に問題がある連中ばかり……!」
シーブック「兄さんがそれを言いますか!?」
159 名前:俺はガンダムだから投稿日:2008/03/31(月) 21:58:06 ID:???
刹那 「……お、俺は!」
アムロ 「なんだ!?」
刹那 「俺は、ガンダムだから! そういうのは、まだいい!」
アムロ 「なんだと? どういう……」
刹那 「エクシア、どこかの争いに武力介入する!」
アムロ 「って逃げるなコラァァァァァッ!」
ウッソ 「……行っちゃいましたねえ……」
アムロ 「全くあいつは……! で、最後の台詞はどういう意味なんだ? あいつの電波は意味不明すぎてよく分からん」
カミーユ 「俺はガンダムだから……つまり、戦うことばかりやってきたので」
シーブック「恋愛とか、そういうのはまだ恥ずかしくて手が出せません、みたいな……?」
アムロ 「だが、それにしては手紙の中で『せっつん』『まーりん』とか」
カミーユ 「文字を書くぐらいなら、ある程度冷静さを保っていられるんじゃないか」
シーブック「事務的な会話は出来るって言ってたしな……慣れないことしようとして冷静さを失うのが、話せない理由なのか」
ウッソ 「だとしたら、例の夜這いのときも相当テンパってたでしょうね」
カミーユ 「ああ、きっとこういう感じだったに違いない」
マリナ 『誰……ッ!? 刹那・F・セイエイ!?』
刹那 『違う、俺はガンダムだ!』
シーブック「あり得ないとも言い切れないのがなんだかな……」
アムロ 「クッ……!
これだからチェリーは!」
ウッソ 「そんなレベルじゃないですよこれは……ああ、ちなみに」
アムロ 「なんだ!?」
ウッソ 「マリナさんの方も、あの年で文通とかして喜んでるようなお人なので、
多分あちら側から積極的に、っていうのはちょっと難しいんじゃないかな、と」
シーブック「祖国復興のために駆けずり回っていて、恋愛を楽しむ機会もなかったんだなあ……」
カミーユ 「……ひょっとして、刹那が彼女にあげているというソレスタル・ビーイングの給金というのも、
ほとんど祖国に送っていて自分の手元には残していないんじゃないのか?」
ウッソ 「なるほど、だからいつもフラフラなんですね」
シーブック「自分の食費ぐらいは手元に残していればいいのに」
アムロ 「なんにしても、両方ともそういう面では小学生以下か……! クソッ、頭痛の種がまた一つ……!」
ネーナ 「やっほーせっちゃん!」
アムロ 「!? 君は……」
ウッソ 「っていうか普通に窓を突き破って侵入してこないでくださいよ!」
ネーナ 「あれー、せっちゃんいないのー?」
シーブック「実はかくかくしかじかでどこかの争いに武力介入しに」
ネーナ 「またわたしを無視してーっ! せっちゃんの馬鹿ぁぁぁぁぁぁっ!」
カミーユ 「……行ってしまった……なんか、妙に
デジャヴを感じる女の子だったな……」
ウッソ 「刹那兄さんの知り合いみたいですよ。怒ると人を
ミンチにしそうな危ない感じの……」
アムロ 「……刹那の相手には、あのぐらい積極的と言うか強引な子の方がいいのかもしれないな……」
シーブック「は?」
アムロ 「よし、あの子を追って話をつけるぞ! 全員俺に続け!」
ウッソ 「ちょ、アムロ兄さん自重w」
刹那 (……なにか寒気が……クッ、だめだ、
こんなことではガンダムにはなれない……)
最終更新:2020年01月19日 00:30