「アミロペクチン第二章-32話 ~ミッションの失敗~」


 その後も我々は3000ラッツ目当てにダンツィさんのミッションを受けていた。
思えばもう皐月は過ぎ去り水無月を通り過ぎて文月である。
 私はミッションによって得た金を使い、本棚を買った。
それによって床に散乱していた“アンデット・フィフス”やら“PとF”やら
“太陽とお月様のお話”やら“悪魔のささやき”やらを整理することができた。
シュルツのほうは、愛読しているカラシマヨ氏の“$outhern ?ross”
が失踪予定だということを聞いて嘆いていた。
カラシマヨ氏というパウダー王国人は一体どのような方なのだろう。
一度会ってみたい。シュルツがファンになるほどであるからよほどの方だろう。
しかし私はパウダー王国の言葉を喋ることができない。
              ◆
 ある文月の日。我々は今日もダンツィさんのミッションを受けていた。
今日はシュルツがミッションを決行する番だ。
 私が米粉パンの生地を練っている向こうでシュルツはミッションを行っている。
しばらくして強い声が聞こえてきた。
「何なの、シュルツ君?最近そういう質問ばっかりしてくるよね」
「いや、あの」
とうとう気付かれてしまったらしい。
 その後シュルツは真実を語った。
我々のリーダーであるダンツィさんがリリーさんに惚れているということ、
我々が3000ラッツで雇われている事など全てを語っていた。
最後にリリーさんはこう言った。
「その人に明日会いたい。連れて来てくれる?」
              ◆
 次の日、我々はダンツィさんを連れてきた。
「リリーさん、この方がダンツィさんです」
「……」
「リリーさん?」
リリーさんは何も言わずに、我々をシッシと退かすように手を振った。
 その後は二人がどこようなやりとりをしたかは語らないでおこう。
成就した恋ほど語るに値しないものはない。
 シュルツはもう3000ラッツを貰えないことにまた嘆いていたが、
ダンツィさんは幸せそうだった。
そして時々、リリーさんはダンツィさんと一緒に出かけていくことが多くなった。
それがデートというモノであるということはさすがの私にだって分かった。
              ◆
 さぁて、私の恋の行方は一体いずこに?



用語
  • 皐月・水無月・文月・・・5月、6月、7月。ノーデン友好協力条約締結の際にその国々は陰陽歴から太陽暦に変更し、月の名前は陰陽歴からそのまま引き継いだ。つまり本当にその月の指す時期から一か月ほどずれている。


名前:
コメント:

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年03月22日 01:29