「アミロペクチン第二章-39話~ある朝、アルベルト・フォン・シュルツが不安な夢からふと覚めてみると、外で祈りの時間の鐘がなっているのに気がついた。~」
シュルツが来ない。もう正午の祈りの時間の鐘がなっている。
いくら天教の休みである月曜日だからといって我々ノードン教信者は休みだというわけではない。
もしや寝坊したとかではなかろうか。
しかしあのシュルツが寝坊するなどこれまで一度も無かった。
もしかして『変身』のグレーゴル・ザムザのように毒虫になってしまったのか。
それで突然のことに戸惑いながら「もう少し眠ってみよう」と考えるがしかし、
なかなか眠れずにいる。そして今の仕事について思いを馳せる。
「俺はこんなところで何をしてるんだ?俺の夢はウェンバスへ行ってWWWの本社で記者を
するんじゃなかたのか?」そして、
「この早起きという奴は人間を薄馬鹿にしてしまう。人間はたっぷり眠らなければ成らない」
と考えて眠りに落ちる。そして気付くと正午の鐘がなっている。
皆仕事に行っていて誰もいないミーツカゼルネ・コメタリア。
シュルツはそこで毒虫となってごろごろしている。
それではとても大変である。一大事である。
今すぐミーツカゼルネ・コメタリアへ行かねばならない。
◆
私が出発の準備をしていると何者かの影が現れた。
今は祈りの時間中である。つまり考えられるのはただ一人。いや一匹・・・毒虫である。
「シュルツ、大丈夫か!」
「ごめんごめん、寝坊しちゃった」
そこにいたシュルツは毒虫ではなかった。
「お前・・・毒虫になったんじゃなかったのか?」
「は?何言うてまんの?」
「それにしても寝坊って・・・この前『今まで以上に気合いを入れてパンを作ります!』
って言ってたよな」
「いや、あの、昨日、十二ノ刻くらいまで二週間分のWorldWeek読んでてさ・・・」
カーンカーン。
祈りの終わりを知らせる鐘がなった。
「十二ノ刻まで?何考えてるんだお前は」
「いやあ、途中で灯油が切れてさ、真っ暗で大変だったんだよね」
「そんなことどうでもいいから早く準備しろ!お客様がどんどんやってくるぞ!」
「はい、はい」
用語
- ミーツカゼルネ・コメタリア・・・米粉パン普及活動員達が住んでいるアパートメント。
最終更新:2011年04月03日 19:37