団地には相変わらずゾンビで埋め尽くされていた。
無論自分の家も例外ではなく、玄関のドアまでたどり着くのにだいぶ時間がかかった。
「あれ、開かない・・・。」
鍵を開けてドアノブを回してみるものの、一向にドアが開く気配はない。
「どうしたんですか?」
紫音が心配そうな顔をした。
「ドアが歪んで開かないみたい、開けてくれる?」
「はい、やってみます。」
紫音は左手で右手を持つと目を閉じて力を込めた。
エスパー少女、と言えば聞こえはいいが紫音の念動力はは厚さ数センチの鉄板でも容易に曲げる事が出来るほどの力がある。
よくあの時捻り潰されなかったものだと自分の運の良さに感謝する。
「えい!」
可愛い掛け声と共に玄関のドアが吹き飛んだ。
「ありがとう。」
「いえ、どういたしまして。」
籠崎家というものはつくづく恐ろしい一家だと思う。
長男は皇帝の守護者になるほどの魔術師、長女は炎を操る魔女で二女は強力な念動力者でもあり暗殺者。
『ちなみにパパは前皇帝の守護者なのよ。』
・・・本当に何者なんだろうか、籠崎家。
「それで忘れ物って何なんですか?」
紫音の声を聞いて現実に帰る。
「あ、うん、ちょっと大切なものなの。」
「分かりました、探している間は待っておきますね。」
「いいわ、すぐに終わるから。」
私は部屋に入って着替えると、服をいくつか鞄に閉まった。
「あとは・・・これね」
そして一番大切なもの。
1枚しかない家族との写真。
他にも写真はあったのだがいつの間にか消えていた。
全て鞄に詰め込んで私は部屋を出た。
「お待たせ、じゃあ行こうか。」
私が笑顔を見せると、紫音とコロンも笑顔で答えてくれた。
もしいつかこの島を出るような事があったら、また3人一緒にいられるだろうか。
いや、絶対にこの島を出るんだ。
『覚悟は決まった?じゃあさっさと待ってる人を助けにいかなきゃね。』
「ええ、行くわよ、コロン、紫音。」
最終更新:2011年04月09日 13:49