「ふにゅ~・・・」
「・・・どうした?もう終わりか?」
一応実弾は使わないように気を付けたのだが少しやりすぎたのだろうか。
「むむう・・・やられちゃいました、強いですね・・・」
「お前が弱いんだよ、さあ案内してもらうぜ、その「御主人さま」とやらに。」
俺は少女を引っ張り上げた。
「で、お前の名前は何て言うんだ?」
「えっと・・・日野です、日野三咲(ひの みさき)っていいます。」
「俺は籠崎来夏だ、よろしく。」
「あ、よろしくお願いします。」
さっきまでの丁寧口調と変わって少し弱々しい喋り方になっている。
手加減出来てなかったのかな、と考えてみた。
しかしそれが無駄だと分かったため俺はおとなしく日野について行くことにした。
「・・・ここがマスターの部屋です、なるべく起こさないようにしてくださいね。」
俺はアーサーの口に人差し指を立てた。
答える代わりにアーサーが頷く。
そして部屋の大半が謎の物体で埋め尽くされている。
それが何かを理解するのに時間がかかったが、鱗で覆われているという事だけは分かった。
「・・・・来夏か?」
重い声が聞こえた。
「どうして俺の名前を知っている?」
「・・・忘れたのか?孫。」
・・・冷や汗が出た。
俺にも怖い物はある。
だがコイツはヤバい、俺が世界で2番目に恐れる・・・
「もしかして・・・ワイバーンのじいさん?」
「やっと思い出したか。」
ワイバーン・ロンド、俺の祖父に当たる龍だ。
300年以上生きている龍らしく、俺の母親の父親らしいのだが何でこんな所にいるのが分からない。
「な、何でこんな所に?」
「すこしヘマをしてな・・・ここでしばらく休まさせてもらってるよ。」
「そ、それならいいんだ、で、こいつは?」
俺は日野を指差した。
「うむ、剣を教えてほしいと言われてな、それで秘伝書を渡して寝ながら稽古を付けてやっていたのだ。」
それは修行と言えるのか、祖父よ。
「道理で弱いわけだ、ロクに稽古もつけてやってなかったんだからな。」
「孫に馬鹿にされるとは、俺も歳をとったものだ。」
「まだ若いだろ、龍にしてはな。」
「まあ素質はある、お前が面倒を・・・」
「断る、俺はもう手一杯だ。」
「そうか、ならばよかろう、これからも俺が・・・」
「はいは~い、私がやる~。」
後ろからアーサーが飛び出してきた。
「え?」
「だから、私が稽古付けてあげる、それなら文句ないでしょ?」
お前は何を言っているんだ。
「まあいい、俺は帰るとするよ、用事が残ってるんでな。」
「そうか、では私は少しだけ眠らせてもらうよ。」
さっさと寝ろ、この疫病神。
俺は日野とアーサーを連れて部屋を出た。
「大丈夫なんですか?マスターを置いて行ってしまって。」
「大丈夫だろう、その気になったら天井突き破って飛ぶだろうからな。」
最終更新:2011年05月07日 11:58