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エスケイプ序章


 明るい太陽の光が部屋に燦々と降り注いでいる。休日の白昼、月砂荘の201号室である。
              ◆
 この手記を読むにあたって俺の情報がある程度は必要であろう。しかし俺は、俺が何処で産まれ
どのように育ち、如何にして現在のようになったのかということを長々と書くつもりはない。手短に済ませ
ようと思う。
 俺は小学校4年まで神奈川県に住んでいた。無論産まれた土地も神奈川県である。その後、父の事情によりこの都市へ
引っ越してきた。
 そして中学受験をし、中高一貫校へ進学。そして現在俺は高校生である。
 しかし上記のような俺の現在までの生い立ちを知ったことでこの手記を読むのに支障は生じない。
 「この手記を読むにあたって俺の情報がある程度は必要であろう。」などと書いてしまったことを今更
ながら恥じる。
              ◆
 そして今、俺は月砂荘の201号室に居るのだが、何故俺がこんなボロッちいアパートの一室に居るのか。
それを説明させて頂く。
              ◆
 きっかけは川下(かわしも)先輩からの手紙であった。
 川下先輩とはかつて同じ部活動に所属していた先輩である。今は川下先輩は大学生となり、
リアル脱出ゲームというものを作るサークルに入り、そこで青春を謳歌しているようなのである。
 俺の通ってる高校は男子校であるため、恋愛が出来ない。そのため川下先輩のことが少々羨ましい。
 しかし川下先輩も少し前までは俺と同じ学校の生徒だったのだ。ということは俺も大学へ行けば恋愛が
出来るのではないか。そう考えると希望が沸いてきた。
 しかしそんなことはこの手記には関係ない。そして必ずしも川下先輩に恋人がいるとは限らない。

 そしてその手紙は次のようなものであった。
              ◆
『前略
 長らく会っていないが元気だろうか。
 俺は大学でリアル脱出ゲームを作っている。そしてこのたび月砂荘でそれを作ることになった。
 月砂荘は俺の住んでいるアパートだ。改造するにあたって住民がどうのだということは気にしないで
くれ。絶対に気にしてはいけない。
 一階は事情により無理だということで二階を改造することになった。
 月砂荘は君の家からも近いだろう。あの川沿いのボロっちいアパートだ。是非来てほしい。
来る日時はいつでもいい。
 まず最初は201号室を脱出してくれ。では201号室の鍵を同封しておく。
 そして決して住民がどうのだということを気にしてはいけない。
                                         草々頓首』
              ◆
 この手紙を読んだ翌々日、つまり今日である。俺は月砂荘へと向かった。
 月砂荘は全国でも有名な花街の路地にある。そのため俺のような高校生一人が入るのは少々緊張した。
その花街には高級そうな和風料亭や居酒屋などが並ぶび、芸妓さんとも時々すれ違った。
 そんな華やかな路地のなかに一際目立つ建物があった。月砂荘である。月砂荘だけが全く華を持っていなかったのだ。
 月砂荘はかなり古色蒼然とした木造三階建てアパートであった。今にも倒壊しそうで怖かった。
 和風という点では周囲と交わってはいるが、月砂荘は他の建物とは違い、高級感がない。何故こんな場所に
建てたのか。我が町なら月砂荘のような建物が違和感なく建てられる場所がありふれているだろうに。
              ◆
 そして俺は月砂荘へと入っていった。二階への階段を上り、201号室へと向かった。
そこは月砂荘の外観とは違い、古風でお洒落な部屋であった。
 私はそこで少しくつろぎ、
「この部屋の住人は一体どうしてるんだ?」
などと考えていた。
 そして私は脱出しようとしたのだが、
「脱出するということは鍵がかかっているということだよな?」
と思い、ドアを確認してみた。

 開かなかった。
 入るための鍵でも開かなかった。
 閉じ込められたのだ。まあ、脱出ゲームだから当たり前か。
 それでは脱出してみよう。



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最終更新:2011年07月10日 08:31