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エスケイプ202


 8月の眩しい太陽の光が降り注ぐ202号室。俺の周りをブ~ンブ~ンと蚊が飛んでいる。
 何故俺がこのようにかゆい思いをしなければならないのか。その発端は川下先輩からの手紙である。
              ◆
 『前略
 202号室の改造が完了した。

 この部屋は外と隔てる壁がない。そのため蚊が大量に入ってくる。
 何故、蚊が多いのか。それは君も分っているであろうが下に川が流れているからだ。

 それにしてもこの202号室は、あそこの橋や河原など外から見ると異様である。
 といってもそれは10月から4月にかけてのみだ。なぜなら5月から9月だと周りの店と溶け込むのだ。
 そう。5月から9月といえば納涼床の出ている季節だ。この202号室は、あの小川に貼り出した形で作られている。つまり一年中、納涼床が出ているような感じなのだ。
 10月になったら来てみるといい。この202号室だけ異様だ。
 思ったのだがこれは許可をもらっているのか?
                     草々頓首』
              ◆
 ということで俺は今、202号室にいるのである。
前回、201号室の際は「次回も脱出しよう」と意気込んでいたが、ここまで蚊に刺されるのであればもう早くやめたい。
 しかし、途中でやめるなどできないということは既に分かっている。
 では脱出しよう。
              ◆
 まず、目に入ってきたのはタイプライターである。どうやらこれでパスワードを入力するらしい。
 と、ふと壁を見たらポスターが貼ってある。タイプライターの絵の下に「852」とある。本当にこんなに簡単で良いのか。半信半疑であるが、俺は「852」をタイプライターに入力した。
 ビンゴ。
 タイプライターの左側面からダイヤ型、菱形の物体が出てきた。これは何なのであろう。
 俺は部屋を見渡す。
 と、柱が目に入ってきた。その柱には中程の部分に、なにかをはめる穴がある。そうか、このダイヤ型の物をはめればよいのだ。
 そして俺はその柱のくぼみにダイヤ型をはめてみた。
 取っ手を引く。すると、取っ手がスライドし、柱の中からまた取っ手が出てきた。
 それは引き出しの取っ手であった。そこで俺は思い出した。部屋を見渡した際に、取っ手の付いていない引き出しがあったのだ。
 俺はその引き出しに付いている2つの穴に、その取っ手を取り付けた。
 そうしたら見事にぴったりはまり、引き出しの中からはオリーブオルが出てきた。
 さて、この後何をして良いのか分からないので、片っ端からアイテムを探すこととした。
 まず、隣の引き出しには紙が一枚入っていた。上に置いてある植物も見てみたが、○や△や☓といった記号が書いてあるだけで、特に使えそうなアイテムはなかった。
 バルコニー側の壁の高い位置に、鍵が置いてある。しかし高くて届かないので諦めることとした。
 外のバルコニーに出てみたところ、柱の影にワイングラスが鎮座在していた。
 写真をどけてみたところ、銅色の鍵が出てきた。
              ◆
 もうアイテムは見つからなかった。
 以前、201号室では「紙にワインを掛ける」というものがあった。今回もやってっみよう。そう思い、紙にオリーブオイルを掛けてみた。
 すると「2542」という文字が浮かび上がってきた。
 俺はすぐに、下の棚に入力した。
 ビンゴ。
 すると棒が出てきた。何に使うのであろう。と思っていたら、高い位置に鍵が置いてあったということを思い出した。
 俺はその棒を使って鍵を落とした。銀色の鍵である。
 これで脱出出来るのか!?と思って、扉に挿してみたがダメであった。
 写真がおいてあるところの下に鍵穴があったのを思い出して、そこに挿した。すると、鍵が開き、中からはパンが出てきた。
 よし。このパンをバルコニーに置いてあるトースターに入れてみよう。
 数分がたち、「チンッ」という音がした。パンが焼けたのである。
 焼けたパンを取りだし、俺は驚いた。パンには「5087」と数字がトーストされていたのだ。
 よっしゃぁ!と思い、バルコニー側の柱に入力したが、開かなかった。どうすればよいのであろう。
 ふと思いたち、俺はパンにオリーブオイルを掛けてみることにした。
 ビンゴ!
 パンに「+200」という文字が出てきた。5087+200=5287。それを柱に入力してみた。
 開いた。中にはワインが入っている。
              ◆
 行き詰まった。完全に行き詰まった。何をすれば良いのだ。
 そこで俺は、机の上に置いておいたワイングラスの存在を思い出した。俺は早速、そのグラスにワインを注いでみた。
 よっしやぁ!「3325」という数字が浮かび上がった。
 しかし何処へ入力すれば良いのだ?もう全ての入力欄に入力した。いや、1つだけ入力していない所がある。しかしそこは三桁であった。どうすればよいのだ。
 俺は半ばやけくそになり、床へ寝転んだ。
 そこで俺は発見した。机の下の隠れていた入力欄を!
 「3325」を入力し、宝箱のようなものを手に入れた。まだ使っていない銅の鍵を挿し、開いた。
 中には熊手が入っていたのだが、どのように使うのだろう。
 熊手の持ち手部分にはなにかにはめ込めるように作られたものがあり、いろいろなものにはめていたら、あの棒にぴったりとはまった。ということはまた高いところのものを取るのか、と思い、天井を見上げてみると、柱の上部分に神棚のようなものがあった。
 俺はそこを熊手棒を使って、アイテムを探した。適当にがさごそやっていると、金色の鍵が出てきた。
 これで脱出できる!と思い、扉を開けようとしたが、そこで俺は植物の葉の裏に書いてあった○や△や☓といった記号を思い出した。俺はその○や△や☓の記号の数を数え、入力欄に入れたところ、赤べこが出てきた。
 そいえば前回、「ちなみにこれからの部屋にも置くつもりだ。会津で十個も買ったからね。」と手紙に書いてあった。なるほど。
 そして俺は満足し、キの鍵で扉を開けた。
              ◆
 今回も無事、脱出できたわけだが一つ問題点がある。
 蚊に刺されまくったのだ。十数箇所は刺されている。暑いため、軽装で来たのが仇となったようだ。帰って薬を塗るのが面倒だ。
 O型の人間は蚊に刺されやすいという。あいにく俺はO型だ。それにしてもどうやって蚊は血液型を認識しているのであろう。謎だ。分かった方は月砂荘の掲示板に書きこんでほしい。
              ◆
 翌日、川下先輩から手紙が届いた。

『前略
 今度も脱出おめでとう。
 さて君はいくつ蚊にさされたかな。俺は制作期間中には毎日のように数か所刺されていた。そういえば三平さんなんてO型だから俺よりも刺されていたようだぞ。
 ちなみに三平さんというのは同じ脱出ゲームサークルの同輩の女子で、我々と共に月砂荘の部屋を改造している。「三平」は「さんぺい」ではなく「みひら」であるから注意してくれたまえ。

 そうだ、君は赤べこをottengoしたそうじゃないか。あれは幸運の赤べこということで俺が会津で買ってきたのだが俺はそういうのは信じないから君にdoる。ん?上記のことを201号室の時にも言った気がするのだが。デジャブか?

 さて次は203号室だ。203号室はまだ改造を開始すらしてないからもう少し待ってくれ。完成したらまた手紙を送る。
 では、チャオ♪
                     草々頓首』

 無理に外国語を用いている所が痛い。ottengoやdoとは何語だ?
 まあしかし「幸運の赤べこ」を手に入れることができたのはよいことだ。201号室でも赤べこが出てきたが、何故赤べこなのだろう。
赤べこといえば福島会津地方の伝統的な民芸玩具である。頭に触れるとカックンカックンするところがとてもユーモラスだ。
 しかし赤べこのような和風の物では201や202などの洋風の部屋には馴染まないのではないか。
 川下先輩が赤べこを選んだのは謎である。この謎が解けた者は月砂荘の掲示板に書き込んでほしい。

 では読者諸君、ここでお別れだ。203号室での再会を願おう。


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最終更新:2011年08月03日 17:15