survive song ◆auiI.USnCE
――――だから、私達は歌い続けるんだっ!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
走っていた。
ただ、我武者羅に走っていた。
普段走りなれてないから、足がもう大分痛い。
山道なんて、インドアだった私には経験がないから、尚更だ。
でも、私は走る事を止めるなんて、出来やしなかった。
―――…………まだだ、まだ! 死んでない!
今でも、頭にリフレインする言葉。
芳賀さんの、最後の言葉。
紡がれたのは、生の渇望。
そして、きっと、私を逃がす為の強い意志が籠められた言葉。
だから、私は逃げる事ができた。
だから、私は生きている。
芳賀さんのお陰で、私は生きていた。
そう、私は生きている。
口から漏れる荒い息、とても速い心臓の鼓動。
その一切すべてが私の生を証明している。
そして、先程から、聞こえて来た放送が、芳賀さんの死を証明していた。
芳賀さんだけじゃない、戦線の皆とひさ子先輩、ユイにゃんの死をも伝えていて。
私は言葉を失うしかなくて。
でも、走る事を止める事は出来なかった。
皆が『死んでない』なんて、もう私には言えない。
きっと、本当に死んだんだろう。
本当に、簡単に、死んでしまった。
ガルデモも二人になってしまった。
ひさ子先輩は満足に逝けたのだろうか。
ユイにゃんは満足に逝けたんだろうか。
確認しようも、確認なんて、出来やしない。
…………ううん、満足に逝けたはずなんてないんだ。
今までずっと満たされなくて。何処か空虚なようで。
簡単に死んでしまった自分自身を認められなくて。
だから、私達は歌っていた。精一杯、精一杯に。
何を?
――――生きる事をだ。
ガルデモの初代ボーカルだった岩沢さんはまるで鬼気迫るように歌っていた。
何が哀しいのか、何が苦しいのか、狂ったように歌って。
何となくガルデモに入れられた私には、彼女の気持ちがよく解からなかったけど。
今なら、それが本当によく解かる。
死にたく、死にたくなかったんだよ。
だから、その想いを歌に籠めてたのかもしれない。
そして、岩沢さんは満足して、本当に逝った。
自分の生きる事に、歌う事に満足したのだろうか。
私には解からない、他人の心なんて解かりはしない。
けれど、解かりたくなかったのかもしれない。
生きる事に満足するってのが解からないから。
ガルデモってなんだったんだろうと、ふと思う。
戦線のバックアップ?
岩沢さんが歌う為に作ったバンド?
どれも正しいようで、違う気がする。
じゃあ、何なんだったろう。
じゃあ、何で、私はガルデモにいたんだろう。
生きて、死んで、また蘇って。
そんなありえない世界で、私達が歌い続けた理由。
私が、ガルデモに居た理由。
――――まだだ、まだ! 死んでない!
そして、またリフレインする、言葉。
……ああ、そうか、そうなんだ。
きっと、そうなんだよ。
私達は、この思いを、歌っていたんだ。
「死んで、たまるか」
死んでたまるか。
こんな死なんて認めてたまるか。
まだ、まだ、死んでない。
生きてやる、ずっと生きてやる。
そんな思いを歌ってんだよ。
死んで生き返る世界で、忘れかけてたけど、きっとそう。
「死んで、たまるか」
何度も、何度も私はその言葉を口に出す。
ガルデモはもう二人しか居ない。
ボーカルのユイにゃんも、支えてくれたひさ子先輩も、もう逝ってしまった。
けれど、けれども。
――しおりんは、自分だけがやりたいこと、やりなよ。
私が、やりたい事。
今、私がやらないといけない事。
ああ、それはきっと決まってるんだ。
――あたしはね、しおりんにここをなくして欲しくないだけだよ
今なら、きっと言える。
私はガルデモが好きだったんだ。
なら、その好きなことを忘れないために。
「死んでたまるかっ!」
――――関根しおりは生きる事を、歌い続けよう。
みゆきちも、まだ生きている。
私達、ガルデモは、まだ終わっていない。
だから、まだ、歌える、歌っていける。
ユイにゃんやひさ子先輩の分も。
生きるという事を。
死んでたまるかという事を。
歌っていくんだ。
歌っていけるんだ。
生きたいという思いを抱えて。
死んでたまるかというおもいをかかえて。
「死んでっ! たまるか――――っ!」
――――だから、私達は歌い続けるんだっ!
生きたいという、精一杯の歌を。
私達は歌い続けるんだっ!
【時間:1日目午後6時30分ごろ】
【場所:C-4】
関根
【持ち物:不明支給品、水・食料一日分】
【状況:健康】
最終更新:2012年02月14日 15:05