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長門有希の首輪(後編)

さて。長門がSOS団のペットに成り下がっててから、2週間ほど経った放課後。

俺が部室のドアを開けると、まず第一にメイド姿の朝比奈さんが、
それから、ダンボール箱からちょこんと顔を出しているネコミミ長門と、その傍にしゃがみ込んでいるハルヒが目に入った。
ついでに、そんなハルヒを苦笑しつつ眺めている古泉も。
いったい、ハルヒが何をしているのかといえば、長門の頬に「うりうり」と猫じゃらしを押し付けているのであった。
長門本人は相変わらず無表情なものの、なんとなく鬱陶しそうだ。

「こんにちは、キョン君」朝比奈さんのその声に反応したのか、長門が、ダンボール箱から這い出してきた。
「ちょっと、有希ったら!なんなのよ、もう。せっかく私が遊んであげていたのに!」
猫じゃらしを振り回すハルヒを尻目に、ネコミミ長門が四つん這いのまま、俺の足元に近づいてくる。
いくらハルヒがペットだと言い張ってるとはいえ、健全な男子である俺から見れば全裸の貧乳少女であるからして、
精神衛生上好ましくないこと限りない。
「よ、よう。長門。夕べはよく眠れたか?」
こくり。と頷き、長門は俺の足に、太ももへとその無表情な顔を摺り寄せてきた。
「うわっ、こらこら、どこを触っているんだ、お前は」
「ははは。すっかり長門さんになつかれてますね。羨ましい限りです」
古泉がいつものスマイルを浮かべたままで言った。
うーむ、懐かれている……のだろうか?
長門は親愛の表現のつもりなのかもしれんが、相変わらずの無表情のため、何を考えているのか分からない。
おまけに、ペットになってからというもの、ただでさえ少なかった口数がますます減ってきたしな。
尻に生えている尻尾が本物だったら、ちぎれんばかりに振るのだろうか。


「はい、ユキちゃん、どうぞ」
朝比奈さんが、牛乳を注いだ皿を床の上に置くと、長門はようやく俺から離れ、
ぴちゃぴちゃと、牛乳を舐めるように飲み始めた。
そんな長門を、朝比奈さんは微笑んで見ている。

未だに戸惑っている俺と違い、朝比奈さんは長門をペットとして扱うことに、すぐ慣れた。
いまや食事からトイレの世話まで、ほとんど朝比奈さんが面倒を見ている。
まったく素晴らしい環境適応能力だ。

長門はあっと言う間に牛乳を飲み終えた。
空になった皿を、意地汚くペロペロと舐めている。
「そうだ、ユキちゃん、お昼の残りがあるけど、食べる?」
尋ねられて、口の周りを白く汚した長門はほんの数ミリだけ首を動かした。
朝比奈さんはにっこりと笑い、鞄から弁当箱を取り出した。
色もサイズも本人同様、随分とかわいらしい。毎日、学食でたらふく食っているハルヒと違い、胃袋もかわいらしいのだろう。
「はい、めしあがれ」
フタを外した弁当箱を目の前に置かれ、長門はためらうことなく、
おかずの汁がしみ込んで茶色くなったご飯と、プチトマトのヘタと少々のキャベツの千切りを、がつがつと食らい始めた。
うーん。ちょっと羨ましいぞ。朝比奈さんの残飯だったら俺も食いたい。
長門はあっという間に食べ終わると、空になった弁当箱をペロペロと舐めた。もっとゆっくり食えよ。
谷口だったら感激のあまり、完食するのに3日はかけるぞ。


うっかり、ageちまった。スマソ。

「ユキちゃん、美味しかった?」朝比奈さんが尋ねると、長門はこくりと頷いた。
「良かった。あら。ほっぺたに、おべんとうがついてる」
朝比奈さんが、長門の頬についていたゴハン粒をつまんで取ってやると、長門はその指先をぺろりと舐めた。
「あはっ、くすぐったい」
そう言ってから、長門の頭を撫でる朝比奈さんを眺め、
「いやあ、実に微笑ましい光景ですね」と目を細める古泉。
微笑ましい……のか?
確かに朝比奈さんが戯れているのが、ごく普通の犬や猫なら絵になる光景だが、今、相手にしているのは
ネコミミと首輪をつけられ、犬のしっぽ付のアナルパールを尻に挿入された全裸の長門だぞ。

「考えても見てください。これまで、長門さんをちゃん付けで呼ぶ、朝比奈さんを想像できましたか?」
確かに。
以前の朝比奈さんは長門に対して、おっかなびっくり接していた。
それが今ではどうだ。朝比奈さんは、かいがいしく長門の世話をしているし、長門だって満更ではなさそうだ。
今や二人、もとい1人と一匹は固い絆で結ばれているのが窺える。
俺は、長門が一人ぼっちで暮らしていた、ただ広いだけのマンションを思い浮かべた。
案外、長門はこれで幸せなのかもしれない。
例え人間扱いされない、ペットとしての生活でも、朝比奈さんに面倒見てもらえるのだ。
文句を言ったらバチが当たるというものだろう。

そんな和やかなムードが漂う、SOS団部室内でただ1人、不機嫌なヤツがいた。
言うまでもない。ハルヒである。
「何なのよ、もう!有希をSOS団のペットにしようって、言い出したのは私よ。
団長である私をさしおいて、なんでみくるちゃんに懐いているわけ?信じらんない」
最終更新:2012年12月29日 06:48