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  • 涼宮ハルヒの経営I 1章

涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki(避難所)

涼宮ハルヒの経営I 1章

最終更新:2020年03月18日 21:51

haruhi_vip2

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だれでも歓迎! 編集

一 章
 


 
 まず、ハルヒを取り巻く懲りない面々の近況を伝えておこう。
 
 SOS団サークルが大学でも大暴れすること四年間。過去に上映した映画のリバイバル、続編の撮影、この世の不思議を求めて日本各地を旅行。野球、サッカー、剣道柔道合気道、学内外のスポーツサークルに挑戦状を叩きつけ、泣きすがる部員を尻目に看板をかっさらって帰ったのはまだまだ序の口。部費捻出のためのあやしげな営業活動に渋面の教授陣もさることながら、処置なしと見た大学当局からなんのお叱りも受けずに無事卒業できたことは、長門、古泉各方面の協力(いや圧力)に感謝すべきだろう。
 
 ハルヒはいくつか内定を取った企業のうち、もっとも給与条件のいい会社に入ったようだ。大手食品会社の商品企画なんてのをやっている。ハルヒらしいといえば、あいつらしい仕事だが。あいつが毎日スーツを着てデスクワークをしている様子は、ちょっと想像しがたい。噂では商品キャラクタの着ぐるみを着て営業に回っているとのことだ。そういえば就職してからずっと髪を伸ばしている。髪を結ぶリボンの色を毎日替える宇宙人対策を、入社式からずっとやっていたらしい。
 
 長門は大学からそのまま大学院に進んだ。高エネルギーだか素粒子物理だかの理学博士課程にいる。俺はてっきりハルヒと同じ会社に入るものと思っていたが、聞くところによるとこれもハルヒの行動を予測してのことらしい。
 
 古泉は、あいつは、そのまま機関で働くことになった。バイト待遇から正社員になったようだ。相変わらず閉鎖空間で神人を追いかけている。俺たちが就職してからはあまり会っていない。
 
 俺はといえば、たいして就職活動をしていなかったにもかかわらず、内定を取って無事サラリーマンに落ち着いている。大学の専攻とはまったく関係なかったが、参考書やら学校教材を出版している会社に入った。有名塾の先生に執筆を頼み、原稿をチェックしてDTPにまわし、版下が完成したら印刷所にまわす。まわさないのは皿くらいなもんで、まあ編集のはしくれみたいなことをやっている。スケジュールさえ守れば残業もないし、休日出勤もなし。楽っちゃ楽だ。
 
 それから半年が経ち、俺は社会のしがらみの中でどうやらこのまま歳を重ねていくことになりそうだと、一種の安堵感に浸りつつあった。ハルヒが就職してからSOS団の活動も下火になってゆき、たぶんこのまま先細って、あのときはあんなバカなこともやったよなぁなんて全員で思い出に浸れるようになるんじゃないかという夢のようなものさえ見ていた。メンバーに会うペースも二週間、三週間と少しずつ間が伸びてゆき、一ヶ月に一度というサラリーマン的キリのいい回数にまで減った。
 
 もういいかげん、ハルヒの奇矯な行動に振り回される役柄を引退してもいい頃だ。なんて甘いことを考えていた矢先にハルヒによって全員集合をかけられたのは、通り過ぎたはずの台風の進路が逆行して戻ってきてしまったときよりも精神的ダメージが大きかった。
「いよっ、みんな元気そうね」
お前にはこれが元気に見えるのか。会社が引けてからハルヒにいつもの喫茶店に呼び出されて俺が憂鬱になっているところへ、長門と古泉が現れた。
「……」
「皆さんお久しぶりです。涼宮さんもおかわりなく」
長門とはほぼ毎日会っているが、古泉の顔を見るのは久しぶりだった。どことなく貫禄がついた気がする。
「さすがは涼宮さんですね。団長、超監督、名探偵、編集長と来て、次は社長ですか」
ハルヒのトレードマーク、赤い腕章はすでに社長になっている。
「これからはベンチャーよ。生き馬の目を抜く高速道路の現代社会を生き残るにはこれしかないわ」
最近は休日の高速道路並に渋滞している気もするけどな。
「大賛成です。涼宮さんのような逸材が企業の一歯車として働いているなんてもったいなさすぎます。ここはひとつ、新しいビジネスチャンスをつかみましょう」
「で、なにを売るんだ?まさか宇宙人、未来人、超能力者を探し出して売る会社とか言うんじゃないだろうな」
自分で言いながら笑いをこらえきれないでいると、古泉と長門の顔がピクと引きつった。ここに朝比奈さんがいたら眉を寄せたことだろう。
「それをみんなで考えるんじゃないの」
「順序が逆だろうが」
 
「あたしもいろいろ考えてみたわよ。パーティ向けのケイタリングとかどう」
「誰が料理を作るんだ?」
「もっちろん、あんたたちでよ。あたしは取締役社長兼営業。古泉くんは秘書兼営業部長ね」
即、廃業だ。長門が早速料理のレシピ本を読んでいる。気が早いぞおい。
「とりあえず必要なのは事務所よね。この際だからボロい雑居ビルでもいいわ」
「まあ待て。登記の仕方とかも調べなきゃならん。少し時間をくれ」
「あんたの専攻、経済学だったわね。お役所関係は面倒だからキョンに任せるわ」
「経営学部とは違うんだがな。まあまったくの専門外ってわけでもないが。まずは事業内容をはっきりさせてくれ」
「そうねえ。あんたたちも何かアイデア出しなさいよ、即採用するわ」
ハルヒは鞄から分厚い本を何冊も取り出した。タイトルを見ると、起業入門、はじめての起業、会社ひとりでできるもん?俺たちにこれを読めってのか。さっそく長門が一冊手にとってパラパラとめくりはじめた。
 
 俺はチラと長門を見た。流行には遅ればせだがIT系でもやるかな。長門テクノロジーで。大学院とかけもちでたいへんだが、こいつだけが頼りだな。あるいは朝比奈さんに頼んで時間旅行代理店でもやるとか。古泉には……、機関に金を出させるか。あんまり機関には負担をかけたくはないんだがな。
 
 ハルヒが持ってきた漫画で読む起業ガイドとかいう本をさらりと読んでみたが、いきなり株式会社ってのもありらしい。俺はてっきり、同好会から研究会へランクアップするみたいに、有限会社からがんばってステップアップするのかと思っていた。今は有限会社ってのはなくなって株式会社に吸収されちまったらしい。それ以外に有限責任事業組合とか、やたら長い名前の法人が増えちまってる。
 今はお金がなくても株式会社を作れるようで、一円起業とかいうのも可能だと書いてある。要はアイデア次第。入る金と出る金の収支が安定したら出資者を増やしていく。さらに資金調達が必要なら株式市場に上場してもいい。
「なるほど。最終的には一部上場か……」
「一部じゃなくて全部上場しましょうよ!」
いや、そういう意味じゃなくてだな。
 
 ともかく、会社を興すにはハンパじゃない量の書類作成が必要らしい。誰かがレクチャーしてくれるとありがたいんだが。
「古泉は税理士の知り合いはいるか」
「ええ。身内にいます」
「ちょっと知恵を借りたいんだがな。登記に必要な手順やら節税やら」
「分かりました。手配しておきます」
手配って身内に使う言葉じゃないだろ。
「さすが古泉くんね。じゃあキョン、後は頼んだわよ」
まったく、考えつくだけで面倒なことはすべて俺任せじゃないか。高校のときとまったく変わっとらん。いっそのこと閉鎖空間を発生させてストレス解消してくれたほうが助かったんだが。
 
 ハルヒに呼び出されて起業宣言を聞いた帰り道、古泉からちょっと話せないかと電話がかかってきた。まあ暇なんでさして問題はないし、それにこいつの近況も聞いておきたい。
 
 俺は長門を連れて、駅前のファーストフード店で古泉と待ち合わせた。
「お二人さん。改めて、ご無沙汰しております」
「よせよ、そんな社交辞令みたいなあいさつは」
「お互いにもう社会人ですからね。親しき仲にも礼儀あり、それなりの自覚を持たなければ」
などと耳の痛いことを言う。そんな固いこと言わなくても、俺たちは仮にも同窓生だろ。
「最近どうしてんだ?機関のほうは相変わらず忙しいのか」
「それも含めてお知らせしたいことが。ここ半年間、涼宮さんの能力開放が激減していまして」
それは前にもあった。高校二年の二月ごろだったか。あれは単にバレンタインデーに向けての下準備というか、安定期だったというか。それが終わるとまたいつものあいつに戻ったよな。
「閉鎖空間の発生も、神人の発生も、もう片手で数える程度になっています」
「そんなに減ってるのか」
「長門さんはご存知かもしれませんが」
古泉は長門を見た。長門は少しだけうなずいた。
 
「最後に閉鎖空間が発生したのは二週間前です。それも真っ昼間に」
「閉鎖空間が発生しないのはいいことじゃないか」
「ええまあ。それだけではなく、神人が発生しません」
「神人がいない閉鎖空間?アレが消えないと閉鎖空間は消えないんじゃなかったっけ」
「通常はそうです。一ヶ月くらい前でしょうか、いつものように閉鎖空間に入ってみたところ、いつまで待っても神人が現れることなく待ちぼうけを食わされました」
「それで、閉鎖空間はどうなったんだ」
「三十分くらいで消滅しました。神人を発生させるだけのエネルギーがなかったようです」
「ハルヒにしちゃ珍しい不完全燃焼だな」
「ええ。くすぶっているだけならまだしも、突然消えてしまうので我々も戸惑っています」
「そういうときのハルヒってどんな具合なんだ?」
「観測ではイライラと上機嫌のわずかな間を行ったり来たりしているというか」
古泉はそう言って人差し指をバイオリズムのように上下に振ってみせた。
 
「大人になって突発的な感情の起伏が減った、ってことじゃないのか」
「それだけならいいんですが、閉鎖空間というのは涼宮さんの中の常識とエキセントリックな世界を好む願望とのバランスが崩れるとき、ストレスを感じてあの空間が生まれるんです。これは僕たちに能力が与えられてから今までずっとそうです」
「だったらなおのことだ。常識が勝ってハルヒが安定してきてるのはいいことじゃないか」
古泉は俺の顔をじっと見て、少し考えてから論点を変えた。
「考えてみてください。人間が願望を持たなくなったら、どうなりますか」
「まるで俺のことを言われてるようだな」
「いえいえ、一般論としてです」
古泉は汗をかきかき手を振って否定した。
「そんなことになったら夢も希望もない、だるいだけの毎日になっちまうだろうな」
「それは涼宮さんにも当てはまることです。彼女の場合、夢も希望もないということは能力を失うということなんです」
俺はうーんと唸った。ハルヒが能力を失うようなことになったら、ただの女子高生、じゃなくてただのOLになっちまう。どう考えても大歓迎すべき事態じゃないか。それがなぜ古泉や機関にとって懸念材料になるのか分からん。
「この状況を鑑みて、機関の幹部では組織の縮小を検討しています。すでに現場の人間を残して、管理職の人間を当初の三分の一に減らしています」
「機関もリストラか」
「喜ぶべきか、悲しむべきか。そうです」
俺は暇を持て余してぼんやりとプレステをしているCIA職員を思い浮かべた。
 
「このままでは僕もトラバーユを考えなければいけませんね」
しかし今から就職活動をするのはきついだろう。機関じゃ待遇よさそうだし。
「まあ、食っていけるならどんな仕事でもしますよ。涼宮さんに雇ってもらえる道も開けそうですし」
お前こそ夢がないぞ。もっと志を高く持て。
「それはともかく、涼宮さんの夢と希望によって僕たちは存在を許されている。長門さんも、ここにはいない朝比奈さんもそうでしょう」
 
 長門はどう思ってるんだろう。こいつの本来の仕事はハルヒを観察することだ。
「……涼宮ハルヒが能力を失えば、わたしは任務を終える」
「とすると、上に帰っちまうのか」
「……分からない。それについてはまだ検討段階ではない」
ということはまあ、時間的余裕はあるってことだな。俺はすぐにでも長門が帰っちまうのかと想像して少しだけ焦った。
「長門さんは涼宮さんの最近の様子についてはどう思われますか」
「……涼宮ハルヒの思念エネルギーには、大きな波と小さな波がある」
「なるほど。今はどのような位置にいるんでしょうか」
「……中長期的に見れば、今は大きな波の谷間にいるだけ」
「ということは、これからパワー増幅する可能性が高いと」
「……そう。でもこれは、わたしの憶測に過ぎない」
二人とも怖いことを言う。まさかこれからハルヒが大暴れするとかいうんじゃないだろうな。
 
 古泉の懸念はもっともかもしれんが、そっちのほうはあいつらに任せておいて、とりあえず俺はハルヒから出された宿題をこなすことにするか。
 
 さて、起業の手順だ。古泉の知り合いというとすぐ機関のメンバーを思い浮かべるのだが、やってきたのは思ったとおり多丸圭一氏だった。この人は実際に機関の関連会社を経営してる人らしく、いろいろと相談に乗ってもらった。
「どうも多丸さん、その節はいろいろとお世話になりました」
「久しぶりだね。元気にしてたかな」
「おかげさまで、ハルヒの有り余る元気のせいで今回も振り回されています」
多丸氏は昔と変わらず、はっはっはと笑った。
「それで、なにをする会社なのかな?」
「それがまだ決まってないんです」
俺は眉をハの字に曲げてみせた。俺がハルヒのパシリなんだってことは雰囲気的に分かってくれるだろう。
「そんなことだろうと思ったよ。まあなにをするにせよ、お役所でハンコさえもらえばどうにでもなるからね。面倒なのは最初だけだ」
機関の人だけあって、ハルヒの特性を知ってくれているのはありがたい。
 
 会社ってのは仮にも法で定められた集団で、かつてのSOS団みたいに、勝手気ままに思いついたことをなんでもやりますみたいな申請は無理だろう。活動内容やらそれに関わる人やら、それからお金の入手先やら使い道やらを決めておかないといけない。実際にどうなるかはともあれ、書類上できちんと明記されていないと認めてくれないのがお役所の慣わしだ。
「経営者の所得は年間どれくらいを見込んでるのかな。一千万円を超えそうなら株式会社のほうが税金的に有利だけど」
「ハルヒが言うには株式会社のほうが聞こえがいいんで、そうしろと」
「はっはっは。まあ好き好きかもだね。最初は個人事業のほうが手続きが簡単でオススメではあるんだけどね」
「なんせ形から入るやつですから」
「彼女ならなにかでかいことをやりそうだし、最初から株式会社にしても差し支えはないだろうね。途中で法人の種類を変更するとそれだけ手間も発生するし。大は小を兼ねる、とも言うしね」
「はあ、そんなもんですか」
 
 株式会社というのは、金を出す人が会社の持ち主で、社長はその株主から経営を任される。最近は社長ひとり株主ひとりという最少人数でもOKらしい。設立を届け出るのは法務局で、会社内の決まりごとを書いた定款やら設立するときの議事録やら分厚い書類を提出させられる。書類を重ねる順番まで決まっているらしい。
「書類の用意は私が手伝ってあげよう」
「はぁ、助かります。そこがいちばん厄介な部分なんで」
「まずは事業内容を決めることだね」
「そうですね。ハルヒにさっさと決めさせてきます」
 
 翌日から、会社が引けるとハルヒとその他のメンツを呼び出すのが日課となった。どうでもいいがその腕章、外ではやめてくれ。
「で、屋号はどうすんだ。SOS団か?」
「当然じゃないの」
「じゃあエス・オー・エス団株式会社でいいのか?」
「響きが悪いわね。株式会社エス・オー・エス団、これね。前株でいいわ」
どっちも似たようなもんだが。
 
「あとは事業内容だが。世界を大いに盛り上げるとかそういう抽象的な内容だと申請に通らないぜ」
「分かってるわよ。あたしだってベンチャー本はひと通り読んだつもりよ」
ほう、ちゃんと予習はしてるみたいだな。
「で、目的は?」
「教えるわ。この会社の目的!それは、」
ハルヒは、あの日と同じように大きく息を吸った。ドドン。どこかで太鼓が鳴ったような気がしたが、気のせいか。
「タイムマシンを開発して時間旅行をすることよ」
な、なんだってー!!俺の脳裏にΩマークが四つほど並んだ。その場にいたハルヒ以外の全員が真っ先に朝比奈さんを思い浮かべたにちがいない。朝比奈さん、もしかしてあなたはその関係者だったんですか。
「さすがは涼宮さんですね」
古泉、お前はそれしかないんか。
「そんな前例のないもんが申請の書類に書けるわけがないだろ」
「前例がないから作るのよ。テクノロジーは日進月歩爆走中よ。昔の人は言いました、光陰矢のごとしよ」
「そんなもん簡単に作れるかよ。仮に作れたとしてもだな、それまで利益なしだろう」
「だいたいねえ、人類は月にまで人を送ったことがあるのに、なんで未だにガソリンを燃やして走ってるわけ?二十一世紀になって十年は経つってのに、いまだに化石燃料が主流なんて遺憾を覚えるわ。もう道をテクテク歩くだけの技術は無用よ。これからは時間移動の時代なの」
聞いちゃいねー、さらに言ってることがよく分からん。すまん、誰か頭痛薬をくれ。
 
「時間旅行で社員を養えるのか」
「ちっちっち。未来や過去に行けばいろんな珍しいものがあるわ。それを運んできて売れば大儲けよ」
やれやれ。ハルヒが金儲けに走り始めたか。
「よくいるでしょ、考古学者のくせに発掘品を売りさばいてるやつ。キリストの聖杯とか、埋蔵の宝石とか」
「そりゃ映画の話だ。しかも盗掘と変わらんじゃないか」
「それに未来から技術を持って帰れば売れるしね。時間旅行さえできれば、お金なんて後からでもついてくるわ」
職種からいってあんまりカタギじゃなさそうだな。株式会社窃盗団にでも名称変更したほうがいいんじゃないのか。
 
 ここで少し会社登記の話をしよう。
 一円起業とは言っても登記申請には税金なんかで二十四万円ほどかかる。お役所がらみはタダじゃないんだ。会社を作ったあとにかかる税金は所得税、法人税、住民税、事業税なんかがあるが、できれば税金は安いほうがいい。個人と違って会社は税金が優遇されることが多いらしい。節税のために会社を作る人までいるくらいだし。
 
 資本金が一千万以下の場合は消費税が二年間免除される。税金を申告するときに最初の年度の赤字を七年間繰り越してもいい、みたいな甘い制度もある。
 資本金を誰に頼むかはまだ決まっていないが、現物出資といって、自分の手持ちのパソコンやら車やらを持ち込んで資本金代わりにしてもいいらしい。五百万円までなら書類で申告するだけでOKだ。
 
 株式会社だから株券を売るのかと思っていたがそうでもないらしい。株券の実物が必要なのは株の譲渡OKな『株式公開会社』を作る場合。うちは株式の譲渡が自由にはできない『株式譲渡制限会社』にする予定だから、勝手に株を売られたりはしないことになる。株主が会社を手放したいときにだけ、経営陣が承認して発行する感じか。会社を作る発起人はそれぞれ一株以上は買わないといけない。つまり俺も買わされるわけだが、別に平社員でもいいのにな。
 
 登記書類をまとめて持っていくのは法務局だが、ほかにも公証人役場、税務署、都道府県の税事務所、市区町村の役所、労働基準監督署、社会保険事務所なんかにも行かないといけない。しばらくはあちこちを奔走することになりそうだ。そうそう、取引銀行に口座も作っとかないとな。
 
 会社用のでかい印鑑も作らないといけないが、この辺はハルヒにやらせよう。あいつは腕章とかネームプレートとか名刺とか、アイデンテティのあるものが好きそうだからな。
 
「はぁ……」
ハルヒが大きく溜息をついた。いつものハルヒらしくない。また昼飯をおごれと言われてイタ飯屋に出てきた俺だった。俺は猿でも分かる起業入門を読みながら横目でハルヒを見た。
「どうしたんだ?」
ハルヒがなにか新しいことを考え付くときはたいてい、台風がやってくる前日の天気予報のように、わけの分からない期待感と開放感とそれから高揚感とがいい感じにミックスされて、今しも超新星が生まれそうなガス星雲の中にいるような気配がするもんだ。それがこの倦怠とあきらめ交じりの溜息。吐く息が文字化すれば、やれやれとでも浮かんできそうだ。やれやれは俺の専売特許のはずだが。
「なんでもないわ。ただね、なんとなく疲れたというか」
「就職して半年でそれかよ。ちょっと甘ったれてんじゃないのか」
「あんたにしちゃきついこと言うわね」
ハルヒは頬杖をついてこっちを見る。どうも、瞳にイキイキ感がない。
「そうかな。じゃあ聞くが、これから起業しようってのになんでそんな溜息ばっかりなんだ」
「学生の頃はなにをやっても楽しかったわ。映画を撮ったり、今考えればどうでもいいようなストーリーだったけど、自分がなにかをやっているって感覚があったわ。飛び入りでギターを弾いたり、みんなで野球をやったり、見つかりもしない不思議を探し回ったり」
まあ、俺もあの頃はそれなりに楽しんだ。やたら体力と財力を消費はしたが。
「それがこの頃ときたら、なにか新しいことを思いつくとそれにかかるお金とか時間とか、必要な人材とかを考えるのが先なのよね」
「ふつー、なにかをはじめるときはそうなんだけどな」
「あの頃は自分ひとりででもやってやるって意気込みがあったわ」
そうだ、ハルヒはいつも独走だった。スタートラインに並び、フライングだろうがなんだろうがひとりでぶっちぎりゴールを目指す。その後を俺たちがへいへいとついて行く。いつもがそんな図だった。
 
「やりたいことが変わってきたんじゃないか。より高度になったとか、質が高くなったとか」
「どうかしらね」
「思いつきがでかいから、ひとりじゃ無理ってことだろう。計画性も大事だ」
俺が計画性を言い出すようになっちまったら、世の中はミジンコ並みに計画どおりだな。
「すべてが計算づくになってしまった自分がうらめしいわ。あたし、いったいなにが変わったのかしら」
「まあ商品企画課っていうハルヒの仕事柄だろう」
「モノ作りの最前線っていうからこの仕事に就いたのに、いまいち自分が作ってるって感じがしないよのね」
「お前だけで作ってるわけじゃないだろ。ひとつの製品にいろんな人間が関わってる。それが会社ってもんだ」
あまり慰めにも励ましにもならんセリフを淡々と言う俺も、実は今の仕事には生き甲斐を感じていない。
「それは分かってんだけどね」
「けど、給料はいいんだろ?」
「まあね。ボーナスも思ったより多かったわ」
「この不景気にそれは贅沢ってもんだ」
「分かってるわよ。同僚と飲みに行ったりもするし、給料日には買い物して遊んで歌って午前様だし」
「これ以上なにが不満なんだ?」
「分かんない……。いい職場についたし、給料もいいし、好きなもの買えるし」
ハルヒはこれと決めたものには出費を惜しまない。自分の思い付きを実現するためならバニーの衣装だろうがメイドの衣装だろうが、自腹で買ってしまう。ストレスで散財するタイプだなこいつは。将来旦那が苦労するぞ。
 
 就職したから自分でストレスを解消できるようになった、という言い方は変かもしれないが、自由に使える金があれば、特別な力がなくてもある程度の願望を実現することはできるかもしれない。食ったり飲んだり騒いだり、簡単になにかを手に入れたりすることで、本当にやりたいことがだんだん霞んでしまう。古泉が言っていた閉鎖空間発生が減った理由が、なんとなく分かってきた気がする。
 
 ハルヒは食い残しのシーフードパスタをフォークの先でいじりながら言った。
「なんだかね、タコが自分の足を切り売りしてる気持ちっていうのかしら」
「お前にしちゃうまい例えだな」
「もう、どうでもよくなってきたわ……」
テーブルに顔を伏せてそのまま眠り込んでしまいそうな、久々に見るハルヒのメランコリーである。
 


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