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  • 涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki(避難所)
  • 朝比奈みくるの挑戦 その4

涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki(避難所)

朝比奈みくるの挑戦 その4

最終更新:2020年03月14日 09:36

haruhi_vip2

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だれでも歓迎! 編集

 水先案内人が必要である。
 過去へ、過去のわたし宛てに指示を送る。

 時間の操作を行うことに罪悪感を感じていた時期もあった。必要悪だと割り切っていた頃もあった。
 今は、何も感じない。ただ、やるべきことをやるだけ。笑うことも泣くことも忘れた。

 


「あ、気が付いた。おかえりなさい」
 あいたた、ここはどこだ?なぜ朝比奈さんがここにいる?
 
「キョンくん、まずはかるく息を吸って。深呼吸して。」
 落ち着いて周りをみると、ここは屋上前の物置。目の前にいるのは朝比奈(大)さんだ。
 あなたがここにいるということは、やはりあの別世界の出来事は未来の既定事項ってやつですか。
「今は**月**日。お昼休みよ。」
 確かに時計にもそう表示されている。あのハルヒは俺の希望通り時間移動させてくれたようだ。
「おちついたようね。まだ少し時間あるから簡単に事情を説明させてね。今回もキョンくんにお願いしたいことがあるの」
「待ってください、朝比奈(大)さん。俺はあなたに聞きたいことがたくさんあります。過去の自分自身、みくるをなぜあなたは泣かせないといけないのですか」
 「キョンくん、痛いよ・・・・・・。女性の腕を握る時はそっとやさしく握ってほしいかな」
 すこし苦笑気味な笑顔で諭される。
 朝比奈(大)さんを逃がすわけには行かない、その感情でとっさに彼女の腕をつかんでいたようだ。冷静にならないといけない。
「すみません」
「うふっ、突然で驚いただけだから。そういえば、わたしのことは「みくる」と呼んでくれないのかな?」
 その子悪魔な笑顔は大人になっても変わってなかったが、俺にはどうしても今は二人が同一人物には思えなかった。
「・・・・・・ごめんなさい」
 
 朝比奈(大)さんは、いいのよと言いたげな表情で俺に問いかけてきた。
「で、キョンくんはわたしに何を聞きたいの?」

 最初に聞かないといけないことは決まっていた。俺が知っているみくるの悩み。
「なぜ、あなたは過去の自分を無知なままで操るのですか」
「それが既定事項だから、という答えでは満足してくれないのでしょう。一つだけ約束して」
「今から話すことは絶対にあの子には知られてはいけない。わたしの知ってるキョンくんは約束を守ってくれたわ」
 彼女は先ほどまでの笑みをやめ、まじめな表情で俺の目を見て話し始める。
「解りました」

 この北高でみんなと過ごした2年間の出来事で未来へ繋がる規定事項はあの子の体験したことだけ。
 わたしの人生しか道を示せなかったから。涼宮さんの能力の影響で、その期間は存在していた規定事項は規定事項でなくなったり、関係ないことが規定事項になったりと不安定な時間平面になったの。
 涼宮さんは他人の干渉を非常に嫌うわ。結果この時間平面に存在することができた未来人は彼女に選ばれた『朝比奈みくる』ただ一人。もっとも、能力が失われ始めると他の人も存在できるようになったけどね。
 今のわたしが存在する時間があるということは、彼女は自分の任務を無事に果たせたということ。ほとんどの事象についての最終判断は彼女自身が自分でやらないといけない。
 見習いの立場の彼女の能力を超えたことについてはもう一人の管理者として『朝比奈みくる』が彼女を指揮、もしくは直接干渉したの。

「当時は何も知らないことを悲しく思っていて、だから頑張って今の自分になった。あの子もきっと乗り越えてくれる」
「そうしないと未来、わたしにとっての今が変わってしまうから」
 朝比奈(大)さんは俺の頭をかるくつついて、見とれるような微笑をうかべている。
 促されるように俺はうなづく。
「でもね、彼女は一人じゃなかったわ。涼宮さんや鶴屋さん、みんな励ましてくれたり力になってくれた。特にキョンくん、あなたには言葉にできないくらいに感謝しているのよ。そう・・・・・・、あなたのことが気になりだしてそれが恋だとわかってしまうくらいにね」

 

「そろそろ時間。他にも聞きたいことあるだろうけど今回はここまで。では、わたしからのお願いは二つ」
「一つ目はこのあと、あの子と二人で涼宮さんと古泉くんの夕食の話を無くしてほしいの」
「もう一つは明日までに大きな傘を買っておいてね」
「わかりました。」
 朝比奈(大)さんはこっちに背をむけて、階段を降りていく。が、途中立ち止まり俺をみて
「あ、それと・・・・・・」
 朝比奈さんは真剣な表情で続ける
「納得できないことがあってもあの子の意思を尊重してあげてね」
 そういって、俺が向かうべき方向と反対に去っていった。

 

 


「2」
「今日の放課後に起きるはずだった出来事を起きなくしてください」
「時空管理者として適切な行動を心がけてください」

 朝起きて鏡をみたら、目が真っ赤になっていてすこし血色の悪い。しっかりしなきゃ。
 今日はあたしがキョンくんに告白した日のはず。
 昨日夜に自分の元の自宅に着いたとき、本来いるはずのその時間のあたしは不在でその時に受けとった上の人の指示は
「今日はゆっくり休んでください」
とだけ書いてありました。

 特に何事もなく過ごし放課後部室に入った時、二人の姿はなく長門さんは読書、古泉くんはパズルを作っていました。
 たしかあたしが来たすぐ後に
「おまたせ!」「ハルヒ、ドアがそのうち壊れるぞ」「いちいちうるさい!」
 そう、そして涼宮さんが言うのです。
「あれ?みくるちゃん、まだ着替えてないの?じゃあ、キョンと古泉くんはそとでまっていなさい」
 あの時はあっさり着替えたけど、ここであたしは別の行動を取らないといけません。
 
「涼宮さん。古泉くんとお付き合いをしていると聞いたのですが、本当なのですか」
 PCの起動を待っていた彼女は、あたしの問いかけに反応し
「うーん。まあそういうことになっているわ」
 PCでどういう表情で言っているのかはわからないけど、反応は意外とそっけないものでした。
 だからあたしは着替えが終わった後に、二人を呼びにドアの前に立ったとき
「そっかぁ。涼宮さんと古泉くんですか。お似合いの二人だと思うなぁ。じゃあ、あたしもキョンくんに思い切って・・・・・・」
と敢えて聞こえるように独り言を言って、ドアを開けました。

 しばらくして。皆さんにお茶を配り終えると、ポットのお湯が無くなりました。
「朝比奈さんどうしましたか」
「いえ、ポットのお湯が足りないので水を汲みに行こうかと」
 じゃあ、やかん持ちますよ。ということでキョンくんと二人肩を並べて水汲み場へ歩いていきます。
 ほんの数日前までは当たり前の出来事だったんだ。そうぼんやり思っていると・・・・・・不意をつかれました。

「みくる」

 キョンくんは立ち止まってあたしを呼んだ。あたしは数歩そのまま歩いたあと、呼びかけに反射的に振り返る。
 普段彼があたしを名前で呼ぶことは絶対にない。ということは、彼は・・・・・・まさか・・・・・・でもそんなことはありえない。
「ハルヒが俺をここに送ったんです。ハルヒと今日は一緒に帰ることにします。それであなたの仕事は解決するはずです」
 彼はあたしの肩を軽く叩いて追い抜く。水の入ったやかんをもってゆっくりと。そして、振り返り
「落ち着いたら、俺はあなたに話したいことがある。だから、今はお互いに自分がやるべきことをやりましょう」
と軽く口元を綻ばせあたしに先を促した。

 長門さんが本を閉じ、古泉くんが話を切り出しました。
「涼宮さん、このあと少しお時間いただけますでしょうか」
「どうしたの、古泉くん」
「いえ、お話ししていたお店で夕食をご一緒にいかがかと」
 涼宮さんはキョン君をちらりと見ました。キョンくんはその視線を受け止め
「ハルヒ、すまないが今日の授業のことでさ、少し教えて欲しいところがあるんだ。古泉、悪いが今度にしてもらえないか」

「はぁ・・・・・・。授業わからなかったなら休み時間にでも聞けばよかったじゃないの。あたしも暇じゃないのよ」
 そう言葉では嫌々そうだけど、表情からうれしそうな反応を隠し切れない涼宮さんと
「そうでしたか、僕の用件はお気になさらず。ではお先に失礼します」
 いつものスマイルで帰宅準備をしている古泉くん。

 これで、あたしの仕事は終わりました。

 

 


 次の日の昼休み。
「そういえばみくる、前相談された引越し先の話だけどさっ。みくるの希望の条件でめがっさ安い物件がみつかったにょろよ」
 食事中、鶴屋さん含め数人と弁当を突きながら。そういえばあの時は鶴屋さんの家の一角を借りたのよね。
「今の隣の駅で徒歩5分。今度の週末にでも一緒に下見に行かないかいっ」
「へぇ、朝比奈さん引越しするんだ」
 あはは・・・・・・と苦笑いで誤魔化しておこう。
 あたしも成長したなぁ、と一人でしみじみ内心で述懐していると話題がおかしな方向に流れていた。
「そういえばさ、今日変わった夢をみたのよ」
「あー、あたしもなんか明日のことを夢に見た」
 周りが夢の話題を話しているとき、鶴屋さんがあたしにそっと耳打ちしてきた。
「あたしの気のせいだと思うんだけどさっ、みくるはキョンくんと付き合ってないよね。みくるに相談される夢を見たんだけどさっ」
 そんなことはないですよ、と返事をしたけど。何かが起きているみたい。
 
「すみません。遅くなりました」
 あたしが部室に入った時、キョンくんが机に伏していました。あたしの姿を確認するとけだるそうに体を起こして
「ハルヒはさっさと帰りましたよ。さて長門、全員そろったから説明してくれ」
 全員が長門さんに注目しました。
 
「あのあと時間平面の修復を行った。しかし完全に復元はできなかった。涼宮ハルヒは別次元で忘却を拒んだと推測される」
「本来なくなるはずの記憶がこの時間平面の有機生命体に夢という形で干渉を起こしている。可能なかぎりの対応で曖昧な予知夢という形で解決することにした」
 つまりあの頃の出来事をみんなは夢に見ているということなのでしょうか。
「今日、クラスでちらほら聞いた予知夢というのはそういうことか。古泉、お前はどうだった」
 話を振られた古泉くんは今日みた夢の内容を語ってくれて、それは予想通りあたしの記憶と合致していた。
「情報統合思念体は、この状況は数日続くがその後忘却されるために悪影響は残らないと判断。わたしも同じ考え」
 つまり、みんな夢という形で曖昧に思い出すけど結局夢だから忘れてしまうということでしょうか。
「そう」
「なるほど。それなら・・・・・・」
 古泉くんは自説を披露していたが、あたしにはひとつ気になることがあった。
 さっき、キョンくんはなんで伏していたのでしょうか。

 古泉くんの話が終わると、長門さんはキョンくんをじっと見つめていた。
「問題はあなた。本来の記憶と情報操作とが干渉しているため、ときどき頭痛を起こしている」
「とりあえず、頭痛薬で緩和しているが薬が切れて今はしんどいけどな。しかしなにか解決法はないのか」
 そうすると長門さんがあたしの方を見つめて
「飴が必要」
 長門さんはあたしから受け取った飴に情報操作を施し、薬に作り変えた。
「これを」
「これは?」
「寝る前に飲むと本来持っている記憶が消える」
「さんきゅ、長門」
 
 話のあいだ、キョンくんはずっとつらそうにしていました。
 長門さんが本を閉じて帰宅を促したとき、古泉くんは
「車を手配します。今回はどうか遠慮はしないでください」
と促して、キョンくんはそれを受け入れていました。やはりとてもつらそう。
 車を待っている間、キョンくんはじっとぼんやりとではあるがあたしをじっと見つめていました。
 ほかの二人は気が付いているのだろうけど気づかない振りをしてくれています。

 あたしは自分の気持ちの整理を済ませないといけません。判断を間違えないように。
 そして、これ以上キョンくんを苦しめないために・・・・・・。

 


「古泉。俺は朝比奈さんに、いやみくるに言わないといけない事がある。だから今日は長門の薬を飲むことはできない」
「頼るのは申し訳ないが、病院でなにか処方できないか」
 後部座席で横になっていた彼が車の中で僕にそう訴えかけてきました。
「わかりました。医者に薬を用意させます。明日一日程度はなんとかできないか、長門さんとも相談してみます」
 いつも僕も機関もあなたにはご助力いただいています。なにより、うっすらとですがあなたに迷惑をかけた記憶もあります。
 だから、僕にできることならなんでも言ってください。できることであれば。
 


 次の日。
「なんか嫌な雲行きねぇ。昼間まで雲ひとつない快晴だったのに」
「今日の天気予報を見てなかったのか。今日は夕方から雨が降るといっていただろ」
 放課後、古泉くんは用事があると伝え既に帰宅しています。残ったみんなもそれぞれ部室で時間を潰しています。
 涼宮さんが外を眺めてぼやいて、キョンくんがぼやきに突っ込みをいれる。放課後のこの部室での日常。
 
 長門さんが本を閉じ、足早に部屋を出て行きました。彼女も今日は予定があるのかもしれません。
「すこし降ってきたみたい。あたしは置き傘を探してくるわ。最後の人は鍵よろしくね」
 涼宮さんも言うが早いか部屋を出て行って、残ったのはあたしとキョンくんだけ。
 
「着替えますから」
 キョンくんは部屋を出る代わりにあたしのそばに、手を伸ばせば届く範囲まで来ました。
「朝比奈さん、いやみくる。俺はあなたに言わないといけないことがあるんです」
 忘れてくれたと思ったのに・・・・・・。
「おくすり、まだ飲んでなかったのですか。今日はつらくなさそうだからてっきり忘れたとばかり思っていたのに」
 あたしの口からでるのはごまかしの言葉。
「俺がここにいるのは、自分の思いをあなたに伝えないといけないからです。きっとうまく言えない、でも言わないと伝わらない」
 彼はあたしに気持ちを訴えてきます。やめてください・・・・・・これ以上わたしの気持ちをかき乱さないでください・・・・・・。
「俺はあなたのことが好きです。昔から、付き合っていた時も」
「ハルヒとみくる、俺には同じようには対応できない。そのために、俺の不甲斐さがあなたを不安にさせたと思う」
「でも俺が一番に、自分の彼女として大切にしたいのはあなたなんです」
「・・・・・・」
 どうして、あたしが選ばれたの・・・あたしは普通の女の子で居たかった・・・
 涼宮さんが出て行ったときに少しあいていたのだろうか、バタンとドアが閉まる音が部屋の中に響きました。
 キョンくんは一息ついて、ことばを捜しているかのようにかるく瞬きをしてあたしの目をじっと見つめています。
 あたしも同じようにキョンくんの目をじっと見つめかえしています。そっと呟こうとしてそれができないのを、確認しました。

「そして、今もあなたのことが好きです」
 わたしはキョンくんへ返事をしようとして。声を出そうとして、やはり出せなくて。
「だっ」
 わたしは右手を伸ばし人差し指でキョンくんの口をそっと塞ぎました。それ以上聞くとわたしが答えを間違えてしまうから
「それ以上は言ったら駄目です。キョンくんの思いはわたしのそれと違わないと信じています」
「わたしは未来を守るためにここにいるの。あのひと月は夢現の時間、それで現実を変えてしまってはいけないわ」
 試しにわたしはキョンくんに「あたしも好き」と言った。でもわたしの言葉は空気を震えさせない。
 キョンくんはわたしの様子を見て驚愕している。

「今、キョンくんがみているあたしの様子。あまり繰り返していると元の時間に戻されてしまうかもしれないの」
「あたしは、その時が来るまでみんなと一緒に居たいから。だから、駄目。わたしは聞いたらキョンくんを振らないといけないから」
 わたしはあのひと月ですこしでも強くなれたのだろうか。今泣かずにちゃんと言えたんだから強くなったのだろうか。
「これ以上は禁則事項です。着替えるから先に帰ってね」
 そういってキョンくんを部屋から追い出しました。キョンくんには選択肢がある。別に涼宮さんでないといけないわけではない。でもわたしだけは選んではいけない。これは規定事項なんです。
 。
 ドアを閉め、もたれながらぼんやり天井を見上げる。
 これで「さよならだよねっ・・・・・・」心で呟いた言葉が引き金となったかのように涙がでてきた
 ひとりきりになった後、声を殺して泣いた。
 この結果がこの時代の規定事項なら、こんな規定事項はいらない。
 


「よかったわ。このタイミングであんたがくるとはついているみたい」
 玄関をでると、そこには見慣れた顔がいた。
「どうしておまえがここにいる」
「傘がなかったのよ。コンビニまで走っていくかそれとも止むまで待つか考えていたところ」
「そうかい」
「大きな傘ね。ちょうどいいわ、コンビニまで入れていきなさい」
 周りをみるが、雨のせいか時間のせいか周りには誰もいなかった。別に断る理由もないので傘に入れてやる。
 
 普段なら俺の都合お構いなしに喋るのに、今はお互い黙ったままハイキングコースを降りていく。
 沈黙に耐えられなくなったのか、ハルヒは言いづらそうに話し出した。
「あんた、みくるちゃんとなに話してたの」
 聞いていたのか。詳細を詳しく話す気にはなれないが、答えを待っているのを無視するわけにもいかない。しかたない。
「告白して、振られたのさ」
「そう。あんたも恋の病にかかったというわけね」
 
「みくるちゃんはあんたみたいな平凡なやつが惚れるには不相応じゃないの」
 確かにそうかもな。朝比奈さんは強い人で、今の俺にはふさわしくない。
「憂鬱なオーラを出しているわよ。ただでさえ雨のせいで憂鬱なのに、相乗効果であたしまで憂鬱になりそう」
 そりゃ悪かったな。天気がわるいのは俺のせいじゃないし、お前みたいに年中晴れな人間でもないからあきらめてくれ。
「だから」

 ハルヒはそういうと足を止めた。そしてハルヒらしい満面の笑みを浮かべて宣言した。
「天気が晴れになったら、あんたも気分を入れ替えなさい。団員の生活改善のためにあたしが一肌脱いであげるしかなさそうね」
「あたしがあんたの世話を見てあげるわ。感謝しなさい。そうね、まずは駅まであたしを濡らさずに送り届けなさい」
 しかたなく再度傘に入れてやるわけだが、お前が何を言いたいのか今の俺には理解できていないようだ。
「そんなんだからみくるちゃんに振られるのよ。あたしが精神病治療のために彼女になってあげようといってるわけ。もちろん拒否権はないわ。団長命令よ」
 ハルヒは怒った声で一気に言い切ると、ついてきなさいとばかりに早足で歩きはじめた。
 拒否権なしか。いくら鈍いといわれる俺でもそこまではっきり言われたらお前に流されるままに生きるしかなさそうだぜ。
 これでよかったんだ・・・・・・そうつぶやいた俺に帰ってきた返事は心の中を飛ばすかのような冷たい風だった。
 濡らすな、との命令を守るため俺も早足でハルヒを追いかけた。
 
 

「あなたが好き」

 そう簡単に言えれば苦労しないわ。今まで告白されたことはあってもしたことはない。
 あたしの見込みではキョンはあたしのことを想ってくれてるはず、あたしもだけど・・・・・・。
 でもどうして、古泉くんと付き合ってキョンをやきもきさせようとしたのだろう。思い出せない。
 
 
 へんな夢を見る。あたしが後悔している夢。みくるちゃんとキョンが付き合っている夢。
 古泉くんがあたしに謝っている。別にあなたが悪いわけじゃない。だれも悪くはない。
 胸を締め付けられるようで見ていて切なくなる・・・。伝えたいのに伝えられない自分に不安や怒りを覚える。
「あたしに気づいてよ!」その言葉でいつも目が覚める。
 暗い部屋に小鳥の鳴き声が聞こえて、夢だと気付きほっとしている。
 馬鹿みたい・・・まるであたしも恋の精神病にかかっているみたいじゃないの。
 
 
 キョンが「振られた」と言ったとき、あたしはさらっと自分の本心をあいつに言った。いや、言えた。
 言ったら、楽になった。
 
 
「俺、今は朝比奈さんのほうが好きなんだけどどうするんだ」
 次の日。二人になった時、あいつは困った顔でそういった。やっぱりこいつは大ばか者。昨日の話しを冗談とおもったのかしら。
 ほおっておくと、多くの女性を泣かせそうね。やっぱりあたしが監視しておくしかなさそう。
 そっと微笑むとあいつは呆然としていた。
 だから、はっきり言ってあげたわ。
 
「何も気にすることないわ。あんたはいつも通り、あたしについてくればいいの。心配の必要はまったくなしよ」

 

 


 あの世界の効用のひとつに勉強が苦にならなくなったというのがある。
 あの時間のすべての授業は俺の弱点克服を重視に長門がオリジナルで世界を弄ってくれていたらしい。
「わからないから面白くないのであって、理解できればそれなりに勉強も楽しいものですよ」
 さきほど予習復習を済ませたわけだが、以前聞いた古泉の意見が当たっていたようだ。
 
 タイミングを計ったかのように古泉からの電話がなった。なんでもおとといの夜からハルヒの能力が急速に収束したらしい。それと機関の上のほうで妙な出来事が発生していて混乱状態にあるそうだ。そのための会議で先ほどまで忙しかったと俺に愚痴っている。
 あいつがこうやって俺にわざわざ愚痴るのも珍しい。今日起きたことを話してやろうかと一瞬思ったがやめた。どうせ、明日になればハルヒが声高らかに宣言するだろうから。
 
 今日一日の猶予。古泉にむりを頼み長門から釘まで刺されてまで得た時間に俺はできることをすべてやったのだろうか。
 朝比奈さんの言う「規定事項」、ハルヒの言葉のタイミング。俺は自分で判断しているはずなのだが、本当にそうなのだろうか。
 たまに神様とやらが作ったレールを無理やり走らされている気分になる。
「未来からみて必然、現在では偶然。時間はそうやってできているの」
 現在が基準じゃないのか。未来や過去を変えるために必ず現在を変える必要があるのだから、現在に主導権があるはずだ。
 未来や過去に操られる謂れはない。それならハルヒの能力の存在意義は、と頭の中で話しがずれていく。
 
 薬を飲めば、あのひと月の思い出は夢の中での出来事になる。でも今の俺には実際にあった出来事。楽しかった世界の記憶は思い出として忘れたいから、なれないことを必死になってやった。
 今日の最後に日記帳に書き上げたあと薬を飲んだ。
 
 夢の中では楽しかった出来事がダイジェストで放送されていた。顔を洗ったときに内容は忘れてしまったけどな。
 

 ハルヒの彼氏に指名・任命されて数日後。長門の話だと最後の夢を見る日。
 古泉と二人の時だっただろうか、あいつが言っていた内容が部分的にだけれども思い出された。
 
「あなたの存在ですが」
 少し間を置いて、言葉に力を込めて古泉は語り続けた。
「僕を含めてSOS団のメンバーは独特の属性を持っています。そんな中であなたは普通の人。いえ、今ならこう言うべきでしょう」
「何も属性を持たない人、と」
 そりゃ変わり者集団SOS団の中で俺はおまえらのように代わった属性は持っていないが、何も持たないわけじゃないぞ。
「それはどういうことだ」
「あなたは、無理なく僕たちを受け入れられる人ということです。一般に『普通の人』は『変わった人』というものに何らかの偏見をもつのではないでしょうか」
「そうとも限らないだろ」
「涼宮さんの願望実現能力、上手に利用すれば大概のことは叶います。それ以外でも、たとえば僕の提案をあなたが呑むなら少なくともあなたは生活に一生不自由しないだけのお金が手に入るでしょう」
 まあ古泉の言うことも一理あるとは思う、俺には関係のない話ではあるが。
「しかし、あなたはそれらを望みません。むしろ、涼宮さんや長門さんが能力を失いつつあることを喜んでいます」
「あなたの思考はいわゆる『普通の人』の考え方ではないのです」
 
 シーンが変わる。
「今、はっきりわかっていることは以下の二つです」
 古泉はそう言って、二つ指を立てて順に折っていく。
「一つ目。あなたは涼宮さんの能力に対して、それが現実に定着するかどうかの最終決定権を持つ」
「二つ目。あなたはSOS関係者全員にかなりの好意をもたれている。僕にすれば照れくさいですが『友情』といいますか」
 好意を持たれるのは嬉しいと思うが、しかしだ・・・こいつに言われると素直に喜べない。
 
 シーンがまた変わる。
「僕達の予想では、朝比奈さんをあなたが選んだ時に涼宮さんはあなたから手を引くと思っていました」
「赤の他人ならともかく、彼女はほかの二人には対等でありたいとかなり気をつかわれるお方ですから」
 こいつの戯言はいつものことなので最初からそういう関係ではなかった、と突っ込む気にすらなれない。
「しかし。今の彼女はあなたに以前よりも関わろうとしています。朝比奈さんが困るくらいに」
「失礼ながら、あなた御自身はまったく気づかれていないようですが」
 みくると交際を始めても、涼宮ハルヒは涼宮ハルヒであって俺への対応は変えていない。でも以前よりも、とは思えないのだが。
「老婆心ながら忠告いたしますと、あなたは朝比奈さんの禁則事項、規定事項を甘く見ていませんか」
「・・・・・・」
 唐突にでたその単語に、何も言い返せない。
「この二つがある限りは、彼女は必ず未来に戻らないといけません。そして朝比奈さんはそれを自覚しています。では、あなたは」
 古泉の言葉で思い出す。そういえば、聞いているのは未来への連絡が一時的に通じなくなっているということ。
 そして今の状況が規定事項か禁則事項なのかは、本人も判断つかないということだけだ。
「その様子では気に留めていらっしゃらなかったようですね。確かに今までの日常では仕方ありません。最初の話を思い出してください」
「この世界は朝比奈さんの願望も含まれています。禁則・規定事項を気にせずにあなたと交際できる時間。これは逆に言えば、あなたとの交際は禁則事項、今の状況は夢に過ぎないということなのです」

 未来の朝比奈さん、朝比奈(大)さんの存在は今の朝比奈さんが未来に戻ることが規定事項であることの証明になっている。


 シーンが変わる、たぶんこれは最後。
 車から降りたあと、古泉は俺の横に立って懐から封筒を出した。
「これを受け取ってください」
 そう言って渡された封筒には、一万円札5枚、遊園地の入場券とレストランの予約の情報などが書いてある紙が入っていた。
「明日僕が涼宮さんを誘うために機関より支給されたものです。今の僕には不要なもの。あなたがこれを役立ててもらえませんか」
 あげるといって、貰うには高すぎる。だから俺はこれを受け取らない。そういって突っ返そうとするが古泉は退かなかった。
 お互いに退かない状況がしばらく続いたためか、まだ発車していなかった車の運転席から新川さんが降りてきて仲裁に入った。
「どうでしょうか。朝比奈さんのため、ということでそれを受け取っていただけませんか。古泉もそれを無駄にするよりもあなた方に有用に使って欲しいと考えているだけで、彼の顔を立てて欲しいと。これはわたしの我侭でありますが、お願いできませんか」
 新川さんにまでそう言われると、これ以上俺が意地を張るはみっともない。そう考え素直にご好意に預かるとする。
「ありがとうございます」
 古泉は俺に対して深々と頭を下げた。
 
 目を覚ました時、俺はたぶん初めてだろう、朝一番に古泉に電話した。残念だったが、あいつはこの記憶を持っていなかった。
 

 


 報告書を読み終えた。涼宮さんの発想はいつもわたし達の斜め上を行っており、辻褄あわせに奔走させられる。
 キョンくんを時間移動させた際の、発生するパラドックスが、この時間に多くの影響を与えることが判り今朝ほどまで対処していた。
  過去のわたしは自分を無力だと感じていたが、今のわたしからすればこの苦労は知らなかったほうがよかったとしか思えない。
 古泉くんと長門さんにキョンくんが頼りきりになっていたのもわかる気がした。
 
 最後の報告書を受け取るため、図書館内の私室を訪れた。
 ここは在りし日の文芸部室(そういえば校舎建て壊しの際に空間をコピーしたと本人は言っていた)そのままで、懐かしさが胸に込み上げてくる。彼女はここにめったに他人を呼ばない。
 
 窓辺の指定席に座って、長門さんはわたしの感想を待っていた。ひとつ引っかかることがあった。
「キョンくんに自身の役割を話す『朝比奈みくる』はあの時間の存在を知っているけど、わたしの記憶にはそれはありません」
 長門さんはじっとわたしの顔をみてぽつりと呟いた。
「消したから」
 
「長門さん、見つけてきたわ。あ、朝比奈さん。こんにちは。お久しぶりね」
 部室に見慣れた人が入ってきた。
 朝倉涼子。彼女は長門さんの秘書でここの副館長、実際にここを仕切っている存在である。
「あなたの記憶を消したのは、今回の計画があなたにとっての既定事項だったから」
「それは何時なんですか」
「『あの事件』の直前。事前に今回の記憶があると計画が立案されないという不都合があるので情報統合思念体の指示で消した」
 わたしはそれを聞いて追求をやめた。

「朝倉涼子、それを彼女に渡して」
 朝倉さんがもっていたのは、わたしに見覚えのある冊子。これは過去に使っていたわたしの日記帳のうちのひとつだった。
「あなたに記憶を戻さないといけない。それを読めば、無くしたものは少しずつ思い出されるはず」
 長門さんはそう言ったあと、席を立ち本棚で何かを探していた。
 
 手元の日記を読む。それは自分が今読んでいた報告書のあとのわたしのもの。
 ページをめくると忘れていたはずのその当時の記憶が頭に描かれていく。
 自分の選択が間違っていたのではないかと後悔していた事。涼宮さんとキョンくんが仲良くなって行く様を微笑ましく見守っていたこと。いろいろと、あの頃の感情が思い出されていく。わたしは、過去を守るために頑張ってきたんだ。
 日記に書かれた思い出をすべて読み終えたとき、少しずつ、無くしていた記憶もよみがえってきた。
 それは報告書の内容が長門さんの第三者視点であるなら、自分が主人公としての記憶。
 胸にこみ上げるやるせない感情、目頭が熱くなるのを今は堪える。
 
 
 ことっ。

 探し物を見つけたのか、長門さんがわたしの席の前に箱を置く音で現実にもどった。
「当時のあなたの願いは『みんなのために役に立てること』『自分も強くなりたい』と聞いている」
「あなたが過去を去るとき、涼宮ハルヒはじめ全員であなたの願いが叶うことを願った。その願いがあなたに彼女の能力の一部を宿らせた。彼女と同じように願いをかなえることが出来た」

「わたしに、涼宮さんと同じ能力があるということ・・・・・・。」
 そんなはずはない、わたしは器ではないのだから。
「今回の計画であなたはたしかに彼に選ばれていた。だから、あなたにも器としての資格があった。正確にはできたが正しい」
 長門さんがわたしの呟きに答えを返す。
「おかしいとおもわない?朝比奈さんの今いる地位って本来50も過ぎたおじさんが偉そうに居座る地位のはずよ。しかも管理者出身ではなくて官僚とか政治家とかそういう連中の。いくら貴方が実力があって、天才といわれたとしても28でいる地位ではないわ」
 朝倉さんの指摘で、はっと気が付く。わたしは努力の結果だとばかり思っていた、でも言われてみれば不自然すぎる。
 
「そもそも、あなたが変わったのは『あの事件』のあとよ。それまでは確かに貴方は優秀ではあったけど天才とまでは言われていなかった。あのあと、それまでの地道な努力が開花して周りの評価が上がった。涼宮さんの件で過去の実績は言うまでもなかったからふさわしい立場を手に入れたわけ。純粋に実績と実力だけを評価されて、ね」

「あの事件。能力が完全に消えたあとにあの時代にいるSOS団関係者3人を殺害するという計画をあなたは止めることができなかった。本来の時間の流れでは危険因子を摘むという行為は規定事項になる。しかし、あなたはそれに納得できなかった」
 わたしに鞘当するかのように立案された計画は本来はそれ以降の未来にとっては規定事項だった。
 たぶん、あの時のわたしはそう説得されても決して納得しなかったはず。なぜなら今でもそうだから。
「納得できなかったのはわたしも同じ、そして止められなかった理由もあなたと同じ。力不足」
 長門さんはわたしから視線をはずし、手元の箱を見つめる。

「そもそも、わたしがこの時代に観察者としているのは周知の通りだけど観察対象は朝比奈みくる。『あなた』」
「情報統合思念体が静観の指示をだし、わたしがそれを受け入れたのはあなた自身がその規定事項を変える可能性を秘めていることを知っていたから。不要な知識、干渉は悪影響になるということは十分承知しているはず」
 過去の自分の言動がよみがえる。わたしはキョンくんにそういった、だから乗り越えてくれると信じているとはっきり言った。
「あなたの理想への挑戦には、あなただけではなくほかのみんなも力を貸している」

「この箱の中身はあの時のあなたの疑問への返答になると思う。あなたがこれを読んでどう受け取るかはわたしには判らない」
 そう箱を開けるように促された。空けてみると時間の経過で色が変わった2冊のノートが入っていた。
「これは古泉一樹から預かったあの二人の日記。何時の日かあなたに渡して欲しいと頼まれたもの」

 自宅に帰って、日記を読む。
 キョンくんの日記は、主にあたしと二人の一ヶ月間についての内容だった。そういえば、日記は過去の自分の心情を振り返って楽しむためだと彼に伝えた記憶がある。
 だからだろう、内容は事実よりもそれに対してのキョンくんの感想が主になっていた。
「取れかけたボタンを縫い直してくれる朝比奈さんをみていて、俺は口元が綻ぶのを耐えるのに必死だった。まったく古泉がここに居るのが忌々しい」
「今までは朝の登校は憂鬱なイベントだった。長い時間坂道を登り続けるからだ。しかし、今は待ち遠しいイベントになっている。みくると鶴屋さん、この二人と会話している時間は凄く楽しい」
 わたしも同じことを思っていた。他人の恋物語は甘いのに、どうして自分のそれは切ないのでしょうか。
 最後の日の内容、それはわたしが彼を振った日。彼は、わたしが幸せになることを願っていると記していた。
 
 もう一冊は涼宮さんの日記、これはキョンくんの日記を彼女が読んでわざわざつけたものみたい。
「キョンに問い詰めたけれど、言われて見ればみくるちゃんとキョンが付き合っていたはずがない」
と最初のほうにはっきり自分で書いているのに。あたしがキョンくんにやったアプローチと同じことをわざわざやり返している。
「甘いお菓子。いまいちわからないわ。砂糖を多めにする以外になにかありそう。それとなく他の人に聞いてみないと」
「なんとかうまくいったみたい。さすがみくるちゃん、天然だったみたいね。さすがにあたしも気が付かなかったら負けていたわ」
・・・・・・こんな内容ばかり。
「あたしは、みくるちゃんはキョンのことを好きだと思っていた。だからあのふたりが仲良くしている時、少しだけ悪い気がする」
「夢のはずなのに、どうしても現実にあった出来事のように思える。自分で動かないとダメだってみくるちゃんに教えられたのかも」
 うん、涼宮さんがもう少し素直になっていればわたしは失恋しないで仕事できたと思いますよ。
 日記から読み取れるのは涼宮さんの対抗心。これを読まされたキョンくんは生きた心地がしなかっただろうと苦笑してしまう。

 少し休憩を兼ねて窓をあけた。夜風にあたり昔を懐かしんでいると先ほどの風の影響で涼宮さんの日記が開いていた。
 机に戻り開かれたページ・・・・・・そこには涼宮さんの本音が書かれていた。
 「キョンがみくるちゃんに振られたと聞いた時はみくるちゃんには悪いけどキョンをあたしのものに出来るとおもった」
 「これで誰の邪魔をされずにキョンと・・・・・・」
 それは涼宮さんの今まで素直になれない自分の気持ち、嫉妬などが書かれていた。
 それとは別にわたしに対する想いも書かれていて
「あたしが好敵手と認めたんだからもう少しやると思ったのに、正直がっかりだわ!」
「未来人の事だから事情はよく解らないけど・・・・・・未来に帰るから別れたんだったらみくるちゃんは甘すぎるわ!」
 そんな内容の後に最後のページには大きな文字で
 
 SOS団の一員としてルールの1つや2つ壊してもあたしが許すわ!
 みくるちゃん、まだ終わってないなら頑張りなさい!      bySOS団 団長 涼宮ハルヒ
 
 気が付けば日をまたいでいた。すでにハンドタオルは使い切っている。こんなに泣いたのってあの時以来かもしれない。
「気持ちの整理がついたら、また来て欲しい。わたしも、あなたのちからになりたい」
 箱の下に入っていた栞に、きれいな明朝体の文字でそう書かれていた。
 
 夢の中のあたしは自分の殻に篭ったり、彼のことばを受け止めることができずにひとり相撲をやっていた。
 そして現実ではキョンくんとお付き合いしてたこと、それをキョンくんが楽しいと思ってくれていたかずっと不安だった。
 あの二人がお互いに惹かれてあっているのはSOS団の他のメンバーには周知の事実で、彼を取り上げたことに罪悪感を持っていた。
 涼宮さんに対しては特に・・・・・・。結局別れの時までわたしが彼と彼女に真実を告げることはなかった。
 
 でも、あの二人は・・・・・・あたしを許してくれたんだ。
 
 今夜だけは遠慮なく泣いていたい。

 

 

おまけ1(その1-4)につづく

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