私は喜緑江美里。長門さんのバックアップ。
私は普通に生きたかった。たとえ生みの親が宇宙に居ても、対有機生命体だとしても、私は人間として生きていきたかった。
このところ生徒会ではSOS団の話で持ちきりだった。でも私は知っている。それは古泉さんのせいで会長が動いてることを。
長門さんの言うことを聞かずに私はこうしてここにいる。
初めてSOS団の皆さんと会ったのは長門さんのおかげだった。
あのとき、私は始めての気持ちになった。
彼を見ると胸が高鳴る。頬が染まるように熱くなる。その場で停止してしまう。
彼の本名は知らない。でも、涼宮さんたちはキョンと呼んでいるらしい。
私にとって彼は守らなければならない存在。でもこの気持ち。
インターフェースである私が?と疑問になることもある。
ずっと眺めているだけだったけど、彼を見ると心が弾んだ。
話掛けてみようかな、と思うこともある。けど、勇気がない。長門さんにも相談してみた。
「あの…長門さん。私、キョンさんのことが…」
「知っている。あなたには人間の概念が宿っているらしい。人間との関わりが強いからあなたにそのような症状が見受けられた」
「私はどうすればいいのでしょう…」
「あなたの道を私が決めるわけには行かない。だから自分の信じる道を進むべき」
信じる道を進む。私にできっこない。
「私の意気地なし…」
そんなことを呟いて学校の門を出ようとしたとき、誰かにぶつかってしまった。
「す、すみません」
私はぶつかった人の顔を見てびっくりした。
「こちらこそすみません。あれ?あなたは…」
そうそこにいたのは彼だった。
「喜緑さんですよね?お久しぶりです。その後コンピ研の部長とはどうなりました?」
笑いながらそんなことを言っていた。
それは噓の話なのに…信じてくれているんだ。
私は精一杯の笑顔を作って
「その後別れました。では、私はこれで」
その後、私は嬉しさのあまり膝から崩れ落ちた。
とても、とても嬉しい。初めて二人きりで会話をした。
ある金曜日の夜7時くらい。私はバイトで遅くまで働いていた。
もう日は落ち、月が出ている。そんな時、
「おいそこのねーちゃん。結構可愛いね。俺たちと遊ばない?」
見たことのない人たちに声をかけられた。
「すみません。そこどいてください」
そういっても退こうとしない。
私は恐くなった。今思えば力を使えば逃げられたはずだったのに私はただ立ち尽くした。すると、
「おい。その人をよこせ」
そこに声だけ木霊した。暗くて顔は見えなかった。
「んだテメェ。殺されてぇのか?」
「その人を帰せ!おい、長門」
「了解した」
聞いたことのある呪文が聞こえた。
「何だコイツ気味悪ぃ」
するとそのひとたちは逃げ出した。
「大丈夫ですか?喜緑さん」
その人は私の方へ近づいてくる。
彼だった。それと長門さん。
「どう、し、て」
「……」
長門さんは黙ったままその場を後にした。
「本当に大丈夫ですか?」
「はい…あ、ありがとうございます」
緊張していた。
「良かった。俺家まで送りますよ」
「え」
びっくりだった。でも、チャンスだった。もしかしたら、長門さんが仕組んだのかも知れない。
「ありがとうございます」
そのまま無言に歩いていた。
その後彼が
「ここ、長門と同じマンションだったんですね」
そうです。そういった私は少し悔しかった。
彼は長門さんのこと好きなのではないのかと思ったから。負けたくない。
「あの、お礼したいんで家上がってください」
「いいんですか?」
もちろん、と私。
お礼といってもお茶くらいしかなかったけど。
部屋では無言だった。この無言を解消したかった。
でも、話す話題ができなかった。
「喜緑さん。ひとつ聞いてもいいですか?」
そういった彼。私は静かに頷いた。
「喜緑さんって生徒会長のこと…好きですか?」
「へ?」
「いや、なんというかその」
「わ、私は、私が好きなのは…」
もう少しでゆってしまいそうだった。
「好きなのは?」
「す、きなの、は…あ、あな、たで、す」
「え?俺?」
「ハイ」
とても恥ずかしい。
「良かった」
え?良かった?
「良かったってどういう」
「俺も喜緑さんのことが…」
ハッッ!!
夢だった。私は故障したらしく、しばらく動いてはならなかった。
私は彼を好きになったのは故障、長門さんは噓をついたのかのかな?
「私は故障してただけ?」
違う。アレは故障じゃない。故障したのも私じゃない。故障したのは…
長門さんだ。長門さんがバクったからその夢を私の頭に読み込んだ。
「長門さん」
私はどうしよう。
「ねぇ長門さん。なんでバクってること教えてくんなかったの?」
「私はあなたの恋を応援しただけ」
私は長門さんに何回も謝っていた。
長門さんは彼のことが好きだったんだね。
私はその日から彼を好きになるのはやめた。
今度は私が長門さんのハツコイを…
~お・わ・り~