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  • 涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki(避難所)
  • 悪夢の背中

涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki(避難所)

悪夢の背中

最終更新:2020年03月14日 12:16

haruhi_vip2

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だれでも歓迎! 編集

 

「本当は誰も入れるべきではないんだけれど、あなたを信用します。あなたなら大丈夫だと。古い付き合いだしね。だけど、花嫁におかしなことをしたら、許さないわよ。」
今日はあたしの結婚式。
人生の門出。
あたしは古泉君と結ばれる。
大学を卒業して就職したあと、古泉君に告白された。
三年ほどおつき合いをしてプロポーズされた。
SOS団は不滅だと言っていたけど、あたしが高校を卒業すると同時にみくるちゃんは遠い外国に行ってしまった。
有希は、あたしが知らない間に行方不明になっていた。あのマンションの部屋はいつのまにか何ひとつなくなっていた。
 今あたしのそばにいるのは……。
「もう一度いいます。わたしは最後まで反対しました。しかしどうしても娘があなたに会いたいと。だから私はあなたを信用しました。決して花嫁におかしな真似をしないで下さい。」
ここは、ホテルの部屋。
あたしは、豪華な椅子に座っている。
大理石の床に高い天井。大きなシャンデリア。
大きな鏡がある。全身を映す鏡。
純白のウェディングドレスをまとった、あたしを映している鏡。
ママがキョンにしつこく念を押している。
馬鹿ね。
鏡の中のあたしがクスリと笑った。
そんなに心配しなくても、あいつがあたしに変なことなんかできるわけがないのに。
「涼宮さん」
キョンの声が聞こえた。
久しぶりに聞く声。
やっぱり大人になったのね。
太くて、練れた声。
男の声。
あたしは鏡から目を離して、頑丈そうな木の扉を見た。
「あなたは、俺を信用しているのですか。信用していないのですか。」
「何を言っているのですか。あなたを信用していると言ったでしょう。だから新郎以外決して入れるべきではない所にあなたを案内しようとしているのです。あなたは拗ねているのですか。ここに新郎以外の男性を入れることの意味がわかっているのですか。そんなことを言うのなら、やはり信用すべきではないですね。」
「あなたが俺を信用するのならば、何も言わずにここに俺を連れてくるべきでした。信用しないのならばこんな所に俺を連れてくるべきじゃなかった。違いますか。」
キョンったら、理屈っぽいところは変わってないのね。だけどそんなことを言ったら逆効果よ。ほら、親父が露骨に舌打ちをしているわ。
「あなたねえ、いい加減にしてちょうだい。あなたを信用しているって言ったでしょう。だけど万一のことがあったら困るから、釘を刺しただけ。わかりますね!」
「あなたは、俺を信用するのなら、信用したことについて責任を負うべきだ。
ここに俺を連れてきて何があったとしても自分で責めを負うだけのね。
あなたが信用しないというなら、信用しないことについての責任を取るべきだ。
あいつがあきらめるまで反対するべきだ。」
何だか様子がおかしい。
キョン…、何言ってるの? 
やっぱり拗ねてるの?
あたしに、会いたくないの?
「俺には何の責任もない。
俺は古泉一樹君と涼宮ハルヒさんの門出を祝福するだけのためにここに来た。
俺は二人の友人です。それ以外のものでは決してありません。
俺がここでやるべきことはご祝儀を持ってくることと、披露宴を盛り上げることだけ。
違いますか。
俺には何の責任もありません。あなたがあいつに反対しきれなかったことに対する責任を負うつもりは毛頭ありません。
ではもう一度聞きます。
何の責任も負っていない俺を信用するんですか。しないんですか? 
責任を持って決めて下さい。」
ママ、お願い! キョンを信用するって言って! あいつがあたしに乱暴したりするわけないわ! あたしはどうしてもあいつに会わなきゃならないの! 
ママが息を飲む音が聞こえた。
「失礼をお許し下さい。どうぞ娘に会ってやって下さい。お願いいたします。」
 数秒間、誰も何も言わなかった。親父も我慢しているらしい。
 
「バカだ、おまえら。親子そろって大バカだ!」
 
「なんだと、小僧、いい加減に……。」
親父の声が聞こえる。親父がキョンを殴るかもしれない。
「いい加減にしてほしいのはこっちだ! 
ハルヒもバカだが、親はもっとバカだ! 
高校生のころから知っているからっていつまでも人を高校生のガキ扱いするんじゃねえ! 
これだけ言ってもまだ俺を花嫁の仕度部屋に入れようとするのか!
あんたらがすべきことは、おまえは信用できないと言って、俺をここから追い払うことだ!」
「…大人だったらわかるだろう。おまえ、花嫁になんかしたら大恥かくことに…。」
「それで俺が大恥かいたら古泉がなんと思う? あいつが傷つかないとでも思ったのか! 何事もなかったとしても、それがあいつに対する裏切りだとは思わないのか!
 それがあいつに知られたとしても、きっとあいつは許すだろう。
 だったらそれでいいのか? 許してくれるんだったら裏切ってもいいのか?
 あいつはもう高校生のガキじゃねえ! 立派な大人だ! 
 これからハルヒを養っていく、一家の主だ!」
 あの強面親父が完全に気圧されている。
 映画撮影の時にあたしを惚れ直させた、本気のあいつ。
 あたしが絶対にやっちゃいけないことをしたら、本気で怒ってくれる、キョン。
 だけど今、そんなことを感じさせられたら、覚悟が…。
 キョン、ここに来てくれないの?
 あたし、あんたに「あの言葉」を言ってもらえたら、覚悟を決められるはずなのに…。
「ハルヒがなんかしてほしいんだったら古泉にやらせろ!
 なんでただの友人の俺にやらせるんだ! 
俺の友人としての立ち位置はあいつが決めたことだ!
自分で決めたことだ! 一人で決めたことだ!
花嫁の仕度部屋でやらせるようなことだったらどんなことであれ古泉にやらせろ!
頭おかしいのか、おまえらは! 
こんなこと、言い出す方も言い出す方だが、伝える方も伝える方だ!
こんな親に育てられたから、ハルヒもあそこまで傲岸不遜なバカ女になっちまったんだ!」
キョンは、ここに来てくれない。ここに入ってきてくれない…。
「だいたいこんなことを聞かされて、俺が冷静でいられるとでも思ったのか!
ちったあ、他人の、俺の気持ちっていうものを考えやがれ!」
俺の気持ち? あいつの、気持ち…。
 あたしは椅子から立ち上がった。
 ドレスの裾がまとわりついて走りにくい。
 あたし、なんでこんなもの着てるんだろう?
 突進するようにドアを開けた。
 同時にキョンが背中を向けた。
 
 廊下に両親が真っ青な顔をして立ちつくしているのが見える。
 そんなことはどうでもいい。
「ハルヒ、それは古泉に最初に見せろ。」
 キョンは、あたしに礼服の背中を向けたまま言った。
 なんでこんなことになっちゃったんだろう。
 ずっとこいつのことが好きだった。
 だけどあたしはこいつにつらく当たってきた。
 それでもこいつはあたしについてきてくれた。
 あたしはこいつにつらく当たりつづけた。
 きっと、許してくれていると確認したかったから。
 まだ、見捨てられていないと確認したかったから。
 そうしないと、もう見捨てられたのかもしれないと怖かったから。
 こんなあたしを、こいつが好きになってくれるはずがないと思っていた。
 ずっとあたしの片思いだと思っていた。
 そうじゃないと気づいた時には遅すぎた。
 両家の結婚話は、もう後戻りのできない段階に入っていた。
 あたしのわがままが通るような状況ではなかった。
 そんな段階ではなかったから?
 違う。
 たとえ裏切ったとしても、古泉君は許してくれたと思う。
 両親は、許してくれたかどうかはわからないが、許してくれなくてもかまわなかった。
 だけど、キョンが許してくれるはずがなかった。
 あたしが古泉君を裏切ることを、キョンが許すはずがなかった。
 だから、あたしは覚悟を決めた。
 もう、キョンのそばにいられなくても仕方がないと覚悟を決めた。
 決めた、はずだった。
 だけど不安だった。
 だからキョンに「あの言葉」を言ってもらえればふっきれると思った。
 最後に「あの言葉」を言ってもらいたかった。
 「あの言葉」をもらえさえすれば、未練がなくなると思った。
 
「おまえが今やろうとしていたことは決して許されることじゃない。」
 そう。誰が見たって、決して褒めてくれない行為。
 なんで、こんなことしようとしたんだろう。
 答えは、はっきりしている。
 こいつがそばにいなかったから。
 こいつのそばにいなかったから。
 あたしは、こいつがそばにいなきゃダメだ。
 そんなこと、ずっと昔からわかっていた。
 くしゃりと視界が歪んだ。
 大粒の涙が後から後からこぼれ落ちてくる。
 覚悟が…、あんたのそばにはもういられないという覚悟が…、覚悟が、覚悟が!
 
「泣くなよ! おまえがもしここで泣いたら、古泉への最大の侮辱だ。そんなことは……俺が許さん!」
 そうだ、覚悟なんかはじめから無かった。
 覚悟を決めたつもりだっただけ。
 いや、そうですらない。
 覚悟を決めたと自分に言い聞かせただけ。
 「あの言葉」を聞けば覚悟が固められるなんて嘘。
 ただ、こいつにそう言ってほしかっただけ!
 
「泣くんだったら…、古泉の前で泣け。」
 あいつの手を見た。
 何回も何回もつかんだ手。
 嵐の中で初めて握り返してくれた手。
 あたしが崖から落ちても離そうとしなかった手。
 後悔…、後悔、後悔、後悔!
 もう一度あのころにもどりたい!
 毎日こいつの背中を見ていたあのころに…。
 毎日こいつの声を聞いていたあのころに…。
 あたりまえのようにこいつのそばにいられたあのころに…。
 神様、今まで一度も信じたことなんかなかったのに虫が良すぎるけど、たった一つのお願い!
 あたしをあの、北高の部室にもどして!
 
「じゃあな、披露宴のキャンドルサービスで会おう。」
 あいつの背中が遠ざかっていく。
 それを追いかけることは許されない。
 キョンが、許してくれない。
 大好きな背中。
 ずっと見ていた背中。
 ずっと見ていたい背中。
 なんで、しがみつかなかったんだろう。
 なにが邪魔したんだろう。
 みんなに美人だともてはやされていたプライド?
 勉強もスポーツも音楽さえもあいつより優れているという自己満足?
 平凡な容姿のあいつと結ばれるのは嫌だという女の見栄?
 違う。
 そんなものじゃない。
 そんなもの、この背中に比べれば、ジュースの空き缶ほどの価値もない。
 勇気が、足りなかっただけ。
 それさえも、嘘。
 勇気を、ふりしぼらなかっただけ!
 こいつにしがみついて振り払われるのが怖かった。
 ただそれだけ。
 こんなに大事なものだとわかっていたなら、何回振り払われてでもしがみつくべきだった!
 こいつが「やれやれ、しょうがないな」と言ってあたしを背中に乗せてくれるまで、何度でもしがみつけばよかった!
 
 「おまえをこう呼ぶのも最後になるな。」
 キョンが扉を開ける。
 この廊下からさえも出ていく。
 あの夜の校庭で、あたしだけをつれて駆けた背中が、あたしの前から消えようとしている。
 せっかく、出会えたのに!
 この広い世界で、キョンに出会えたのに!
 「おれは断じて見ていない。断じて見ていないが…、やっぱり意地があるようだ。…これだけは言わせてくれ。」
 いや…、あれほど聞きたかった言葉だけど、今は聞くのが怖い。
 そう。あたしの生涯でいちばん大切な思い出。
 あたしにとって宝物のような、宝石みたいな思い出。
 今それを聞いてしまったら…あたし…。
「ハルヒ。」
「…なに。」
 
「似合ってるぞ。」
 
扉がパタンと閉じた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
パソコンのディスプレーが見える。
電源は…、落ちているみたいだ。何も映っていない。
夕方のようだ。後ろに窓があるのだろうか。夕陽が照りつけている。
ディスプレーの向こうに、長机が見える。
その先に、ボロボロの扉が見える。
見慣れた場所のような気もするし、ひどく懐かしい場所のような気もする。
自分の体を見てみた。
北高のセーラー服を着ている!
左袖…。
見間違うはずもない!
真っ赤なSOS団団長の腕章!
だけど…、まだ安心できない!
そうだ! 
学生カバンの中を必死に探る。
あった!
あのホテルの部屋にあったバカでかい代物とは全く違う、高校生の身の丈にあった粗末な鏡。
意を決して見る!
涙と鼻水でボロボロのひどい顔をしている。だけどそんなことはどうだっていい!
あたしの髪には、あのティアラとかいう用途不明の装飾品ではなく、黄色いリボン付きカチューシャがはめられていた。
悪い夢を見ていたのだろうか…。
それとも、神様があたしのたった一度のお願いを聞いてくれたのだろうか。
そう言えば、今日一日授業を受けた後団活をして、団長机で居眠りをしてしまったような記憶がある。
だけど、高校を卒業して大学に進み、就職をして古泉君と交際をして…、という記憶もあるような気がする。
どっちでもいい。
あたしは、ここにいる。
北高の部室にいる。
ここにいる…はず。
自信がない。
あれは、夢なんかじゃなかった。
そう、あれはきっと、もう一つの現実。
体の震えがまだ止まらない。
あれが現実で、今あたしが見ているのが、ホテルの救護室で見ている夢だったら…
深く考えるのが怖い。
立ってあの扉を開けるのが怖い。
やっぱりあたしは臆病ものだ。
勇気をふりしぼることができない。
あの扉の向こうのどこにも、キョンがいなかったらと思うと怖い。
なんでこんなに怖いんだろう。
キョンが、あたしのいる部屋に入ってこなかったせいだ。
キョンが、あたしを廊下に残して、後ろ手にドアを閉めてしまったせいだ。
キョンがあの扉を開けて、ここに入ってくるまでは安心できな……。
 
ガチャ。
 
「ハルヒ、起きたか? 他の三人は帰ったぞ。コーヒー買ってきたんだけど飲むか? 一本しかないから半分こな。まあ、おまえに半分と言ってもほとんど飲まれちまう…。」
 
さっきまでの焦燥と不安がみるみる消えていく。
胸の辺りから生まれた安心感がゆっくりと全身を包みこむ。
あたしは、声に出して言っていた。
 
「か、か、かみざま……、あ…、あじがどう……。」
 
「バカだ、おまえら。親子そろって大バカだ!」
 
「なんだと、小僧、いい加減に……。」
親父の声が聞こえる。親父がキョンを殴るかもしれない。
「いい加減にしてほしいのはこっちだ! 
ハルヒもバカだが、親はもっとバカだ! 
高校生のころから知っているからっていつまでも人を高校生のガキ扱いするんじゃねえ! 
これだけ言ってもまだ俺を花嫁の仕度部屋に入れようとするのか!
あんたらがすべきことは、おまえは信用できないと言って、俺をここから追い払うことだ!」
「…大人だったらわかるだろう。おまえ、花嫁になんかしたら大恥かくことに…。」
「それで俺が大恥かいたら古泉がなんと思う? あいつが傷つかないとでも思ったのか! 何事もなかったとしても、それがあいつに対する裏切りだとは思わないのか!
 それがあいつに知られたとしても、きっとあいつは許すだろう。
 だったらそれでいいのか? 許してくれるんだったら裏切ってもいいのか?
 あいつはもう高校生のガキじゃねえ! 立派な大人だ! 
 これからハルヒを養っていく、一家の主だ!」
 あの強面親父が完全に気圧されている。
 映画撮影の時にあたしを惚れ直させた、本気のあいつ。
 あたしが絶対にやっちゃいけないことをしたら、本気で怒ってくれる、キョン。
 だけど今、そんなことを感じさせられたら、覚悟が…。
 キョン、ここに来てくれないの?
 あたし、あんたに「あの言葉」を言ってもらえたら、覚悟を決められるはずなのに…。
「ハルヒがなんかしてほしいんだったら古泉にやらせろ!
 なんでただの友人の俺にやらせるんだ! 
俺の友人としての立ち位置はあいつが決めたことだ!
自分で決めたことだ! 一人で決めたことだ!
花嫁の仕度部屋でやらせるようなことだったらどんなことであれ古泉にやらせろ!
頭おかしいのか、おまえらは! 
こんなこと、言い出す方も言い出す方だが、伝える方も伝える方だ!
こんな親に育てられたから、ハルヒもあそこまで傲岸不遜なバカ女になっちまったんだ!」
キョンは、ここに来てくれない。ここに入ってきてくれない…。
「だいたいこんなことを聞かされて、俺が冷静でいられるとでも思ったのか!
ちったあ、他人の、俺の気持ちっていうものを考えやがれ!」
俺の気持ち? あいつの、気持ち…。
 あたしは椅子から立ち上がった。
 ドレスの裾がまとわりついて走りにくい。
 あたし、なんでこんなもの着てるんだろう?
 突進するようにドアを開けた。
 同時にキョンが背中を向けた。
 
 廊下に両親が真っ青な顔をして立ちつくしているのが見える。
 そんなことはどうでもいい。
「ハルヒ、それは古泉に最初に見せろ。」
 キョンは、あたしに礼服の背中を向けたまま言った。
 なんでこんなことになっちゃったんだろう。
 ずっとこいつのことが好きだった。
 だけどあたしはこいつにつらく当たってきた。
 それでもこいつはあたしについてきてくれた。
 あたしはこいつにつらく当たりつづけた。
 きっと、許してくれていると確認したかったから。
 まだ、見捨てられていないと確認したかったから。
 そうしないと、もう見捨てられたのかもしれないと怖かったから。
 こんなあたしを、こいつが好きになってくれるはずがないと思っていた。
 ずっとあたしの片思いだと思っていた。
 そうじゃないと気づいた時には遅すぎた。
 両家の結婚話は、もう後戻りのできない段階に入っていた。
 あたしのわがままが通るような状況ではなかった。
 そんな段階ではなかったから?
 違う。
 たとえ裏切ったとしても、古泉君は許してくれたと思う。
 両親は、許してくれたかどうかはわからないが、許してくれなくてもかまわなかった。
 だけど、キョンが許してくれるはずがなかった。
 あたしが古泉君を裏切ることを、キョンが許すはずがなかった。
 だから、あたしは覚悟を決めた。
 もう、キョンのそばにいられなくても仕方がないと覚悟を決めた。
 決めた、はずだった。
 だけど不安だった。
 だからキョンに「あの言葉」を言ってもらえればふっきれると思った。
 最後に「あの言葉」を言ってもらいたかった。
 「あの言葉」をもらえさえすれば、未練がなくなると思った。
 
「おまえが今やろうとしていたことは決して許されることじゃない。」
 そう。誰が見たって、決して褒めてくれない行為。
 なんで、こんなことしようとしたんだろう。
 答えは、はっきりしている。
 こいつがそばにいなかったから。
 こいつのそばにいなかったから。
 あたしは、こいつがそばにいなきゃダメだ。
 そんなこと、ずっと昔からわかっていた。
 くしゃりと視界が歪んだ。
 大粒の涙が後から後からこぼれ落ちてくる。
 覚悟が…、あんたのそばにはもういられないという覚悟が…、覚悟が、覚悟が!
 
「泣くなよ! おまえがもしここで泣いたら、古泉への最大の侮辱だ。そんなことは……俺が許さん!」
 そうだ、覚悟なんかはじめから無かった。
 覚悟を決めたつもりだっただけ。
 いや、そうですらない。
 覚悟を決めたと自分に言い聞かせただけ。
 「あの言葉」を聞けば覚悟が固められるなんて嘘。
 ただ、こいつにそう言ってほしかっただけ!
 
「泣くんだったら…、古泉の前で泣け。」
 あいつの手を見た。
 何回も何回もつかんだ手。
 嵐の中で初めて握り返してくれた手。
 あたしが崖から落ちても離そうとしなかった手。
 後悔…、後悔、後悔、後悔!
 もう一度あのころにもどりたい!
 毎日こいつの背中を見ていたあのころに…。
 毎日こいつの声を聞いていたあのころに…。
 あたりまえのようにこいつのそばにいられたあのころに…。
 神様、今まで一度も信じたことなんかなかったのに虫が良すぎるけど、たった一つのお願い!
 あたしをあの、北高の部室にもどして!
 
「じゃあな、披露宴のキャンドルサービスで会おう。」
 あいつの背中が遠ざかっていく。
 それを追いかけることは許されない。
 キョンが、許してくれない。
 大好きな背中。
 ずっと見ていた背中。
 ずっと見ていたい背中。
 なんで、しがみつかなかったんだろう。
 なにが邪魔したんだろう。
 みんなに美人だともてはやされていたプライド?
 勉強もスポーツも音楽さえもあいつより優れているという自己満足?
 平凡な容姿のあいつと結ばれるのは嫌だという女の見栄?
 違う。
 そんなものじゃない。
 そんなもの、この背中に比べれば、ジュースの空き缶ほどの価値もない。
 勇気が、足りなかっただけ。
 それさえも、嘘。
 勇気を、ふりしぼらなかっただけ!
 こいつにしがみついて振り払われるのが怖かった。
 ただそれだけ。
 こんなに大事なものだとわかっていたなら、何回振り払われてでもしがみつくべきだった!
 こいつが「やれやれ、しょうがないな」と言ってあたしを背中に乗せてくれるまで、何度でもしがみつけばよかった!
 
 「おまえをこう呼ぶのも最後になるな。」
 キョンが扉を開ける。
 この廊下からさえも出ていく。
 あの夜の校庭で、あたしだけをつれて駆けた背中が、あたしの前から消えようとしている。
 せっかく、出会えたのに!
 この広い世界で、キョンに出会えたのに!
 「おれは断じて見ていない。断じて見ていないが…、やっぱり意地があるようだ。…これだけは言わせてくれ。」
 いや…、あれほど聞きたかった言葉だけど、今は聞くのが怖い。
 そう。あたしの生涯でいちばん大切な思い出。
 あたしにとって宝物のような、宝石みたいな思い出。
 今それを聞いてしまったら…あたし…。
「ハルヒ。」
「…なに。」
 
「似合ってるぞ。」
 
扉がパタンと閉じた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
パソコンのディスプレーが見える。
電源は…、落ちているみたいだ。何も映っていない。
夕方のようだ。後ろに窓があるのだろうか。夕陽が照りつけている。
ディスプレーの向こうに、長机が見える。
その先に、ボロボロの扉が見える。
見慣れた場所のような気もするし、ひどく懐かしい場所のような気もする。
自分の体を見てみた。
北高のセーラー服を着ている!
左袖…。
見間違うはずもない!
真っ赤なSOS団団長の腕章!
だけど…、まだ安心できない!
そうだ! 
学生カバンの中を必死に探る。
あった!
あのホテルの部屋にあったバカでかい代物とは全く違う、高校生の身の丈にあった粗末な鏡。
意を決して見る!
涙と鼻水でボロボロのひどい顔をしている。だけどそんなことはどうだっていい!
あたしの髪には、あのティアラとかいう用途不明の装飾品ではなく、黄色いリボン付きカチューシャがはめられていた。
悪い夢を見ていたのだろうか…。
それとも、神様があたしのたった一度のお願いを聞いてくれたのだろうか。
そう言えば、今日一日授業を受けた後団活をして、団長机で居眠りをしてしまったような記憶がある。
だけど、高校を卒業して大学に進み、就職をして古泉君と交際をして…、という記憶もあるような気がする。
どっちでもいい。
あたしは、ここにいる。
北高の部室にいる。
ここにいる…はず。
自信がない。
あれは、夢なんかじゃなかった。
そう、あれはきっと、もう一つの現実。
体の震えがまだ止まらない。
あれが現実で、今あたしが見ているのが、ホテルの救護室で見ている夢だったら…
深く考えるのが怖い。
立ってあの扉を開けるのが怖い。
やっぱりあたしは臆病ものだ。
勇気をふりしぼることができない。
あの扉の向こうのどこにも、キョンがいなかったらと思うと怖い。
なんでこんなに怖いんだろう。
キョンが、あたしのいる部屋に入ってこなかったせいだ。
キョンが、あたしを廊下に残して、後ろ手にドアを閉めてしまったせいだ。
キョンがあの扉を開けて、ここに入ってくるまでは安心できな……。
 
ガチャ。
 
「ハルヒ、起きたか? 他の三人は帰ったぞ。コーヒー買ってきたんだけど飲むか? 一本しかないから半分こな。まあ、おまえに半分と言ってもほとんど飲まれちまう…。」
 
さっきまでの焦燥と不安がみるみる消えていく。
胸の辺りから生まれた安心感がゆっくりと全身を包みこむ。
あたしは、声に出して言っていた。
 
「か、か、かみざま……、あ…、あじがどう……。」
 
「本当は誰も入れるべきではないんだけれど、あなたを信用します。あなたなら大丈夫だと。古い付き合いだしね。だけど、花嫁におかしなことをしたら、許さないわよ。」
今日はあたしの結婚式。
人生の門出。
あたしは古泉君と結ばれる。
大学を卒業して就職したあと、古泉君に告白された。
三年ほどおつき合いをしてプロポーズされた。
SOS団は不滅だと言っていたけど、あたしが高校を卒業すると同時にみくるちゃんは遠い外国に行ってしまった。
有希は、あたしが知らない間に行方不明になっていた。あのマンションの部屋はいつのまにか何ひとつなくなっていた。
 今あたしのそばにいるのは……。
「もう一度いいます。わたしは最後まで反対しました。しかしどうしても娘があなたに会いたいと。だから私はあなたを信用しました。決して花嫁におかしな真似をしないで下さい。」
ここは、ホテルの部屋。
あたしは、豪華な椅子に座っている。
大理石の床に高い天井。大きなシャンデリア。
大きな鏡がある。全身を映す鏡。
純白のウェディングドレスをまとった、あたしを映している鏡。
ママがキョンにしつこく念を押している。
馬鹿ね。
鏡の中のあたしがクスリと笑った。
そんなに心配しなくても、あいつがあたしに変なことなんかできるわけがないのに。
「涼宮さん」
キョンの声が聞こえた。
久しぶりに聞く声。
やっぱり大人になったのね。
太くて、練れた声。
男の声。
あたしは鏡から目を離して、頑丈そうな木の扉を見た。
「あなたは、俺を信用しているのですか。信用していないのですか。」
「何を言っているのですか。あなたを信用していると言ったでしょう。だから新郎以外決して入れるべきではない所にあなたを案内しようとしているのです。あなたは拗ねているのですか。ここに新郎以外の男性を入れることの意味がわかっているのですか。そんなことを言うのなら、やはり信用すべきではないですね。」
「あなたが俺を信用するのならば、何も言わずにここに俺を連れてくるべきでした。信用しないのならばこんな所に俺を連れてくるべきじゃなかった。違いますか。」
キョンったら、理屈っぽいところは変わってないのね。だけどそんなことを言ったら逆効果よ。ほら、親父が露骨に舌打ちをしているわ。
「あなたねえ、いい加減にしてちょうだい。あなたを信用しているって言ったでしょう。だけど万一のことがあったら困るから、釘を刺しただけ。わかりますね!」
「あなたは、俺を信用するのなら、信用したことについて責任を負うべきだ。
ここに俺を連れてきて何があったとしても自分で責めを負うだけのね。
あなたが信用しないというなら、信用しないことについての責任を取るべきだ。
あいつがあきらめるまで反対するべきだ。」
何だか様子がおかしい。
キョン…、何言ってるの? 
やっぱり拗ねてるの?
あたしに、会いたくないの?
「俺には何の責任もない。
俺は古泉一樹君と涼宮ハルヒさんの門出を祝福するだけのためにここに来た。
俺は二人の友人です。それ以外のものでは決してありません。
俺がここでやるべきことはご祝儀を持ってくることと、披露宴を盛り上げることだけ。
違いますか。
俺には何の責任もありません。あなたがあいつに反対しきれなかったことに対する責任を負うつもりは毛頭ありません。
ではもう一度聞きます。
何の責任も負っていない俺を信用するんですか。しないんですか? 
責任を持って決めて下さい。」
ママ、お願い! キョンを信用するって言って! あいつがあたしに乱暴したりするわけないわ! あたしはどうしてもあいつに会わなきゃならないの! 
ママが息を飲む音が聞こえた。
「失礼をお許し下さい。どうぞ娘に会ってやって下さい。お願いいたします。」
 数秒間、誰も何も言わなかった。親父も我慢しているらしい。
 
「バカだ、おまえら。親子そろって大バカだ!」
 
「なんだと、小僧、いい加減に……。」
親父の声が聞こえる。親父がキョンを殴るかもしれない。
「いい加減にしてほしいのはこっちだ! 
ハルヒもバカだが、親はもっとバカだ! 
高校生のころから知っているからっていつまでも人を高校生のガキ扱いするんじゃねえ! 
これだけ言ってもまだ俺を花嫁の仕度部屋に入れようとするのか!
あんたらがすべきことは、おまえは信用できないと言って、俺をここから追い払うことだ!」
「…大人だったらわかるだろう。おまえ、花嫁になんかしたら大恥かくことに…。」
「それで俺が大恥かいたら古泉がなんと思う? あいつが傷つかないとでも思ったのか! 何事もなかったとしても、それがあいつに対する裏切りだとは思わないのか!
 それがあいつに知られたとしても、きっとあいつは許すだろう。
 だったらそれでいいのか? 許してくれるんだったら裏切ってもいいのか?
 あいつはもう高校生のガキじゃねえ! 立派な大人だ! 
 これからハルヒを養っていく、一家の主だ!」
 あの強面親父が完全に気圧されている。
 映画撮影の時にあたしを惚れ直させた、本気のあいつ。
 あたしが絶対にやっちゃいけないことをしたら、本気で怒ってくれる、キョン。
 だけど今、そんなことを感じさせられたら、覚悟が…。
 キョン、ここに来てくれないの?
 あたし、あんたに「あの言葉」を言ってもらえたら、覚悟を決められるはずなのに…。
「ハルヒがなんかしてほしいんだったら古泉にやらせろ!
 なんでただの友人の俺にやらせるんだ! 
俺の友人としての立ち位置はあいつが決めたことだ!
自分で決めたことだ! 一人で決めたことだ!
花嫁の仕度部屋でやらせるようなことだったらどんなことであれ古泉にやらせろ!
頭おかしいのか、おまえらは! 
こんなこと、言い出す方も言い出す方だが、伝える方も伝える方だ!
こんな親に育てられたから、ハルヒもあそこまで傲岸不遜なバカ女になっちまったんだ!」
キョンは、ここに来てくれない。ここに入ってきてくれない…。
「だいたいこんなことを聞かされて、俺が冷静でいられるとでも思ったのか!
ちったあ、他人の、俺の気持ちっていうものを考えやがれ!」
俺の気持ち? あいつの、気持ち…。
 あたしは椅子から立ち上がった。
 ドレスの裾がまとわりついて走りにくい。
 あたし、なんでこんなもの着てるんだろう?
 突進するようにドアを開けた。
 同時にキョンが背中を向けた。
 
 廊下に両親が真っ青な顔をして立ちつくしているのが見える。
 そんなことはどうでもいい。
「ハルヒ、それは古泉に最初に見せろ。」
 キョンは、あたしに礼服の背中を向けたまま言った。
 なんでこんなことになっちゃったんだろう。
 ずっとこいつのことが好きだった。
 だけどあたしはこいつにつらく当たってきた。
 それでもこいつはあたしについてきてくれた。
 あたしはこいつにつらく当たりつづけた。
 きっと、許してくれていると確認したかったから。
 まだ、見捨てられていないと確認したかったから。
 そうしないと、もう見捨てられたのかもしれないと怖かったから。
 こんなあたしを、こいつが好きになってくれるはずがないと思っていた。
 ずっとあたしの片思いだと思っていた。
 そうじゃないと気づいた時には遅すぎた。
 両家の結婚話は、もう後戻りのできない段階に入っていた。
 あたしのわがままが通るような状況ではなかった。
 そんな段階ではなかったから?
 違う。
 たとえ裏切ったとしても、古泉君は許してくれたと思う。
 両親は、許してくれたかどうかはわからないが、許してくれなくてもかまわなかった。
 だけど、キョンが許してくれるはずがなかった。
 あたしが古泉君を裏切ることを、キョンが許すはずがなかった。
 だから、あたしは覚悟を決めた。
 もう、キョンのそばにいられなくても仕方がないと覚悟を決めた。
 決めた、はずだった。
 だけど不安だった。
 だからキョンに「あの言葉」を言ってもらえればふっきれると思った。
 最後に「あの言葉」を言ってもらいたかった。
 「あの言葉」をもらえさえすれば、未練がなくなると思った。
 
「おまえが今やろうとしていたことは決して許されることじゃない。」
 そう。誰が見たって、決して褒めてくれない行為。
 なんで、こんなことしようとしたんだろう。
 答えは、はっきりしている。
 こいつがそばにいなかったから。
 こいつのそばにいなかったから。
 あたしは、こいつがそばにいなきゃダメだ。
 そんなこと、ずっと昔からわかっていた。
 くしゃりと視界が歪んだ。
 大粒の涙が後から後からこぼれ落ちてくる。
 覚悟が…、あんたのそばにはもういられないという覚悟が…、覚悟が、覚悟が!
 
「泣くなよ! おまえがもしここで泣いたら、古泉への最大の侮辱だ。そんなことは……俺が許さん!」
 そうだ、覚悟なんかはじめから無かった。
 覚悟を決めたつもりだっただけ。
 いや、そうですらない。
 覚悟を決めたと自分に言い聞かせただけ。
 「あの言葉」を聞けば覚悟が固められるなんて嘘。
 ただ、こいつにそう言ってほしかっただけ!
 
「泣くんだったら…、古泉の前で泣け。」
 あいつの手を見た。
 何回も何回もつかんだ手。
 嵐の中で初めて握り返してくれた手。
 あたしが崖から落ちても離そうとしなかった手。
 後悔…、後悔、後悔、後悔!
 もう一度あのころにもどりたい!
 毎日こいつの背中を見ていたあのころに…。
 毎日こいつの声を聞いていたあのころに…。
 あたりまえのようにこいつのそばにいられたあのころに…。
 神様、今まで一度も信じたことなんかなかったのに虫が良すぎるけど、たった一つのお願い!
 あたしをあの、北高の部室にもどして!
 
「じゃあな、披露宴のキャンドルサービスで会おう。」
 あいつの背中が遠ざかっていく。
 それを追いかけることは許されない。
 キョンが、許してくれない。
 大好きな背中。
 ずっと見ていた背中。
 ずっと見ていたい背中。
 なんで、しがみつかなかったんだろう。
 なにが邪魔したんだろう。
 みんなに美人だともてはやされていたプライド?
 勉強もスポーツも音楽さえもあいつより優れているという自己満足?
 平凡な容姿のあいつと結ばれるのは嫌だという女の見栄?
 違う。
 そんなものじゃない。
 そんなもの、この背中に比べれば、ジュースの空き缶ほどの価値もない。
 勇気が、足りなかっただけ。
 それさえも、嘘。
 勇気を、ふりしぼらなかっただけ!
 こいつにしがみついて振り払われるのが怖かった。
 ただそれだけ。
 こんなに大事なものだとわかっていたなら、何回振り払われてでもしがみつくべきだった!
 こいつが「やれやれ、しょうがないな」と言ってあたしを背中に乗せてくれるまで、何度でもしがみつけばよかった!
 
 「おまえをこう呼ぶのも最後になるな。」
 キョンが扉を開ける。
 この廊下からさえも出ていく。
 あの夜の校庭で、あたしだけをつれて駆けた背中が、あたしの前から消えようとしている。
 せっかく、出会えたのに!
 この広い世界で、キョンに出会えたのに!
 「おれは断じて見ていない。断じて見ていないが…、やっぱり意地があるようだ。…これだけは言わせてくれ。」
 いや…、あれほど聞きたかった言葉だけど、今は聞くのが怖い。
 そう。あたしの生涯でいちばん大切な思い出。
 あたしにとって宝物のような、宝石みたいな思い出。
 今それを聞いてしまったら…あたし…。
「ハルヒ。」
「…なに。」
 
「似合ってるぞ。」
 
扉がパタンと閉じた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
パソコンのディスプレーが見える。
電源は…、落ちているみたいだ。何も映っていない。
夕方のようだ。後ろに窓があるのだろうか。夕陽が照りつけている。
ディスプレーの向こうに、長机が見える。
その先に、ボロボロの扉が見える。
見慣れた場所のような気もするし、ひどく懐かしい場所のような気もする。
自分の体を見てみた。
北高のセーラー服を着ている!
左袖…。
見間違うはずもない!
真っ赤なSOS団団長の腕章!
だけど…、まだ安心できない!
そうだ! 
学生カバンの中を必死に探る。
あった!
あのホテルの部屋にあったバカでかい代物とは全く違う、高校生の身の丈にあった粗末な鏡。
意を決して見る!
涙と鼻水でボロボロのひどい顔をしている。だけどそんなことはどうだっていい!
あたしの髪には、あのティアラとかいう用途不明の装飾品ではなく、黄色いリボン付きカチューシャがはめられていた。
悪い夢を見ていたのだろうか…。
それとも、神様があたしのたった一度のお願いを聞いてくれたのだろうか。
そう言えば、今日一日授業を受けた後団活をして、団長机で居眠りをしてしまったような記憶がある。
だけど、高校を卒業して大学に進み、就職をして古泉君と交際をして…、という記憶もあるような気がする。
どっちでもいい。
あたしは、ここにいる。
北高の部室にいる。
ここにいる…はず。
自信がない。
あれは、夢なんかじゃなかった。
そう、あれはきっと、もう一つの現実。
体の震えがまだ止まらない。
あれが現実で、今あたしが見ているのが、ホテルの救護室で見ている夢だったら…
深く考えるのが怖い。
立ってあの扉を開けるのが怖い。
やっぱりあたしは臆病ものだ。
勇気をふりしぼることができない。
あの扉の向こうのどこにも、キョンがいなかったらと思うと怖い。
なんでこんなに怖いんだろう。
キョンが、あたしのいる部屋に入ってこなかったせいだ。
キョンが、あたしを廊下に残して、後ろ手にドアを閉めてしまったせいだ。
キョンがあの扉を開けて、ここに入ってくるまでは安心できな……。
 
ガチャ。
 
「ハルヒ、起きたか? 他の三人は帰ったぞ。コーヒー買ってきたんだけど飲むか? 一本しかないから半分こな。まあ、おまえに半分と言ってもほとんど飲まれちまう…。」
 
さっきまでの焦燥と不安がみるみる消えていく。
胸の辺りから生まれた安心感がゆっくりと全身を包みこむ。
あたしは、声に出して言っていた。
 
「か、か、かみざま……、あ…、あじがどう……。」
 
「本当は誰も入れるべきではないんだけれど、あなたを信用します。あなたなら大丈夫だと。古い付き合いだしね。だけど、花嫁におかしなことをしたら、許さないわよ。」
今日はあたしの結婚式。
人生の門出。
あたしは古泉君と結ばれる。
大学を卒業して就職したあと、古泉君に告白された。
三年ほどおつき合いをしてプロポーズされた。
SOS団は不滅だと言っていたけど、あたしが高校を卒業すると同時にみくるちゃんは遠い外国に行ってしまった。
有希は、あたしが知らない間に行方不明になっていた。あのマンションの部屋はいつのまにか何ひとつなくなっていた。
 今あたしのそばにいるのは……。
「もう一度いいます。わたしは最後まで反対しました。しかしどうしても娘があなたに会いたいと。だから私はあなたを信用しました。決して花嫁におかしな真似をしないで下さい。」
ここは、ホテルの部屋。
あたしは、豪華な椅子に座っている。
大理石の床に高い天井。大きなシャンデリア。
大きな鏡がある。全身を映す鏡。
純白のウェディングドレスをまとった、あたしを映している鏡。
ママがキョンにしつこく念を押している。
馬鹿ね。
鏡の中のあたしがクスリと笑った。
そんなに心配しなくても、あいつがあたしに変なことなんかできるわけがないのに。
「涼宮さん」
キョンの声が聞こえた。
久しぶりに聞く声。
やっぱり大人になったのね。
太くて、練れた声。
男の声。
あたしは鏡から目を離して、頑丈そうな木の扉を見た。
「あなたは、俺を信用しているのですか。信用していないのですか。」
「何を言っているのですか。あなたを信用していると言ったでしょう。だから新郎以外決して入れるべきではない所にあなたを案内しようとしているのです。あなたは拗ねているのですか。ここに新郎以外の男性を入れることの意味がわかっているのですか。そんなことを言うのなら、やはり信用すべきではないですね。」
「あなたが俺を信用するのならば、何も言わずにここに俺を連れてくるべきでした。信用しないのならばこんな所に俺を連れてくるべきじゃなかった。違いますか。」
キョンったら、理屈っぽいところは変わってないのね。だけどそんなことを言ったら逆効果よ。ほら、親父が露骨に舌打ちをしているわ。
「あなたねえ、いい加減にしてちょうだい。あなたを信用しているって言ったでしょう。だけど万一のことがあったら困るから、釘を刺しただけ。わかりますね!」
「あなたは、俺を信用するのなら、信用したことについて責任を負うべきだ。
ここに俺を連れてきて何があったとしても自分で責めを負うだけのね。
あなたが信用しないというなら、信用しないことについての責任を取るべきだ。
あいつがあきらめるまで反対するべきだ。」
何だか様子がおかしい。
キョン…、何言ってるの? 
やっぱり拗ねてるの?
あたしに、会いたくないの?
「俺には何の責任もない。
俺は古泉一樹君と涼宮ハルヒさんの門出を祝福するだけのためにここに来た。
俺は二人の友人です。それ以外のものでは決してありません。
俺がここでやるべきことはご祝儀を持ってくることと、披露宴を盛り上げることだけ。
違いますか。
俺には何の責任もありません。あなたがあいつに反対しきれなかったことに対する責任を負うつもりは毛頭ありません。
ではもう一度聞きます。
何の責任も負っていない俺を信用するんですか。しないんですか? 
責任を持って決めて下さい。」
ママ、お願い! キョンを信用するって言って! あいつがあたしに乱暴したりするわけないわ! あたしはどうしてもあいつに会わなきゃならないの! 
ママが息を飲む音が聞こえた。
「失礼をお許し下さい。どうぞ娘に会ってやって下さい。お願いいたします。」
 数秒間、誰も何も言わなかった。親父も我慢しているらしい。
 
「バカだ、おまえら。親子そろって大バカだ!」
 
「なんだと、小僧、いい加減に……。」
親父の声が聞こえる。親父がキョンを殴るかもしれない。
「いい加減にしてほしいのはこっちだ! 
ハルヒもバカだが、親はもっとバカだ! 
高校生のころから知っているからっていつまでも人を高校生のガキ扱いするんじゃねえ! 
これだけ言ってもまだ俺を花嫁の仕度部屋に入れようとするのか!
あんたらがすべきことは、おまえは信用できないと言って、俺をここから追い払うことだ!」
「…大人だったらわかるだろう。おまえ、花嫁になんかしたら大恥かくことに…。」
「それで俺が大恥かいたら古泉がなんと思う? あいつが傷つかないとでも思ったのか! 何事もなかったとしても、それがあいつに対する裏切りだとは思わないのか!
 それがあいつに知られたとしても、きっとあいつは許すだろう。
 だったらそれでいいのか? 許してくれるんだったら裏切ってもいいのか?
 あいつはもう高校生のガキじゃねえ! 立派な大人だ! 
 これからハルヒを養っていく、一家の主だ!」
 あの強面親父が完全に気圧されている。
 映画撮影の時にあたしを惚れ直させた、本気のあいつ。
 あたしが絶対にやっちゃいけないことをしたら、本気で怒ってくれる、キョン。
 だけど今、そんなことを感じさせられたら、覚悟が…。
 キョン、ここに来てくれないの?
 あたし、あんたに「あの言葉」を言ってもらえたら、覚悟を決められるはずなのに…。
「ハルヒがなんかしてほしいんだったら古泉にやらせろ!
 なんでただの友人の俺にやらせるんだ! 
俺の友人としての立ち位置はあいつが決めたことだ!
自分で決めたことだ! 一人で決めたことだ!
花嫁の仕度部屋でやらせるようなことだったらどんなことであれ古泉にやらせろ!
頭おかしいのか、おまえらは! 
こんなこと、言い出す方も言い出す方だが、伝える方も伝える方だ!
こんな親に育てられたから、ハルヒもあそこまで傲岸不遜なバカ女になっちまったんだ!」
キョンは、ここに来てくれない。ここに入ってきてくれない…。
「だいたいこんなことを聞かされて、俺が冷静でいられるとでも思ったのか!
ちったあ、他人の、俺の気持ちっていうものを考えやがれ!」
俺の気持ち? あいつの、気持ち…。
 あたしは椅子から立ち上がった。
 ドレスの裾がまとわりついて走りにくい。
 あたし、なんでこんなもの着てるんだろう?
 突進するようにドアを開けた。
 同時にキョンが背中を向けた。
 
 廊下に両親が真っ青な顔をして立ちつくしているのが見える。
 そんなことはどうでもいい。
「ハルヒ、それは古泉に最初に見せろ。」
 キョンは、あたしに礼服の背中を向けたまま言った。
 なんでこんなことになっちゃったんだろう。
 ずっとこいつのことが好きだった。
 だけどあたしはこいつにつらく当たってきた。
 それでもこいつはあたしについてきてくれた。
 あたしはこいつにつらく当たりつづけた。
 きっと、許してくれていると確認したかったから。
 まだ、見捨てられていないと確認したかったから。
 そうしないと、もう見捨てられたのかもしれないと怖かったから。
 こんなあたしを、こいつが好きになってくれるはずがないと思っていた。
 ずっとあたしの片思いだと思っていた。
 そうじゃないと気づいた時には遅すぎた。
 両家の結婚話は、もう後戻りのできない段階に入っていた。
 あたしのわがままが通るような状況ではなかった。
 そんな段階ではなかったから?
 違う。
 たとえ裏切ったとしても、古泉君は許してくれたと思う。
 両親は、許してくれたかどうかはわからないが、許してくれなくてもかまわなかった。
 だけど、キョンが許してくれるはずがなかった。
 あたしが古泉君を裏切ることを、キョンが許すはずがなかった。
 だから、あたしは覚悟を決めた。
 もう、キョンのそばにいられなくても仕方がないと覚悟を決めた。
 決めた、はずだった。
 だけど不安だった。
 だからキョンに「あの言葉」を言ってもらえればふっきれると思った。
 最後に「あの言葉」を言ってもらいたかった。
 「あの言葉」をもらえさえすれば、未練がなくなると思った。
 
「おまえが今やろうとしていたことは決して許されることじゃない。」
 そう。誰が見たって、決して褒めてくれない行為。
 なんで、こんなことしようとしたんだろう。
 答えは、はっきりしている。
 こいつがそばにいなかったから。
 こいつのそばにいなかったから。
 あたしは、こいつがそばにいなきゃダメだ。
 そんなこと、ずっと昔からわかっていた。
 くしゃりと視界が歪んだ。
 大粒の涙が後から後からこぼれ落ちてくる。
 覚悟が…、あんたのそばにはもういられないという覚悟が…、覚悟が、覚悟が!
 
「泣くなよ! おまえがもしここで泣いたら、古泉への最大の侮辱だ。そんなことは……俺が許さん!」
 そうだ、覚悟なんかはじめから無かった。
 覚悟を決めたつもりだっただけ。
 いや、そうですらない。
 覚悟を決めたと自分に言い聞かせただけ。
 「あの言葉」を聞けば覚悟が固められるなんて嘘。
 ただ、こいつにそう言ってほしかっただけ!
 
「泣くんだったら…、古泉の前で泣け。」
 あいつの手を見た。
 何回も何回もつかんだ手。
 嵐の中で初めて握り返してくれた手。
 あたしが崖から落ちても離そうとしなかった手。
 後悔…、後悔、後悔、後悔!
 もう一度あのころにもどりたい!
 毎日こいつの背中を見ていたあのころに…。
 毎日こいつの声を聞いていたあのころに…。
 あたりまえのようにこいつのそばにいられたあのころに…。
 神様、今まで一度も信じたことなんかなかったのに虫が良すぎるけど、たった一つのお願い!
 あたしをあの、北高の部室にもどして!
 
「じゃあな、披露宴のキャンドルサービスで会おう。」
 あいつの背中が遠ざかっていく。
 それを追いかけることは許されない。
 キョンが、許してくれない。
 大好きな背中。
 ずっと見ていた背中。
 ずっと見ていたい背中。
 なんで、しがみつかなかったんだろう。
 なにが邪魔したんだろう。
 みんなに美人だともてはやされていたプライド?
 勉強もスポーツも音楽さえもあいつより優れているという自己満足?
 平凡な容姿のあいつと結ばれるのは嫌だという女の見栄?
 違う。
 そんなものじゃない。
 そんなもの、この背中に比べれば、ジュースの空き缶ほどの価値もない。
 勇気が、足りなかっただけ。
 それさえも、嘘。
 勇気を、ふりしぼらなかっただけ!
 こいつにしがみついて振り払われるのが怖かった。
 ただそれだけ。
 こんなに大事なものだとわかっていたなら、何回振り払われてでもしがみつくべきだった!
 こいつが「やれやれ、しょうがないな」と言ってあたしを背中に乗せてくれるまで、何度でもしがみつけばよかった!
 
 「おまえをこう呼ぶのも最後になるな。」
 キョンが扉を開ける。
 この廊下からさえも出ていく。
 あの夜の校庭で、あたしだけをつれて駆けた背中が、あたしの前から消えようとしている。
 せっかく、出会えたのに!
 この広い世界で、キョンに出会えたのに!
 「おれは断じて見ていない。断じて見ていないが…、やっぱり意地があるようだ。…これだけは言わせてくれ。」
 いや…、あれほど聞きたかった言葉だけど、今は聞くのが怖い。
 そう。あたしの生涯でいちばん大切な思い出。
 あたしにとって宝物のような、宝石みたいな思い出。
 今それを聞いてしまったら…あたし…。
「ハルヒ。」
「…なに。」
 
「似合ってるぞ。」
 
扉がパタンと閉じた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
パソコンのディスプレーが見える。
電源は…、落ちているみたいだ。何も映っていない。
夕方のようだ。後ろに窓があるのだろうか。夕陽が照りつけている。
ディスプレーの向こうに、長机が見える。
その先に、ボロボロの扉が見える。
見慣れた場所のような気もするし、ひどく懐かしい場所のような気もする。
自分の体を見てみた。
北高のセーラー服を着ている!
左袖…。
見間違うはずもない!
真っ赤なSOS団団長の腕章!
だけど…、まだ安心できない!
そうだ! 
学生カバンの中を必死に探る。
あった!
あのホテルの部屋にあったバカでかい代物とは全く違う、高校生の身の丈にあった粗末な鏡。
意を決して見る!
涙と鼻水でボロボロのひどい顔をしている。だけどそんなことはどうだっていい!
あたしの髪には、あのティアラとかいう用途不明の装飾品ではなく、黄色いリボン付きカチューシャがはめられていた。
悪い夢を見ていたのだろうか…。
それとも、神様があたしのたった一度のお願いを聞いてくれたのだろうか。
そう言えば、今日一日授業を受けた後団活をして、団長机で居眠りをしてしまったような記憶がある。
だけど、高校を卒業して大学に進み、就職をして古泉君と交際をして…、という記憶もあるような気がする。
どっちでもいい。
あたしは、ここにいる。
北高の部室にいる。
ここにいる…はず。
自信がない。
あれは、夢なんかじゃなかった。
そう、あれはきっと、もう一つの現実。
体の震えがまだ止まらない。
あれが現実で、今あたしが見ているのが、ホテルの救護室で見ている夢だったら…
深く考えるのが怖い。
立ってあの扉を開けるのが怖い。
やっぱりあたしは臆病ものだ。
勇気をふりしぼることができない。
あの扉の向こうのどこにも、キョンがいなかったらと思うと怖い。
なんでこんなに怖いんだろう。
キョンが、あたしのいる部屋に入ってこなかったせいだ。
キョンが、あたしを廊下に残して、後ろ手にドアを閉めてしまったせいだ。
キョンがあの扉を開けて、ここに入ってくるまでは安心できな……。
 
ガチャ。
 
「ハルヒ、起きたか? 他の三人は帰ったぞ。コーヒー買ってきたんだけど飲むか? 一本しかないから半分こな。まあ、おまえに半分と言ってもほとんど飲まれちまう…。」
 
さっきまでの焦燥と不安がみるみる消えていく。
胸の辺りから生まれた安心感がゆっくりと全身を包みこむ。
あたしは、声に出して言っていた。
 
「か、か、かみざま……、あ…、あじがどう……。」
 
「本当は誰も入れるべきではないんだけれど、あなたを信用します。あなたなら大丈夫だと。古い付き合いだしね。だけど、花嫁におかしなことをしたら、許さないわよ。」
今日はあたしの結婚式。
人生の門出。
あたしは古泉君と結ばれる。
大学を卒業して就職したあと、古泉君に告白された。
三年ほどおつき合いをしてプロポーズされた。
SOS団は不滅だと言っていたけど、あたしが高校を卒業すると同時にみくるちゃんは遠い外国に行ってしまった。
有希は、あたしが知らない間に行方不明になっていた。あのマンションの部屋はいつのまにか何ひとつなくなっていた。
 今あたしのそばにいるのは……。
「もう一度いいます。わたしは最後まで反対しました。しかしどうしても娘があなたに会いたいと。だから私はあなたを信用しました。決して花嫁におかしな真似をしないで下さい。」
ここは、ホテルの部屋。
あたしは、豪華な椅子に座っている。
大理石の床に高い天井。大きなシャンデリア。
大きな鏡がある。全身を映す鏡。
純白のウェディングドレスをまとった、あたしを映している鏡。
ママがキョンにしつこく念を押している。
馬鹿ね。
鏡の中のあたしがクスリと笑った。
そんなに心配しなくても、あいつがあたしに変なことなんかできるわけがないのに。
「涼宮さん」
キョンの声が聞こえた。
久しぶりに聞く声。
やっぱり大人になったのね。
太くて、練れた声。
男の声。
あたしは鏡から目を離して、頑丈そうな木の扉を見た。
「あなたは、俺を信用しているのですか。信用していないのですか。」
「何を言っているのですか。あなたを信用していると言ったでしょう。だから新郎以外決して入れるべきではない所にあなたを案内しようとしているのです。あなたは拗ねているのですか。ここに新郎以外の男性を入れることの意味がわかっているのですか。そんなことを言うのなら、やはり信用すべきではないですね。」
「あなたが俺を信用するのならば、何も言わずにここに俺を連れてくるべきでした。信用しないのならばこんな所に俺を連れてくるべきじゃなかった。違いますか。」
キョンったら、理屈っぽいところは変わってないのね。だけどそんなことを言ったら逆効果よ。ほら、親父が露骨に舌打ちをしているわ。
「あなたねえ、いい加減にしてちょうだい。あなたを信用しているって言ったでしょう。だけど万一のことがあったら困るから、釘を刺しただけ。わかりますね!」
「あなたは、俺を信用するのなら、信用したことについて責任を負うべきだ。
ここに俺を連れてきて何があったとしても自分で責めを負うだけのね。
あなたが信用しないというなら、信用しないことについての責任を取るべきだ。
あいつがあきらめるまで反対するべきだ。」
何だか様子がおかしい。
キョン…、何言ってるの? 
やっぱり拗ねてるの?
あたしに、会いたくないの?
「俺には何の責任もない。
俺は古泉一樹君と涼宮ハルヒさんの門出を祝福するだけのためにここに来た。
俺は二人の友人です。それ以外のものでは決してありません。
俺がここでやるべきことはご祝儀を持ってくることと、披露宴を盛り上げることだけ。
違いますか。
俺には何の責任もありません。あなたがあいつに反対しきれなかったことに対する責任を負うつもりは毛頭ありません。
ではもう一度聞きます。
何の責任も負っていない俺を信用するんですか。しないんですか? 
責任を持って決めて下さい。」
ママ、お願い! キョンを信用するって言って! あいつがあたしに乱暴したりするわけないわ! あたしはどうしてもあいつに会わなきゃならないの! 
ママが息を飲む音が聞こえた。
「失礼をお許し下さい。どうぞ娘に会ってやって下さい。お願いいたします。」
 数秒間、誰も何も言わなかった。親父も我慢しているらしい。
 
「バカだ、おまえら。親子そろって大バカだ!」
 
「なんだと、小僧、いい加減に……。」
親父の声が聞こえる。親父がキョンを殴るかもしれない。
「いい加減にしてほしいのはこっちだ! 
ハルヒもバカだが、親はもっとバカだ! 
高校生のころから知っているからっていつまでも人を高校生のガキ扱いするんじゃねえ! 
これだけ言ってもまだ俺を花嫁の仕度部屋に入れようとするのか!
あんたらがすべきことは、おまえは信用できないと言って、俺をここから追い払うことだ!」
「…大人だったらわかるだろう。おまえ、花嫁になんかしたら大恥かくことに…。」
「それで俺が大恥かいたら古泉がなんと思う? あいつが傷つかないとでも思ったのか! 何事もなかったとしても、それがあいつに対する裏切りだとは思わないのか!
 それがあいつに知られたとしても、きっとあいつは許すだろう。
 だったらそれでいいのか? 許してくれるんだったら裏切ってもいいのか?
 あいつはもう高校生のガキじゃねえ! 立派な大人だ! 
 これからハルヒを養っていく、一家の主だ!」
 あの強面親父が完全に気圧されている。
 映画撮影の時にあたしを惚れ直させた、本気のあいつ。
 あたしが絶対にやっちゃいけないことをしたら、本気で怒ってくれる、キョン。
 だけど今、そんなことを感じさせられたら、覚悟が…。
 キョン、ここに来てくれないの?
 あたし、あんたに「あの言葉」を言ってもらえたら、覚悟を決められるはずなのに…。
「ハルヒがなんかしてほしいんだったら古泉にやらせろ!
 なんでただの友人の俺にやらせるんだ! 
俺の友人としての立ち位置はあいつが決めたことだ!
自分で決めたことだ! 一人で決めたことだ!
花嫁の仕度部屋でやらせるようなことだったらどんなことであれ古泉にやらせろ!
頭おかしいのか、おまえらは! 
こんなこと、言い出す方も言い出す方だが、伝える方も伝える方だ!
こんな親に育てられたから、ハルヒもあそこまで傲岸不遜なバカ女になっちまったんだ!」
キョンは、ここに来てくれない。ここに入ってきてくれない…。
「だいたいこんなことを聞かされて、俺が冷静でいられるとでも思ったのか!
ちったあ、他人の、俺の気持ちっていうものを考えやがれ!」
俺の気持ち? あいつの、気持ち…。
 あたしは椅子から立ち上がった。
 ドレスの裾がまとわりついて走りにくい。
 あたし、なんでこんなもの着てるんだろう?
 突進するようにドアを開けた。
 同時にキョンが背中を向けた。
 
 廊下に両親が真っ青な顔をして立ちつくしているのが見える。
 そんなことはどうでもいい。
「ハルヒ、それは古泉に最初に見せろ。」
 キョンは、あたしに礼服の背中を向けたまま言った。
 なんでこんなことになっちゃったんだろう。
 ずっとこいつのことが好きだった。
 だけどあたしはこいつにつらく当たってきた。
 それでもこいつはあたしについてきてくれた。
 あたしはこいつにつらく当たりつづけた。
 きっと、許してくれていると確認したかったから。
 まだ、見捨てられていないと確認したかったから。
 そうしないと、もう見捨てられたのかもしれないと怖かったから。
 こんなあたしを、こいつが好きになってくれるはずがないと思っていた。
 ずっとあたしの片思いだと思っていた。
 そうじゃないと気づいた時には遅すぎた。
 両家の結婚話は、もう後戻りのできない段階に入っていた。
 あたしのわがままが通るような状況ではなかった。
 そんな段階ではなかったから?
 違う。
 たとえ裏切ったとしても、古泉君は許してくれたと思う。
 両親は、許してくれたかどうかはわからないが、許してくれなくてもかまわなかった。
 だけど、キョンが許してくれるはずがなかった。
 あたしが古泉君を裏切ることを、キョンが許すはずがなかった。
 だから、あたしは覚悟を決めた。
 もう、キョンのそばにいられなくても仕方がないと覚悟を決めた。
 決めた、はずだった。
 だけど不安だった。
 だからキョンに「あの言葉」を言ってもらえればふっきれると思った。
 最後に「あの言葉」を言ってもらいたかった。
 「あの言葉」をもらえさえすれば、未練がなくなると思った。
 
「おまえが今やろうとしていたことは決して許されることじゃない。」
 そう。誰が見たって、決して褒めてくれない行為。
 なんで、こんなことしようとしたんだろう。
 答えは、はっきりしている。
 こいつがそばにいなかったから。
 こいつのそばにいなかったから。
 あたしは、こいつがそばにいなきゃダメだ。
 そんなこと、ずっと昔からわかっていた。
 くしゃりと視界が歪んだ。
 大粒の涙が後から後からこぼれ落ちてくる。
 覚悟が…、あんたのそばにはもういられないという覚悟が…、覚悟が、覚悟が!
 
「泣くなよ! おまえがもしここで泣いたら、古泉への最大の侮辱だ。そんなことは……俺が許さん!」
 そうだ、覚悟なんかはじめから無かった。
 覚悟を決めたつもりだっただけ。
 いや、そうですらない。
 覚悟を決めたと自分に言い聞かせただけ。
 「あの言葉」を聞けば覚悟が固められるなんて嘘。
 ただ、こいつにそう言ってほしかっただけ!
 
「泣くんだったら…、古泉の前で泣け。」
 あいつの手を見た。
 何回も何回もつかんだ手。
 嵐の中で初めて握り返してくれた手。
 あたしが崖から落ちても離そうとしなかった手。
 後悔…、後悔、後悔、後悔!
 もう一度あのころにもどりたい!
 毎日こいつの背中を見ていたあのころに…。
 毎日こいつの声を聞いていたあのころに…。
 あたりまえのようにこいつのそばにいられたあのころに…。
 神様、今まで一度も信じたことなんかなかったのに虫が良すぎるけど、たった一つのお願い!
 あたしをあの、北高の部室にもどして!
 
「じゃあな、披露宴のキャンドルサービスで会おう。」
 あいつの背中が遠ざかっていく。
 それを追いかけることは許されない。
 キョンが、許してくれない。
 大好きな背中。
 ずっと見ていた背中。
 ずっと見ていたい背中。
 なんで、しがみつかなかったんだろう。
 なにが邪魔したんだろう。
 みんなに美人だともてはやされていたプライド?
 勉強もスポーツも音楽さえもあいつより優れているという自己満足?
 平凡な容姿のあいつと結ばれるのは嫌だという女の見栄?
 違う。
 そんなものじゃない。
 そんなもの、この背中に比べれば、ジュースの空き缶ほどの価値もない。
 勇気が、足りなかっただけ。
 それさえも、嘘。
 勇気を、ふりしぼらなかっただけ!
 こいつにしがみついて振り払われるのが怖かった。
 ただそれだけ。
 こんなに大事なものだとわかっていたなら、何回振り払われてでもしがみつくべきだった!
 こいつが「やれやれ、しょうがないな」と言ってあたしを背中に乗せてくれるまで、何度でもしがみつけばよかった!
 
 「おまえをこう呼ぶのも最後になるな。」
 キョンが扉を開ける。
 この廊下からさえも出ていく。
 あの夜の校庭で、あたしだけをつれて駆けた背中が、あたしの前から消えようとしている。
 せっかく、出会えたのに!
 この広い世界で、キョンに出会えたのに!
 「おれは断じて見ていない。断じて見ていないが…、やっぱり意地があるようだ。…これだけは言わせてくれ。」
 いや…、あれほど聞きたかった言葉だけど、今は聞くのが怖い。
 そう。あたしの生涯でいちばん大切な思い出。
 あたしにとって宝物のような、宝石みたいな思い出。
 今それを聞いてしまったら…あたし…。
「ハルヒ。」
「…なに。」
 
「似合ってるぞ。」
 
扉がパタンと閉じた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
パソコンのディスプレーが見える。
電源は…、落ちているみたいだ。何も映っていない。
夕方のようだ。後ろに窓があるのだろうか。夕陽が照りつけている。
ディスプレーの向こうに、長机が見える。
その先に、ボロボロの扉が見える。
見慣れた場所のような気もするし、ひどく懐かしい場所のような気もする。
自分の体を見てみた。
北高のセーラー服を着ている!
左袖…。
見間違うはずもない!
真っ赤なSOS団団長の腕章!
だけど…、まだ安心できない!
そうだ! 
学生カバンの中を必死に探る。
あった!
あのホテルの部屋にあったバカでかい代物とは全く違う、高校生の身の丈にあった粗末な鏡。
意を決して見る!
涙と鼻水でボロボロのひどい顔をしている。だけどそんなことはどうだっていい!
あたしの髪には、あのティアラとかいう用途不明の装飾品ではなく、黄色いリボン付きカチューシャがはめられていた。
悪い夢を見ていたのだろうか…。
それとも、神様があたしのたった一度のお願いを聞いてくれたのだろうか。
そう言えば、今日一日授業を受けた後団活をして、団長机で居眠りをしてしまったような記憶がある。
だけど、高校を卒業して大学に進み、就職をして古泉君と交際をして…、という記憶もあるような気がする。
どっちでもいい。
あたしは、ここにいる。
北高の部室にいる。
ここにいる…はず。
自信がない。
あれは、夢なんかじゃなかった。
そう、あれはきっと、もう一つの現実。
体の震えがまだ止まらない。
あれが現実で、今あたしが見ているのが、ホテルの救護室で見ている夢だったら…
深く考えるのが怖い。
立ってあの扉を開けるのが怖い。
やっぱりあたしは臆病ものだ。
勇気をふりしぼることができない。
あの扉の向こうのどこにも、キョンがいなかったらと思うと怖い。
なんでこんなに怖いんだろう。
キョンが、あたしのいる部屋に入ってこなかったせいだ。
キョンが、あたしを廊下に残して、後ろ手にドアを閉めてしまったせいだ。
キョンがあの扉を開けて、ここに入ってくるまでは安心できな……。
 
ガチャ。
 
「ハルヒ、起きたか? 他の三人は帰ったぞ。コーヒー買ってきたんだけど飲むか? 一本しかないから半分こな。まあ、おまえに半分と言ってもほとんど飲まれちまう…。」
 
さっきまでの焦燥と不安がみるみる消えていく。
胸の辺りから生まれた安心感がゆっくりと全身を包みこむ。
あたしは、声に出して言っていた。
 
「か、か、かみざま……、あ…、あじがどう……。」
 
 

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