キシュージ「ようやく着いた・・・。今帰ったぞー」
???「遅いぞ、
キシュージ。他は既に全員揃っているんだ。早く席へ就け」
キシュージ「あーハイハイ。」
議長席のような場所に、布切れを被ったポケモンが座っている。
ポケモンの名はカンクー。声の調子は
キシュージと似ている。
キシュージ「遅れてサーセン」
???「ようやくですかぁ?とっても待ちましたよぉ?」
カンクー「早速だが、本題に入らせてもらう。
・・・先の事変で大打撃を受けた
R団が、戦力を立て直し始めたようだ」
???「ようやくか。ま、あれほどの打撃を受けて数週間ってのはむしろ早い方かね」
キシュージ「だが、完全には立て直っていない部隊もあるぞ」
???「しょうがないだろう・・・。未だ犯人不明のテロと、
女王の空襲を短期間で受けたのだ。一朝一夕で立て直せる代物ではない」
???「特に、
イコマ山の守備隊だった
テンマバシの部隊と、クーデターの張本人
ウジヤマダが率いた部隊の損害は甚だしいものがあったらしい。戦闘ヘリの空襲を無防備に晒されてしまったわけだからな」
タンバジの言葉に対して、
リザードンが口を開いた。
リザードンの名はヤマトジ。普段から戦うことが好きな男である。
みえ「無事だったのは戦いに出てなかった別働隊だけって話ですからねぇ」
カンクー「『無防備なポケモン』に『本物の戦闘ヘリ』で空襲・・・。
こんなアンフェアなバトルがあるか!?」
キシュージ「そもそもあれでバトルと言えるのかも疑問だ」
みやこじ「ポケモンバトルに本物の軍用ヘリ・・・。確かにアンフェアだな。
まして一定の秩序で戦っている相手に、だ。言ってみれば、
地上で必死に城や本陣を守る戦国武将を相手に、
B-29
や
ムスタング
で空から襲うようなものだ。」
タンバジ「それはアンフェア以前の問題だ・・・。勝
ち負け以前に時代が合っていないぞ」
ヤマトジ「それくらいアホらしいって事だよ。
何でたかが1人の人間のポケモン相手に兵器なんか使ってくるんだよ。
ま、
R団は戦う相手を間違えちまったってこった。
挑発や冷やかしに本気(マジ)でブチ切れて、ポケモン相手に兵器を向ける奴
よりも、我々のようなフェアな者と戦うべきだったな」
みえ「そうですぅ!」
タンバジ「その通りだ・・・。
女王はわかっていない・・・。兵器の中には1回ボタンを押すだけで何百、いや何千という人間やポケモンを死に追いやる物があるということを。そのような凶悪な『兵器』を、まるで安物のオモチャのように平然と扱うなど、言語道断だッ!!!」
みえ「ひゃん!」
ヤマトジ「うお!?」
カンクー「ぃ!?」
キシュージ「いぃ!?」
みやこじ「お!?」
タンバジの一喝に、残りの快速軍幹部は凍りついたかのようにこわばった。
特に紅一点のみえは半泣き状態になってしまった。
みえ「ひぇぇぇん、タンバジさん怖いですよぉ」
ヤマトジ「オイオイ、いくらなんでも乙女を涙目にするのは良くないだろタンバジ」
みやこじ「そうだ、女の子を泣かす男ほど最低な奴はいないぜ」
タンバジ「・・・許せないだけだ・・・。自らの目的と利益のために、命すらもいとわない心無い人間が。個人の恨みや怒りだけで、尊い命を次々奪い去っていくことが許されていいはずがない。利を得るために命を犠牲にすることなど、あっていいはずがない・・・!!」
カンクー「言ってる事はわかるが、お前の言葉は重すぎだ」
みやこじ「そうだよ・・・。なぁ、ヤマトジ」
ヤマトジ「確かに、アイツの一言一言は刺さるよ」
キシュージ「カンクー、今はそんな話より、
もっと大事なことを言いたいんじゃないかい」
カンクー「そうだったな・・・。
俺は
R団と
女王の2勢力の戦いの経過について、気になることがある」
みえ「何ですか?」
カンクー「戦いの形相だよ。そもそも、ポケモンバトルってのは元々、
トレーナーの人間同士、ポケモン同士が互いに全力を出し合い、
勝っても負けても皆友達、ライバルになり、互いを競い高めあうモンだよな」
みえ「スポーツマンシップですねぇ」
カンクー「そう・・・、ポケモンバトルは『スポーツ』だ。
勝ち負けよりももっと大切なものがある。
それに比べ・・・
R団と
女王は何だ?
双方がポケモンバトルを単に『相手をポケモンで打ち負かすもの』
という別の意味で捉え、戦うたびに関係はどんどん険悪になり、
挙句の果てに
R団は自分の全ポケモンを集めアサギ総攻撃の準備!
対する
女王は
R団撃滅のための近代兵器の発注と整備!
最早単なる内戦だ、ポケモンバトルのポの字もない!」
ヤマトジ「ポケモンバトルを想定し、ポケモンの守備隊敷いてて、
軍の兵器に襲われてるくらいだからな・・・。」
タンバジ「カンクー。お前は何が言いたいんだ」
カンクー「簡単な話さ。俺達快速軍が、
R団に戦いを挑むのさ」
みやこじ「
R団に戦いを?」
みえ「それで、どうするつもりなんですかぁ?」
カンクー「
R団の目を
女王からこっちにそらすのさ。
奴らとの戦争としての戦いで、両方が意味なく傷つきあうよりは、
俺らと力を出し合って戦ってた方がよっぽどいい。・・・勝とうが負けようが、
ポケモン同士の戦い、ポケモンバトルは『楽しむ』モンだって、教えてやるよ」
キシュージ「今の
R団は、
女王に『勝つ』、
つまり『打ち負かし屈服させる』ことしか考えていない。
我々快速軍の手で、『バトルを楽しむ』ことを教えてやらなくてはな」
カンクー「その通り!快速軍の『快』は・・・『快い』の快だ!!!」
これに対し、タンバジが口を開いた。
タンバジ「・・・ならば、
女王にも戦いを挑むべきではないのか?
奴らにも、ポケモンにけしかけられた戦いは、ポケモンでケリを着けるべきだと、
教えてやる必要がある・・・。」
カンクー「・・・、一理あるが却下!あんなアンフェアな奴らと戦ってたら、
命がいくつあっても足りない!」
カンクーは一理あるとしながらも、タンバジの意見を却下した。
カンクーは、心の底では
女王の
R団への攻撃を恐れていた。
もし自分が
女王に宣戦すれば、自分達も
軍の兵器で殲滅されるのではないかということを。
これに対し、
キシュージは冗談交じりで言った。
しかし、この
キシュージの言葉で、部屋の中は寒くて嫌な空気に包まれてしまった。
みやこじ「いや・・・むしろ飯をおかわりするかの如くバンバン撃ってくるかもな・・・」
みえ「いやぁぁ、怖いですぅ!!」
ヤマトジ「アイツだったらマジでやりそうだぜ」
タンバジ「不謹慎なことを言うな、
キシュージ」
キシュージ「・・・どーも、すいませんでした」
カンクー「マジでジョークがヘタクソだなお前は・・・。
まぁ、コレがジョークに聞こえないようなことをしてる
女王も、
どうかと思うけどな・・・」
<<作者は聖鎧亜クイーン・アルカディアスに磔にされました>>
最終更新:2009年12月12日 17:28